【ユーロロック周遊日記】 イスラエルの国民的バンドKAVERETのデビュー作『Poogy Tales』

• ツイート

一日一枚ユーロロックの名盤をピックアップしてご紹介する「ユーロロック周遊日記」。

本日は、イスラエルを代表するロック・バンド、KAVERETの73年デビュー作『Poogy Tales』をピックアップいたしましょう。

まるでジョージ・ハリスンをリターン・トゥ・フォーエヴァーがサポートしたような、キンクスのレイ・デイヴィスのバックをソフト・マシーンがつとめたような、そんなポップでジャジーな愛すべき佳曲いっぱい。

何はともあれ、早速、一曲聴いてみましょう。

Ba Yom Ubalaila – Day and Night

アンニュイなヘブライ語のヴォーカルによるエキゾチズムとともに、リチャード・シンクレアが居た時のキャメルを彷彿させる叙情美あるアンサンブル。

間奏でのジャジーなトーンのギターとエレピによるフュージョン・タッチの流麗なフレーズ。う～ん、マジカル。

この一曲で、このバンドのただならぬ実力が分かりますね。

簡単にバンドのバイオグラフィを紹介いたしましょう。

KAVERETは、イスラエルのロック＆ポップスを形作り、躍進させたと高く評価されているイスラエル・ロックの重要バンドであり、国民的バンド。

結成は73年で、徴兵制度により属していたIDF（イスラエル国防軍）でメンバーが出会いました。Yoni Rechter、Gidi Gov、Danny Sandersonなど、後にソロとしても大活躍する名ミュージシャンが一堂に会しているのが特筆で、その位置づけはずばりイスラエルのビートルズ。特に、Yoni Rechterは、イスラエルが誇るコンポーザーとして世界に知られる名ミュージシャンとなります。

73年に『Poogy Tales』でデビュー。ちょうど第四次中東戦争後の国民がナーバスになっている時期で、陽気でユーモラスなKAVERETの歌を国民が心から受け入れた結果、イスラエル・ロック史上に残る大ヒットとなりました。

作詞・作曲の中心は、ヴォーカルのDanny Sanderson。歌詞は、シュールレアリズムに影響を受けたナンセンスな言葉遊びのようです。この辺のセンスが、カンタベリー一派に通じるサウンドの雰囲気をもたらしているでしょうね。そして、そんなユーモア溢れる歌世界を洗練で彩る、Yoni Rechterを中心とする名手達のアンサンブル。

他にもそんなバンドの魅力がつまったマジカルな佳曲がいっぱいありますので聴いていきましょう。本当に捨て曲なしと言える佳曲ぞろいなので、どの曲をセレクトするのか難しいのですが、う～ん、この辺からいきましょう。

ジョージ・ハリスンを彷彿させるスライド・ギターが入ったビートリッシュなナンバーをどうぞ！

Shrut Atzmi – Self Service

次は、ジャジーなエレピを中心とするコロコロとしたアンサンブルが、北欧のサムラやウィグワムを彷彿させる幻想的なナンバーを。

Lamrot Hakol – In Spite of All

最後に、ラジオ局の年間チャート1位に選ばれた曲を！

どこか日本の歌謡曲にも通じる哀愁。懐かしい感じ。良い曲ですね。

翌年の74年には、2nd『Poogy in A Pita』をリリースし、同様にヒット。同年、イスラエル史上最大といわれるコンサートを行い、国の人口が300万人の中、50万人が参加した、という記録が残っているようです。まさに国民的ヒーローですね。

バンドのKey奏者、Yoni Rechterはソロとしイスラエルが誇るミュージシャンに。

79年の名作ソロをピックアップいたしましょう。

YONI RECHTER『INTENTIONS』

初期リターン・トゥ・フォーエヴァーとキャラヴァンがブレンドしたようなマジカルな名曲。XTCのファンにもたまらないでしょう。

リード・ヴォーカルの一人、Gidi Govもソロとして成功します。

GIDI GOV『GIDI GOV』

流麗なオーケストラ、ロマンティックなメロディとヴォーカル。切々と胸に迫りますね。

イスラエル・ロックは、こちらの特集ページで、潮流図付きで解説しています。是非、チェック是非！