2016年6月3日 | カテゴリー:スタッフ佐藤の、コレ好きなんですよ。
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こんにちは、カケレコ・スタッフ佐藤です。
「スタッフ佐藤の、コレ好きなんですよ。」は、一般的にはあまり注目を集めることのない作品ながら「実は良い作品なんだけどなぁ、もっと聴かれてほしいなぁ。」とスタッフ佐藤が日頃から感じている、愛して止まない作品たちを取り上げてご紹介していこうというコーナー。
今回取り上げるのは、ソフト・マシーンの『ヴォリューム2』です。
ソフト・マシーンと言ったら、やはり独自のジャズ・ロックを確立した『3』以降の作品に話題が集中するものだと思います。これぞジャズ・ロックと言うべき硬派で知的なサウンドを特徴とした3rd~5th、カール・ジェンキンスらニュークリアスのメンバーが加入しフュージョン的な流麗さが加わった6th、7th、そしてアラン・ホールズワースやジョン・エサリッジといった技巧派ギタリストを起用し熱気あるパワフルなフュージョン路線を押し進めた『バンドルズ』や『ソフツ』など、変遷を重ねながらも各時期でクオリティの高い名盤を送り出してきたのはご存のとおりです。
一方で、ロックの多様化・細分化が加速していった60年代末に登場した数々の革新的な作品の中でも、特にリスペクトされるのが68年発表の1st。たしかにアヴァンギャルドで実験的な要素を多分に含みながらも、聴き心地はあくまでポップ、というメンバー3人の類まれなるセンスによって創りあげられたクリエイティビティみなぎるサウンドは、今の耳で聴いても十分な衝撃を与えてくれます。
さて、そのあいだにあって、どうにも存在感の薄さが否めないのが69年に発表された2nd『ヴォリューム2』です。他のアルバムが紙ジャケ化を含め幾度かリイシューされているのに対し、この2ndは直輸入盤を除けば国内盤CDは一度もリリースされていないというなかなかの冷遇ぶり。1stとの2in1CDが多く出回っているので、そちらをお持ちの方も多いかもしれません。
まず目に付くのが、このあまりに不気味に過ぎるジャケット。機械仕掛けの体ににこやかな女性の顔が描かれているもので、そのアンバランスさがなんとも言えない気味悪さを醸し出しています。なぜこのジャケットを採用したのかはわかりませんが、前衛作家ウィリアム・バロウズからバンド名を含めて多大な影響を受けていた彼らですので、このジャケットもあるいはそういった思想に基づくものだったのかもしれません。良くも悪くもインパクト絶大なのは確か。
サウンド面での前作からの変化としては、一気にジャズ色が強まり演奏に緊張感が生まれた点が挙げられるでしょう。前作でユニークなポップセンスを発揮していたケヴィン・エアーズが製作前に脱退、彼特有のどこかとぼけた味わい深さが失われてしまったのは確かだと思います。ただエアーズにかわり加入した名手ヒュー・ホッパーがもたらしたものもまた大きく、彼に由来する硬質なジャズの要素にメンバーが触発されたことで、インストゥルメンタルにおける各人のポテンシャルがより引き出されているのは、この鬼気迫るまでの演奏を聴けばわかる通りです。
暗闇の中でギラリと光るナイフの刃を思わせるスリリングで切れ味鋭いサウンドが何より印象的で、このいい意味で安定感を欠いたどこか危なっかしさを孕む音像こそが、本作ならではの魅力となっているように感じます。
前作に比べると革新性では譲りますし派手さもないため注目度が低いのは致し方ないところですが、本格的なジャズの導入が本作によって為されたことを考えると、この『ヴォリューム2』があってこそ『3』の高みへと至ることができたと言っていいと思えるのです。
前作ではほぼオルガン専任だったラトリッジによる力強いグランドピアノのプレイが印象的なオープニングから急転直下、レスリー・オルガンが炸裂する狂乱のサイケデリック・ジャズへと突入する流れが実に見事。ゲスト参加のブライアン・ホッパーによるサックス、熱気みなぎるブローがより演奏のテンションを高めているのも印象的です。
突如現れるリリカルな歌もの小曲。のちのマッチング・モールやソロを思わせる美しいメロディで何ともワイアットらしい・・・と思いきや、実はホッパー作なんですよね。キース・ティペット・グループの1stでも表題曲として採用されたナンバーです。
荒ぶる熱気と抑制の効いたクールネスが併存するようなソフト・マシーンらしいサウンドが聴けるラストナンバー。粗削りながら、『3』にも繋がっていく音を提示した重要曲ではないでしょうか。
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CARAVANと同じWILD FLOWERSを母体にRobert Wyattらによって結成されたグループであり、サイケデリック・ロックからその音楽性を変化させカンタベリー・ジャズ・ロックの代表的存在へと飛躍していったバンドによる70年3rd。Elton Deanに加えて、Nick Evans、Lyn Dobson、Rad Spail、Jimmy Hastingsという管弦奏者を充実させた8人体勢で録音された本作は、20分に迫る大曲4曲で聴かせる意欲作であり、初期のサイケデリック・ロックの音楽性を下地にしながらも、構築されたジャズ・ロック・アンサンブルと適度なアヴァンギャルド志向が融合した傑作です。
Blu-spec CD、2枚組、06年デジタル・リマスター、定価3333+税
盤質:傷あり
状態:並
帯有
帯はケースにテープで貼り付けられています、その他は状態良好です
CARAVANと同じWILD FLOWERSを母体にRobert Wyattらによって結成されたグループであり、サイケデリック・ロックからその音楽性を変化させカンタベリー・ジャズ・ロックの代表的存在へと飛躍していったバンドによる71年4th。前作にも参加していたElton Deanが正式にメンバーとしてバンドに加入した本作は、前作よりもアヴァンギャルド志向と即興色を打ち出した作品であり、フリー・ジャズの音楽性の色濃いものとなりました。ジャズ色を急激に進化させたバンドと音楽性が合わなくなったRobert Wyattは本作を最後に脱退、MATCHING MOLEを結成することになります。
紙ジャケット仕様、デジタル・リマスター、解説にファミリー・ツリー付き、定価1,800+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
かすかにタバコのにおいあり
オリジナル・メンバーのKevin Ayers以来のギタリスト、Allan Holdsworthが加入し、『6』『7』と推し進めてきたフュージョン色をより強めた作品。75年作の8thアルバム。Karl JenkinsとMike Ratledgeによる叙情性と浮遊感のあるキーボード・ワーク、そしてその上をテクニカルに疾駆するHolldsworthの流麗なギター。John MarshallのドラムとRoy Babbingtonのベースによるロック的ダイナミズムに溢れたソリッドなリズム隊も特筆もの。圧巻のテクニカル・ジャズ・フュージョン・ロック!Holldsworthの唯一の参加作となった傑作。
デジパック仕様、2枚組、リマスター、DISC2には75年10月11日 のライヴ音源収録!
レーベル管理上、デジパック側面部に折れ線がある場合がございます。ご了承ください。
英国カンタベリー・ジャズ・ロックを代表するグループ。18年作『HIDDEN DETAILS』リリース後の18〜19年に行われたワールド・ツアーより、19年2月に米LAのライヴ・ハウス<BAKED POTATO>にて行われた公演を収録。「Hidden Ditails」や「Life On Bridges」といった新譜からの楽曲はもちろん、「Kings and Queens」や「Hazard Profile」といったライヴでおなじみの名曲も披露。スピーディーかつスリリングに切り込むジョン・エサリッジのギター、自由自在に飛翔するセオ・トラヴィスのサックスやフルート、激しく動き回りつつもドッシリとアンサンブルを支えるロイ・バビントン&ジョン・マーシャルのリズム隊。結成50年を迎えてなお、更に激しさと重厚さを増しつつある彼らの圧巻のアンサンブルを堪能できるライヴ名品です。
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