2023年8月23日 | カテゴリー:ユーロ・ロック周遊日記,世界のロック探求ナビ
1970年代に著名な作品を残したプログレ・バンドが再結成しニュー・アルバムをリリースするというのは、やはりうれしいものです。
たとえそれが70年代の作品の焼き直しであろうが、あるいは逆に70年代とは全く違ったサウンドに変化していたとしても、彼らが元気に音楽を続けていたんだと分かるだけで十分という気持ちになります。
もちろん、往年の名盤を超えるような作品と共に復活してくれれば、それが最高なんですけどね!
ということで本日は、70年代に優れたプログレ・アルバムをリリースしたイタリアのREALE ACCADEMIA DI MUSICAの2022年作『Lame Di Luce』をご紹介します!
まずは試しに、ここ10年ほどのイタリアに限定して、再結成作をリリースしたプログレ・バンドを思いつくままに挙げてみましょう。
聴き逃してしまっていた作品はありませんでしたか?
他にも該当するアーティストがいるとは思いますが、ササっと思い出しただけでもたくさんのバンドが再結成していることが分かりますね。
また、それらの多くが国内盤リリースされている点も、注目度の高さが伺えます。
さて、それでは REALE ACCADEMIA DI MUSICAについて見ていきましょう。
I FHOLKSを母体に結成されたREALE ACCADEMIA DI MUSICAは、1972年に『Reale Accademia Di Musica』 、そして74年にはADRIANO MONTEDURO & REALE ACCADEMIA DI MUSICAという連名でもアルバムを発表。
また、当時の未発表録音が2013年に『La Cometa』というタイトルで蔵出しされています。
ここから少々分かりづらいのですが、実はREALE ACCADEMIA DI MUSICAは2008年に『Il Linguaggio Delle Cose』、翌2009年には『R.A.M.:Tempo Senza Tempo』をリリースし、一度再結成しています。
しかし、その時の中心メンバーは74年作に連名でクレジットされていたAdriano Monteduroであり、オリジナル・メンバーは誰も制作に関わっていませんでした。
それからおよそ10年が経過した2018年、今度はオリジナル・メンバーのギタリストPericle Sponzilliが中心となり、再びREALE ACCADEMIA DI MUSICA名義の新作『Angeli Mutanti』が登場したという流れになります。
今回ご紹介する2022年作『Lame Di Luce』は、Pericle Sponzilliによるグループ復活第2弾アルバムということなんですね。
さて、それでは2022年作『Lame Di Luce』から数曲をピックアップし、聴いていきましょう!
まずはオープニング・ナンバーの「Onde di sabbia」です。
Onde di sabbia
まず驚かされるのは、女性ヴォーカリストの存在ではないでしょうか。
復活したREALE ACCADEMIA DI MUSICAには、2018年作『Angeli Mutanti』から女性ヴォーカリストErika Savastaniが参加(ベーシストFabio Fraschini、キーボーディストFabio Liberatoriも前作から引き続き参加)しています。
イタリアン・プログレというと勢いでゴリ押しするタイプのバンドが少なくない中、円熟味を感じさせる余裕を持ったバンド・サウンドという印象で、歌モノとしても素晴らしい。
本作はSONY MUSIC ITALYからのメジャー配給となっていますが、サウンド・プロダクションのレベルもとても高いです。
では、続いて2曲目に収録の「Ascesa al fuji」を聴いてみましょう!
Ascesa al fuji
本作では、大半の楽曲の作詞作曲をPericle Sponzilliが手掛けていますが、この楽曲はキーボーディストFabio Liberatoriが作曲を担当。
GENESISのTony Banksからの影響を感じさせるピアノ・サウンドが、美しく響いています。
後半部ではオルガンやPericle Sponzilliのエレキ・ギターが入り、よりGENESISの色合いが強くなりますね。
これだけの楽曲が作れるなら、Fabio Liberatoriのプログレ・アルバムも聴いてみたくなります。
続いて、4曲目に収録のタイトル・トラック「Lame Di Luce」を聴いてみましょう!
Lame Di Luce
物憂げな楽曲とメロトロン・サウンドのマッチング!
アルバム冒頭を聴いただけで本作のクオリティーは十分伝わってきますが、彼らの音楽性の中にプログレッシヴ・ロックらしさが感じられると、やはりプログレ・ファンとしてはうれしくなります。
本作はベテラン・ミュージシャンの余裕を感じさせるミドル・テンポの楽曲が多いですが、次は少しテンポの速い楽曲も聴いてみたいですね。
7曲目の「Ore Lente」を聴いてみましょう!
Ore Lente
ここで再びキーボーディストFabio Liberatoriの作曲です。
シンフォニック性はもちろんですが、そして独特の妖しさを持っているのがイタリアン・プログレならではです。
途中で無機質なシンセサイザーのシーケンスが入っていたりしますが、楽曲にマッチしているので違和感がありません。
エンディングではモーグ・シンセサイザーのようなシンセ・リードも登場し、プログレッシヴ・ロックらしさをアピールしています。
いかがでしたか?思いがけずハイ・レベルな内容に驚かされたという方も多いのではないでしょうか?
72年作『Reale Accademia Di Musica』をリリースした当時のREALE ACCADEMIA DI MUSICAはキーボード・ヴォーカリストFederico Troianiを中心とするグループで、彼のキーボード・サウンドが大きな個性になっていました。
そういった意味で現行REALE ACCADEMIA DI MUSICAは、70年代当時と比較するよりも2018年デビューの新人と捉えてしまった方がいいのかもしれませんね。
その方が、よりストレートに彼らの魅力を感じていただけるのではないかと思います!
なお、本作にはCDのみのボーナス・トラックが2曲収録されているので、この機会に是非CDで聴いてみてくださいね!
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続々登場する新鋭バンドに負けじとハイクオリティな作品を発表している、70年代に活躍したベテラン・バンド/アーティストたちの作品に注目してまいります☆
キーボーディストFederico Troianiを中心に結成され、カンタトゥーレAdriano Monteduroとのジョイントでも知られるイタリアの叙情派シンフォニック・ロックグループの72年作。その内容は、ファンタジックでフォーキーな雰囲気からへヴィ・シンフォニックなサウンド、ブルース・フィーリングやジャジーなアンサンブルまで幅広く聴かせるものですが、共通しているのは哀愁のボーカルが紡ぐメロディーと全体を覆う繊細な肌触り。特にそのメロディーは胸を打つ旋律を量産するイタリアン・ロックシーンの中でも高水準なものであり、バンドのカラーを決定付けていると言えるでしょう。郷愁を誘うメロトロンも導入され、楽曲を緩やかに、シンフォニックに盛り上げます。
イタリアン・ロック史上の傑作として名高い72年のデビュー作で知られるグループが、4年ぶりにリリースした22年作。デビュー当時からのメンバーはギタリストPericle Sponzilliのみですが、柔らかく幻想的なタッチで綴る彼らならではのシンフォニック・ロックは健在と言っていいでしょう。前作より参加する女性ヴォーカルがエモーショナルな伊語で歌う洗練されたモダン・メロディアス・ロックを軸としながらも、たおやかに響くクラシカルなピアノや淡く揺らぐオルガン、そして瑞々しいアコギ&歌心あるフレーズを紡ぐエレキと、演奏陣のプレイは70年代より活動するイタリアン・ロック・バンドらしい味わいがたっぷりで感動を呼び込みます。後半にはイタリアン・ポップス・テイストが強い楽曲も入ってきますが、どこかシアトリカルな厳かさを持った女性ヴォーカルの存在によって軽い感じになっていないのが好印象。21世紀の作品としてのモダンな音使いとヴィンテージなサウンドとのバランス感覚が素晴らしい一枚です。
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