2020年1月17日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
タグ:
スタッフ佐藤です。
世界の国々に散らばる魅力あるプログレ作品を求めてカケレコCD棚を巡っていく「世界のプログレ探求紀行!」
今回は東欧・中欧編ということで、東ヨーロッパ&中央ヨーロッパの諸国を巡りながらプログレをピックアップしてまいりますよ!
驚異の新鋭ジャズ・ロック・バンドPHLOXの母国としてカケレコ・ユーザーの皆様にもお馴染み?のバルト三国エストニアからスタート!人口の実に7割がどこかしらの合唱団に所属しているという合唱の国で、音楽との結びつきがとても強い国なんです。
当局の検閲によって4曲のみがEPリリースされるに留まった幻のアルバムが完全版として復活。エストニア最高のバンドたる実力を発揮した、YESにも通じるファンタジックで構築性に富んだサウンドが素晴らしい!
70年代エストニアの伝説的ハード・ロック・グループ!ツェッペリンも思わせるブルージーな演奏を土台に、イタリアン・ロック彷彿のダイナミックさ、説得力あるエストニア語のヴォーカルを乗せた、哀愁ハード・ロック・ファン必聴音源ですよ~!
RUJA、IN SPEというエストニアの2大バンドのメンバーが集った実力派グループですね!YESに通じる疾走感とちょっぴりカンタベリーっぽさも香るジャジーな味わいが見事に調和してます。これはクールですよ~。
今最も注目すべきジャズ・ロック・グループと言える彼らの、待ちに待った17年作!カンタベリー・ロックを受け継ぐしなやかなジャズ・ロックに東欧由来のダークな緊張感、そして北欧的な気品と透明感を融合させた唯一無二のサウンドを展開。
エストニアを代表するキーボード奏者と言えば、このSVEN GRUNBERG。この実に旧ソ連らしい美しくも冷ややかで無機的なシンセサイザーの音色がたまりませんね。80/88年作から選ばれたベストコンピ!
彼の鳴らすシンセサイザーの音色に惹かれた方は、こちらの名作ソロも是非。東欧らしい荘厳かつ粛々としたシンセ・サウンドが散りばめられた、エキゾチックなエッセンスが魅力的な一枚です。
エストニアに隣接するロシアを経由して南下、緑深き小国ベラルーシにやってまりました!
ベラルーシやウクライナで国民食として愛されるジャガイモで作るパンケーキ「ドラニキ」が絶品らしいです。
東欧版『狂気』はたまた『ザ・ウォール』!?80年代終盤のベラルーシにこんなハイクオリティなプログレ作品が存在したとは…。
イタリアやアルゼンチンのプログレに通じる詩情が印象的な、70年代の香りに包まれたシンフォニック・ロックを鳴らすのがこのグループ。旧ソ連的な荘厳さをほとんど感じさせないメロディアスな作風が特徴です。
狂気のヴァイオリン、暴走するサックス、偏執狂的ギター。東欧の小国ベラルーシに突如あらわれたチェンバー・ロック・グループ・・・恐るべし。
ベラルーシの南に広がるのは東ヨーロッパ有数の国土を誇るウクライナ。首都キエフは、ELPでお馴染みのムソルグスキー「キエフの大門」や、ルネッサンスの楽曲「Kiev」など、プログレのモチーフとしてたびたび使用されていますよね。世界一美女が多い国という点でも気になる国です。
英国を拠点に活動するグループですが、リーダーAntony Kaluginはウクライナ出身で、そのルーツを反映した民族音楽エッセンスもKARFAGENの聴き所。ファンタスティックなジャケの通りの圧巻の幻想絵巻だなぁ。まるで音で絵を描くような感じ、ロイネ・ストルトばり!
フラワー・キングスからエッジを取り去って優美に仕立て、そこにニューエイジ的な神秘性を加えた感じ?KARFAGENやSUNCHILDでコンスタントにリリースしながらこの完成度のソロを出してくるとは…。クリエイティヴィティが溢れんばかりなんだろうなぁ。
アネクドテンのファンならこれは必聴!ウクライナの恐るべき新鋭による09年デビュー作。ジャケットのイメージ通りと言える、狂おしいばかりに美しく荘厳なシンフォニック・ロックの名作。ただただ劇的です。
そのデビュー作「ELEHIA」より9年ぶりとなる18年作2ndがもう輪をかけて素晴らしい!!張り詰めた美しさを放つ管弦楽器が彩る、暴力性と底知れぬ美が共存するサウンドには思わず鳥肌が立ちそうになります。アネクドテンのファンだけでなくポーキュパイン・トゥリーのファンもこれは是非!
そのウクライナをさらに南に抜けると、ドラニキ・・・ではなくドラキュラのモデルとなったヴラド・ツェペシュの国ルーマニアに到着。
ジェスロ・タルばりにフルートが吹き荒れたり、イ・プーもびっくりの美メロバラードを聴かせたり、キャパビリティ・ブラウンばりのニッチ・ポップがあったり、このルーマニアのグループ、良い!
70年代ルーマニアにおいて最も重要なロック・バンドと云われる彼らの記念すべきデビュー作。ロック、フォーク、トラッド、サイケ、60sポップなどをゴッタ煮した、70年代初頭らしい熱気あるプログレを展開します。
そのPHOENIXに在籍経験を持つギタリストがこの方。泣きのギター・インスト好きは要注目!現在はドイツで活躍するギター名手による珠玉のソロ作☆
フロイドの中では実は『おせっかい』が好き?あの時期のサイケ&メロウなフロイド、いいですよね~。それならこのルーマニアから登場したバンドはオススメですよ☆
ルーマニアの国土を西へ抜けると、セルビアが広がります。旧ユーゴスラヴィアの中核をなした国で、ベオグラード要塞などが有名ですね。
こ、これは旧ユーゴ屈指のプログレ傑作ですよ。蘭トレースの端正さと伊レ・オルメのほの暗い叙情美やヘヴィネスを合わせつつ、奇天烈さや熱気、東欧ならではの哀感も混ぜ込んだアンサンブルはプログレ・ファンは歓喜すること間違いなし!
旧ユーゴのみならずユーロ・ロックという視野でも上位に来るだろう実力派プログレ・グループによる、2枚のスタジオ作&75年シングル・コンピ&key奏者のソロ3枚を収録した、ユーロ/辺境プログレ・ファン垂涎のBOXセットが入荷!
旧ユーゴはセルビア出身、ピンク・フロイド、ホークウィンド、カン、タンジェリン・ドリームあたりに影響を受けたようで、なるほどスペーシーで冥想的な音世界に尖ったビートと破天荒なヴォーカルを乗っけた個性派スペース・プログレ!
セルビアの北西に国境を接するクロアチアにも行ってみましょう♪
旧ユーゴはクロアチアにVertigoの名作にも比肩する、陰影に富んだオルガン・プログレがあったとは。トラフィックに通じるR&BフィーリングにVertigo直系のくすんだヘヴィネスを加えたサウンドは本格感ぷんぷん。
旧ユーゴはクロアチアで生まれたプログレ傑作!ウィッシュボーン・アッシュばりのドラマチックなツインリード、幻想的にたなびくオルガン&フルート、そして、炸裂するデヴィッド・バイロンばりのハイトーン・シャウト!
クロアチアを北上してハンガリーに入国!
リストやバルトークと言ったクラシック音楽の巨匠も輩出している古くからの音楽大国なだけあって、プログレに関しても東欧随一の規模を誇ります。
06年デビュー作でシンフォ・ファンの度肝を抜いたハンガリーの新鋭バンドによる待望の3rdが来ましたよ~!今作も信じられないような繊細で浮遊感ある美麗世界が眼前に広がってきてこりゃ素晴らしっ!
アクの強いハンガリー勢にあって、この一歩引いた感じの奥ゆかしさが何ともたまりませんね~。ジャケット通りのしっとりと淡い叙情がまた素晴らしいんだよなぁ~。アルバム未収のシングルも収録した英語バージョン!
変拍子ばりばりでハード&アグレッシヴに疾走したと思ったら、キース・エマーソンばりのクラシカルなピアノが突如挿入されたり、そんでまたダークに疾走したら、このバタバタ感もまた東欧プログレの魅力ですよね!
クラシックとヘヴィ・ロックとの融合という近作の音楽性をベースに、ワールド・ミュージックやポスト・ロックまでも飲み込んだ、相変わらずスケールの大きなサウンドメイクが圧巻だなぁ。現ハンガリー・プログレの雄により衝撃作!
ハンガリーの西に位置するのはクラシック音楽の本場とも言えるオーストリアです。
オーストリアが誇る名シンフォ・グループによる、旧約聖書をテーマにした5thアルバムは聴いたことあるかな?クラシカルなシンフォをベースに、ポップス、R&B、フュージョンなどを絶妙に溶かし込んだ個性派サウンドはさらに洗練を極めていて素晴らしい!個性派ぶりは相変わらずだなぁ。
【関連記事】
一日一枚ユーロロックの名盤をピックアップしてご紹介する「ユーロロック周遊日記」。本日は、オーストリアを代表するシンフォニック・ロック・バンドEELA CRAIGによる幻の1st『EELA CRAIG』をピックアップいたしましょう。
シンセをはじめとするキーボード群をメインにギター、ベース、パーカッションもこなすオーストリアの才人。マイク・オールドフィールドとジェネシスの中間に位置するような雄大なシンフォニック・サウンドを聴かせるのがこの82年作!
ハンガリーに次ぐ規模でロックが盛んな東欧の国が、オーストリアの北に位置するチェコ。
英国と呼応するロック/プログレの潮流が大きい一方で、アヴァンギャルド・シーンもアンダーグラウンドで発展してきた歴史を持ちます。
ブルース・ロック・ギタリストと言えば、クラプトン?ギルモア?ピーター・グリーン?カケレコからはチェコ・ロック界のレジェンドとも呼ばれるRadim Hladikをオススメ。ジミー・ペイジ影響下の縦横無尽に切り込んでくるギターワークが圧巻です!
変拍子を多用して嵐のごとくヘヴィに畳みかける展開は、伊ヘヴィ・シンフォのファンも痺れること間違いなし。東欧はチェコが誇るプログレ名作!
これはずばりハプスブルク帝国ロック!? 共産圏のロック、というより、ハプスブルク帝国の文化遺産が息づくブラチスラバという土壌で育まれたロック・ミュージックという方がしっくりくる豊穣な名作!
スロヴァキアにも行ってみましょう♪
「BRAND X、RETURN TO FOREVERへの東欧からの回答」by kobakunさん
う~んまさに言い得て妙!
東欧・中欧の2大プログレ大国と言えるのがハンガリーとポーランド。
70年代にはそれほど層の厚いプログレ・シーンではありませんでしたが、80年代以降はヨーロッパ全土でも屈指のプログレ量産国として君臨しています。
66年にデビューして以来、ポーランド屈指の人気を誇ったビート・バンドが彼ら。このOPナンバー、「Come Together」をサイケ・ハードに仕立てて、ポーランドならではの哀愁を注いだ感じ!?
ポーランドのみならず、ヨーロッパ屈指の女性ヴォーカル・プログレ・バンドと言えるだろうなぁ。1st収録「SANKTUARIUM」の名演に胸打たれます。後半のギターソロにも思わずニヤリ。
ロングトーンで泣きまくるギター、ふくよかに包み込むようなストリングス、ピアノ、映像的なアンビエント感あるキーボードワークが絶品のポーランド新鋭。東欧らしい重みを持ちながらもメロディーの良さでじんわりと聴かせるメロディック・ロックが素晴らしい~
オルガンが叙情的にたなびき、R.ライト彷彿のシンセがダークに広がり、そしてギルモア+S.ロザリーと言える泣きのギターが飛翔するサウンドは、「ドラマチック」という言葉をそのまま音にしたような素晴らしさ。ポーランド・シンフォの雄、貫禄の20年作!
「狂気」~「ウォール」期フロイドをポーランド特有の深い陰影とモダンな質感で蘇らせたような新鋭バンド。エフェクトを効かせ淡く幻想的なトーンを鳴らす2本のギターと、ひんやりと冷たい質感を持つシンセが浮遊感あるダークな色調の音世界を構築します。深遠かつ静謐な幻想性に溢れたサウンドは、フロイドに肉薄!
この民謡的な「揺らぎ」が感じられる本格派女性ヴォーカルはちょっとすごいかも!そのヴォーカルと渾然一体となってダークなシンフォニック・ロックを展開する演奏陣もレベル高し。これはかなりの個性派バンド!
ポーランドらしい陰影豊かで幻想的なサウンドがいいなぁ…うおっ!いきなりザクザクしたギターが切り込んできて、一気にテンションMAX!「静」と「動」の振れ幅が凄すぎです…。
【関連記事】
世界の国々巡りながら、各国の魅力あるプログレ作品をご紹介する「世界のプログレ探求紀行!」。今回は南欧の諸国を巡りながらプログレ盤をピックアップいたします☆
06年デビュー作『HOLDFENYKERT』でシンフォ・ファンの度肝を抜いた、ハンガリー出身/ルーマニアを拠点とする新鋭シンフォ・グループ、18年作3rd。いや今作も素晴らしいですよ〜!シャープなキレを持つリズム・セクションを土台として、メロトロンが幻想のカーテンをなびかせ、フルートが幽玄を奏で、品のある艷やかなシンセが疾走し、そして柔らかなアコースティックギターが心地よく響く、驚くほどに瑞々しく透明度の高いアンサンブル。そこに命を吹き込むのが、土着的な響きを持つハンガリー語を息を呑むほど神秘的に聴かせる女性ヴォーカル。それらがしなやかに組み合わされて形作られていくどこまでも繊細な音世界は、過去作よりもさらに美しく洗練されている印象です。ここぞという場面でヴァイオリン奏法を駆使して優美に泣くギターのプレイも胸を打ちます。パーカッションを交えエキゾチックに彩る民族エッセンスもシンフォニックなサウンドに自然に溶け込んでいて素晴らしい。終始、この世とは思えない淡く浮遊感ある幻想世界が眼前に広がる名品。文句なしにおすすめ!
カケレコ国内盤(帯・解説付仕様)、ペーパーケース仕様、黒い盤面の特殊CD-R、定価2990+税
レーベル管理上の問題によりペーパーケースにスレがある場合がございます。また自主制作CDにつき、ジャケットの色味が画像と異なる場合がございます。予めご了承ください。
ペーパーケース仕様、500枚限定(盤面が黒い特殊CD-Rです)
ペーパーケースにスレがございます。また自主制作という関係上、ジャケットの色味が画像と異なっている場合がございます。ご了承ください。
ペーパーケース仕様、500枚限定(盤面が黒い特殊CD-Rです)
盤質:傷あり
状態:良好
盤に研磨跡あり、若干角潰れあり・スレあり
ハンガリー出身、82年作の2nd。基本的には1stと同傾向のシンフォニック・ロックですが、アンサンブルは洗練され、スケール感が増した印象。辺境的な奥ゆかしさでは1stですが、ワールド・ワイドなシンフォニック・ロックとしての完成度では本作でしょう。陰鬱な美しさを湛えた叙情性は間違いなく日本人好み。名作です。
エストニアのYESとも称される、名実ともに同国を代表するプログレ/ロック・バンド。70年代後半にフルアルバムとしてリリースが予定されながらも、ソ連の検閲により4曲のみのEPとしてリリースされた作品『Pohi Louna Ida Laas…』の12曲完全版をCD1に収録。YESやNEKTARあたりを彷彿させるファンタジックな飛翔感、目まぐるしく場面転換するような複雑な曲構成とシアトリカルさコミカルさも織り込んだ表情豊かな音楽性で一気に聴かせる名作です。CD2には同時期のライヴやレア音源13曲を収録。エストニア最高のバンドの所以をたっぷりと堪能できる素晴らしい作品です!
【Disc 1】 Põhi, Lõuna, Ida, Lääs…
1-1. Põhi, Lõuna, Ida, Lääs… 6:06
1-2. Laul Teost 2:24
1-3. Omaette 2:40
1-4. Ajaloo Õppetund 2:33
1-5. Couplet In Estonian (Ha, Ha, Ha, Ha) 4:16
1-6. Läänemere Lained 3:15
1-7. Mis Saab Sellest Loomusevalust? 7:36
1-8. Üle Müüri 3:39
1-9. Keldrikakand 0:57
1-10. Elupõline Kaja 4:49
1-11. Ei Mullast… 2:43
1-12. Klaperjaht 1:15
【Disc 2】 Ruja Laval / Parallelmaailmad
2-1. Ahtumine 7:49
2-2. Keldrikakand 0:53
2-3. Ei Mullast… 2:48
2-4. Isamaa 1:07
2-5. Klaperjaht 0:48
2-6. Kimalane Ungaris (Andrus Vahti Soolo) 1:04
2-7. Oh Öelge, Doktor 2:37
2-8. Omaette 2:03
2-9. Avanemine 4:19
2-10. Meediaaskeldus 1:48
2-11. Stereo I 4:32
2-12. Ma Mustas Öös Näen… 2:48
2-13. Ootamisest Ja Olemisest 7:44
【カケレコ国内盤(直輸入盤帯・解説付仕様)】デジパック仕様、2枚組、Disc2には76/78年のライヴ音源8曲と同時期のスタジオ・レコーディング5曲を収録、デジタル・リマスター、定価3190+税
旧ソ連はエストニアを代表するグループ、RUJAとIN SPEのメンバーを中心に結成されたグループ。83年作に81年作のEPをカップリングした2in1CD。シンセとギターがアグレッシヴかつ荘厳に畳みかけるパートと、フュージョン・タッチの流麗なギターが軽やかに舞うメロディアスなパートとを鮮やかに対比した展開が見事。辺境っぽさは全く無く、テクニック、アレンジ、メロディ・センスともにかなりのハイ・クオリティ。YES+HATFIELD & THE NORTHと言うと乱暴ですが、疾走感と繊細さが絶妙に調和された奇跡の傑作。
1. Introduktsioon = Introduction 2:06
2. Sõnum = A Message 4:36
3. Kala Jälg Vees = Fish’s Trace In The Water 3:32
4. Laupäeval Koos Isaga = Together With Dad On Saturday 4:18
5. Elevant = Elephant 4:12
6. Valhalla 4:12
7. Elevantsi Hirmulaul = Heffalump’s Song Of Fear 3:34
8. Salajane Rõõm = Secret Joy 3:44
9. Põletaja = Con Fuoco 3:36
10. Tantsija = Dancer 5:50
11. Näotused = Unsightlinesses 4:48
12. Pikk Päevatee = Long Way To Go 4:44
13. Põlenud Maa = Burnt Land 3:42
【カケレコ国内盤(直輸入盤帯・解説付仕様)】デジパック仕様、デジタル・リマスター、定価2990+税
71年に結成された旧ユーゴはセルビア屈指のヘヴィ・プログレ・バンドによる75年デビュー作で、東欧屈指の一枚としてユーロ・ロック・ファンに愛される名作。特筆なのが旧B面すべてを使った19分近い大曲。手数多く前のめりで性急なドラム、クラシカルでいて東欧ならではの独特の哀感もあるエレピやオルガン、そして、キーボードと時に高速ユニゾンを奏で、時にハードエッジなリズム・ギターでロック的ダイナミズムを生み出すギター。オランダのトレースの端正さとイタリアのレ・オルメのほの暗い叙情美やヘヴィネスを合わせつつ、時にジェントル・ジャイアントばりの奇天烈さ、時に伊ヘヴィ・シンフォばりの熱気を注入しつつ、東欧ならではの独特の哀感もあるアンサンブルはプログレ・ファンは歓喜すること間違いなし。クラシック、ブルース〜ハード・ロック、ジャズ/フュージョンの見事な融合。ずばりユーロ・ロック屈指の名曲でしょう。旧A面の小曲も魅力で、ツェッペリンばりのハード・エッジなアンサンブルと線の細いハイ・トーンのヴォーカルからは辺境プログレならではの翳りがぷんぷん漂っています。それにしても、後にBIJELO DUGMEにも参加し、ソロでも活躍するLaza Ristovskiはプログレファン注目のKey奏者と言えるでしょう。東欧屈指の名作です。
2000年デビューのエストニア出身ジャズ・ロック・グループ、スタジオ・アルバムとしては2010年作『TALU』から7年ぶりとなった17年作。いやはや本作も凄いっ!圧巻の手数とともに疾走するテクニカルかつ硬質なリズム・セクションに乗り、サックスとヴァイオリンが繰り広げる、クリムゾンばりのダークなテンションとカンタベリー・ジャズ・ロックを受け継ぐ滑らかでメロディアスなフレーズが共存するサウンドの何と強烈なこと。1曲目から「これぞPHLOX!」と拳を握ること間違い無しです。それを支える、ジャズ・ロック然としたクールなエレピをメインとするキーボード、クリーントーン主体で情緒豊かに旋律を紡ぐギターも非常に美しいし、哀愁を誘うアコーディオンの調べも絶品。そして何より素晴らしいのが、カンタベリー・ロックを手本としつつも、メロディやアンサンブルの端々に垣間見れるヨーロピアンな深い陰影と透明感ある音色使い。北欧と東欧に接するバルト三国エストニアならではと言っていいサウンドが芳醇に広がります。アヴァンギャルドなパートも度々登場しますが、聴きづらさはなく持ち前の気品あるメロディアスなジャズ・ロックの中に違和感なく挿入されていて、そのセンスの良さにも唸らされます。今作も期待を裏切らない痺れる傑作!
試聴はこちら!
https://phloxmkdk.bandcamp.com/album/keri
東欧はベラルーシ出身、管弦楽器奏者を含む6人編成のチェンバー・ロック・グループ。2010年作5th。テンションみなぎる変拍子、狂気のヴァイオリン、暴走するサックス、FRIPP譲りの偏執狂的ギター、スリリングなピアノ、Dagmar Krauseのごとくな女性Vo。とにかく圧倒的なテンション!HENRY COWやクリムゾン『太陽と戦慄』のファンは間違いなく気に入るでしょう。アンサンブルの強度が半端ではありません。おすすめ!
エストニア・ロック・シーンの名ドラマー/ヴォーカリストGunnar Grapsが70年代に率いたギタートリオ編成のハード・ロック・バンド。70年代前半に録音された音源10曲を一枚のアルバムとして編集した18年リリース作品。変則的な内容ではあるものの、各曲にみなぎるエネルギーは並ではありません。イタリアのBIGLIETTO PER L’INFERNOやRACCOMANDATA RICEVUTA RITORNO等を想起させる、幻想的なアコースティック・パートとゴリッとヘヴィなハード・ロック・パートで構築された1曲目から素晴らしく、イタリアン・ロック・ファンならここで早くもハートを鷲掴みにされそう。エッジの立ったスピーディなギターリフに乗ってヴォーカルがユーモラスに歌う2曲目、饒舌なギターとヴォーカルの絡みが絶品なけだるいブルース・ロックの4曲目も素晴らしく、エストニアということ忘れるほどのメインストリームな本格感が漂います。ブルースを土台に細かなニュアンスにまでこだわった高い表現力を持つギターはもちろん、テクニックに裏打たれた安定感と共にグイグイと演奏を引っ張る性急なビート感も持ち合わせたGunnarのドラミングも見事です。しかし最大の魅力と言うなら、Gunnarの全編にわたりこれでもかと哀愁たっぷりに歌い上げるエストニア語ヴォーカル。ヨレヨレのようでいて不思議な説得力を帯びた歌声には何か天性のものを感じさせます。辺境哀愁ハード・ロックとして、これは多分とんでもない発掘モノ!
ポーランドのシンフォニック・ロックグループ、09年デビュー作。細かく刻むジャズ・ロック調のドラムスとメランコリックな中にも叙情美を感じさせるギターを中心としたアンサンブルに乗って、しなやかさと力強さを併せ持つ女性ヴォーカルが素晴らしい歌唱を聴かせるシンフォニック・ロック。東欧特有のうす暗さが漂うシリアスな楽曲から軽快なリズムと瑞々しいアコギが爽やかに駆け抜ける楽曲まで、演奏陣が多彩なアンサンブルを繰り広げる中、それらに見事に歌声を乗せていくヴォーカルは存在感抜群。民族音楽的歌唱に根ざした独特のゆらぎを随所に感じさせる実力派で、内面をさらけだすような生々しい歌唱には思わず息をのみます。テクニカルで緩急自在の演奏と吸い込まれるような魅力を持つ女性ヴォーカルの歌声が印象的な傑作です。
東欧のキース・エマーソンと言えるKey奏者、Marian Varga率いる旧チェコスロバキア(現スロヴァキアのブラチスラバ出身)を代表するグループ。オリジナルは2枚組で全4曲という大作の71年作2nd。旧A面は、ジャズ・ロック寄りの手数多いスリリングなドラムの上を、端正な音色のオルガンが伸びやかにリフを奏でたり、時に変調したトーンでソロを奏でたり、ギターも負けじと流麗な早弾きで切れ込む、というスタイルのキーボード・プログレ。EL&Pのファンは「おおっ」となること間違いなしな展開。なお、ギタリストは、後にFERMATAを結成するFrantisek Griglakで、ジミヘンやペイジからの影響が色濃いブルージーなフレーズで楽曲にロック的ダイナミズムと陰影をもたらしています。旧B面は、リムスキー=コルサコフの交響曲『シェヘラザード』をモチーフにした楽曲で、トレースばりにクラシカルなキーボードが躍動するナンバー。キレのあるバンド・アンサンブルも圧倒的なテンションです。旧C面は、後に連名作も出す盟友、ヴォーカルのPavol Hammelを迎えた陽光溢れるようなリリカルなヴォーカル・ナンバー。格調高くもファンタスティックなピアノが絶品です。旧D面は、どんどんと無調のアヴァンギャルドな音世界へと展開・・・。80分にわたり、Marian Vargaのキーボード奏者&コンポーザーとしての才が爆発したキーボード・プログレの傑作です。
現在のポーランド・シンフォ・シーンの中核を担うグループ、14作目となる2020年作。タイトルが示すとおり、現代社会における「七つの大罪」を描く7曲によって構成されたコンセプト・アルバムとなっています。重厚なテーマですが、本作でもPINK FLOYDと90s以降のMARILLIONから影響を受けた深淵かつエモーショナルなシンフォニック・ロックは健在。ビシッビシッと重くタイトに刻むリズムに乗って、オルガンが叙情的にたなびき、リック・ライト彷彿のシンセがダークに広がり、そしてギルモアの泣きとS.ロザリーのメロディアスな音運びを兼ね備えたギターが飛翔するサウンドは、「ドラマチック」という言葉をそのまま音にしたような素晴らしさ!英語で歌う、スタイリッシュな歌い回しの中に切ない哀愁を秘めた男性ヴォーカルも、劇的なサウンドを一層盛り立てます。エレクトロニクスやSEを効果的に用いた演出力の高さにも注目。今回も貫禄のMILLENIUMサウンドを繰り広げる力作です。
ウクライナ北東部の工業都市ハルキウ出身で、1981年生まれのAntony Kaluginによるソロ・プロジェクト。2016年作8thアルバム。透明感のあるピアノや華やかなトーンのシンセ(時にメロトロン風あり!)によるファンタスティックなキーボード・アンサンブル、まるでロイネ・ストルトばりの伸びやかでメロディアスなリード・ギター、そして、変拍子によるキメを効果的に配置したドラマティックな展開。ジャケットの雰囲気にビビっときたリスナーなら、このハートウォームでいて明瞭なシンフォニック・サウンドは間違いなく気に入るでしょう。しっとりと爪弾かれるアコギやむせび泣くヴァイオリンによるアコースティックなパートも良いし、壮大な混声合唱をフィーチャーしたクラシカルなパートも素晴らしいし、バヤン(アコーディオン風の民族楽器)によるエキゾチックな味付けも良いし、多彩なアレンジも出色。圧巻の幻想絵巻を聴かせる名作です。
72年1st『KORNI GRUPA』、イタリアのRicordiレーベルからリリースしたKORNELYAN名義での74年2nd『NOT AN ORDINARY LIFE』、アルバム未収録のシングルを中心とする75年の編集盤『MRTVO MORE』、キーボーディストのKornelije Kovacによる77年ソロ1st『IZMEU SVETLOSTI I TAME』、Kovacのソロ・プロジェクトK2の80年唯一作『WHY』、86年ソロ作『SAMPLED MOON』の6作品を収録。K2はKovacが、Colin Hodgkinson(b/ex.BACK DOOR)&Paul Robinson(dr/ex.TURNING POINT)という英国ジャズ・ロックの実力派リズム隊、そしてバグルス「ラジオスターの悲劇」で著名な女性シンガーLinda Jardimらと結成したグループで、ゲストにもRay RussellやBernie Marsdenらいぶし銀の名手を迎えた英国プログレ・ファンも必聴の一枚。ユーゴのみならず東欧プログレ最高峰とも言えるKORNI GRUPA/KORNELYANSの周辺作品をまとめて聴くことが出来るユーロ/辺境プログレ・ファンなら要チェックのボックスセットです。
旧ユーゴで、現クロアチアはザグレブ出身のオルガン・ロック・グループ、72年のデビュー作。トラフィックに通じるR&Bフィーリングに、VERTIGO勢に通じる陰影やハードさを加えたサウンドが持ち味。手数多くタイト&グルーヴィーなドラムと地を這うようにヘヴィなベースによる屈強なリズム隊、くすんだトーンのオルガン、ここぞでファズ・ギターを炸裂させるブルージー&ソリッドなギター、ちょっぴりアクの強い声のソウルフルなヴォーカル。各楽器ともテクニック抜群で、一体感もあり、本格感ぷんぷん。ズシリと重いアンサンブルを軸に、変拍子による細かなキメも織り交ぜた展開も見事。フルートがむせび泣くジャジーでアコースティックなパートなど、表現力も特筆です。これは、素晴らしいグループ!英ロックのファンは必聴と言える名作!
旧チェコ・スロヴァキアのグループ、80年作の1stアルバム。タイトで手数の多いドラムに、マイナー調のダークなギター、陰影を帯びた荘厳なキーボードをフィーチャーしたヘヴィ・シンフォ。変拍子を多用して嵐のごとくヘヴィに畳みかける展開には、イタリアン・プログレのファンもしびれること間違いなし。東欧らしいメランコリックな哀愁を帯びたヴォーカルも素晴らしいです。ゴリゴリと突き進むへヴィなパートと豊かな陰影を生かした繊細なパートとの鮮やかな対比がたまらない逸品です。
旧ユーゴはクロアチアのザグレブ出身のプログレ・グループ、PGP-RTBレーベルから75年にリリースされたデビュー作。幻想的にたなびくオルガンやフルート、ウィッシュボーン・アッシュばりのドラマティックなツイン・リード、そして、デヴィッド・バイロンを彷彿させるハイ・トーンのシャウト・ヴォーカル。叙情的で陰影に富んだサウンドは、ハーヴェストやヴァーティゴ・レーベルの叙情的な英プログレのファンにはたまらないでしょう。エッジの立ったトーンのエネルギッシュなリズム・ギターが冴えるハード・ロックもまた魅力的。旧ユーゴ屈指の名作です。
英国を拠点にKARFAGENやSUNCHILDなどのグループを率いて活動するウクライナ出身の才人キーボーディスト/コンポーザー。前20年作と同様に、すべて彼自身のみで演奏した21年ソロ作。約20分の曲が2つという大作主義も前作を踏襲しています。夢見るようなトーンのシンセサイザー・サウンドを主体とするファンタスティックな世界観のシンフォニック・ロックは相変わらず珠玉の出来栄え。彼が敬愛するTHE FLOWER KINGSからエッジを取り去って優美に仕立て、そこにニューエイジ的な神秘性を加えたようなサウンドが印象的です。前年のソロ作『MARSHMALLOW MOONDUST』や彼のプロジェクトSUNCHILDの作品が気に入っているならマストな一枚!
66年にデビューして以来、ポーランド屈指の人気を誇ったビート・バンド。3枚のビート名作を残した後にリード・ギタリストが脱退。トリオ編成となってからの2作目で、通算5作目となる71年作が本作。キャチーなビートを期待したデビューからのファンからはソッポを向かれたものの、現在ではポーランド・ロックの名作として高く評価されているようですが、なるほど納得。オープニングからファズ・ギターが低く立ちこめて、混沌とした空気が渦巻きます。どこかモノトーンのクリーンなカッティング&メランコリックなアルペジオによるリズム・ギターを軸に、ファズ・ギターのリードが時にスリリングに切り込み、時にサイケデリックな音像を描きます。ここぞでは、Vo&Gのメンバーにはヴァイオリンとピアノのクレジットもあって、ここぞでヴァイオリンが狂おしくむせいで痺れます。ビートルズの「Come Together」をサイケ・ハードに仕立てて、ポーランドならではの哀愁を注いだ感じ!?聴き所の多い好作品です。
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!