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舩曳将仁の「世界のジャケ写から」 第八十回:KAYAK『SEE SEE THE SUN』

ネコ好きでキャンプ好きという人っているのだろうか? というネコ好きからの素直な疑問。ネコ好きにとっての理想は「コタツで丸くなる」ことであって、アウトドアで「喜び庭駆けまわる」のは、ネコ好きの中でも少数派ではないかという勝手な想像。かくいう僕もネコ好きだからして、世の中で最高の場所は家のフトンと思っていて、わざわざデコボコの地面にテントを張って、窮屈な寝袋の中で寝たいと思わない。

ではアウトドアとか自然が嫌いかというと、これがまた複雑な性格で申し訳ないが、アウトドアな話を見たり読んだりは大好き。小学生の頃は、テレビ番組『野生の王国』をよく見ていたし、中学生の頃は、ほぼ毎月地域の図書館で『BE-PAL(ビーパル)』の最新号を借りて、高校生になるとほぼ毎月購入していた。海外からLLビーンのカタログ取り寄せたりも。キャンプに行く気は1ミリもないのに。読むのが楽しいんだろうね、コタツで丸くなって。ちなみに当時の『BE-PAL』は400円くらいでした。

その『BE-PAL』に、野田知佑さんが愛犬のガクとカヌーに乗って旅するという話が掲載されていた。「素敵だなあ」と愛読していて、でも、あれがネコだとカヌーに乗せるだけでパニックになるよなと思ったり。ところでカヌーとよく似たものにカヤックってあるじゃないですか。この二つには確かな違いがある。カヌーは乗るところがオープンになっていて、パドルの片方にだけ水かきがついているシングル・ブレード・パドルを使用。カヤックはカヌーの一種で、人が乗るところだけが開いていて水が入りにくい構造になっている。パドルの両方にブレードがついているダブル・ブレード・パドルを使用する。最近は、ボードの上に立つサップというのも人気だとか。僕はどれもやらないけど、ネコ好きなんで。

ということで(?)、今回はオランダのKAYAKです。日本でまとまって過去作が再発されない&人気も上がらない気がするので、ジャケットの話題を中心に、また各アルバムのおススメ曲と共に紹介したい。

KAYAKの前身は、HIGH TIDE FORMATIONという四人編成のバンド。1970年に「Fluffy / White Walls」というシングルを発表している。このHIGH TIDE FORMATIONのTon Scherpenzeel(kbd)とPim Koopman(ds)が中心となりKAYAKが結成される。1973年にシングル「Lyrics / Try To Write A Book」でデビュー。続いて「Mammoth / Ballet Of The Cripple」を発表。KAYAKはプログレ・バンドと紹介されることも多いが、それらのシングル曲を聴いても小難しさは皆無。ポップさも魅力となっている。

1973年、デビュー・アルバム『SEE SEE THE SUN』を発表。メンバーはTon Scherpenzeel(kbd)、Pim Koopman(ds)、Max Werner(vo)、Johan Slager(g)、Cees Van Leeuwen(b)の五人。YESを思わせるテクニカルな演奏の面白さもあるが、メロディはどれも親しみやすいものばかり。ジャケットも美しいし、とても幸先のいいスタート。ところがここからKAYAKのジャケット迷走史(?)が始まる。

1974年に2作目『KAYAK』を発表。前作を受け継ぐプログレとポップの融合された音楽性。それを象徴したのだろうか? ルネ・マグリットを思わせるシュールでコミカルなジャケット。KAYAKのロゴがデザインされた壁紙の部屋にシルクハットをかぶった紳士。そこに手のひらがドン!という。インパクトはあるけど、KAYAKの音楽性にあっているかなぁ? デザインは前作と同じHerman Willem Baasが担当。同作からはアルバム・トップを飾った「Alibi」を聴いていただきましょう。

Alibi

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1975年、3作目となる『ROYAL BED BOUNCER』を発表。ベースはBert Veldkampに交代している。時代は1970年中盤、KAYAKもコマーシャルな方向性を強めていくことに。それがコアなプログレ・ファン受けしないところなのかもしれないけど、ここからがメロディアス・ロック・バンドKAYAKの本領発揮と思っていて、スピーディーかつコミカルなタイトル曲、美しいピアノ曲「Life Of Gold」、爽やかさはじける「If This Is Your Welcome」など良曲ぞろい。ジャケットはインパラ?ガゼル?が荒野を疾走しているというもの。『野生の王国』好きだった僕には惹かれるものがあるけれど、これも狙いはコミカルさなのかも。実は同作、北米では別ジャケットでリリースされている。オランダ盤の内ジャケに使用されていた「ロイヤル・ベッド・バウンサー」の写真を中心に据えたデザインで、KAYAKの格調高さがある音楽性には、こっちの方がいいと思うんだけど。本作からは、ノリのいい「Chance For A Lifetime」をどうぞ。

Chance For A Lifetime

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1976年には4作目『THE LAST ENCORE』を発表。タイトル曲や「Relics From A Distant Age」のようなピアノを活かしたポップ曲、ミドルテンポ曲が増えた印象。ジャケットはイコンなのかな? 宗教的雰囲気があるけれど、よく見ると描かれている肖像画が何とも冴えない表情なのがなあ。本作からは「Still My Heart Cries For You」をどうぞ。

Still My Heart Cries For You

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KAYAKは年1枚のペースを守り、1977年に5作目『STARLIGHT DANCER』を発表する。なんとオリジナル・メンバーのPim Koopmanが脱退し、Charles Schoutenが加入。ベースもTheo De Jongに交代している。ソング・ライティングの片翼を担っていたPim Koopmanの脱退で、Ton Scherpenzeelが作曲の中心に。ここでTonが燃えたか、彼らの代表曲となるタイトル曲、美麗すぎるインスト曲「Irene」ほか、メロディアスな曲が詰まった名作に。ジャケットは矢が貫かれたハートの描かれた岩の上で女性が踊っているのを、神様よろしく後光を光らせたメンバーが見守っているというもの。メンバーの顔は、なくても良かったんじゃないかな? かえって安っぽい感じに見えてしまうのは僕だけでしょうか。本作からはもちろんタイトル曲をどうぞ。

Starlight Dancer

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1978年には6作目『PHANTOM OF THE NIGHT』を発表。再びメンバー・チェンジが起こっていて、ベースにはTonの弟のPeter Scherpenzeelが参加。Max Wernerがドラムにスイッチし、ヴォーカルにはEdward Reekersが加入。コーラスにはTonの妻のIrene LindersとKatherine Lapthornが加入。なんとなくTon Scherpenzeelのファミリー・バンドっぽくなる。音楽的には前作の路線をさらにドラマチックにしたようなタイトル曲、ファンにも人気の「Ruthless Queen」など、女性コーラスの起用やシンフォニックなアレンジが見事にはまった曲が多い、これまた名作。ジャケットに写る女性は、つまりファントム=幽霊なんでしょう。たぶん普通にしていたら美しい女性だと思うんだけど、結構怖い顔で写っていて、しかも草刈り鎌を振り上げているという。コワイって。本作からは「Starlight Dancer」風の「Daphne」を聴いてください。

Daphne

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1980年には7作目の『PERISCOPE LIFE』を発表。「Anne」というヒット・シングルも含む同作は、ずいぶんスッキリとした、アメリカナイズとは異なるけれど、あっさりとした印象のアルバム。相変わらずメロディの質は高いけど。ジャケットでは、ダイビング・スーツを着た人物が、砂漠で潜水艦の潜望鏡に出くわしている。2作目『KAYAK』に続くシュールかつコミカルな路線のジャケット。ヒプノシスっぽいセンスが面白いけど、どうしても格調高い方向にはいかないのね。同作からは、ひときわ格調高い「Sad To Say Farewell」を聴いてください。

Sad To Say Farewell

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1981年、パンク・ロックからニュー・ウェーヴへ、という音楽シーンの変化の中にKAYAKは8作目となる『Merlin』を発表する。なんとアナログA面に、『アーサー王伝説』に登場する魔術師を主人公とした組曲を収録という時代に抗う内容。ジャケットがシンプルそのものということもあってか、『MERLIN』は当時ヒットといかなかった。KAYAKは、1982年にスタジオ・ライヴ作『EYEWITNESS』を発表して解散してしまう。『MERLIN』はメロディアス・ハード・ファンにはたまらない名作。これを聴いてもらうとわかる!というタイトル曲「Merlin」をどうぞ。

Merlin

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さて、ここまでがKAYAKの第1章。改めて全作を聴いてみたけど、適度な甘さと叙情をたたえたメロディ、透明感と清潔感溢れるサウンド、KAYAKって本当に素敵なバンドだと再確認。ただしジャケットがなぁ。こうやって並べてみても、センスがバラバラでしょ? それが理由ではないだろうけど、これまで日本盤で再発CDが出ていないアルバムもあったりするのが残念すぎる。このコラムで少しでも興味を持ってもらえればと思います。

ここまでのKAYAKのアルバム・ジャケットでいえば、デビュー作『SEE SEE THE SUN』が最も彼らの音楽性にあっているかな。ジャケットを飾るのは、皆既日食、ダイヤモンド・リングと呼ばれる現象をとらえた写真。透明感、清潔感のあるKAYAKのサウンドと、天体の神秘を写したジャケット。いい組み合わせじゃないですか! このセンスで押し通してほしかったなあ。最後は『SEE SEE THE SUN』のタイトル曲を聴いてもらいましょう。ジャケットのセンスにピッタリの美しい曲です。

それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。

See See The Sun

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それではまた世界のジャケ写からお会いしましょう。







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