「こちら、カケレコ放送局！外伝、芹沢聡一郎のミッドナイト・南部ロック・バー」

• ツイート

「皆さん、どうもこんばんは。芹沢聡一郎です。“キュッキュッ（グラスを磨く音）。”今夜は、私の経営するカケレコ・ヴィレッジの外れにある、芹沢場末ロック・バーへようこそ。」

芹沢さん「本日は…、“キュッキュッ（再び、グラスを磨く音）。”この秋深まる季節に、アメリカン・スワンプ・ロックなんかいかがでしょうか…。え？英国もの聴いてるけど、本場アメリカものはまだいまいち聴きこんでいない…？うーん、もったいない！それでは、是非この機会に、グラスを傾けながらご視聴頂ければと思います…。」

————————–

芹沢さん「それでは、まずは南部ロック再評価の一端を担った、THE BANDのこのアルバムから…。」

収録作品 THE BAND / MUSIC FROM BIG PINK

芹沢さん「言わずと知れた、彼らの68年のデビュー作ですね。R&B、ブルース、ゴスペル、カントリーといったアメリカ南部ロックを消化した芳醇なサウンドは絶品の一言。音と音の「間」のなんと雄弁なことか！ちなみにアルバム・タイトルにあるBIG PINKとは、メンバーのRICK DANGOがウッドストック郊外に借りた農家のこと。この農家の地下室で放たれた、まさに完璧なグルーヴ、メロディ・ラインの美しさも特筆ものです。Eric Clapton、George Harrisonなど、本作により音楽性が変わるほどの衝撃を受けたミュージシャンは無数にいます。」

————————–

芹沢さん「そしてこちらは、昨日仕入れたばかりの芳醇な一枚をご紹介しましょう！前述のTHE BANDの前身、THE HAWKSのバンマスRonnie Hawkinsが発表した、サザン・ロック不朽の名作、70年デビュー作がこちらです。」

収録作品 Ronnie Hawkins / Ronnie Hawkins

芹沢さん「南部ロックの名スタジオ、マッスルショールズ・スタジオで録音された本作は、THE HAWKSを引き連れてフォーク・ロックの革命を起こしたBOB DYLANの名曲を味わい深くカヴァー。オルガンとハーモニカ、音数の少ないアコギの音色に、さりげないストリングスが入る、落ち着いた男の哀愁に満ちた作風です。プロデューサーには、Jerry Johnson、Tom Dowdを迎え、ギターにDuane Allmanが参加と文句なしの布陣ですね。サザン・ロックの名作として約束された充実の一枚と言えるでしょう。」

————————–

芹沢さん「こちらも名盤の、続く2ndアルバム。プロデューサーは、Tom Dowd。今回は彼一人ですね。」

RONNIE HAWKINS / HAWK

芹沢さん「ギターには再び、Duane Allmanが参加。ロカビリー調ロックンロールのノリの良いビートを基調に、Memphis Hornsの軽快なホーン・プレイ、Duane Allmanの泣きのフレージング、Jim Dickinsonのピアノが小刻みに腰を揺らしてくる、土臭くひょうきんな名作となっています。Paul Simon、Tim Hardinの曲も見事に、彼の懐の中でうまい具合に醗酵。いい音の匂いが滲み出てます…。“キュッキュッ（またまた、グラスを磨く音）。”」

————————–

「フッフーン…。」

芹沢さん「ギックッ！？そ、その声は…、八重樫！？」

「フッフーン、フッフーン、フッフッフーンッ！！」

八重樫治「何々〜？芹沢〜、今夜は優雅にアメリカン・スワンプで芳醇なムードでキメようとしてるッフーン？
そんなら、僕チンにも今日入荷したばかりの芳醇ルーツ・ミュージックを紹介させるッフーーーーーン！！！！」

芹沢さん「あ、八重樫！そ、それはっ！い、今かけるんじゃなーーーいっ！ム、ムードがっ…（汗）！」

八重樫治「ドゥッフーーーーーンッ（嬉）！」

収録作品 IT CRAWLED INTO MY HAND HONEST / FUGS

八重樫治「ホッフーン（嬉）！ZAPPAと並ぶ米アヴァン・ロックの源流！NYビート詩人×サイケデリック・フォーク迷バンドのFUGSだッフーーーン！兄弟バンド、HOLY MODAL ROUNDERSとも共通するいかがわしいビート族の髭面フォーク野郎どもの雄姿を拝むッフーンッ！」

芹沢さん「うっ…！そ、そんなお馬鹿ジャケを載せるんじゃなーい（汗）！し、しかも八重樫！私のバーのゴミ箱に、おまえの家の一般家庭ゴミを勝手に不法投棄するなっ！う、く、臭いっ…！」

収録作品 GOLDEN FILTH / FUGS

八重樫治「くちゃくちゃ（何故かポケットから、フライドチキンを取り出して食べ始める八重樫さん…）ゲップップーーンッ！そんなこと言ったって、これが彼らのライヴ盤のジャケット・アートなんだからしょうがないッフーンッ！この曲聴いてたら、コーラ飲みたくなったッゲップップーーンッ！あ、芹沢、ラム・コークひとつ！お願イーーン！」

————————–

芹沢さん「う、わ、私の芳醇なロック・バーが…。八重樫の一般家庭ゴミとゲップの匂いが充満してるじゃないかっ（涙）！」

八重樫治「まあまあ、芹沢くん！僕チンたち、仲良しこよしだから気にすることないッフーン！ほらほら、FUGSもフライドチキン・バンザーイ！って歌ってるみたいだフーン！」

収録作品 FIRST ALBUM WITH SIZZLING ADDITIONAL TRACKS FROM THE EARLY FUGS / FUGS

芹沢さん「歌ってなーーいっ！八重樫！ちゃんと掃除していけよ（怒）！」