2021年5月20日 | カテゴリー:ユーロ・ロック周遊日記,世界のロック探求ナビ
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名盤からディープな作品まで、ユーロ諸国で誕生した様々なロック名作を掘り下げていく「ユーロ・ロック周遊日記」。
今回は、ノルウェーの実力派シンフォ・グループKERRS PINKから届けられた21年作『PRESENCE OF LIFE』に注目してまいります!
KERRS PINKは、72年に結成され80年に1stアルバムをリリース、活動休止期間こそあるものの解散することなく現在まで活動を続けている、北欧プログレ・シーン屈指のベテラン・バンド。デビュー時は以下の6人編成でした。
80年代と90年代にそれぞれ2枚のアルバムをリリース、そして00年代、10年代に各1枚をリリースしており、その歴史の長さからするとずいぶん寡作ですが、そのぶん一作一作のクオリティの高さは目を見張るものがあります。
そのサウンドは、まさに「キャメル+北欧トラッド」と言うべきもの。トラッドに由来する神秘的かつデリケートなメロディ、北欧の自然情景を切り取ったかのような澄みわたる壮麗なアレンジ、そしてアンディ・ラティマーばりに泣きまくる哀愁のギターを持ち味に、北欧然としたシンフォニック・ロック作品を生み出してきました。
まずはそうしたKERRS PINKの特徴がよく現れた楽曲をお聴きください。
そんなKERRS PINKが8年ぶりにリリースした7枚目のアルバム『PRESENCE OF LIFE』。
オリジナルメンバーはギター/フルートのHarald Lytomt一人となりましたが、前作より参加する同郷の実力派バンドMAGIC PIEのヴォーカリストを含む総勢7人編成となり、デビュー時を上回る大所帯となっています。
「キャメル+北欧トラッド」と言えたかつてのKERRS PINKですが、本作ではトラッド由来のメロディはそのままにキャメル色はやや後退し、よりアグレッシヴかつダイナミズムに富んだスタイルへと変化を遂げています。
一聴して感じさせるのが、同じく北欧出身の大御所であるザ・フラワー・キングス(TFK)との共通点。
ヴォーカルのEirikur HaukssonがTFKのハッセ・フレベリに似た声質/歌唱スタイルである事、Harald Lytomtによるラティマー彷彿の叙情派ギターが一部ロイネ・ストルトのプレイとも通じている事が大きいのですが、スケール大きく堂々としたアンサンブルやキャッチーながらもどこか浮遊感のあるメロディメイクなどにもTFKと通じるものを感じます。
そこにトラッドに由来するノルウェーの土着的なエッセンスが加わって、「いなたいTFK」と呼べてしまうサウンドを繰り広げているのです。
それでは、注目のナンバーを聴いてまいりましょう。
郷愁を誘うアコーディオンの独奏から、太いトーンのギターとヴィンテージなハモンドが溢れ出す重厚なアンサンブルへとなだれこむオープニングからしてベテランらしい風格満点でゾクゾクします。
重厚に刻むリズム・セクションに乗って、ハスキー・ヴォイスで力強く歌うヴォーカル、クラシカルな泣きのフレーズでこれでもかと畳みかけるギター、洪水のごとく溢れるハモンドとつややかに疾走するシンセらが躍動。
どっしりと重心が低く貫禄あるサウンドと劇的に描かれる叙情サウンドとの調和が実に素晴らしい一曲です。
本作中、もっともトラッド要素が色濃く出ているのがこの曲。
注目は中盤、物悲しくも暖かなメロディが胸を打つトラッド調のヴォーカル&コーラス・パートから、ヘヴィなギターと哀愁溢れるアコーディオンが疾走するパート、そして再びヴォーカルがドラマチックに飛翔するこの興奮必至の展開!
これは間違いなく今現在のKERRS PINKでしか鳴らしえないサウンドです。
讃美歌のように神々しくドラマチックなサウンドが感動を呼ぶバラード。
チャーチ風のオルガン、しとやかなピアノをバックにして慈愛を込めて歌うヴォーカルとそれを優しく支えるコーラス。
言葉を失う美しさです。
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