2018年3月25日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
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本記事は、netherland dwarf のコラム『rabbit on the run』第42回 ANIMA MUNDI / The Lamplighter (Cuba / 2013)に連動しています
70年代にGENESISやVAN DER GRAAF GENERATORといったブリティッシュ・プログレッシブ・ロック・グループたちに優れた作品を提供したPaul Whiteheadは、2000年以降イタリアのプログレッシブ・ロック・グループによる作品を多く手がけるようになりました。その代表的な例がLE ORMEであり、Paul Whiteheadは2001年作『Elementi』や2004年作『L’infinito』を担当。ちなみに、75年作『Smogmagica』のアートワークもPaul Whiteheadが手がけたものです。
ハイ・レベルなGENESISフォロワーが活動するイタリアから、GENESIS作品のアートワークで知られるPaul Whiteheadの手によるアルバムが次々とリリースされるのは当然のことなのかもしれません。イタリアン・シンフォニック・ロック・グループMOONGARDENのキーボーディストCristiano RoversiとギタリストDavid Cremoniによって結成されたサイド・プロジェクトSUBMARINE SILENCEによるデビュー・アルバムは、多くのGENESISフォロワー・アルバムの中でも突出したクオリティーを誇る作品のひとつでしょう。Paul Whiteheadによるアートワークに恥じない高水準な内容となっています。
イタリアン・シンフォニック・ロックの新世代アーティストAlex Carpaniは、2007年のデビュー・アルバム『Waterline』に続いてセカンド・アルバム『The Sanctuary』にもPaul Whiteheadを起用しました。本作にはGENESISのフォロワー・グループTHE WATCHのギタリストEttore Salatiや、MANGALA VALLISのドラマーGigi Cavalli Cocchiが参加しており、ヴィンテージなシンフォニック・ロックを展開しています。なお、ALEX CARPANI BANDは2010年に初来日公演を行いました。
イタリアン・シンフォニック・ロックの古参グループLE ORMEの中心人物として活躍してきたのがAldo Tagliapietraです。彼は2009年に突如グループを脱退し、世界中のプログレッシブ・ロック・ファンを驚かせました。LE ORME脱退後初のスタジオ・アルバムとなった2012年作『Nella Pietra E Nel Vento』には、Paul Whiteheadによる「The Stonecutter」と題されたアートワークが採用されています。なお、Aldo Tagliapietraは続く2013年作『L’Angelo Rinchiuso』にもPaul Whiteheadの手による「The Locked Angel」なるアートワークを採用しました。
BAROCK PROJECTは、2010年代を代表するイタリアン・シンフォニック・ロック・グループのひとつでしょう。鮮やかなコーラス・ワークによるオープニングが印象的な本作では、EMERSON, LAKE & PALMERのKeith Emersonに勝るとも劣らないキーボーディストLuca Zabbiniの技巧を中心としたシンフォニック・ロックが展開されています。また、タイトル楽曲には、イタリアン・ロックの象徴的なグループであるNEW TROLLSからVittorio De Scalziがゲスト参加しています。
70年代のフレンチ・プログレッシブ・ロックを代表するグループのひとつが、Cyrille Verdeauxを中心とするCLEARLIGHTです。Virgin Recordsからリリースされた75年の名盤『Clearlight Symphony』には、ギタリストSteve HillageやキーボーディストTim Blake、あるいはサックス奏者Didier MalherbeといったGONG関連ミュージシャンたちが参加していましたが、2003年作『Infinite Symphony』にもDidier Malherbeが参加しています。Paul Whiteheadによる、CLEARLIGHTの音楽的特徴を的確に捉えたアートワークが魅力的です。
アメリカのシンフォニック・ロック・グループAKACIAは、サード・アルバムである2006年作『This Fading Time』のアートワークにPaul Whiteheadを起用しました。彼らはYESやGENESIS、あるいはKING CRIMSONといった70年代のブリティッシュ・プログレッシブ・ロック・グループたちから影響を受けたレトロなサウンド・メイクを得意としており、特にYESからの影響が顕著。SPOCK’S BEARDを筆頭とするダイナミックなアメリカン・プログレッシブ・ロックとはまた違った、ヨーロピアンな質感を持ったシンフォニック・ロックとなっています。
81年にデビューを飾ったアメリカのHOLDING PATTERNは、Paul Whiteheadを起用した2007年作『Breaking The Silence』でプログレッシブ・ロック・シーンに復帰しました。彼らはマイルド且つメロディアスなシンフォニック・ロックを得意としており、GENESISやCAMELといったブリティッシュ・プログレッシブ・ロックの大御所たちとの比較も納得のサウンドを展開します。なお、本作がリリースされた同年、HOLDING PATTERNのギタリストTony SpadaはALEX CARPANI BANDの2007年作『Waterline』にもゲスト参加しました。
メキシコで孤軍奮闘を続け、ハイ・ペースでスタジオ・アルバムを量産するへヴィー・シンフォニック・ロック・グループCASTは、2015年作『Vida』にPaul Whiteheadを起用しました。本作では、イタリアン・ロックの代表格であるNEW TROLLSへの参加で知られるヴァイオリニストRoberto Izzo、及びRoberto Izzo が率いるGNU QUARTETがシンフォニック性の向上に貢献しています。なお、Paul Whitehead はGNU QUARTETによる2016年作『Alfonso Vidales En La Perspectiva De GNU QUARTET』のアートワークも担当しました。
バークリー音楽大学やロンドンの王立音楽大学で専門の音楽教育を受けたメキシコのプログレッシブ・ロック・アーティストXavier Asaliによる2017年作は、Paul Whiteheadによる瑞々しいアートワークが示す通り、GENESISからの影響を強く感じさせる高水準なシンフォニック・ロック作品となっています。Xavier Asaliはソング・ライティングだけでなくマルチ・プレイヤーとして演奏にも才能を発揮しており、ソロ・アーティストのハンディキャップは皆無。ドラマーやベーシスト、ギタリストのサポートも加え、叙情性豊かなサウンドを作り上げています。
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90年代はじめのデビュー以降コンスタントに作品をリリースし続けているメキシコが誇るシンフォニック・ロック・バンド。前作から早くも1年で届けられた2015年作。特筆は、近年のニュー・トロルスのライヴへの参加や、管弦楽器隊によるプログレ・トリビュート・バンドGNU QUARTETでの活躍で知られるヴァイオリン奏者Roberto Izzoがコンスタントなメンバーとして参加していること。ゲストとして、他のGNU QUARTETの管弦楽器奏者も参加していて、瑞々しく艶やかなトーンのストリングスが躍動するクリアで明朗なサウンドが印象的。ソロとしても活躍している若き男性ヴォーカリストBobby VidalesによるカナダのRUSHを彷彿させるハイ・トーンの歌声もそんなサウンドに見事にマッチしています。ジェネシスのDNAが息づく多彩なキーボードによるヴィンテージな色合い、ザクザクとメタリックなリフや流麗な速弾きで硬質なダイナミズムを生むギターのアクセントも良いし、圧倒的に目の覚めるようなアンサンブル!今までの作品以上に「プログレ・ハード」と言えるキャッチーさと突き抜けるような明快さを軸に、管弦楽器による美麗さが加わっていて、そこに持ち前のテクニカルなエッジも効いていて、これはずばりシンフォニック・ロックのファンは必聴でしょう。ジャケットのデザインは、ジェネシスでお馴染みのポール・ホワイトヘッド!
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クラシック音楽やキース・エマーソンに影響を受けたキーボード奏者&コンポーザーのLuca Zabbini率いるグループ。Luca自身がこれまでの最高傑作と評する2015年作4thアルバム。新たなドラマーとギタリストを迎え4人編成となっており、ゲストとして、なんとあのニュー・トロルスのVittorio De Scalziが3曲目に参加して録音されています。爽快なアカペラの多声コーラス・ワークではじまり、アコギとエレキによる弾むようなバッキング、透明感あるリリカルなピアノ、ファンタスティックなキーボードが豊かに広がるアンサンブルの何と素晴らしいこと!このオープニングを聴いて、ムーン・サファリを思い出すリスナーはきっと多いはず。前のめりに突っかかるようなリズムのキメとともに、ハモンド・オルガンがうねりを上げるところは、往年のプログレのDNAを継ぐ幻想性とともに、現代的なエッジが絶妙にバランスしててカッコ良いし、ガツンと歪んだギターとハモンドが突っ走るところなんかは70年代ハード・ロックも継いでてグッとくるし、管楽器風のトーンのキーボードが高らかに鳴り響いたかと思うとクラシックそのままの流麗なピアノが流れてメロディアスなパートにスイッチしたり、溢れんばかりのアイデアとそれを軽々とこなす演奏も特筆ものだし、すごいワクワク感いっぱい。EL&Pやジェスロ・タルへの愛情たっぷりなパートなんかもニンマリだし、往年のプログレ・ファンにも激レコメンド。前作も素晴らしい出来でしたが、さらに突き抜けた傑作!
紙ジャケット仕様、SHM-CD、ボーナス・ディスク付きの2枚組、定価3200+税
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帯有
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