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「どうしてプログレを好きになってしまったんだろう@カケハシ」第ニ回 尼崎に<あしたのイエス>を見た、か? ~2017・4・21イエス・フィーチュアリング・ジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマン(苦笑)@あましんアルカイックホールのライヴ評みたいなもの 文・市川哲史

第ニ回 尼崎に<あしたのイエス>を見た、か? ~2017・4・21イエス・フィーチュアリング・ジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマン(苦笑)@あましんアルカイックホールのライヴ評みたいなもの 文・市川哲史

昨秋2016年11月21日。スティーヴ・ハウ+<半病人>アラン・ホワイト+ジェフ・ダウンズ+<クリス・スクワイア二代目>ビリー・シャーウッド+なんちゃらデイヴィソンによるイエスの、来日公演初日を観にBunkamuraオーチャードホールに集まった人々は、配布されたチラシに愕然とした。そりゃそうだ。イエスを観る直前に<イエス南北朝時代再び>アンダーソン・ラビン&ウェイクマン今春の来日を告げられたのだから、半笑いするしかあるまい。我々はまんまと一網打尽なのだ。

しかも予告された公演タイトルは、《An Evening of Yes Music and more》――もはやデジャヴか。

かつて80年代末期、同時にイエスが実質二つ存在する《南北朝イエス時代》があった。シングル“ロンリー・ハート”をメガヒットさせたパワーポップ・バンド<90125グループ>イエスと、プログレの代名詞的名盤『こわれもの』『危機』を連発した黄金時代とほぼ同じラインナップなのに<契約上イエスを名乗れない>アンダーソン・ブルフォード・ウェイクマン&ハウ、だ。

そういえばABWHのときもジョン・アンダーソンは、ツアー・タイトルをわざわざ《An Evening of Yes Music(イエス・ミュージックの夕べ)》と命名して、強烈な意趣返しを果たしたんだった。ARWとABWH、《and more(でもそれ以外も演るよ)》が追加されただけのツアー名とは、ほぼコピペのような話である。

ちなみに今回アンダーソンと組んだイエスOBは、トレヴァー・ラビンとリック・ウェイクマンの二人。言うまでもなくラビンは『ロンリー・ハート』でイエスを蘇生させ、ウェイクマンは<一人オーケストラ>鍵盤でイエスの黄金時代を構築した、共に立役者である。しかも前回の南北朝時代には南朝と北朝に分かれ敵対してたはずの二人が、8人イエスで同じステージに立った過去を積極的に除くと初めて本格的に組むわけで、朝令暮改も甚だしい。しかしジョン・アンダーソンがふりまく<無邪気>という名の邪気の前では、どんな不条理でも日常の景色に映るのだから、これでいいのだ。

哀しきプログレ者の性(さが)なのだろう、ARW初来日を無抵抗主義もとい明鏡止水の心境で待つ我々に、またまた耳を疑う情報が新年早々届く。イエスの《ロックの殿堂》入り決定――この報せ自体はいいのだが、正式受賞対象者は「現メンバーのハウ+ホワイト」と「生涯在籍したオリジナル・メンバーの故クリス・スクワイア」と「バンドに多大なる貢献をしたジョン・アンダーソン+ビル・ブルフォード+トニー・ケイ+リック・ウェイクマン+トレヴァー・ラビン」の計8名。

あら『結晶』じゃん。

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「YES / LIFT ME UP」(Denver, Union Tour 1991)


しかもブルックリンで開催される授賞式への出席を、本家イエスより早くARWの3人が表明した。ちなみにその日時は2017年4月7日……ARW来日公演の初日は4月17日だぞ。おいおい、受賞記念のステージかなんかで<永遠の妄想妖精おやじ>アンダーソンが両手をヒラヒラさせながら、「またまた合体して《大勢イエス》になるんだよーっっっっ♡」とか唐突にハイトーンで宣言しちゃって、10日後に日本のステージに現れたARWがいつの間にか、アンダーソン+ラビン+ウェイクマン+ハウ+ホワイト+シャーウッド+ダウンズ他編成の《たぶん8、9人ぐらいイエス》にすり替わってたりしないか?

なにせ「現時点で在籍中のメンバーのみがイエスを名乗ることができる」という鉄の掟をイエス在籍経験者全員に合意させた、豪腕<牢名主>スクワイアが鬼籍に入ってしまったいま、アンダーソンという名の<我田引水な暴走妄想列車>は誰も止められまい。

そんな被害者意識に苛まれたのは私だけではないようで、米『ローリングストーン』誌も電子版で「近日中に『オニオン2.0』がリリースされるかも」とおちょくっていた。

8人イエス唯一の作品『結晶(ユニオン)』を、のちにウェイクマンが「内容が情けなさすぎて聴く度に涙が出る」から『オニオン』と自嘲して呼んでいた逸話が元ネタなのは、言うまでもない。

そして4月17日、ARWはARWのまま来日した。ただしバンド名は、《イエス・フィーチュアリング・ジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマン》に改名されており、この世に<二つのイエス>が名実ともに存在することが明白になった。この程度の惨劇で済んだと捉えるべきなのだろうが、心の片隅で物足りなさを大いに感じている私が怖い。ちっ。


さて肝心の《ARWイエス》のライヴなのだけど、私は4月21日@尼崎アルカイックホールの大阪(失笑)公演を観戦した。イエスを名乗れるようになった途端、例の《An Evening of Yes Music and more》のライヴタイトルが消滅していて可笑しい。もうわざわざ謳う必要ないのはわかるが、はしゃぎすぎだぞアンダーソン。

とはいえ披露された13曲全てがイエス・クラシックスで新曲一切無しのノー<アンドモア>状態だったのだから、ある意味正しい措置ではあったわけだ。

来日公演の十八番“ぞうさん”と“どんぐりころころ”はともかく、全13曲中ラビンが在籍した90125イエス時代の楽曲が5曲占めるのは当然として、あの8人組『玉葱』収録の“リフト・ミー・アップ”とABWHの“ザ・ミーティング”が意表を突いた。まあそもそも前者はラビンがスクワイアと90125イエス用に書いた楽曲が発端だし、後者は2010年に実現したアンダーソン/ウェイクマンのコラボでも演奏してたほど、アンダーソンお気に入りのナンバーだから、必然ではある。

なお<皆大好きイエス・クラシックス>計6曲のうち、“悟りの境地”以外の“パーペチュアル・チェンジ”“アイヴ・シーン・オール・グッド・ピープル”“同志”“燃える朝焼け”“ラウンドアバウト”は、《本家イエス》も昨年11月の来日公演で披露していたのを想い出す。<同じ穴のイエス>で微笑ましいじゃないか。

とにかくひたすらポジティヴで陽気な<イエス・ミュージックの夜>だった。

三度イエスと名乗れる悦びを全っ然隠しきれないアンダーソンは、もはや<ドリーミーな平参平>と化して終始御機嫌で舞い唄い続ける。Tシャツ+ジーンズ+スニーカー姿でもマントを纏う雑な美意識が素敵なウェイクマンは、愉しそうに妖精翁を見守る。そして懐古主義を忌み嫌い、毎度毎度プログレ・イエスの楽曲をツアーで演るのが嫌でイエスと一線を画してたはずのラビンも、還暦を越え老いに寛容になったようで、達者で快活なギターで妖精翁にとっての回春剤的役割を十二分に果たしていた。

そんな明るく疾走するイエス・ミュージックの洪水に気づいたことがある。

1983年『ロンリー・ハート』の商業的成功でイエスが見事に蘇生したのは、歴史的事実だ。そしてオーケストラ・ヒットなど音響的に斬新な方法論が「新時代のプログレ」を勝手に予感させてくれた“ロンリー・ハート”の創造も含め、トレヴァー・ラビンの手柄として長く語られてきた。ところが私は正直、ラビンをそれほど評価してなかった。だってあの革新的なサウンド・プロダクションは、誰がどう考えてもプロデュースしたトレヴァー・ホーンの功績だもの。ラビンに対する過大評価に、私は辟易してたのかもしれない。

ところがこの夜のライヴを眺めてるうちに、なんだかラビンを素直に評価したくなってきた。あの時代ならではのパワー&ポップなギター・ロック的骨格も、実は90125イエスに独自の大衆性を持たらしてたわけで、その立役者は紛れもなく<娯楽映画のサントラ職人>ラビンだ。今回のARWイエスが妙に心地好かったのは、どの楽曲も仰々しいのにスマートだったからだが、この胃に優しい適度な軽量感はやはりラビンがいればこそだと納得してしまったのであった。

いままでずーっと邪険にしてきて、すまんラビン。

ただしアンコールの“ラウンドアバウト”だけは、イントロのアレンジが突飛すぎではないか。ウェイクマンの鍵盤はゴスっぽいしラビンのギターは乾いた情緒性を醸し出すクリアトーンで……<ピンク・フロイドのラウンドアバウト>だよ。ぎょえ。

四半世紀(!)前に遡る先の<90125イエスABWH>南北朝イエス期に較べれば、今回の<二つのイエス>の方がギラギラしてない分、なんだか微笑ましい。本家イエスとARWイエスが同じイエス・ミュージックを各々の解釈で再現してるのだが、両者の違いが極めて紙一重だから面白い。

ボール紙であろうがパラフィン紙であろうが、紙一重は紙一重。
そして我々にとって<同じ穴のイエス>の共存は、実はとても愉しいのである。

本編ラストの“ロンリー・ハート”は、ARWイエスの<無邪気の祭典>に相応しいシメだった。「あれ、実は皆こんなに“ロンリー・ハート”大好きだったの?」と言いたくなるほどの盛り上がりの中、ウェイクマンとラビンが各々楽器持参で客席を練り歩くパフォーマンスは、まさに今回のARWイエスの代名詞<天井知らずの高揚感>そのものだったと言える。

もう嬉しすぎて忘我の境地に達したアンダーソンの暴走により、“ロンリー・ハート”はいつしかなぜかエリック・クラプトンの“ワンダフル・トゥナイト”的な楽曲に移行。さすがに「このままじゃシメに戻れないぞ」と焦り必死でいろいろ弾くラビンをヨソに、あげく“ツイスト・アンド・シャウト”を唐突に唄い出す妖精翁の能天気さは、誰に撲殺されても反論できないほど常軌を逸していた。それでもなんとかアンサンブルを強制終了させたラビンは、やはり立派だ。すまんラビン、再び。

しかし私の眼の前をショルキー(←死語)担いで通過するマント姿の巨漢、リック・ウェイクマンを目撃した誰もが思ったに違いない。

「あんたウェイクマンデラックスじゃん」と。

試聴 Click!

「ARW / Owner Of A Lonely Heart – Roundabout」(Orpheum Theater, LA, 22/11/2016)




第一回「ジョン・ウェットンはなぜ<いいひと>だったのか?」はコチラ!

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  • YES / KEYS TO ASCENSION VOL.1(映像)

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  • YES / YES ALBUM

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    • ODNBM002OEG

      Blu-Ray Disc、40TH ANNIVERSARY SPECIAL EDITION、3000枚限定、ロジャーディーンによるイラスト・カード付仕様、スリップケース付き、再生方式不明、リージョンフリー

      盤質:傷あり

      状態:良好

      スリップケースに圧痕あり

  • YES / RELAYER

    パトリック・モラーツが参加した唯一のオリジナル・アルバム、74年作、「こわれもの」「危機」と並ぶ代表作!

    その構築的に練り上げられた楽曲と凄まじい演奏技術により、今なお多くのフォロワーを生み出しているイギリスのグループの74年作7th。「こわれもの」「危機」で大きな成功を収めた彼らですが、前作「海洋地形学の物語」でキーボードのRick Wakemanが脱退、後任にはRefugeeの技巧派Patrick Morazが加入しています。その内容はPatrick Morazの参加によってラテン・ジャズ、そして即興色が加味され、超絶なインタープレイの応酬で畳み掛けるハイテンションな名盤であり、「サウンド・チェイサー」ではインドネシアのケチャも取り入れるなど、深化した彼らの音楽性が伺えます。もちろん彼ららしい構築的なアンサンブルも健在であり、大曲「錯乱の扉」の一糸乱れぬ変拍子の嵐など、バンドのポテンシャルの高さが伺えます。大きな成功を経て円熟期に入った彼らを象徴する1枚です。

  • YES / TORMATO

    コンパクトな楽曲の中にYESらしさが発揮された78年作9th

  • YES / LIVE IN PHILADELPHIA 1979

    79年フィラデルフィア公演

    収録曲は、1.Siberian Khatru、2.Circus Of Heaven、3.Ancient、4.Starship Trooper、5.I’ve Seen All Good People、6.Roundabout

  • YES / CLASSIC YES

    81年リリース、クリス・スクワイア選曲によるベスト、全9曲

  • YES / UNION

    ABWHとスクワイアら本家YESが合体した新生8人組YESによる91年作

    「こわれもの」「危機」を生んだイエス黄金ラインナップからなるABWHと、かつてイエスに在籍した主要メンバー(クリス・スクワイア、アラン・ホワイト、トニー・ケイ、トレヴァー・ラビン)が合体。8人組新生イエスがここに誕生した91年作。

  • YES / YES YEARS(CD+VHS)

    46曲入り。VHSにはインタビュー、スタジオ・セッション、ライヴ映像を収録。

  • YES / TALK

    94年作

  • YES / KEYS TO ASCENSION (CD)

    96年復活ライヴを収録!

  • YES / OPEN YOUR EYES

    メンバーにビリー・シャーウッドを迎え制作された97年作

  • YES / HOUSE OF YES: LIVE FROM HOUSE OF BLUES (映像)

    99年作『LADDER』リリースに伴うツアーの映像を収録

    • COBY91051

      DVD、帯・解説元からあったかどうか不明、NTSC方式、リージョン2、日本語字幕あり、定価2940

      盤質:無傷/小傷

      状態:良好

      帯-

      ジャケ側面部に色褪せあり

  • YES / LADDER

    99年作

  • YES / LIVE AT THE BOSTON GARDENS 1974

    『リレイヤー』リリースのわずか6日後の74年12月11日に行われたボストン・ガーデン公演を収めたライヴ音源

    『リレイヤー』リリースのわずか6日後の74年12月11日に行われたボストン・ガーデン公演を収めたライヴ音源。「Sound Chaser」「To Be Over」「Close To The Edge」「Gates Of Delirium」「And You And I」「Roundabout」と疾走感いっぱいに突き進む好音源。

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