2020年9月28日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
【7月26日~8月1日の3枚】
イギリス南端に近いデヴォン州出身の新鋭プログレ・グループ、17年作に続く20年作4th。
温かみあるオルガンやジェントルな男性Vo.をフィーチャーした、CARAVAN彷彿のサウンドは本作でも健在。なおかつ今回はGONGや初期ソフツを思わせる怪しげなサイケ感、そしてモダンなスタイリッシュさもちょっぴり増した印象。
クリーントーンのギターやフォーキーなアコギ、メロトロン等の楽器が朗らかに英国田園風景を描き出す牧歌的なナンバーもあれば、シタールやスペーシーなムーグが鳴り響き、GONGばりのエキセントリックなメロディが炸裂するスリリングなナンバーも。
ノスタルジックな中にもピリリとスパイスの効いた作風は、ブリティッシュ・ロックやカンタベリー・ファンなら堪らないはず。
CARAVANやGONGや初期ソフツやケヴィン・エアーズのファンには是非オススメの名作です!
韓国BIG PINKのニューリリースも届いております。2枚をご紹介!
MANFRED MANNで活躍したギタリストTom McGuinnessと元BLUESBREAKERSのドラマーHughie Flint、後にGALLAGHER & LYLEとして活動するBenny GallagherとGraham Lyleらで結成されたフォーク・ロック・バンド、73年作3rdアルバム。
71年作2nd『Happy Birthday, Ruthy Baby』をもってソングライティングを担当していたGallagher & Lyleコンビが脱退。Coulson, Dean, McGuinness, Flint名義による全編ディランの未発表曲を演奏した72年作『Lo & Behold』を経て、リリースされたのが本作です。
Gallagher & Lyleの脱退後初のオリジナル曲によるアルバムとなりますが、曲のクオリティは全く落ちていません。むしろ土臭く「いなたい」雰囲気がグッと増し、英国的哀愁がこれでもかと溢れ出るフォーク・ロック・サウンドが特徴的。
とりわけBRINSLEY SCHWALTZを彷彿とさせる黄昏のパブ・ロック・テイストを帯びた曲が魅力的で、どの曲も英国臭に溢れた佳曲揃いです。
らしさ溢れる牧歌的なアートワークも含め、1stや2ndにも劣らぬ名品となっています♪
Paul Ankaのピアニスト&ソングライターとして活躍、Frank Sinatraの代表曲「My Way」のデモ音源でヴォーカルを吹き込んだという伝説も持つNY出身のSSW/ピアニスト、72年の2ndアルバム。
スキンヘッド&髭という見た目に違わぬ強烈なダミ声の持ち主ですが、一方で彼の作るメロディはどこまでも瑞々しくハートフル。
跳ねるピアノや粘っこくスワンピーなギターをバックにBobbyのソウルフルなシャウトが炸裂する「Mother Motor」、雄大でドラマチックなピアノの響きが素晴らしい「All The Things You Didn’t Do」。
さすが数々の一流アーティストに関わってきただけあって、どの曲もキャッチーなメロディメイクやリズミカルなピアノが光る佳曲揃いです。
ずばり、エルトン・ジョンやビリー・ジョエルにも負けないピアノ弾き語りSSW好盤!
【7月19日~25日の3枚】
演奏からマスタリングまで全てを一人で手掛けるマルチ・ミュージシャンBartosz Gromotkaによるソロ・プロジェクト。19年1stに続く20年作2nd。
沈み込むようなほの暗さとエモーショナルな激しさ、そして切なく幻想的な叙情性が同居した、メリハリの効いたアンサンブルは1stに引き続き見事。
メタリックなギターがザクザクとリフを刻んだかと思えば次の瞬間にはアコギの繊細なアルペジオが広がっていたり、艶のあるエレピやメロトロン風キーボードがアンサンブルをまろやかに包み込んでいたりと、攻撃性とリリシズムが一曲の中で調和したサウンドが堪らなくドラマチックです。
KING CRIMSONやPORCUPINE TREEの激しさとGENESISのファンタジックさを掛け合わせて、ポーランドらしい翳りで包み込んだみたいな印象と言えます。
マルチ奏者としての卓越した演奏技術は勿論、プログレ先人へのリスペクトを絶妙に織り込んだ作曲&アレンジの素晴らしさも堪能できる力作です。
続いてはフランスから届いた何とも濃厚なシンフォ逸品をチョイス☆
92年にデビューを果たした、フレンチ・シンフォ・グループの20年11thアルバム。
18世紀フランスで100人近くの人々が襲われたとされる謎の害獣事件「ジェヴォーダンの獣」をテーマにしたコンセプト作となっています。
何といっても最大の特徴がヴォーカル。フランス語の耽美でアンニュイな響きを生かし自己陶酔たっぷりに歌い上げる、ANGEのFrancis Decamps直系と言うべきヴォーカルが今作でも冴えわたっています。
そのヴォーカルを引き立てる演奏陣にも注目で、GENESISをはじめとする70年代プログレのエッセンスを取り込んだ、シンセ、メロトロン、ギターらが織りなすファンタジックで少しメランコリー漂う演奏が見事です。
これぞフレンチ・プログレと呼びたいシアトリカルで濃密なシンフォニック・サウンドが楽しめる逸品です!
最後は再入荷タイトルより、おすすめの一枚をご紹介しましょう~。
ジミ・ヘンドリックスのバンド・オブ・ジプシーズのベーシストBilly Coxが、ジミヘン・ライクの女性ギタリストChar Vinnedge、ドラムRobert Tarrantと結成したトリオ・バンド。メンフィスにある有名なFAMEスタジオでの録音で、英PYEからリリースされた72年作が本作。
ジャケはご存知ロジャー・ディーン・ジャケによるもので、サウンドとの調和という部分はともかくとして、躍動感を感じさせるかなりカッコいいデザインとなっています。
内容はと言うと、ジェファーソン・エアプレインあたりを彷彿させるサイケ・フィーリングある男女ヴォーカル、ソウル~ファンクの流れにあるシャープでいてしなやかなリズム隊。そしてサイケ&ブルース色にリヴァーヴやディレイをまぶしてコズミックに仕立てたジミヘン直系のギター、という痺れるファンキー・サイケ・ブルース・ロック。
キンクスのカヴァー「You Really Got Me」など特に必聴もので、ギターも食わんばかりに野太い音で唸るBilly Coxのベースがやはり出色!
【7月12~7月18日の3枚】
現ポーランドを代表するシンフォ・バンドMILLENNIUMのkey奏者によるソロ・プロジェクト、20年4th。
毎回、文学作品をテーマにしたアルバムをリリースしている彼らですが、本作の題材はアンデルセンによる「雪の女王」となっています。
特筆は、同一の演奏に対し女性ヴォーカルが歌うバージョンと、男性ヴォーカルが歌うバージョンを収めた2枚組である事。
DISC1は、艶やかかつ哀感を帯びた女性ヴォーカルがシリアスなドラマ性を引き立てていて、雪景色が浮かび上がるような荘厳さが広がります。一方、素朴な声質で丹念に歌う男性ヴォーカルのDISC2は、同じ演奏とは思えないほど暖かくハートフルな聴き心地をもたらしており、物語の主人公ゲルダとカイ、それぞれの視点を表現する大胆な試みは見事に成功していると言えるでしょう。
演奏はさすがの一言で、美麗なオーケストレーションをバックに、硬質なリズムとひんやりしたシンセ、静謐なタッチのピアノ、フロイド彷彿の浮遊感あるギターのリフレインらが折り重なり、原作のストーリーをイマジネーション豊かに紐解いていきます。プログラミングや逆回転など、物語の展開とシンクロするSEも効果的。
荘厳さの中に淡い叙情を秘めたサウンドが、静かな感動を呼び起こす名作です。
ピンク・フロイド憧憬のメランコリックなサウンドを聴かせるポーランド新鋭、20年作3rd。
これは素晴らしい!前作のややハードでモダンな作風と比較すると、本作は1st時の幻想的で浮遊感に満ちた雰囲気が戻ってきた印象。タイトル通り夢の中をたゆたうような静謐で空間的なサウンドを展開しつつ、ここぞではドラマチックなメロディによってダイナミックな盛り上がりを見せる。
内省性と壮大さを兼ね備えたサウンドはまさしくフロイド直系ながら、個性的なのは作品全体でフィーチャーされた端正で気品に満ちたピアノの存在。粛々と儚げな音色も良いし、T4「Dark」のようなジャジーで妖艶な表情も魅力的。
一部の楽曲ではヴァイオリンや美麗な女性コーラスもフィーチャーし、フロイドに優美な気品が加わったような極めて完成度の高いサウンドを構築しています。
1st、2nd、そして本作へと、着実に完成度を高めてきたことを実感させる傑作に仕上がっています!
再入荷タイトルからも一枚ご紹介。
LINDISFARNEの元メンバーらと結成したバンドJACK THE LADのベース/ヴォーカルPhil Murrayや、DANDO SHAFTで活動した古楽器/弦楽器奏者Martin Jenkinsらが参加する英エレクトリック・トラッド・グループ、74年作。
アタック感のある力強いアコギ、テクニカルな音運びのベースやスリリングに吹き鳴らすフルートらが織りなす、疾走感あるアグレッシヴなトラッド・フォークを持ち味とします。
ヴォーカルも特筆で、豊かな低音で歌う男性ヴォーカルとかなりハイトーンの女性ヴォーカルによるコンビネーションは絶品。特に女性ヴォーカルは微かにハスキーな声質が神秘性を高めていて素晴らしいです。
アコギの強いストロークとややヒステリックに歌う女性Voが緊張を醸し出すナンバーではCOMUSさえもチラつく狂騒が見え隠れしますが、かと思うと次の曲では賑々しいフィドルが駆ける軽快なトラッドが鳴らされ、緩急自在なスタイルが魅力的です。
これはTREESファンからCOMUSファンまでにおすすめできるトラッド・フォーク逸品!
【6月29~7月5日の3枚】
多数入荷したイギリスと北欧のプログレ新作から一押しの3タイトルをご紹介!
2015年に英国はレディングにて結成された新鋭プログレ・バンド、ライヴ・アルバムを2020年の3rdアルバム。
GENESIS、THE FLOWER KINGS、SPOCK’S BEARD、BIG BIG TRAINに影響を受けたと語るとおり、まさにそれらのバンドの特徴を併せ持ったような至上のシンフォニック・ロックを鳴らします。
ビシビシとタイトに変拍子を叩き出すリズム、メロディアスな音運びのギターとクラシックの素養を持つ清廉なピアノらが緻密に絡み合いながら高みを目指すアンサンブル。
そこによく通る溌溂とした男性ヴォーカルが、英国然とした瑞々しくリリカルなメロディを歌い上げます。ヴォーカルに寄り添う華やかに変化する美しいコーラスも特筆ものです。
キーボードが担うGENESIS彷彿の奥ゆかしいファンタジー、TFKに通じるヘヴィさも交えた熱くドラマチックな叙情、初期SPOCK’S BEARD的なスケール感を帯びたポップ・センスなどが凝縮されたサウンドは、前作からさらに躍動感一杯に突き抜けていて感動的です。
とことんキャッチ―でメロディアスなプログレとして、間違いなくMOON SAFARIにも肩を並べる素晴らしいバンド。
ずばりオススメです!
イギリスならこのデュオによる1stも要注目です!
EGGやNATIONAL HELTH、HATFIELD & THE NORTHに強い影響を受けた英国のkey奏者とドラマーによるデュオ、20年デビュー作。これはカンタベリー・ファンなら必聴と言える素晴らしさ!
1曲目から淡いキーボードと共に女性Vo.のスキャットが響くHATFIELD直系の幻想的な音世界が広がり、EGGのデイヴ・スチュワートを思わせるアグレッシヴなファズ・オルガンも躍動し、2曲目ではオルガンやシンセサイザー、ドラムにベースが激しくも色鮮やかに駆け抜けるNATIONAL HEALTH「Tenemos Roads」ばりのアンサンブルが繰り広げられる。温もりあるハモンドを中心とした、どこまでも70’sカンタベリー愛溢れる叙情的インスト・ジャズ・ロック・サウンドには胸ときめかせずにはいられません。
なおかつ決して70年代の再現に収まらず、暖かみを保ちつつスペーシーでアンビエンタルなシンセサイザーがダイナミックな広がりを創り出す壮大な楽曲も。ANEKDOTEN的メロトロンの洪水を堪能できるパートもあって、これは堪りません…。
SOFT MACHINEでおなじみのセオ・トラヴィスも1曲でゲスト参加。
カンタベリー好きなら要チェックですよ~。
ラストはノルウェーより、フロイドを受け継ぐ実力派による新作が到着したのでピックアップ!
ソロでも活躍するギタリストBjorn Riis擁するノルウェーの新鋭プログレ・バンド、4年ぶりの新作となった20年作5th。
従来のPINK FLOYD影響下の仄暗くメランコリックな叙情美はそのままに、本作ではエレクトロニクス要素を大幅に導入し、一層スタイリッシュに洗練されたサウンドを展開。
強靭かつ反復的なリズム隊のビートにスペーシーなシンセサイザーのシーケンスが合わさったパートなどはかなりモダンな仕上がりながら、優美で切ないメロディやギルモアを思わせるエモーショナルなギター・ソロ、しっとりと翳りを帯びたヴォーカル、そして壮大で起伏に富んだダイナミックな曲展開など、プログレ・ファンにもグッと来る充実の内容となっています。
フロイド・ファンはもちろん、PORCUPINE TREEやSteven Wilsonのソロが好きな方も是非!
6月の「今週の3枚」は次ページでお楽しみください☆
2019年12月以前の「今週の3枚」は下記ページにてチェックどうぞ!
【関連記事】
「これは聴いてもらいたい!」というカケレコメンドな作品を毎週3枚ご紹介。2019年7月~12月に取り上げた作品はこちらでチェックどうぞ♪
こ、これは素晴らしいですっ!EGGやNATIONAL HEALTH、HATFIELD & THE NORTHに強い影響を受けた英国のkey奏者とドラマーによるデュオ、20年デビュー作。1曲目から淡いキーボードと共に女性Vo.のスキャットが響くHATFIELD直系の幻想的な音世界が広がり、EGGのデイヴ・スチュワートを思わせるアグレッシヴなファズ・オルガンも躍動し、2曲目ではオルガンやシンセサイザー、ドラムにベースが激しくも色鮮やかに駆け抜けるNATIONAL HEALTH「Tenemos Roads」ばりのアンサンブルが繰り広げられる。温もりあるハモンドを中心とした、どこまでも70’sカンタベリー愛溢れる叙情的インスト・ジャズ・ロック・サウンドには胸ときめかせずにはいられません。なおかつ決して70年代の再現に収まらず、暖かみを保ちつつスペーシーでアンビエンタルなシンセサイザーがダイナミックな広がりを創り出す壮大な楽曲も。ANEKDOTEN的メロトロンの洪水を堪能できるパートもあって、これは堪りません…。カンタベリー好きは必聴の傑作!SOFT MACHINEでおなじみのセオ・トラヴィスやTANGENTのAndy Tillisonがゲスト参加。
LINDISFARNEのメンバーらと結成したバンドJACK THE LADのベース/ヴォーカルPhil Murrayや、DANDO SHAFTで活動した古楽器/弦楽器奏者Martin Jenkinsらが参加する英エレクトリック・トラッド・グループ、74年作。アタック感のあるアコギ、テクニカルな音運びのベースやスリリングに吹き鳴らすフルートらが織りなす、疾走感あるアグレッシヴなトラッド・フォークを持ち味とします。そこに乗る、豊かな低音で歌う男性ヴォーカルとかなりハイトーンの女性ヴォーカルによるコンビネーションも絶品。特に女性ヴォーカルは微かにハスキーな声質が神秘性を高めていて素晴らしいです。アコギの強いストロークとややヒステリックに歌う女性Voが緊張を煽るナンバーではCOMUSもチラつく狂気が見え隠れしますが、かと思うと次の曲では賑々しいフィドルが駆ける軽快なトラッドが鳴らされ、緩急自在なスタイルが魅力的です。TREESファンからCOMUSファンまでおすすめのトラッド・フォーク逸品!
73年作、3rd。ソングライティングを担当していたGallagher & Lyleコンビが抜けていますが、曲のクオリティは全く落ちていません。むしろ、土臭く「いなたい」雰囲気がグッと増し、英国的哀愁がこれでもかと溢れ出る逸品に仕上がっています。1曲目から素晴らしく、緩いスライド・ギターのイントロ、いなたいヴォーカル&哀愁のメロディには胸が熱くなります。COLIN HAREあたりにも通ずるキャッチーなフォーク・ポップ、BRINSLEY SCHWALTZを彷彿とさせる黄昏のパブ・ロックなど、どの曲も英国臭に溢れた佳曲揃い。旧アナログB面「Take It Down」は、哀愁のメロディに黄昏れのオルガンが炸裂する必殺の名曲。英国フォーク・ロック/パブ・ロック屈指の名作。
現ポーランドを代表するシンフォ・バンドMILLENNIUMのkey奏者によるソロ・プロジェクト、20年4th。本作のテーマはアンデルセンによる「雪の女王」。特筆は、同一の演奏に対し女性ヴォーカルが歌うバージョンと、男性ヴォーカルが歌うバージョンを収めた2枚組である事。DISC1は、艶やかかつ哀感を帯びた女性ヴォーカルがシリアスなドラマ性を引き立てていて、雪景色が浮かび上がるような荘厳さが広がります。一方、素朴な声質で丹念に歌う男性ヴォーカルのDISC2は、同じ演奏とは思えないほど暖かくハートフルな聴き心地をもたらします。物語の主人公ゲルダとカイ、それぞれの視点を表現する見事な演出です。演奏もさすがで、美麗なオーケストレーションをバックに、硬質なリズムとひんやりしたシンセ、静謐なタッチのピアノ、フロイド彷彿の浮遊感あるギターのリフレインらが折り重なり、原作のストーリーをイマジネーション豊かに紐解いていきます。物語の展開とシンクロするSEも効果的。荘厳さの中に淡い叙情を秘めたサウンドが、静かな感動を呼び起こす名作です。
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