2020年8月26日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
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7月25日に『トラジェクトリー(軌跡)』をリリースしたロシアの新鋭プログレ・グループLOST WORLD BANDを特集いたします!
今回リリースされた『トラジェクトリー(軌跡)』は、長らく入手困難となっていた彼らの2002年デビュー・アルバム『TRAJECTORIES』に、リズム・セクションの新規録音や英語ヴォーカルへの差し替えなどを施し、より完成度を高めた2020年バージョン。
キング・クリムゾンからの影響が色濃い緊張感みなぎるヘヴィ・プログレを持ち前のクラシックの高い素養で料理しきった、硬質にしてどこまでも気品高いシンフォニック・サウンドが、02年バージョンよりも一層ダイナミックな音像で迫ってきます。これまで未聴だった方はもちろん、すでに02年バージョンをお聴きの方にも新鮮な音楽体験をもたらしてくれること間違いなし。
デビュー時より不動のフルート奏者としてLWBを支えてきたVassily Soloviev氏が2020年2月に急逝、本作は彼への追悼の意も込められたリイシューとなっています。
世界三大音楽院に数えられる名門中の名門モスクワ音楽院で学んでいたヴァイオリニストAndy Didorenko(バンドではギターも兼任)が、同校に在籍していたフルート奏者Vassily Solovievとキーボード/パーカッショニストのAlexander Akimovと共に、1990年に結成したのがLOST WORLD(現LOST WORLD BAND)です。
世界最高峰の環境でクラシック音楽を修める一方、より自由な演奏が可能なロックにも魅力を感じていた3人が、両者を共存させた独自のスタイルを実現させる目的で活動を始めます。
キング・クリムゾンの『宮殿』に10代半ばで衝撃を受けたというAndy、そして『ビート』を聴いてプログレに興味を持ったというAlexの言葉通り、クリムゾンに影響された肉感的なヘヴィネスと一音一音にみなぎる緊張感、そしてクラシックに由来する凛とした気品高さを併せ持ったテクニカルなシンフォニック・サウンドが彼らの持ち味。
近作では、ヴァイオリンの旋律やリズム面で伝統的な舞曲からヒントを得た独自のスタイルも披露しており、確かなロシアの血を感じさせるのも特徴の一つとなっています。
自国ロシアのみならず、現プログレ・シーン全体でも見ても最高峰に位置する実力派グループと言って間違いないでしょう。
以前彼らに行ったインタビューの記事はコチラ!
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キング・クリムゾンからの影響が感じられる硬質でアグレッシヴなサウンドをベースに、クラシカルなヴァイオリンやフルートが疾走するテクニカル・アンサンブルが痛快な、現在最も注目すべき新鋭の一つですLOST WORLDの魅力に迫るインタビュー!
これまでにデビュー作『TRAJECTORIES』を含め6枚のスタジオ・アルバムをリリースしているLOST WORLD BAND。ここでは、いずれ劣らぬ傑作ぞろいの2ndアルバムから6thアルバムまでをご紹介してまいりましょう!
デビュー作がすぐに入手困難となったこともあり、この2ndで彼らの実力に驚嘆したプログレ・ファンも多かったはず。
テクニカルかつ流麗なギターと、緊張感と叙情性を巧みに使い分けるヴァイオリン&フルートをフィーチャーした壮大なシンフォ・プログレで、とにかく全パート圧倒的なテクニックと演奏強度で疾走するアンサンブルが爽快です。
狂気をはらんだ鋭角なヴァイオリンが襲いかかったと思えば、メロディアスなフルートが軽やかに飛翔する、「動」と「静」の圧倒的なダイナミズムによって構築された傑作。
前作で聴かせた超絶テクニックと疾走感を、よりスマートで洗練された演奏へと落とし込んだ印象の3rd。
ヌケが良く疾走感溢れるリズム・ギターとアグレッシヴなリズム隊が築くスケールの大きなキャンバスの上を、ヴァイオリンとギターとフルートが絡み合いながら美しい旋律を描き、そこに流麗なピアノが鮮やかに色彩を乗せる…。
時に激しい表情を見せつつも、一分の隙も無い完璧な調和の中で展開されるサウンドは、聴いていて思わず笑みがこぼれるほどの素晴らしさです。
鮮烈極まる快作!
緊張感がみなぎっていた従来作に比べ、繊細で叙情的なパートに重きを置いたという4thアルバム。
シャープで安定感のあるドラム&テクニカルに躍動するベースを土台に、キーボードがリズム隊とは異なる変拍子でミニマルかつエスニック調のフレーズをかぶせ、緻密に展開。そこにヴァイオリンがどこまでも伸びやかに、そして鮮烈なフレーズで飛翔します。ファンタジックな優美さを帯びたオープニング・ナンバーから絶品です。
デビュー作以来となったヴォーカル曲も特徴で、アグレッシヴな演奏の合間に奏でられるリリカルなクラシカル・バラードがまた沁みるんです。
本作では、あくまでバンド・サウンドだった従来から大きく躍進し、演奏に交響曲的な壮大さと厚みが生まれた会心作。
舞踏音楽も取り込んだ躍動感いっぱいのリズム・セクションをバックに、ヴァイオリンが鮮やかなトーンでまるで天空を駆け抜けるかのように鳴り、エレキ・ギターが追随しながら疾走感を加える。イマジネーションいっぱいに鳴り響く管楽器も凄いし、アコギとフルートによる静謐なパートの奥ゆかしさも特筆です。
そのサウンドは、さながら巨匠ストラヴィンスキーが蘇り、交響楽団とテクニカルなプログレ・バンドを従えた、といった感じ。
彼らのクラシックの素養が最大限に発揮された、まさにLWBにしか鳴らしえないサウンドへと至った大傑作でしょう。
Andyが複数の楽器を兼任していた変則的なバンド編成から、専任キーボード奏者を加え安定した5人編成で制作された19年作。
本作は、これまでに彼らが培ってきたサウンドを各曲へ絶妙に織り込んだ、集大成的な一枚と言っていいでしょう。
舞踏音楽の流れを汲む気品に満ちたヴァイオリンのフレーズを軸にスピーディに畳みかける鮮烈な1曲目に始まり、交響曲的な厚みあるサウンドで展開する重厚なクラシカル・ナンバー、ヴァイオリンとピアノとフルートの気品高い演奏と物憂げな歌声が織りなす静謐なバラードなどを配した、起伏に富む曲構成が魅力的です。
さらに本作での新境地として、骨太なオルガンやシンセが活躍するキーボード主体のテクニカル・チューンも大きな聴きどころ。
緩急自在に多彩なスタイルを見せつつもそれらを流れるように聴かせてしまう、約30年の活動歴に裏打たれたベテランのセンスを感じさせる凄い作品です。
LOST WORLD BANDの素晴らしさを実感していただけたでしょうか。
フルート奏者Vassilyの訃報は大変残念でしたが、これからも彼らにしか紡げない息をのむような激しくも美しい音世界を届けてくれることを期待したいところです。
LOST WORLD BANDのサウンドを耳にされた方なら、00年代以降に活動する新世代のプログレ・バンドたちにも俄然興味が沸いてきたのではないでしょうか。
そこで最後に、LOST WORLD BANDが気に入られた方には是非お聴きいただきたい新世代プログレ作品を各国からセレクトいたしました。
2つのテーマで探求に出発!
○世界のヴァイオリン・プログレ新鋭
90年代以降のイタリアン・プログレ屈指の実力派バンドによる16年作。声量みなぎる強靭なヴォーカル、ハード・ロックの切れ味とジャズのしなやかさを備えたギター、そして地中海の風を纏いながらスリリングに疾走するヴァイオリンが、三つ巴で繰り広げる変拍子アンサンブルがカッコよすぎる!
女性ヴォーカル+リズム隊+各種の管弦楽器という編成で繰り広げられる、クラシックも民族音楽も巻き込みダイナミックに押し寄せるシンフォニック・ロックが痛快無比!ギターレスを補って余りある、気品と情熱を合わせ持つ縦横無尽なヴァイオリンのプレイは特に圧巻です。
まるでGENESISの優美さとRUSHのハードな疾走感を合体させたかのような鮮烈なるメキシカン・シンフォ傑作。NEW TROLLSにも参加したイタリア人ヴァイオリニストによるスケール大きくファンタジックなプレイが感動を呼びます。
日本からは、まるでU.K.をクラシカルなシンフォに仕立てたようなこの作品。このヴァイオリン、鋭いタッチの緊張感みなぎるプレイで疾走したかと思うと、次の瞬間にはふっと表情が和らぎ優美なトーンで伸びやかにフレーズを奏でる、緩急自在の演奏に耳を奪われます。Eddie JobsonやDaryl Wayを彷彿させる名手ぶり!
○ロシアン・プログレの新鋭たち
90年代以降のロシアン・プログレを牽引するのが彼ら。Keith Emmersonばりに時にけたたましく、時に美旋律極まるキーボードを中心に、ロシア語のシアトリカルで民族色もあるヴォーカルが哀感を添えて、もの凄いテンションとエモーションが溢れ出します。「静」と「動」のダイナミズムに圧倒される名作です。
突如として現れた新鋭グループによる11年デビュー作。全パートのどこを切り取ってもファンタジックなメロディが溢れ出る、と言っても過言ではないこのメロディアスぶりには、きっとCAMELやYESファンなら感動しちゃうはず。70年代プログレの遺伝子を受け継いだ正統派プログレとして一級の出来映え!
06年結成の新鋭グループなのですが、こちらも凄い一枚。クラシックの高い素養を感じさせる凛として気高いヴァイオリンが全編を駆ける本格派クラシカル・プログレは、これがデビュー作とは思えぬ完成度。重厚なオルガンやリリカルなフルートと絡み合いながらひたすら壮大に展開するサウンドが見事です。
「YOU」GONGを彷彿させるサイケデリックなジャズ・ロックを繰り広げるのがこの個性派グループ。凄まじい手数でハイテンションに突き進むリズム隊と、それにアグレッシヴなプレイで応じるギター&ヴァイオリンとの間に生じる熱量がもう半端じゃありません。スペイシーに浮遊するキーボードにも注目!
90年代初めから活動するロシアのシンフォ・グループ。高い評価を得た06年作2ndに続く09年作。ヌケが良く疾走感溢れるリズム・ギターとアグレッシヴなリズム隊が築くスケールの大きなキャンバスの上を、ヴァイオリンとギターが奔放に美しいメロディを描き、そこに流麗なピアノが鮮やかな色を付ける。聴いていて思わず笑みがこぼれる躍動感いっぱいのアンサンブル。まさに「鮮烈」の一言。ただ、ゴリ押しで畳みかけることは決してなく、どんなにアグレッシヴなパートでも、静謐とも言えるような格調高さを常に感じさせるのが特筆もの。前作同様に「静」と「動」の対比鮮やかで、「静」のパートでは、フルートが柔らかに舞い、優美なメロディを描く。ファンタスティックなシンフォを軸に、「太陽と戦慄」期クリムゾンのような硬質なヘヴィネスや、ディシプリン期クリムゾンのような浮遊感とサウンドのエッジをうまく織り込み、なおかつ全体的には優美さでまとめ上げるセンスは超一級。サウンド・プロダクションも抜群で、モダンなビビッドさとビンテージな温かみとのバランスが絶妙。これは傑作です!
現代ロシアを代表する3人組プログレ・バンドによる13年作4th。シャープで安定感のあるドラム、テクニカルに躍動するベースを土台に、キーボードがリズム隊とは異なる変拍子でミニマルかつエスニック調のフレーズをかぶせ、緊張感を生み出す。そこにどこまでも伸びやかに、そして鮮烈に奏でられるヴァイオリン!芯のある太いトーンのギターやフルートもからみ、「静」と「動」を対比させながら流れるように畳みかけます。目の覚めるような完璧なオープニング・ナンバー。ただただ心が躍ります。2曲目以降も、切れのあるヴァイオリンが疾走するクラシカル・シンフォから、ヘヴィーにうねるギターが炸裂する70年代中期クリムゾン的ヘヴィー・プログレ、フルートをフィーチャーした民族調テクニカル・アンサンブルまで、1曲の中でめくるめく展開しながら、ハイテンションで駆け抜けます。終始テクニカルで展開が多いながらも、決して大味になることなく、精緻で格調高く気品に満ちているのがこのバンドの凄いところ。その点で、ジェントル・ジャイアントをも凌駕していると言っても決して過言ではありません。傑作3rdをさらに上回る、素晴らしすぎる傑作!
現代ロシアを代表するのみならず、ヴァイオリンをフィーチャーした新鋭プログレ・バンドとして屈指と言えるクオリティを持つトリオ、2016年作5thアルバム。オープニングから、舞踏音楽も取り込んだ躍動感いっぱいのリズム・セクションをバックに、ヴァイオリンが鮮やかなトーンでまるで天空を駆け抜けるかのように鳴り、エレキ・ギターが追随しながら疾走感を加える。イマジネーションいっぱいにめくるめく鳴り響く管楽器も凄いし、アコギとフルートによる静謐なパートの奥ゆかしさも特筆。ロシアが生んだクラシック音楽の巨匠ストラヴィンスキーが蘇り、交響楽団とテクニカルなプログレ・バンドを従えた、といった感じのまばゆすぎるアンサンブルにただただ心躍ります。何という完成度。2016年のプログレ作品の中で間違いなくトップ3に君臨することでしょう。ずばり傑作です。
ヴァイオリン/ギターetc.のAndy Didorenkoを中心に結成、現ロシアを代表するプログレ・グループにして、全世界的に見て最もスリリングなヴァイオリン・プログレを聴かせる実力派グループ、3年ぶりとなる19年作6th。Vln&G/fl/dr/perの4人編成だった前作発表後に、パーカス奏者が脱退しベーシストと女性キーボーディストが加入。バンドとして安定した5人編成で制作されたのが本作です。1曲目からアクセル全開!舞踏音楽を思わせる気品に満ちたフレーズを切れ味鋭くスリリングに紡ぐ圧巻のヴァイオリンを中心に、パーカッシヴな打音も織り込んだダイナミックなリズム隊、テンション高くアンサンブルに絡みつつもあくまでしなやかな音色のフルートがスピーディに駆け抜ける緻密にして猛烈にテクニカルなアンサンブルには、プログレ・ファンなら血沸き肉躍ること必至。キーボードが大活躍する2曲目は新境地で、テーマを豪快に奏でるシンセとオルガンがカッコいい骨太なテクニカル・シンフォ。Andyはキーボードに負けじとヴァイオリンをギターに切り替えて音数多くキレのあるプレイで応じており、火花を散らすような応酬が見事です。さらに、クラシック畑のメンバーらしい静謐な空間の中でヴァイオリンやピアノが優雅に奏でられるクラシカル・チューンも流石で、疾走感あるプログレ曲との間にあまりに鮮やか対比を生み出しており素晴らしいです。トリオ編成だった頃に比べて、アンサンブルに確かな厚みと密度が生まれ、サウンドにズシリとした重みが加わった印象を受けます。3年待った甲斐のある貫禄の傑作!
【カケレコ国内盤(直輸入盤帯・解説付仕様)】デジパック仕様、定価2,990+税
レーベル管理上、デジパックに若干角つぶれがある場合がございます。ご了承ください。
今やロシアを代表するプログレ・グループとして人気を確立した彼らが、1stアルバム以前の92年に残していたテープ音源を元に完全新録した21年作!ヴァイオリンやフルートが格調高く舞い踊るクラシカルなナンバーの素晴らしさは近年の作風に通じますが、武骨なリズムが導くヴォーカル・ナンバーでは、70年代のブリティッシュ・ロックのようなソリッドかつ哀愁溢れるアンサンブルを聴かせていて驚き。そこに「Epitaph」のダークな叙情から「Discipline」のクセのあるリズムセンスまでを散りばめたクリムゾン譲りのエッセンスが効いていて、思わずニンマリしてしまいます。叙情的な曲での心ここにあらずといった趣の冷たく浮遊感あるメロディもいかにもロシア的で印象的。ブリティッシュ・ロック影響下の高品質なロシアン・ロック作品として素晴らしい出来栄えであると共に、怒涛のテクニカル・シンフォを聴かせてきた彼らの原点に触れることができる点でも興味深い一枚です。
ロシア出身、ヴァイオリン/ギターetc.のAndrey Didorenkoを中心に90年代初頭に結成され、現在はアメリカを拠点に活動するテクニカル・シンフォ・バンド、24年作!今作ではAndriiがギター/ベース/ヴァイオリン/パーカッション/キーボードを兼任するソロ・プロジェクト的形態となり、フルート奏者/ヴォーカリスト/ドラマーらをゲスト・ミュージシャンに迎えての制作となっています。最長でも3分台というコンパクトな全16の楽曲群で構成される本作ですが、注目すべきはその恐ろしいまでの攻撃性。テクニカルでエッジの効いた音ではありつつも、あくまでクラシカルな気品高さが先立っていた従来の彼らを払拭するかのように、リズム・セクションとギターを中心にこれでもかとヘヴィかつタイトに攻め立てるサウンドに驚かされること必至。デビュー時より内包していたKING CRIMSONの影響が、むき出しの狂暴性となって襲い掛かってきます。バンドを特徴づけてきたヴァイオリンも狂気を露わにしながらスリリングに弾きまくっていて圧巻。荒れ狂うようなヘヴィ・プログレ・チューンが数曲続くと、かつての彼らを思わせる優美なクラシカル・シンフォニック・ロックが悠然と立ち上がって来る構成も見事で、その振れ幅が素晴らしい対比を生み出しています。クラシカル・サイドではゲストの女性ヴォーカルによる麗しくも憂いを帯びた歌声が絶品。KING CRIMSONファン、特に『太陽と戦慄』が好きな方はきっとニンマリとしてしまうでしょう!
下記ページで全曲試聴可能です!
https://lostworldband.bandcamp.com/album/a-moment-of-peace
90年代初めから活動するロシアのシンフォ・グループ。高い評価を得た06年作2ndに続く09年作。ヌケが良く疾走感溢れるリズム・ギターとアグレッシヴなリズム隊が築くスケールの大きなキャンバスの上を、ヴァイオリンとギターが奔放に美しいメロディを描き、そこに流麗なピアノが鮮やかな色を付ける。聴いていて思わず笑みがこぼれる躍動感いっぱいのアンサンブル。まさに「鮮烈」の一言。ただ、ゴリ押しで畳みかけることは決してなく、どんなにアグレッシヴなパートでも、静謐とも言えるような格調高さを常に感じさせるのが特筆もの。前作同様に「静」と「動」の対比鮮やかで、「静」のパートでは、フルートが柔らかに舞い、優美なメロディを描く。ファンタスティックなシンフォを軸に、「太陽と戦慄」期クリムゾンのような硬質なヘヴィネスや、ディシプリン期クリムゾンのような浮遊感とサウンドのエッジをうまく織り込み、なおかつ全体的には優美さでまとめ上げるセンスは超一級。サウンド・プロダクションも抜群で、モダンなビビッドさとビンテージな温かみとのバランスが絶妙。これは傑作です!
90年代はじめのデビュー以降コンスタントに作品をリリースし続けているメキシコが誇るシンフォニック・ロック・バンド。前作から早くも1年で届けられた2015年作。特筆は、近年のニュー・トロルスのライヴへの参加や、管弦楽器隊によるプログレ・トリビュート・バンドGNU QUARTETでの活躍で知られるヴァイオリン奏者Roberto Izzoがコンスタントなメンバーとして参加していること。ゲストとして、他のGNU QUARTETの管弦楽器奏者も参加していて、瑞々しく艶やかなトーンのストリングスが躍動するクリアで明朗なサウンドが印象的。ソロとしても活躍している若き男性ヴォーカリストBobby VidalesによるカナダのRUSHを彷彿させるハイ・トーンの歌声もそんなサウンドに見事にマッチしています。ジェネシスのDNAが息づく多彩なキーボードによるヴィンテージな色合い、ザクザクとメタリックなリフや流麗な速弾きで硬質なダイナミズムを生むギターのアクセントも良いし、圧倒的に目の覚めるようなアンサンブル!今までの作品以上に「プログレ・ハード」と言えるキャッチーさと突き抜けるような明快さを軸に、管弦楽器による美麗さが加わっていて、そこに持ち前のテクニカルなエッジも効いていて、これはずばりシンフォニック・ロックのファンは必聴でしょう。ジャケットのデザインは、ジェネシスでお馴染みのポール・ホワイトヘッド!
【カケレコ国内盤(直輸入盤帯・解説付仕様)】デジパック仕様、定価2990+税
レーベル管理上の問題により、デジパックに若干角つぶれ・若干圧痕がある場合がございます。予めご了承ください。
現代ロシアを代表する3人組プログレ・バンドによる13年作4th。シャープで安定感のあるドラム、テクニカルに躍動するベースを土台に、キーボードがリズム隊とは異なる変拍子でミニマルかつエスニック調のフレーズをかぶせ、緊張感を生み出す。そこにどこまでも伸びやかに、そして鮮烈に奏でられるヴァイオリン!芯のある太いトーンのギターやフルートもからみ、「静」と「動」を対比させながら流れるように畳みかけます。目の覚めるような完璧なオープニング・ナンバー。ただただ心が躍ります。2曲目以降も、切れのあるヴァイオリンが疾走するクラシカル・シンフォから、ヘヴィーにうねるギターが炸裂する70年代中期クリムゾン的ヘヴィー・プログレ、フルートをフィーチャーした民族調テクニカル・アンサンブルまで、1曲の中でめくるめく展開しながら、ハイテンションで駆け抜けます。終始テクニカルで展開が多いながらも、決して大味になることなく、精緻で格調高く気品に満ちているのがこのバンドの凄いところ。その点で、ジェントル・ジャイアントをも凌駕していると言っても決して過言ではありません。傑作3rdをさらに上回る、素晴らしすぎる傑作!
ヴァイオリン/ギターetc.のAndy Didorenkoを中心に結成、現ロシアを代表するプログレ・グループにして、全世界的に見て最もスリリングなヴァイオリン・プログレを聴かせる実力派グループ、3年ぶりとなる19年作6th。Vln&G/fl/dr/perの4人編成だった前作発表後に、パーカス奏者が脱退しベーシストと女性キーボーディストが加入。バンドとして安定した5人編成で制作されたのが本作です。1曲目からアクセル全開!舞踏音楽を思わせる気品に満ちたフレーズを切れ味鋭くスリリングに紡ぐ圧巻のヴァイオリンを中心に、パーカッシヴな打音も織り込んだダイナミックなリズム隊、テンション高くアンサンブルに絡みつつもあくまでしなやかな音色のフルートがスピーディに駆け抜ける緻密にして猛烈にテクニカルなアンサンブルには、プログレ・ファンなら血沸き肉躍ること必至。キーボードが大活躍する2曲目は新境地で、テーマを豪快に奏でるシンセとオルガンがカッコいい骨太なテクニカル・シンフォ。Andyはキーボードに負けじとヴァイオリンをギターに切り替えて音数多くキレのあるプレイで応じており、火花を散らすような応酬が見事です。さらに、クラシック畑のメンバーらしい静謐な空間の中でヴァイオリンやピアノが優雅に奏でられるクラシカル・チューンも流石で、疾走感あるプログレ曲との間にあまりに鮮やか対比を生み出しており素晴らしいです。トリオ編成だった頃に比べて、アンサンブルに確かな厚みと密度が生まれ、サウンドにズシリとした重みが加わった印象を受けます。3年待った甲斐のある貫禄の傑作!
【カケレコ国内盤(直輸入盤帯・解説付仕様)】デジパック仕様、定価2,990+税
レーベル管理上、デジパックに若干角つぶれがある場合がございます。ご了承ください。
現代ロシアを代表するのみならず、ヴァイオリンをフィーチャーした新鋭プログレ・バンドとして屈指と言えるクオリティを持つトリオ、2016年作5thアルバム。オープニングから、舞踏音楽も取り込んだ躍動感いっぱいのリズム・セクションをバックに、ヴァイオリンが鮮やかなトーンでまるで天空を駆け抜けるかのように鳴り、エレキ・ギターが追随しながら疾走感を加える。イマジネーションいっぱいにめくるめく鳴り響く管楽器も凄いし、アコギとフルートによる静謐なパートの奥ゆかしさも特筆。ロシアが生んだクラシック音楽の巨匠ストラヴィンスキーが蘇り、交響楽団とテクニカルなプログレ・バンドを従えた、といった感じのまばゆすぎるアンサンブルにただただ心躍ります。何という完成度。2016年のプログレ作品の中で間違いなくトップ3に君臨することでしょう。ずばり傑作です。
82年にブダペストで生まれ、6歳から本格的なクラシックの教育を受けたBalazs Alparを中心に、多数の管弦楽器奏者を含む編成で結成されたハンガリーの大所帯グループ。04年作に続く2010年作2nd。ひとことで言って『鮮烈』なシンフォニック・ロック!とにかく「動」と「静」の対比が鮮やか。「動」のパートでは、シャープでダイナミックなリズム隊、早いパッセージのヴァイオリンが躍動し、「静」のパートでは、格調高くクラシカルなピアノ、リコーダーやフルートなど管楽器が舞い上がります。クラシック、民族音楽を中心に、ロックのダイナミズムを加えた、西洋音楽史を総括したような壮大な作品。エレクトリック・ギターやキーボードがないのに、これほどまでにロック的なダイナミズムを出せるんですね。傑作です。
06年にロシアはモスクワで結成された新鋭プログレ・グループ。EL&P、U.K.、イエス、ジェネシス、クリムゾン、ツェッペリンに影響を受けたKey奏者でコンポーザーのSergey Bolotovを中心にキーボード・トリオとして活動をスタートし、ヴァイオリン奏者やフルート奏者やギタリストをゲストに迎えて録音され、2014年にリリースされたデビュー作。まるでキース・エマーソンのような重厚かつテンションみなぎるピアノと艶やかに舞い上がるヴァイオリンとがダイナミックに躍動するオープニングから、デビュー作とは思えない鮮烈なプログレを聴かせます。シャープなドラム、ジャズ/フュージョンの確かな素養を感じるベースによるリズム隊も安定感抜群で特筆。瑞々しくリリカルなピアノに、フルートやヴァイオリンが静謐に響く映像喚起的なパートも素晴らしいし、レ・オルメ『フェローナ〜』ばりのキーボード・プログレもカッコ良いし、クラシカルなプログレとして、同郷の新鋭LOST WORLDや、ベテランで言えばハンガリーのAFTER CRYINGあたりと肩を並べる、と言っても過言ではないでしょう。これは素晴らしい作品。ヴァイオリンとフルートをフィーチャーしたシンフォニック・ロックのファンは必聴!
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