2016年3月25日 | カテゴリー:スタッフ佐藤の、コレ好きなんですよ。
こんにちは、カケレコ・スタッフ佐藤です。
「スタッフ佐藤の、コレ好きなんですよ。」は、一般的にはあまり注目を集めることのない作品ながら「実は良い作品なんだけどなぁ、もっと聴かれてほしいなぁ。」とスタッフ佐藤が日頃から感じている、愛して止まない作品たちを取り上げてご紹介していこうというコーナー。
今回取り上げるのは、アメリカン・プログレ・ハードの筆頭格ボストンの86年作『サード・ステージ』です。
理屈抜きで気持ちのいいサウンド、というのが音楽好きであればどなたにとっても存在するのではないかと思います。
スタッフ佐藤にとってその筆頭と言えるのが、トム・ショルツの奏でるギターサウンド。厚みのある音色で力強く飛翔していく存在感溢れる彼のギターは、まるで東海岸の青空へと突き抜けていくような爽快感を持っていると思いませんか?
英国プログレを中心に有名所を聴き進めていた高校生当時、「アメリカン・プログレ・ハード」という何だかやたらとカッコいい名称に惹かれてボストンの1stを手に取ったのが出会いでしたが、初めて「MORE THAN FEELING」を聴いた時、一聴してショルツのギターの芳醇な音色に魅了されたのを覚えています。
ヴォーカリストのブラッド・デルプによる伸びやかなハイトーンもまた素晴らしくて、ショルツのギターとの絡みながら高みを目指していくようなサウンドは、個人的にロックにおける美しさの一つの極致と言いたいほど。
さて、普通ならボストンを堪能するのであれば、1stか2ndということになるんじゃないかと思います。実際スタッフ佐藤も前述の1stはもちろん2ndも大の愛聴盤なのですが、一番よく聴いてきた彼らのアルバムということで言えば、おそらく86年にリリースされた3rdアルバム『サード・ステージ』になると思います。
マサチューセッツ工科大学を卒業した英才トム・ショルツによるレコーディング・ミキシングに対する異常なまでのこだわりはよく知られるところですが、それによる製作遅延をめぐっての所属していたCBSとの裁判や、ショルツ自身によるエフェクターやアンプの開発などの傍らで製作が続けられ、前作より実に8年の歳月をかけて完成したのが『サード・ステージ』です。
ショルツのこだわり抜いたギターやデルプの美しいハイトーンなどバンドの特徴を発揮しつつ、あくまで軽快でノリのいいロックサウンドを基本とした1stと2ndに対して、この3rdは叙情的なバラード系ナンバーが光る作品。もちろん前2作で聴かせたようなアメリカン・ロック然としたドライヴ感溢れるナンバーも相変わらずの素晴らしさで、その両方をバランスよく配し練り上げられたアルバム構成によって、よりトータルでの流れが楽しめる作品に仕上がっているように思います。
個人的な聴きどころは、バラード系のナンバーでここぞとばかりに披露されるショルツの「泣きのギター」。前2作で抜群に抜けのいい爽快なギターサウンドというイメージが固まっていたところへ、これでもかと思いの丈を込めた泣きのギターが炸裂した日にはそれはもうグッと来ずにはいられますか、というもの。あの音色で泣くのはほんと反則ですよね。前作までの突き抜けるような威勢の良さがなくなったと取られるかも知れませんが、それが「円熟」というものなのでしょう。
産業ロックとも言われることのある彼らのサウンドですが、そもそも8年もかけて音作りをしている時点ですでに採算度外視でしょうし、「No Synthesizers Used」「No Computers Used」を掲げ、ひたすら完璧を目指して音を磨き上げていくその姿勢は、ある意味究極のプログレッシヴ精神だなぁと思います。
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