2021年4月6日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
90年代以降のプログレ・バンドではザ・フラワー・キングスと双璧と言っても過言ではないバンドへと成長した、プログレ辺境の地メキシコの雄、CASTを大特集!
94年にデビュー作を発表してから2017年の新譜『POWER AND OUTCOME』までに何と20枚のアルバムをリリースし、今や南米屈指と言えるシンフォニック・ロック・バンドに成長した、メキシコを代表するバンドCASTを特集いたします。94年のデビューから2015年までの21年間でスタジオ・アルバムだけでなんと18枚のアルバム(そのうち3枚が2枚組)をリリースしていますが、その活動期間は、メンバーや音楽性の違いから、「第一期:自主制作中心のネオ・プログレ期」、「第二期:モダン・シンフォ確立期」、「第三期:現代プログレ・シーン屈指のバンドへの覚醒」の3つの期間に大きく分けることができます。まずは、バンドの中心人物Alfonso Vidalesの生い立ちとともに、結成からデビューまでを見てまいりましょう。
バンドのリーダーでありブレインが、結成からただ一人不動のメンバーであるKey奏者&コンポーザーのAlfonso Vidales。メキシコの著名なピアニストの両親の元で1956年に生まれ、5歳からピアノを習いはじめたことに加え、ギター、ヴァイオリン、トランペットなどの英才教育を受けて育ちました。学生時代には、チャイコフスキーやショパンなどのクラシック音楽とともに、ジェネシスやEL&Pやジェスロ・タルなど英米で盛り上がっていたプログレッシヴ・ロックに魅せられます。公式サイトによれば、演奏者&コンポーザーとして影響を受けたアーティストとして挙げているのはリック・ウェイクマン、キース・エマーソン、イアン・アンダーソン。さらに音楽だけに留まらず、大学では法律や経営学を学んだようで、メキシコのプログレ・イベントBAJA PROGを企画するなど、音楽プロモーターとしての活動も行うメキシコ・プログレ・シーンの要と言える才人です。
AlfonsoがCASTを結成したのは78年。22歳の時で、大学時代か仕事をはじめた時期になります。79年に自主制作でシングル『Complot』をリリースしたものの80年代を通してアルバムをリリースしなかったのは、きっと他の仕事を持っていたのでしょう。メンバーチェンジしながら地道にバンド活動を続けていき、結成から15年が経過した93年、いよいよバンドに本腰を入れたのか、自前のスタジオ「Castudio」を開設します。アルバムの制作に着手し、94年、自主制作ながら『Landing in a Serious Mind』でデビューを果たしました。
デビュー作制作時のメンバーは、
Alfonso Vidales(Key)
Dino Carlo Brassea(ヴォーカル)
Francisco Hernandez(ギター)
Rodolfo Gonzalez(ベース)
Jose Antonio Bringas(ドラム)
の5人(00年の9th『LEGACY』までこの5人体制が続きます。)
やはり聴きどころは、Alfonso Vidalesの華麗なキーボード・ワーク。ヴェールに包まれたようなトーン、清涼感あるトーン、キラキラと輝くトーンなど、多彩な音色を幾重にも折り重ね、幻想的な音世界を描いていきます。シャープに刻むキレのあるドラムとよく動くベースによるリズム隊、角の取れたトーンと繊細なタッチながらも前のめりに突っかかるような性急さのあるエレキ・ギターによるダイナミズムも特筆。ハイ・トーンのエモーショナル&シアトリカルなヴォーカル、キャッチーなメロディも魅力的です。自主制作のため、サウンドの面では若干チープさも感じますが、キーボード・ワークとアンサンブルの一体感にはそれを補って余りある力強さがあります。プログレ後進国と言えるメキシコからの、正統派シンフォニック・ロックの堂々たるデビュー作と言えるでしょう。
1stと同じ94年に立て続けに、2nd『SOUNDS OF IMAGINATION』、3rd『THIRD CALL』をリリースします。2nd、3rdともに80年代に録音された音源+新曲という構成。2ndは85年録音、3rdは89年録音の音源を収録しています。80年代の音源も初期マリリオンに通じるメロディアスな佳曲ぞろいで、特に3rd収録の15分を超える大曲「Door Of The World」は名曲。新曲では、3rdのラストを飾る「House By The Forest」が特筆で、リリカルな歌のパートに続く、フィル・コリンズばりに切れ味鋭く疾走するドラムをバックに、キーボードがトニー・バンクス直系のファンタスティックかつ流麗なフレーズを次々に紡いでいくドラマティックなインプロビゼーションに心奪われます。メキシコのチープな(想像ですが・・・)バンド自前のスタジオにて、プログレへの愛情たっぷりに熱い演奏を繰り広げるメンバーの姿を想像するとただただ胸が熱くなるばかり。なお、ドラマーのAntonio Bringasは、10th『Infinity』~12th『NIMBUS』の3枚ではバンドを抜けますが、その後、復帰し、キーボードのAlfonsoとともにオリジナル・メンバーとしてバンドのサウンドを支えています。叔父はグラミー賞ノミネートのパーカッション奏者で、叔父の影響で11歳からドラムをはじめたようで、今やCASTに留まらずDereck SherinianやTony MaCalpineとも演奏するなど活躍するメキシコ屈指のドラマーです。
デビューの同年に立て続けに3作品をリリースした勢いのまま、翌95年にはやくもリリースした4thが『FOUR ACES』。前作までに比べ、アンサンブルが洗練され、ダイナミズムも増した印象。キーボードも、トニー・バンクス直系の幻想的なトーンを軸にしつつ、キース・エマーソンを彷彿させる攻撃的なトーン、管弦楽器風の広がりあるトーンなど音色が多彩になったとともに、アコースティック・ピアノによるクラシカルなピアノも印象的で、表現の幅がグッと広がりました。リズム隊もまるでカール・パーマーばりに空間を埋め尽くすようなドラムをここぞで盛り込み、「静」と「動」の対比がクッキリ。オープニング・ナンバーの間奏では、低く立ち込めるようなリズムの中、ちょっぴり東洋的なフレイヴァーとともに変調したムーグが鳴り響き、ハンガリーあたりの東欧のバンドに通じる荘厳さが印象的です。中期ジェネシス直系の美しくリリカルなメロディ・ラインは相変わらずというか、さらに磨きがかかっているし、ジェネシス~初期マリリオン直系のサウンドから一歩抜け出して飛躍した快作でしょう。
『FOUR ACES』と同年に早くもリリースされた5thが『ENDLESS SIGNS』。デビューから2年間で5作品とは、すごいペースですね。サウンドの方は、序盤は『トリック・オブ・ザ・テイル』あたりのジェネシスを彷彿させるメロディアスなシンフォニック・ロックではじまり、後半に向かって、前作で加わったEL&P的な攻撃性を織り交ぜつつ、ダイナミックなプログレを聴かせます。きらびやかなトーンで重層的に鳴らされるキーボードの魅力はそのままに、ギターがより前面に出ている印象で、歪みつつも抑制されたハケット譲りのトーンで繊細かつ伸びやかにリリカルなフレーズを奏でています。クラシカルなピアノもより効果的だし、手数多くシャープなドラムはキレ味を増していて、そんなピアノとドラムが冴え渡る最終曲は、イタリアのLOCANDA DELLE FATEも思い出しました。その最終曲は、GENESIS、EL&P、LOCANDA DELLEあたりのエッセンスを詰め込んだようなダイナミックが名曲。手数多く爆走するドラムも特筆です。GENESISやEL&Pなど往年のプログレのDNAを受け継いだネオ・プログレとして、CASTならではの回答へと辿り着いたと言える名作でしょう。
96年の6thが『BEYOND REALITY』。オープニング・ナンバー「Rescue」がいきなり過去最高と言える名曲で、フィル・コリンズ愛に溢れたシャープなドラムを土台に、キーボードとギターが緊張感とリリシズムみなぎるフレーズを次々と交差させつつ、「静」と「動」の対比鮮やかに突き進むアンサンブルはジェネシス・ファン歓喜間違いなしでしょう。キーボードだけでなく、ギターとリズム隊のテクニックもより一層洗練された結果、器楽性がグンと高まった印象です。そしてさらに特筆なのが流麗なフルート!ヴォーカルのDino Carlo Brasseaが吹いていますが、これがサウンドの華やかさ、清涼感を一際引き立てています。前作で印象的だったLOCANDA DELLE FATEに通じるクラシカルなエッセンスは本作でも引き継がれていて、クラシカルなピアノの格調高く流れるような速弾き、シャープなリズム隊は圧巻で、演奏からは「気品」がみなぎっています。いよいよメキシコのローカルなバンドから世界への飛躍に向け、機は熟した、といった感じの力作です。
97年にリリースされた7thが『ANGELS AND DEMONS』。オープニングから、前作で掴んだテクニカルかつ華麗なアンサンブルのめくるめく畳み掛けが圧巻の一言。キーボード、ギター、リズム隊が鋭角なトーンでぶつかって発生する熱量をエネルギーに、爆発的なスピード感とダイナミズムで聴き手を置き去りします。同時に、楽器の音の艶、瑞々しさ、色彩感も増しているのも特筆。ダイナミズムと色彩感が生む圧倒的なドラマ性は、アステカやマヤなど先住民文化とスペイン文化とが混濁した振れ幅の大きなメキシコ出身ならではと言えるかもしれません。イギリスよりイタリアのバンドに近い印象ですが、イタリアのバンドのように芸術的な知性に振れたり、バロック(いびつ)的なドラマで聴き手の度肝を抜く感じでなく、もっと原初的な生命感がみなぎっている感じ。
ハケット直系のメロディアスかつ緊張感みなぎるギター、清涼感たっぷりにたなびくバッキングから狂おしいばかりに畳み掛けるピアノやムーグのリードまで相変わらずセンス抜群のキーボード、そして、タイトさとキレ味を増したリズム隊。1曲目のインスト・ナンバー「Initiation」から凄まじいほどにドラマティック。前作で印象的だったフルートを排除し、ギター、キーボード、リズム隊による運動性能抜群のアンサンブルにフォーカスした結果、彼らのテクニックとアレンジ力を120%活かしきった「静」と「動」の対比鮮やかなアンサンブルが印象的です。切なさに満ちたハイ・トーンのエモーショナルなヴォーカルと英詩による流れるようなメロディ(ジェネシスの「Cinema Show」を思い出します)も素晴らしいし、いよいよ世界屈指のシンフォニック・ロック・バンドへと上り詰めたと言って過言ではないでしょう。
いよいよフランスのレーベルMUSEAと契約し、世界に向けてリリースされた出世作であり、新たなデビュー作と言えるのが99年作の8th『IMAGINARY WINDOW』。テクニカルなアンサンブルが生むダイナミズムと色彩感豊かなサウンドを同居させたサウンドを完成させた前作『ANGELS AND DEMONS』を元に、再びフルートをフィーチャーして、しっとりとリリカルな「引き」のパートを織り交ぜているのが印象的。ラテン的な詩情に満ちた幻想性が浮かび上がります。やはりLOCANDA DELLE FATEを彷彿させますが、「氷」のようにクリアなLOCANDA DELLE FATEに対し、「太陽」に照らされたCASTと言った感じで、今まで以上にCASTならではのアイデンティティを感じます。音の一つ一つは繊細に紡がれているのに、その一音一音には確かにパッションがある、そんな気がします。
翌年の00年、引き続きMUSEAよりリリースされたのが9th『LEGACY』。さらに音が洗練され、構築美がこれまで以上に感じられます。2曲目「Legacy’s Executor」から、テクニカルなキレとキーボードの色彩感でスピーディーに畳み掛けるCAST節が炸裂!流麗なピアノとフルートをフィーチャーした清涼感あるパートも良いし、祈るように敬虔なハイ・トーンのヴォーカルによる「歌」が溢れるパートも心奪われるし、「ファンタスティックさ」や「クラシカルさ」がこれまでにないほど出ていて、なんだかグリーンスレイドを思い出す感じ。でもグリーンスレイドのようなクリアさや綺羅びやかさはなく、「愛すべき野暮ったさ」とでも言うべきバンドみんなが汗を飛ばしながら幻想サウンドを鳴らしている映像が浮かんできて、思わず拳を握りしめます。
クリムゾンが頭に浮かぶほどヘヴィに沈むパートや、多声コーラスやハモンド・オルガンが宗教的な音を鳴らすパートや、北欧のバンドみたいなリリカルでハートウォームなパートや、80年代の東欧のバンドみたいにシンセが荘厳に鳴り響くパートを織り交ぜた、まるでコンセプト・アルバムのようなスケールの大きな構成も特筆です。本作を最後にデビューから続く5人体制が終わりますが、この5人での「第一期CAST」の間違いなく最高傑作と言える傑作です。
2002年にはバンドにとって大きな転機となります。いったんMUSEAレーベルを離れるとともに、デビュー以来、初のメンバーチェンジが行われました。新たなドラマーとギタリストCarlos Humaranを迎えて制作された10th『INFINITY』を再び自主制作にて02年にリリースした後、オリジナル・メンバーのヴォーカルDino Carlo BrasseaとベースRodolfo Gonzalezが脱退。デビュー以来のギタリストFrancisco Hernandezはヴォーカルのクレジットとなり、下記の新たな5人編成となります。
Alfonso Vidales(Key奏者)
Francisco Hernandez(ギター→ヴォーカル)
Carlos Humaran(ギター)
Flavio Jimenez(ベース)
Kiko King(ドラム)
そして新たなメンバーで録音され(しかもスペイン録音で初のメキシコ外録音!)、03年に堂々たる2枚組でリリースされた11thアルバムが『AL-BANDALUZ』。ずばりジェネシスからの影響が濃いネオ・プログレから一気にモダンなシンフォニック・ロックへとサウンドは進化していて、フラワー・キングスやトランスアトランティックへのメキシコからの回答といった感じ。90年代にデビューしているので新鋭バンドのイメージがありますが、結成は78年ですし、Alfonso Vidalesは1956年生まれで、調べてみるとロイネ・ストルトと同い年!CASTのデビューが94年で、ロイネがソロ『フラワー・キング』をリリースしたのも94年。Alfonsoは同じコンポーザーとしてきっと同い年のロイネを意識していたでしょうね。
リズム隊がそっくり変わっているのでまず注目して聴いてみると硬質でタイト!変わったギタリストはというとザクザクとメタリック!かなりモダンなシンフォニックになっていて、ジェネシス色は薄まり、クリムゾンやEL&Pのエッセンスを感じます。一言で言えば「鮮烈」。その点では、ハンガリーのAFTER CRYINGも彷彿させます。でもでも、ビシバシと疾走するギターとリズム隊にはかまわず、キーボードの音色は相変わらずヴィンテージで色彩感たっぷりなのが特徴で、このヴィンテージとモダンの合わせ技は、新たなるバンドの魅力と言えるでしょう。構成も見事で、緊張感みなぎるハードな「暗」のパートとの対比により、これまでのクラシカルでファンタスティックな「陽」のパートがより一層ドラマティックに聴こえています。どんなに暗黒になっても、その奥に確かに生命感や多幸感が宿っているのがCASTならではであり、コンポーザーとしてのAlfonso Vidalesの特筆すべき素晴らしさでしょう。
専任のヴォーカルDino Carlo Brasseaが抜けたため、インスト重視になりましたが、ヴォーカル・ナンバーも収録していて、なんとはじめてスペイン語で歌われています。これまでギターだったFrancisco Hernandezの歌声もなかなか良い感じ。ゲストも特筆で、特にスペインのシンフォ・バンドOMNIの作品にも参加するサックス/フルート奏者Pepe Torresの演奏が素晴らしく、フルートはもちろん、サックスのリードはバンドの新たな魅力と言えるでしょう。アラビックな旋律も織り交ぜたアブストラクトなインスト曲も新機軸で、音の一つ一つはナチュラルなトーンなのに、フラワー・キングスとは違って、どこか熱情を感じるのがいかにもメキシコ。プログレ・シーンのいよいよ最前線へと躍り出た、新生CASTによる新たなる傑作です。
04年作の12thアルバム『NIMBUS』は、なんとチリのMYLODONレーベルからのリリース。プログレ・メタル系のバンドが多く所属するレーベルで、音も明瞭に引き締まった印象。
前作でゲスト参加していたサックス&フルート奏者Pepe Torresは、本作にも参加していてより一層フィーチャーされています。オープニング・ナンバーでは、まるで『太陽と戦慄』期クリムゾンばりの硬質&テンションみなぎるリズム隊を土台に、キース・エマーソンの攻撃性を増幅させたような変調しまくりのムーグと荒々しく吹かれるサックスとが凄まじいバトルを繰り広げます。
前作ではじめてスペイン語の歌となりましたが、本作ではその「歌」の魅力がますます増している印象。叙情と哀愁たっぷりで、初期P.F.M.をモダンにした感じ、なんて形容が頭に浮かびました。前作からギターからヴォーカリストとなったFrancisco Hernandezの歌も堂々たるもので、声のトーンもエモーショナルな表現力もかなり魅力的です。
前作のB面で印象的だった映像が浮かんできそうなアブストラクトなアンサンブルも曲の中にうまく活かされていて、構成、表現もパワーアップしています。そんな多彩さ曲調を生み出しているのが、ギタリストのCarlos Humaran。メタリックなリフや速弾きだけでなく、浮遊感あるアルペジオ、「歌」のパートでのロイネ・ストルトを重厚にしたようなメロディアスなオブリガードも魅力的です。シンフォニック・ロックに留まらず、より広くプログレッシヴ・ロックとして飛躍したサウンドを聴かせた意欲作です。
なお、ギターのCarlos Humaranは次作の『MOSAIQUE』を最後に脱退して、同じくCASTを離れたドラムのKiko KingとともにEZOOを結成し、MYLODONレーベルより07年に『EZOO』をリリースします。彼のFacebookページを見ると、メキシコで開催しているプログレ・フェスBAJA PROGを主催する団体で働き、今もCASTのメンバーと交流があるようです。
98年BAJA PROG出演時の音源を収録したライヴ・アルバム『PYRAMID OF THE RAIN』をはさみ、06年に2枚組でリリースされた14thアルバムが『MOSAIQUE』。サックス&フルート奏者のPepe Torresは正式メンバーとなり、ベースがFlavio Mirandaに交代しています。ジャケットの雰囲気が『AL-BANDALUZ』以前のシンフォニック・ロック時代の作品を思わせますが、サウンドもモダンなヘヴィネスに傾いた前作の反動か、ジャケの通りの多彩なキーボードが彩るシンフォニック・ロックに揺れ戻っています。同じ06年には大きなメンバーチェンジが行わていること、2枚組の全曲をAlfonso Vidalesが書き、ヴィンテージなキーボード・サウンドが全編でフィーチャーされていることからも、彼のソロ・アルバムのような感じで制作されたのかもしれません。
メタリックなギターは控えめで、全編に渡って、色がキラキラと浮かんでくるような華やかなキーボード・ワークが印象的。正式メンバーとなったPepe Torresの存在感も高まっていて、たおやかに奏でられるサックスとフルートのリードはキャメルを思わせます。
Alfonso Vidalesのジェネシスやキャメルなどヴィンテージ・プログレへの愛情が素直に表現されたイマジネーション豊かな名作です。
06年には、02年の時と同じように大きなメンバーチェンジが行われました。女性ヴォーカルとしてAlfonsoの妻のLupita Acuna Vidales、ギターにチリ人のClaudio Corderoが新加入し、11th『AL-BANDALUZ』までを支えたヴォーカル&フルートのDino Carlo BrasseaとドラマーのAntonio Bringasのオリジナル・メンバーが復帰しました。
Alfonso Vidales(Key奏者)
Dino Carlo Brassea(ヴォーカル&フルート)
Lupita Vidales(女性ヴォーカル)
Pepe Flores(サックス/フルート)
Claudio Cordero(ギター)
Flavio Miranda(ベース)
Antonio Bringas(ドラム)
新たな7人で録音され、07年にリリースされた15thアルバムが『COM.UNION』です。まず、久々に復帰したAntonio Bringasのドラムがとても良い感じ。ギターは引き続きメタリックですが、フィル・コリンズを彷彿させる手数多くシャープなドラムにより全体のヴィンテージ感やふくよかさが高まっている印象。華やかなトーンのシンセと気品あるピアノのキーボード・ワークは相変わらずだし、フルート奏者が2人になってよりフィーチャーされていて、2本のフルートが夢想的にからみあう魅惑的なリードが絶品です。
新任のギタリストは、前任者の延長線上でザクザクとスピーディーなリフでモダンなヘヴィネスと疾走感を生んでいます。ヴィンテージとモダン・ヘヴィネスとの融合は『NIMBUS』で確立した方向性ですが、本作の方が幻想的なのが印象的。やはり、Antonio Bringas(ドラム)とDino Carlo Brassea(ヴォーカル&フルート)の復帰は大きいでしょう。
曲を聴き進めていくと気づくのが新任ギタリストClaudio Corderoの素晴らしさ。テクニカル&メタリックなリフや速弾きだけでなく、ロイネ・ストルトばりに伸びやかに歌い上げるリード、ディレイを聴かせた浮遊感とともにエキゾチックさもあるアルペジオ、目の覚めるようなスパニッシュ・ギターまで豊かな表現力で楽曲の幅を広げています。
Pepe Torresのサックスも相変わらずの素晴らしさで、特に初期クリムゾンやVDGGを彷彿させるパートでの唸るようなサックスには悶絶。まるで70年代イタリアン・ロックばりのヘヴィ・シンフォでの縦横無尽に吹き荒れるフルートもまた絶品です。
『AL-BANDALUZ』を境にそれ以前を第一期、以降を第二期とするならば、ジェネシス直系の「第一期」とモダンなプログレへと進化した「第二期」の見事に融合した集大成的サウンドと言えるでしょう。知名度では雲泥だと思いますが、フラワー・キングスと双璧と言って過言ではないほどのステージへと上り詰めた一大傑作!
CAST第三期の幕を開けた前作から早1年、なんと2枚組で届けられた08年作16thが『ORIGINALLIS』。前作で復帰したオリジナル・メンバーのヴォーカル&フルート奏者Dino Carlo Brasseaとは再び袂を分かち、新たにヴォーカルにAlberto Vidalesが加入しています。彼の透き通るような美声とエモーショナルで伸びやかな歌唱が印象的で、イタリアン・ロックに通じる叙情性が強く感じられます。女性ヴォーカルの飛翔感ある歌唱を活かした美麗かつコッテリとした熱情もある楽曲も良いし、「歌」の魅力は過去最高。演奏も前作と比べキーボードの比重が高まった印象で、再びジェネシスのエッセンスが香ります。
新機軸はケルティックと言えるほどのパートで、女性ヴォーカルがコーラスで入り、バグパイプやフルートが澄んだ音色を響かせるパートはマイク・オールドフィールドを彷彿させるような気品や静謐さもあります。クラシカルで流麗なピアノのバッキングにフルートが流麗に舞うパートなども魅力いっぱいで、「静」と「動」で言えば、「静」の方の表現の幅がグッと広がった印象。その豊かな構成は初期P.F.M.も彷彿させます。
それと対照的に、ザクザクとメタリックでエッジの立ったギターと華やかな音色のヴィンテージなキーボードによる爽快に突き抜けるパート、サックスがヘヴィにうねるソリッドなパートも見事で、このダイナミズムにはプログレ・ファン誰もが歓喜することでしょう。「静」と「動」の鮮やかな対比と構成美に加え、イタリアン・ロックに通じるロマンティシズムまでを加えたサウンドは向かうところ敵なしと言える圧倒的な完成度。前作も凄かったが、本作も凄い。しかもわずか1年後にこのボリューム。相変わらずの溢れる創作意欲に驚きです。
デビュー以来の最長となる3年をあけ、11年にリリースした17thが『Art』。前作で加わったヴォーカルAlberto Vidalesが抜け、新たにBobby Vidalesが加わりました。彼らのアルバムのオープニング・ナンバーには名曲が多いですが、本作の「Duction from the Intro」もまた凄い!ギュインと切り替わるリズム・チェンジがカッコ良すぎで、キラびやかなトーンのシンセと柔らかなフルートによるメロディアスなパートから、突如、暴走ギアを入れてフランスのクリムゾン直系バンドのような暗黒シンフォへと突入する展開や、サックスがうねる初期クリムゾン的パートからキーボードとフルートがクラシカルなタッチの華やかなテーマを奏でるパートへとスイッチする展開など、切り替わりの瞬間の高揚感は本当凄いです。ラストに登場するバロック調のクラシカルなアンサンブルもただただ感動的。これはCAST史上屈指の名曲でしょう。
ギターは相変わらずザクザクしてるし、超絶速弾きもするけど、「プログレ・メタル」にはならない塩梅というか、そんなギターの使い方がこのバンドの特徴の一つで、全体を包む印象は120%ヴィンテージ・プログレ。新任のヴォーカルBobby Vidalesは伸びやかなハイ・トーンの歌声が魅力的。演奏もより洗練された印象で、構成にメリハリがつき、キーボード、ギター、フルート、サックスの分離もハッキリとして聴きやすくなり、キャッチーなヴォーカル&英詩のメロディとあわせ、よりワールドワイドなプログレへとスケール・アップしました。ジャケットの後ろに、バンド・インフォとしてアメリカの住所が載っていますが、もしかすると、よりワールドワイドな活動を見越して、拠点をアメリカに移したのかもしれません。それにしても凄まじい爽快感。次から次へと自身の最高傑作を更新していきますが、本作も文句なしでまたまた最高傑作!
メンバーチェンジはなかったものの、前作からまたまた3年の間をあけてリリースされた2014年作18thアルバムが『Arsis』。本作の特徴は、アンサンブルの中心にピアノとギターを置いていること。特にオープニングから繰り広げられる30分を超える組曲「La-Iliada」では、流れるように奏でられるクラシカルなピアノと目の覚めるようにテクニカルなエレキ・ギターを中心としたクリアかつヘヴィな音像が印象的です。ドラムの手数とスピードは圧倒的だし、その上でピアノとギターが高速ユニゾンをビシバシとキメていきます。硬質なアンサンブルを軸にしつつ、CASTらしい「陽」のパートも魅力的で、華やかなシンセのバッキング、フルートとサックスが柔らかに交差するリリカルなリードが伸びやかに奏でられます。
その他の曲も、Alfonso Vidalesのルーツであるクラシック音楽とプログレとが見事に融合し、モダンな音像で鳴らされたヘヴィ・クラシカル・ロックの超絶曲ぞろい。めくるめく構成、テクニック、メロディ・センスともに振り切れていて、どこまで上り詰めるのかCAST!痛快極まる傑作です。
2015年には19thアルバム『VIDA』をリリース。特筆は、近年のニュー・トロルスのライヴへの参加や、管弦楽器隊によるプログレ・トリビュート・バンドGNU QUARTETでの活躍で知られるヴァイオリン奏者Roberto Izzoがコンスタントなメンバーとして参加していること。ゲストとして、他のGNU QUARTETの管弦楽器奏者も参加していて、ストリングスが華々しく躍動しています。
前作ではピアノがメインでしたが、今作ではきらびやかなトーンのヴィンテージなキーボードがフィーチャーされていることもあって、全体的に「陽」のイメージが印象的です。Bobby Vidalesのハイ・トーンの歌声、英詩によるキャッチーなメロディもそんなサウンドに見事にマッチしています。
今までの作品以上に「プログレ・ハード」と言えるキャッチーさと突き抜けるような明快さを軸に、管弦楽器による美麗さも加わっていて、そこにエレキ・ギターによるテクニカルなエッジも効いていて、う~む、またまた最高傑作。
ジャケットは、初期ジェネシスでお馴染みのポール・ホワイトヘッド!
そして2017年には記念すべき20枚目のアルバムとなる『POWER AND OUTCOME』をリリース。
この作品がまたすごい!
クラシックの素養みなぎるキーボード、天を駆けるように格調高い音色から深みある芳醇な音色までを操る表現力抜群のヴァイオリン、そしてゴリッと硬質なリフワークとエネルギッシュな速弾きでCASTのヘヴィネスを一手に担うギター。安定感抜群のリズム・セクションの上を、三者が複雑に絡み合いながら織り上げていくスケールの大きなシンフォニック・ロック・サウンドは、もはや興奮を通り越して感動すら覚える素晴らしさ。
全編にわたり瑞々しくファンタジックな躍動感に満ちながらも、同時に一音一音には確かな重量感のあるという、一分の隙なく構築されたサウンドはもはや貫禄と言う以外にはない威風堂々な出で立ちです。
特に素晴らしいのが前作より正式メンバーとして活躍するヴァイオリニストRoberto Izzoのプレイ。ソロもたっぷりフィーチャーされており、清廉なクラシカル・シンフォの色合いが強まっているのが特徴です。これは、スウェーデンのTHE FLOWER KINGSとブラジルのSAGRADO CORACAO DA TERRAを合体させたかのような凄まじさと言ってしまって問題ない傑作!
従来のペースからは異例と言える4年を経てリリースされたのが21枚目となる『VIGESIMUS』です。
いやはや1曲目から凄まじい。
ザクザク刻むヘヴィなギターとヴァイオリンが変拍子ユニゾンで快走する冒頭を経て、一気に視界が開けるようにギターとヴァイオリンがスケール大きく飛翔していく荘厳なオープニングにいきなり感動してしまいます。パッションみなぎるアコースティックギターの超絶プレイも全開だし、終盤満を持して登場するシンセのスピーディなプレイもさすがです。
曲間なくピアノのクラシカルなリフレインに繋がっていきヴァイオリンのキレのあるプレイが彩るプログレ・ハードを聴かせる2曲目もキャッチーかつ緊張感ある名曲。
とにかく全編通してとんでもないエネルギーが充満していて、聴いてる方も拳を握りっぱなしになります。
MARILLIONと同期の78年結成とは思えない、作品を出すごとに演奏の緻密さと込められた情熱が増していくCASTというバンドに改めて敬服せずにはいられません。
演奏の緻密さも込められたパッションもバンド史上最高レベルと言って間違いなし!
さらに、ライヴ映像作品もリリースされました。16年4月に行われた母国メキシコでのライヴ映像を収録したもので、抜群のテクニックを誇るバンドだけに、スタジオ盤と遜色ないダイナミックにして緻密なアンサンブルが冒頭から炸裂していますよ!
こちらは、2017年に彼らがおこなったオーケストラを率いての熱いライヴ映像を収録!ゴリッとヘヴィに疾走するギター、ファンタジックかつ艷やかなキーボード、天高く飛翔するヴァイオリン!そこに流麗な弦楽が絡んできて、かつてないスケールで観客に迫っています。圧倒的ライヴ・ステージ!
いやはやこうして全アルバムを通して聴いてみると、すごい濃度密度。アルバム毎に着実に進化しながら、1年に1枚のペースで20年間に渡りコンスタントにこれだけの作品を生み出し続ける創造力、そしてそのブレインであるKey奏者&コンポーザーAlfonso Vidalesの豊かな才能。知名度では残念ながら辺境メキシコのローカル・バンドだと思いますが、特に02年の第二期以降の作品は、現在進行形のプログレ・シーンにおいて文句なしのトップ・クラスの傑作であり、現役バンドで最も過小評価されているバンドと言えるかもしれません。ずばり西のフラワー・キングス、東のCAST!もっともっと評価されるべきプログレ・ファン必聴のバンドで、この特集を機にCASTに注目するリスナーが増えることを期待いたします。是非、来日もして欲しい!
70年代に結成され、94年にデビューしたメキシコのシンフォ・グループ。傑作『LEGACY』の後にリリースされたライヴ盤。
70年代末に結成され、94年に自主制作にてデビューしたメキシコのシンフォ・グループ。03年作の11thアルバム。Key奏者Alfonso VidalesとギタリストFrancisco Hernandez以外のメンバーが交代。Francisco Hernandezはヴォーカリストとなり、ギター、ドラム、ベースが新加入。サウンドは、ジェネシスからの影響が濃いネオ・プログレから一気にモダンなシンフォニック・ロックへと進化していて、ずばりフラワー・キングスやトランスアトランティックへのメキシコからの回答といった感じ。リズム隊がそっくり変わっているのでまず注目すると硬質でタイト!変わったギタリストはというとザクザクとメタリック!かなりモダンなシンフォニックになっていて、ジェネシスではなくクリムゾンやEL&Pのエッセンスを感じます。その点では、ハンガリーのAFTER CRYINGも彷彿。そんな緊張感みなぎるハードな「暗」のパートとの対比により、これまでのクラシカルでファンタスティックな「陽」のパートがより一層ドラマティックに聴こえます。専任のヴォーカルDino Carlo Brasseaが抜けたため、インスト重視になりましたが、ヴォーカル・ナンバーも収録していて、なんとはじめてスペイン語で歌われています。これまでギターだったFrancisco Hernandezの歌声もなかなか良い感じ。ゲストも特筆で、特にスペインのシンフォ・バンドOMNIの作品にも参加するサックス/フルート奏者Pepe Torresの演奏が素晴らしく、フルートはもちろん、サックスのリードはバンドの新たな魅力と言えるでしょう。新生CASTによる傑作です。
メキシコのみならず今や有無を言わせぬ世界基準となったベテランシンフォニックバンドの04年作。本作では、CASTの個性であるファンタジック且つ重厚なシンフォニックサウンドはそのままに、アルバムコンセプトも伴ってかなり閉塞感のあるアグレッシブな内容となっています。Mylodonレーベルへの移籍によって音楽性に変化が見られ、むしろ楽曲によってはメタリックとすら言えるような硬質な雰囲気へ。いわゆる南米独特の哀愁と言うものは意図的に隠された洗練されたへヴィーシンフォニックロックと言えますが、元々彼らの持っていた攻撃性が絶妙に融合し畳み掛ける様はやはりCASTの音であり、圧巻の一言。引き出しの多さを見せ付けられます。このアルバムをさらに進化させた作品が07年の名盤「Com.Union」だということを考えると記念すべきターニングポイントな1枚と言えますが、決して過渡期的な印象を与えない高水準なへヴィーシンフォニックロックは、さすがCASTです。
メキシコを代表するシンフォ・グループ。07年作。それにしても1曲目からもの凄いテンション。煌びやかな音色のキーボードとメタリックなギターが一体となって畳みかけるパートのダイナミズムは圧巻の一言。凶暴と言えるほどの硬質なテンションを保ちながらも、どこか柔和な感触も残していてたいへんメロディアス。往年のシンフォニック・ロックの幻想的な部分はそのままに、現代的なヘヴィネスやビビッドな音像を違和感無く取り入れたサウンドは見事と言うしかありません。ベテラン恐るべし。シンフォ・ファン必聴の名作!
メキシコのみならず今や有無を言わせぬ世界基準となったベテランシンフォニックバンドの08年作。なんと20枚目のアルバム、結成から30周年というから驚きです。前作「Com.Union」はバンドの最高傑作としてプログレファンの心をわしづかみにしましたが、早くも新譜をリリース。しかも今回は2枚組大ボリュームとなっており、彼らの多作ぶりはThe Flower Kingsにも迫るかと言う勢い。職人技とすら言えそうなアイディア量と、その創作意欲は尊敬に値します。本作は、近作のCastの路線を堅実に守りながら、イタリアンプログレを思わせるヴィンテージ色豊かなシンフォニックサウンドをドラマチックに聴かせる、前作に引き続きまたしても傑作となっており、現在進行形シンフォニックロックのダイナミズムを存分に味わえる作品。フルートや各種管楽器類の配置も前作同様センスを感じさせ、クラシカルロックとしてトップクラスのクオリティーを維持し続けています。キャリアの長さとプログレを知り尽くした経験値の高さを持つものだけが作れ得る、出来るべくして出来た作品。
結成は70年代に遡るメキシコを代表するシンフォ・グループ、2011年作の17th!翳りのあるシンセとエッジの立った早弾きギターが疾走するドラマティックなパートを軸に、フルートがむせぶリリカルなパート、畳みかける変拍子の中をジャジーなサックスがむせぶクリムゾン的なパート、ストリングスがたおやかに広がるクラシカルなパートなどを織り込みながら、「静」と「動」を対比させたダイナミックな展開で駆け抜けます。オープニング・ナンバーからシンフォ・ファン号泣間違いなしなインスト・ナンバーで、めくるめく展開は「鮮烈」の一言。2曲目からはヴォーカルも入り、伸びやかな歌声とシアトリカルな歌い回しがこれまたドラマティック!ギターはザクザクとしていますが、どこか南米プログレらしい「奥ゆかしさ」があるのが特徴。現代的なヘヴィネスを古色蒼然とした温かなトーンで包み込んだサウンドも絶品。もう聴いていて「うおぉぉ」とうなりっぱなしで、次々にこちらの「泣きとドラマのツボ」を押しまくる展開には笑みがとまりません。ここにきて最高傑作か!と思ってしまう、ベテランらしさ皆無の瑞々しい傑作!
70年代から活躍するメキシコを代表するシンフォニック・ロック・グループ、2014年作。煌びやかなピアノが華麗に流れていくオープニング。ピアノが不穏なフレーズへと移行していくと、ザクザクとヘヴィ・メタリックなギターが炸裂し、一気に動き出すアンサンブル。ここぞでは視界が開けたように透き通った鋭角なトーンのギターやヴィンテージなハモンド・オルガンやフルートがファンタスティックなフレーズを高らかに奏でます。フルートとザクザク・ギターとのユニゾンあり、ピアノとギターによるクラシカルな高速フレーズが一閃したり、それを支えるリズム隊のキレ味も特筆だし、70年代的な幻想性と現代的な明瞭さやダイナミズムが見事に融合したアンサンブルは、まさに「鮮烈」という言葉がぴったり。それにしても、ベテランとは思えない突き抜けたエナジー。これはモダン・シンフォニック・ロックの傑作です!
70年代末結成、90年代初頭にデビューして以降コンスタントに高品質な作品をリリースし続け、今やメキシコのみならず中南米シーンを代表するグループとなった彼らの17年作!ピアノ、オルガン、シンセを縦横に駆使してアンサンブルを形作るクラシックの素養みなぎるキーボード、天を駆けるように格調高い音色から深みある芳醇な音色までを操る表現力抜群のヴァイオリン、そしてゴリッと硬質なリフワークとエネルギッシュな速弾きでCASTのヘヴィネスを一手に担うギター。安定感抜群のリズム・セクションの上を、三者が複雑に絡み合いながら織り上げていくスケールの大きなシンフォニック・ロック・サウンドは、もはや興奮を通り越して感動すら覚える素晴らしさ。全編にわたり瑞々しくファンタジックな躍動感に満ちながらも、同時に一音一音には確かな重量感のあるという、一分の隙なく構築されたサウンドはもはや貫禄と言う以外にはない威風堂々な出で立ちです。特に素晴らしいのが前作より正式メンバーとして活躍するヴァイオリニストRoberto Izzoのプレイ。ソロもたっぷりフィーチャーされており、清廉なクラシカル・シンフォの色合いが強まっているのが特徴です。これは、スウェーデンのTHE FLOWER KINGSとブラジルのSAGRADO CORACAO DA TERRAを合体させたかのような凄まじさと言ってしまおう!傑作!
現中南米シーンにおいて抜きんでた実力を誇るメキシカン・シンフォ・グループ、前作から4年を経てついにリリースされた21年作!キャッチーかつ疾走感抜群のアンサンブルにスケール大きなヴァイオリンのプレイが炸裂するサウンドは、さながら「ラッシュ+サグラド・コラソン・ダ・テッラ 」。もう1曲目から凄まじい。ザクザク刻むヘヴィなギターとヴァイオリンが変拍子ユニゾンで快走する冒頭を経て、一気に視界が開けるようにギターとヴァイオリンがスケール大きく飛翔していく荘厳なオープニングにいきなり感動してしまいます。パッションみなぎるアコースティックギターの超絶プレイも全開だし、終盤満を持して登場するシンセのスピーディなプレイもさすがです。曲間なくピアノのクラシカルなリフレインに繋がっていき、ヴァイオリンのキレのあるプレイが冴え渡るプログレ・ハードを聴かせる2曲目もキャッチーかつ緊張感ある名曲。とにかく全編通してとんでもないエネルギーが充満していて、聴いてる方も拳を握りっぱなしになります。何度かのメンバーチェンジは経ているものの、MARILLIONと同期の78年結成とは思えない、作品を出すごとに演奏の緻密さと込められた情熱が増していくCASTというバンドに敬服せずにはいられません。もちろん大傑作!
結成は70年代に遡るメキシコのシンフォ・グループ、94年作の記念すべき1st。トニー・バンクスからの影響が色濃いリリカルなキーボードを中心とするファンタスティックなシンフォニック・ロック。00年以降作のようなダイナミズムこそありませんが、丁寧に紡がれたGENESISタイプのアンサンブルは、これはこれでたいへん魅力的。詩情溢れるメロディは既に完成の域。センシティブでエモーショナルなヴォーカルも素晴らしい。すでに長いキャリアを誇るだけに、デビュー作ながらさすがの音作りセンスを感じさせる逸品です。
結成は70年代に遡るメキシコのシンフォ・グループ。95年作の5th。序盤は、『トリック・オブ・ザ・テイル』あたりのジェネシスを彷彿させるメロディアスなシンフォニック・ロックを聞かせ、後半に向かって、前作で加わったEL&P的な攻撃性を織り交ぜつつ、ダイナミックなプログレを聴かせます。きらびやかなトーンで重層的に鳴らされるシンセの魅力はそのままに、ギターがより前面に出ている印象で、歪みつつも抑制されたハケット譲りのトーンで繊細かつ伸びやかにリリカルなフレーズを奏でています。クラシカルなピアノもより効果的で、最終曲は、イタリアのLOCANDA DELLE FATEも思い出しました。その最終曲は、GENESIS、EL&P、LOCANDA DELLEあたりのエッセンスを詰め込んだようなダイナミックな名曲。手数多く爆走するドラムも特筆です。GENESISやEL&Pなど往年のプログレのDNAを受け継いだネオ・プログレとして、一つの完成形と言える名作です。
94年にデビュー以降、怒涛のリリースで、メキシコが世界へと誇るシンフォニック・ロック・バンドへと上り詰めたバンド。96年作の6thアルバム。繊細かつキラキラしたトーンのアルペジオ、ハードかつ神経質なタッチで紡がれるリードともにスティーヴ・ハケット直系と言えるエレキ・ギター、90年代とは思えない幻想性溢れるトーンのキーボード。リズム隊は硬質さがあってポンプ・ロック以降のバンドからの影響も感じさせます。運動性たっぷりにドラマティックに畳み掛けるキメのパートもまたジェネシスのDNAに満ちています。そして、全編を通してフィーチャーされる優美なフルートがまた絶品。オープニング・ナンバーからジェネシス・ファンは歓喜と言える名曲で、いきなりトップ・ギアで聴き手を飲み込みます。ヴォーカル・ナンバーでは、南米らしい詩情あるメロディとハイ・トーンのエモーショナルなヴォーカルも良いし、これはドラマティック&メロディアスなプログレのファンは必聴。傑作です。
94年にデビュー以降、怒涛のリリースで、メキシコが世界へと誇るシンフォニック・ロック・バンドへと上り詰めたバンド。97年作の7thアルバム。プロダクションが向上した印象で、楽器の音の艶、瑞々しさ、色彩感が増し、アンサンブルがクリアでダイナミックになり、彼らの持つ構築美、テクニックがよりダイレクトに伝わってきます。ハケット直系のメロディアスかつ緊張感みなぎるギター、清涼感たっぷりにたなびくバッキングから狂おしいばかりに畳み掛けるピアノやムーグのリードまで相変わらずセンス抜群のキーボード、そして、タイトさとキレ味を増したリズム隊。1曲目のインスト・ナンバー「Initiation」から凄まじいほどにドラマティック。前作で印象的だったフルートを排除し、ギター、キーボード、リズム隊による運動性能抜群のアンサンブルにフォーカスし、彼らのテクニックとアレンジ力を120%活かしきった「静」と「動」の対比鮮やかなアンサンブルが印象的です。切なさに満ちたハイ・トーンのエモーショナルなヴォーカルと英詩による流れるようなメロディ(ジェネシスの「Cinema Show」を思い出します)も素晴らしいし、この時点で、世界屈指のジェネシス・フォロワーへと上り詰めたと言って過言ではないでしょう。ジャケットの雰囲気にピンときたシンフォ・ファンは間違いなく気に入る傑作です。
結成は70年代に遡るメキシコのシンフォ・グループ。95年作の4th。前作までに比べ、アンサンブルが洗練され、ダイナミズムも増した印象。トニー・バンクス直系の幻想的なトーンを軸にしつつ、キース・エマーソンを彷彿させる攻撃的なトーン、管弦楽器風の広がりあるトーンなど音色が多彩になったとともに、アコースティック・ピアノによるクラシカルなピアノも印象的で、表現の幅がグッと広がりました。リズム隊もまるでカール・パーマーばりに空間を埋め尽くすようなドラムをここぞで盛り込み、「静」と「動」の対比が鮮やかになってダイナミズムが増しました。オープニング・ナンバーの間奏では、低く立ち込めるようなリズムの中、ちょっぴり東洋的なフレイヴァーとともに変調したムーグが鳴り響き、ハンガリーあたりの東欧のバンドに通じる荘厳さを聴かせます。中期ジェネシス直系の美しくリリカルなメロディ・ラインは相変わらずというか、さらに磨きがかかっている印象。初期マリリオンに通じるネオ・プログレから一歩抜け出して飛躍した快作です。
70年代末に結成され、94年に自主制作にてデビューしたメキシコのシンフォ・グループ。いよいよフランスのレーベルMUSEAと契約し、世界に向けてリリースされた出世作となった99年の9thアルバム。変拍子を巧みに織り交ぜて瑞々しく躍動するリズム、その上をリリカルなキーボードとハード・エッジかつ歌心いっぱいのギターが色彩豊かな音世界を描き、フルートがこれぞ南米と言える詩情を加える。テクニカルなアンサンブルが生むダイナミズムと色彩感豊かなサウンドを同居させたサウンドを完成させた前作『ANGELS AND DEMONS』を元に、再びフルートをフィーチャーして、しっとりとリリカルな「引き」のパートを織り交ぜているのが印象的です。幻想性が前作以上に浮かび上がるとともに、ラテン的なリリシズムが心に残ります。LOCANDA DELLE FATEを彷彿させますが、「氷」に包まれたLOCANDA DELLE FATEに対し、「太陽」に照らされたCASTと言った感じで、今まで以上にCASTならではのアイデンティティを感じます。音の一つ一つは繊細に紡がれているのに、その一音一音には確かにパッションがある、そんな気がします。中南米はメキシコから高らかに鳴らされた渾身のシンフォニック・ロック・アンサンブル。力強くそして包み込むように歌い上げるハイトーンのエモーショナルなヴォーカル、ジェネシスからの影響を土台にラテン的な詩情を乗せたメロディも絶品です。これは傑作!
70年代末に結成され、94年に自主制作にてデビューしたメキシコのシンフォ・グループ。前作に引き続きMUSEAより世界に向けてリリースされた00年作の10thアルバム。2曲目「Legacy’s Executor」から、テクニカルなキレとキーボードの色彩感でスピーディーに畳み掛けるCAST節が炸裂!流麗なピアノとフルートをフィーチャーした清涼感あるパートも良いし、祈るように敬虔なハイ・トーンのヴォーカルによる「歌」が溢れるパートも心奪われるし、「ファンタスティックさ」や「クラシカルさ」がこれまでにないほど出ていて、なんだかグリーンスレイドを思い出す感じ。でもグリーンスレイドのようなクリアさや綺羅びやかさはなく、「愛すべき野暮ったさ」とでも言うべきバンドみんなが汗を飛ばしながら幻想サウンドを鳴らしている思わず拳を握りしめます。クリムゾンが頭に浮かぶほどヘヴィに沈むパートや、多声コーラスやハモンド・オルガンが宗教的な音を鳴らすパートや、北欧のバンドみたいなリリカルでハートウォームなパートや、80年代の東欧のバンドみたいにシンセが荘厳に鳴り響くパートを織り交ぜた、まるでコンセプト・アルバムのようなスケールの大きな構成も特筆です。幕が開いた2000年代プログレ・シーンにおいて、中南米のの旗手となるべく実力を高らかに証明した傑作。
今や中南米シーンをリードする存在となったメキシコのシンフォ・グループ。彼らが99年に行なったライヴを収録!『Landing In A Serious Mind』『Sounds Of Imagination』『Third Call』『Four Aces』『Endless Signs』『Beyond Reality』、1st〜6thより選曲された14曲をプレイした、初期CASTの集大成といえる名演の数々を収めています。00年代以降の活躍を予感させる傑作盤。
LIVEEXPERIENCE(バンド名/タイトル上部中央)(CAST(MUSEA))
2枚組、バンド名/タイトルがジャケ中央上部にあるデザイン
レーベル管理上、ジャケットのスレ・盤面にキズが付いている場合がございます。ご了承ください。
LIVEEXPERIENCE(バンド名/タイトル上部左寄り)(CAST(MUSEA))
2枚組、バンド名/タイトルがジャケ左寄り上部にあるデザイン
レーベル管理上、ジャケットにスレ/盤に複数キズ/レーベル面が印刷されていない場合がございます。ご了承ください。
94年にデビュー以降、怒涛のリリースで、メキシコが世界へと誇るシンフォニック・ロック・バンドへと上り詰めたバンド。2枚組となった06年作の14thアルバム。デビュー以来、ジェネシスのDNAを継いだネオ・プログレ・サウンドを極めていき、MUSEAからリリースされた03年作の11th『Al-Bandaluz』で、中心メンバーのKey奏者Alfonso VidalesとヴォーカルのFrancisco Hernandez以外のメンバーを変え、より往年の香りとともに、よりスタイリッシュでモダンに引き締まったダイナミックなシンフォニック・ロックへとさらに階段を登りました。本作は、メンバー・チェンジ後では3作目で、ヴォーカルのFrancisco Hernandezはゲスト扱いとなり、他のヴォーカリスト(女性Voも!)もゲストに加えて制作されています。サウンドは、GENESISやEL&PのDNAを継ぐヴィンテージな香りたっぷりの多彩なキーボードを軸に、『Al-Bandaluz』以降のフルート、サックス、モダンでハード・エッジなギターが織りなすスリリングでいてイマジネーションにも満ちたシンフォニック・ロックが印象的です。ロマンティシズム溢れる流麗なピアノ、夢想的で優美なフルートではじまる2枚目のオープニング・ナンバーは、イタリアのLocanda Delle Fateも彷彿させる美麗さ。そこから一気にヘヴィなギターとムーグによるダイナミックなパートへと展開し、ジェネシス直系のドラマティックなキメや、HR/HM的な硬質なパートなどを織り交ぜながら、「静」と「動」、「硬」と「軟」自在に上り詰めていく展開は見事。これまた傑作です。
名実ともに現メキシコを代表するプログレ・バンドによる、16年4月に行われた母国メキシコでのライヴを収録した映像作品。16年リリースの新作『VIDA』からの4曲、11年作『ART』より2曲、14年作『ARSIS』の1曲に、ドラムソロ、メドレーを加えた全9曲を演奏。抜群のテクニックを誇るバンドだけに、スタジオ盤と遜色ないダイナミックにして緻密なアンサンブルが冒頭から炸裂していて興奮必至。屋外ステージでの夜の公演ながら、ステージ上が全体的に明るく演奏しているメンバーの姿がよく見えるのも好印象です。
MARILLIONより1年早い1978年に結成され、94年にアルバム・デビュー、今や名実ともに中南米を代表する存在となったメキシコ産シンフォ・グループ。2017年に母国メキシコにてオーケストラを率いておこなったライヴ映像を収録!
Blu-ray Disc、NTSC方式、※掲載画像とジャケットのデザインが若干異なる場合がございます
レーベル管理上、パッケージの若干スレ・盤面にキズが付いている場合がございます。ご了承ください。
結成は70年代に遡るメキシコのシンフォ・グループ。1st以前の音源をまとめた、94年リリースの2nd。トニー・バンクスからの影響が色濃いリリカルなキーボードを中心とするファンタスティックなシンフォニック・ロック。キーボードとギターとで丁寧に紡がれたメロディのタペストリー。詩情豊かなメロディは切々と聴き手の胸を打ちます。10分を越える最終曲「A Run In The Rain」は、次々と繰り出されるメロディアスな展開に涙が溢れ出すシンフォ・ファン必聴の名曲。
結成は70年代に遡るメキシコのシンフォ・グループ。89年の音源4曲と94年の音源4曲をまとめた3rd。GENESIS直系のめくるめくファンタスティックなアンサンブル、ナイーヴな感性が光る詩情豊かなメロディ。94年録音の後半4曲は特に素晴らしく、流れるような構成と胸を鷲づかみにされるメロディを持った名曲揃い。特にラストを飾る「House By The Forest」は特筆で、フィル・コリンズばりに切れ味鋭く疾走するドラムをバックに、キーボードがトニー・バンクス直系のファンタスティックかつ流麗なフレーズを次々に紡いでいくドラマティックなインプロビゼーションに心奪われます。89年の楽曲では、15分を超える大曲「Door Of The World」が聴きどころで、その後のライヴでも演奏されている名曲です。
90年代はじめのデビュー以降コンスタントに作品をリリースし続けているメキシコが誇るシンフォニック・ロック・バンド。前作から早くも1年で届けられた2015年作。特筆は、近年のニュー・トロルスのライヴへの参加や、管弦楽器隊によるプログレ・トリビュート・バンドGNU QUARTETでの活躍で知られるヴァイオリン奏者Roberto Izzoがコンスタントなメンバーとして参加していること。ゲストとして、他のGNU QUARTETの管弦楽器奏者も参加していて、瑞々しく艶やかなトーンのストリングスが躍動するクリアで明朗なサウンドが印象的。ソロとしても活躍している若き男性ヴォーカリストBobby VidalesによるカナダのRUSHを彷彿させるハイ・トーンの歌声もそんなサウンドに見事にマッチしています。ジェネシスのDNAが息づく多彩なキーボードによるヴィンテージな色合い、ザクザクとメタリックなリフや流麗な速弾きで硬質なダイナミズムを生むギターのアクセントも良いし、圧倒的に目の覚めるようなアンサンブル!今までの作品以上に「プログレ・ハード」と言えるキャッチーさと突き抜けるような明快さを軸に、管弦楽器による美麗さが加わっていて、そこに持ち前のテクニカルなエッジも効いていて、これはずばりシンフォニック・ロックのファンは必聴でしょう。ジャケットのデザインは、ジェネシスでお馴染みのポール・ホワイトヘッド!
【カケレコ国内盤(直輸入盤帯・解説付仕様)】デジパック仕様、定価2990+税
レーベル管理上の問題により、デジパックに若干角つぶれ・若干圧痕がある場合がございます。予めご了承ください。
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