2020年オリンピックの年となりました。前回の東京オリンピックの時は幼稚園の2年保育年少組の時でした。年長組は開会式だったか閉会式だったか招待で国立競技場に行っており、一年違いでオリンピック生体験を逃しましたが、考えてみれば幼稚園児丸ごと招待していたわけですからほとんどの競技が異様な抽選倍率となり応募してもほとんどの人は観ることも叶わない今回とはだいぶ状況が違っているように思います。
前にも書きましたが今は開催直前で盛り上がっていますが、祭の後が心配です。1964年は高度経済成長期の真っ只中だったため大小様々な祭が後に続いた時代でしたし、日本全体が上昇機運に乗っていた時期でしたが今回は違います。ロンドンやリオのオリンピック後の停滞ムードを見ると経済を始め様々な面で影響が出るような気がします。今年の終わりはどんな気分で迎えることになるのでしょうかね。始まったばかりでどんよりするのはどうかと思いますが、昨年末から大学時代の友人の急逝の報を聞いたり、難聴起因の耳鳴りがより進んだようで耳鳴りのヴォリュームが一段と大きくなったり気分が塞ぐようなことが多く、今ひとつ盛り上がりません。
そんな中で小さなことではありますが、ここ1年ぐらい不調だったベースのプリアンプをついに修理に出したのが直ってきたのですが、これは修理出してよかったなと素直に思いました。新品で買ってから数年間のツヤがあって押しの強い中音域が見事に復活しました。
使っているプリアンプはSWRのマーカス・ミラー・シグニチャー・モデルでフットペダル・タイプではなくラックマウント・タイプのもので中音域のトーンコントロールが音域ごとに分割されており、それぞれが単純な弱から強へ変化させていくタイプのものではなく、パラメトリック・タイプのものになっておりプレイヤーが4段に分割された中音域のそれぞれの強調・減衰させたい音域を任意に選び、設定できるようになっています。
楽器をやオーディオ機器に興味のない方のは分かりにくいかもしれませんが、普通の楽器アンプ等のトーンコントロールの回転ノブ・タイプ左0から右に回すと効果が強くなり右に回し切ると10になるタイプではなく回転ノブの軸は1本なのですがパラメトリック・タイプは手前と奥でそれぞれ異なる機能を持っており、奥が音域設定、手前が0から10の強弱設定になっておりそれが4段に分割されているのでかなり細かい中音域設定が可能となります。
ベースって低音楽器じゃないの?と思う方もいるかと思いますが、ま、そこも重要ですがエレクトリック・ベースの音色の個性を決定づけるのは、大学時代の同級生であるANTHEMのベーシスト兼親方である柴田くんも奏法に関するインタビューで昔から一貫していっているように中音域。中音域にこそそのベーシストの個性が反映されると思います。
ジャック・ブルースのCREAM、WEST, BRUCE & LAING時代のドライヴ感満載のブリブリ・サウンドもLED ZEPPELINのジョン・ポール・ジョーンズのギラッとしたサウンドも中音域のコントロールあってこそと思います。ジャック・ブルースの話が出たところで脱線してWEST, BRUCE & LAINGの1stアルバム『Why Dontcha』の話を一発。MOUNTAINのレスリー・ウエストとコーキー・レイングとCREAMのジャック・ブルースが合体したこのトリオは結成当時CREAMの再来と言われていたわけです。
この1stアルバム、タイトル曲や「Doctor」といったナンバーに見られるCREAM由来の出たとこ勝負、一発録りタイプと「Pollution Woman」のような作り込んだタイプが同居する、所謂ひとつの「これでいいのだ!」的作品。で、その「Doctor」のベースがまぁ、凄い。ヴォーカル・パートGからA-C-Dに展開するパートで急に閃いちゃったのでしょう、必要以上に音数の多いフラッシーなベース・リフが突然出てきます。なんで突然かといえば、このとんでもないリフに入る直前、一瞬、躊躇するというかグルーヴが途切れる瞬間があるわけです。普通ならそこで止めてやり直しとなるのでしょうが、ブルースはそのまま突っ走る。で、ノリと指癖に任せたリフを叩きだすのです。よって、一番はそのリフ、なんとなくぎこちないのだけれども、2番ではしっかりその完成ヴァージョンを披露するわけです。トライアルとエラー修正を演奏中にやってしまうわけですから、やはりこの人偉大ですね。
「Doctor」はライヴ・アルバム『Live ‘n’ Kickin’』にも収録されていますがこちらではジャック・ブルース・クラスでも流石にこのリフの再現は難しいのか簡易ヴァージョンで演奏されます。というわけでスタジオ版の「Doctor」良いっすよ。でも普通、ここにこんなリフ入れられたらヴォーカル歌い難いだろうとほとんどの人が思うと思います。ま、ジャック・ブルースにとっては「これでいいのだ!」ってとこなのでしょうね。
プリアンプの話に戻ります。故障の原因はゲイン・ノブの接点不良に起因する動作不安定。ゲイン・ノブの交換と真空管の交換、経年変化によるはんだ付け箇所の総チェック、リアパネルのアウトプット・ジャックの交換をしてもらったのですが、修理出してよかったです。新品当時の音が久々に復活しました。修理は江戸川橋のエンパイア・カスタム・アンプリフィケーション(E-C-A)という工房にお願いしたのですが、僕は修理の完成度、エンジニアさんの仕事に対する取り組み方ともに非常に好感が持てました。ほとんどジャンクと化してしまった70年代製オリジナルORANGEのアンプヘッド、フェンダーのアンプとはトーンの異なるオーヴァー・ドライヴが面白くてアメリカの中古楽器店で買って重たい思いして機内持ち込みで運んできたMUISICMANの白い筐体のコンボ・アンプとかまたお願いしようと思っています。
で、E-C-Aで話しているとき先のパラメトリック・タイプのトーン・コントロールの話題となり、ギタリストの人はパラメトリックが総じて苦手という話を伺いました。そういえば、パラメトリック・タイプのイコライザーとかベースには多いけど、ギター用の機材にはあまり見ないような・・・。慣れないとチンプンカンプンなシステムですが慣れるとこんな便利なものはないと僕は思いますね。調整したい音域を決め打ちで指定できるのが魅力です。
さて、もう2月ですよ。2月5日は「プロ野球の日」だそうです。1936(昭和11年)のこの日、全日本職業野球連盟の結成によりプロ野球が誕生したのを記念して制定されたそうです。発足当初は全7チーム。大日本東京野球倶楽部(東京巨人軍、現・読売ジャイアンツ)、大阪野球倶楽部(大阪タイガース、現・阪神タイガース)、大日本野球連盟名古屋協会(名古屋軍、現・中日ドラゴンズ、東京野球協会(東京セネタース)、名古屋野球倶楽部(名古屋金鯱軍)、大阪阪急野球協会(阪急軍、現・オリックス・ブルーウェーブ)、大日本東京野球協会(大東京軍)で発足。現在のようにセントラル・リーグ、パシフィック・リーグに別れたのは1950年だそうです。
野球といえば、これでしょう。BABE RUTH。アメリカ大リーグの伝説のプレイヤー、ベーブ・ルースの名をそのまま冠したハード・ロックにもプログレッシヴ・ロックにもジャズ・ロックにも収めきれないなかなか微妙な立ち位置にあったイギリス、ハートフォードシャー、ハットフィールド出身のバンドでした。
ギタリスト、アラン・シャックロック、女性ヴォーカル、ジェニー・ハーンを中心としたバンドでパワフル・シャウターとしてはこの当時ではSTONE THE CROWESからソロに転じたマギー・ベル、VINEGER JOEのエルキー・ブルックスに負けない声量・迫力を誇った姐さんだったので、順当にやればハード・ロック寄りのヘヴィ・サウンドに落ち着いたのだろうけど、アラン・シャックロックがかなりの曲者で先に挙げたジャンルの要素を全て内包していたにも関わらず、その全てから一歩外れた立ち位置をキープし続けていました。
1stはハーヴェスト・レーベルから1972年に発表。その前にもシングルは出しているようなのですが、こちらは不発に終わっています。アートワークはロジャー・ディーンが担当。宇宙服のようなものを着た連中が野球をするイラストですがよく見るとサメのような生き物の背中に乗っているのでこれは海底野球なのでしょうね。
さてそのサウンドですがキーボードも入って入るのですが空間を広げるタイプではなく実直にエレピ等をプレイするタイプ故、プログレよりというより、ジャズ・ロックに近いヘヴィ・サウンド。フランク・ザッパの「King Kong」のカヴァーを収録しているせいもありその印象はより強くなります。一筋縄背はいかない側面は LPではB面に収録されていた「The Mexican」で炸裂。エキゾティックなムードを醸し出し、他のヘヴィ・ロック・バンドとの差別化を図る意図はそれなりにうまく機能し、この当時、リーガル・ゾノフォンからデビューしたCARMENにも近い不思議な色を持ったバンドとしてファンに認知されます。
こうしたエキゾティックな側面がより強く出たのがロジャー・ディーンときたら次はこれだろうというヒプノシスがアートワークを手がけた1973年発表の2ndアルバム『Amar Caballero』。ファンク・ロック色を強める一方、オーケストラを導入し、メキシコ、スペインといった日差しに強い国のエキゾティックな旋律をまぶした特異なサウンドを完成させます。SANTANA、AZTECA等のアメリカ系ヒスパニック系バンド・サウンドとは明らかに異なる、言わば日没のメキシカン・サウンドを提示。ファンク色が強まった側面もありますが、プログレ耳にはすんなりと入り込んでいくサウンドかと思います。
続く3rdアルバムはシャックロック在籍時の最終作。1st、2ndで培ったエキゾティック・サウンドはまだ残ってはいますが、このアルバムのメインの目的はジェニー・ハーンの個性を全面位打ち出すという点にあったように思います。シャックロックの屈折した楽曲制作スタイルはやや影を潜め、ハード&ヘヴィな側面が際立った作品となりました。またアルバム発表毎にキーボードが変わってきましたがこの3rdではWILD TURKEYのスティーヴ・ガールが参加。エレピ主体からシンセサイザー中心のキーボード・サウンドへ変化したことも作品の印象を大きく変える要因となっていました。
BABE RUTHは本国イギリスより北米での人気の方が高く、カナダではアルバム・セールスがかなり良かったそうで、4th『Stealin’ Home』ではギターがシャックロックからバーニー・マースデンに交代。よりストレートなハード&ヘヴィ・サウンドへとシフトして行きます。ジェニー・ハーンのヴォーカルは素晴らしいのですが、1曲めがBABE RUTHのヘヴィ・ロックでは最高の仕上がりを見せ、シャウター、ジェニー・ハーンの魅力が炸裂した3rdアルバムのオープニング曲「Dancer」の焼き直しのような曲でスタートしていたり、ひねりと対比が面白かったこれまでのBABE RUTHと比べると今ひとつベタな感じが個人的には苦手ですが、マースデンも随所でいい感じのソロを披露しており、ブリティッシュ・ハード系の作品として充実した内容を持っています。そしてジェニー・ハーンもこのアルバムを最後に脱退。後任にはエリー・ホープが参加しもう一枚アルバムを出しますが、これはあんまり聴き直したくない作品でしたね。
この5枚のオリジナル・アルバム以外の作品としてはベスト盤『Grand Slam』、『BBC Session 1973-1974』等が出ています。特にBBC音源の方はBABE RUTHが好きという方でお持ちでなければ、買っておいて損はない内容かと思います。
こうした70年代活動期の作品の他、2005年の再結成時に制作した『Que Pasa』という作品があります。シャックロックとジェニー・ハーン中心の再結成だったのでサウンド的には1st、2ndの流れを汲んだヘヴィ・ファンク+エキゾティック路線サウンドでオリジナル当時を超えてはいないのですがずっしりと重いハード・ファンク・サウンドは好感を持てる作りになっています。
野球関係ですと個人的にはこれが好きですね。NRBQの『At Yankee Stadium』です。マーキュリー・レーベル時代1978年の作品で、まるでスタジアムでやったライヴ・アルバムのような印象ですが、タイトルだけです。はるか昔になりますが日本公演でも演奏されたポップな名曲「Green Lights」でスタートする心踊る良質ポップ・ロック満載の傑作です。冒頭でも書いたようにどうも最近どんより気味だったのですが、久々に聴き直したら結構気分がスッキリしました。抗鬱効果もあるようですね、このアルバム。オープニングの「Green Lights
はボニー・レイットも1982年発表の『Green Light』でカヴァーしています。女性としては本格的なギター・プレイヤー、シンガーとしてオーセンティックなアメリカン・ロック・サウンドを追求してきた彼女がAOR路線へシフトしより大きな成功を収めるようになった1977年発表の『Sweet Forgiveness』を通過しその地位を確立、さらに大きな存在を目指した時期のロック度の高い作品群の1枚でした。ZZ TOPのカヴァー「I Thank You」でスタートする1979年の『The Glow』と並び好きな作品のひとつです。特に『Green Light』はバックがイアン・マクレガンのBUMP BANDなので転がるようなローリング感が大変気持ちの良い一枚となっています。ちなみにこの当時のBUMP BANDのベースは小原礼さんです。また、良いベース弾いてんだ、この人がね。ボニー・レイット、カケレコに限らず中古は安いですが、この時期の作品は聴く価値ありますよ。
さて、今月の1枚というか、今回は1曲。そのボニー・レイットで個人的に一番好きな曲がこれ。2ndアルバム『Give It Up』の2曲目「Nothing Seems To Matter」。曲の説明はあえてしない。聴いたことなくてもこのジャケット写真見てこの女性が可愛いなと思ったら、買って見てください。思った通りの曲が聴けますから。僕は中学生の時に新譜で買いました。それから半世紀近くずっとこれでフニャッとなっております。
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プログレ・ファンにも愛される英国フォーク・ロック・バンド、長年所属したA&Mからオイスターに移籍しリリースされた76年作。SAILORやSPARKSを手掛けたルパート・ホルムスをプロデューサーに迎えた本作は、前作で示したアメリカ志向のポップ・ロック・サウンドをさらに押し進め、AORフィーリングを取り入れたサウンドを展開します。ウエストコースト風の伸びやかなメロディとギターが美しい「I Only Want My Love To Grow In You」、スプリングスティーンが歌ってもハマりそうな力強い「Turn Me Round」、持ち前の甘いハーモニーが素敵な「Hard Hard Winter」と、3曲目までの流れが特に秀逸。
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