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MEET THE SONGS 114回 アフィニティ『Affinity』

今日の「MEET THE SONGS」は、アフィニティの70年唯一作『Affinity』をピックアップいたしましょう。

渦巻きでお馴染みのVertigoレーベルから70年にリリースされた作品で、キーフによる幻想的な色合いのジャケの魅力と相まって、ブリティッシュ・ロック屈指と言える人気を誇る一枚。

バンドのはじまりは、Key奏者のリントン・ネイフとドラムのグラント・サーペルがサセックス大学在学中にはじめた学生バンドで、当初は、ジャズ・トリオとして活動し、同郷のバンドの実力者達も合流して、ICEに発展します。ICEは地元サセックスでは人気バンドとなり、ジョン・ピールのラジオ番組に出演の際には、ジミ・ヘンドリックスやトラフィックとも共演します。ヒットまでもう少し、というところで残念ながら解散。リントンとグラントの2人は新バンド結成のために動き、ベースにモー・フォスター、ギターにブルースとジャズの両方に明るいマイク・ジョップを加え、ヴォーカルは、オーディションにより、国語教師をしていた紅一点リンダ・ホイルが加わります。

バンド名は、カナダ人ジャズ・ピアニスト、オスカー・ピーターソンの62年作から取ってアフィニティに決定。マイク・ジョップの父親からの借金で機材をそろえ、68年夏、イギリス南東部の海沿いの町ブライトンのはずれにコテージを借り、リハーサルを重ねます。68年10月にはロンドンでライヴを行い、ヨーロッパや北欧へもツアーに出るなど精力的に活動。

上り調子の中、新興のVertigoと契約し、70年にリリースしたのが『Affinity』です。

オープニングの「I Am And So Are You」からデビュー作とは思えない、熟練バンドのような雰囲気がぷんぷん。ロック的ダイナミズムに溢れたファズ・ギター、ジャケのトーンそのままの淡い音色のオルガン、ジャジーに引き締まったタイト&シャープなリズム隊によるアンサンブルは、これぞアフィニティと言える陰影と叙情性に溢れています。

そして、何より魅力なのが、紅一点リンダ・ホイルのヴォーカル。くぐもった陰影あるシャウトは、エモーショナルで気品に満ちていて大人びていて、淡いトーンの演奏に、さらに渋みや深みを与えています。

ジョン・ポール・ジョーンズのアレンジも特筆で、何本ものブラスを重ねているものの米国のブラッド・スウェット&ティアーズのようなソウル・フレイヴァーはなく、地を這うように重厚なトーンが印象的で、バンドの持つ英国的な荘厳さを最大限に引き出しています。

この曲で聴けるR&B~ブルースに根ざしつつ「ジャズ・ロック」へと昇華したサウンドは、コロシアムと双璧と言えるでしょう。

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2曲目以降は、艶やかなジャズ・バラードやお洒落なアフィニティ流幻想ソフト・ロックを聴かせたり、数多くのアーティストのバックをつとめて腕を磨いたバンドの多彩な引き出しが印象に残ります。そして何と言っても素晴らしいのが、ラストを飾る「All Along The Watchtower」。

9分を超える長尺曲ながら、基本的には、歌メロパートとソロパートとの繰り返しのシンプルな構成なのですが、その中にバンドの妙味が詰まっていて、何度聴いても飽きない深みに満ちています。時にリズム・ギターが前に出たり、ベースがリードしたり、ドラムが小刻みなジャズ的パターンからシンプルなロック的ビートへと鮮やかにスイッチしたり、細やかなアレンジを施しつつ、後半に向かって熱を帯びていくアンサンブルはただただ出色。

残り1分を切った頃には、聴き手である自分とバンドの演奏との波長が完璧に一致する感覚に陥って、何たる気持ちよさ。カラフルさは全くありませんし、ギミックもありませんが、サイケデリック・ロックとして捉えても一級と言える出来映え。ライヴで聴いたら、さぞかし痺れるでしょう。

アンサンブルの熱気とともに、激しいインプロで畳みかけるオルガンも特筆で、カンタベリーが誇るデイヴ・スチュワートと比べても遜色ないエネルギッシュかつ端正でメロディアスなリードを聴かせます。

この曲はボブ・ディランの作曲で、ジミ・ヘンドリックスのカヴァーで有名だと思いますが、このアフィニティ・バージョンもクオリティではまったく負けていません。ブリティッシュ・ロックに数あるオルガン・ロック名曲の中でも屈指と言える名曲でしょう。

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作品は評論家からは絶賛されますが、残念ながらヒットには至らず、度重なるツアーに疲れたリンダ・ホイルとリントン・ネイフは71年1月、グループを脱退してしまいます。

残ったモー・フォスター、マイク・ジョップ、グラント・サーペルの3人は、Key奏者のデイヴ・ワッツ、新ヴォーカルとして元プリンシプル・エドワーズ・マジック・シアターのヴィヴィアン・マコーリフを加えて活動を続けますが、音楽性の違いにより作品を残すことなく解散してしまいます。

元アフィニティの3人は、元マンフレッド・マンのマイク・ダボのアメリカ・ツアーのサポートを務めた後、モー・フォスターはセッション・マンとして、グラント・サーペルはセイラーに参加するなど活躍します。なお、リントン・ネイフは、クイーンやジミー・ペイジやロバート・プラントらのオーケストラ・アレンジをするなど、アレンジャーとして活躍したようです。

これだけのメンバーですから、もしアルバムがヒットし、リンダとリントンが脱退せずに1stのメンバーでもう一枚作っていたら、間違いなく1stを超えるソリッドな作品が生まれていたことでしょう。印象的なジャケとともに、一瞬ですが華麗に咲いたそのサウンドとともに、ロック・シーンに永遠に記憶される名グループですね。

そうそう、オープニングの「I Am And So Are You」は、リンディスファーンのアラン・ハルの楽曲ですが、ヒプノシスによる唇ジャケでお馴染みのキャパビリティ・ブラウンもカヴァーしていますね。

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