2019年6月16日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
今日は、フェアポート・コンヴェンションの初代ヴォーカリストであり、ソロやバンドで米ウェストコースト・ロック憧憬の愛すべき名作を残し、今も活動を続ける名SSW、イアン・マシューズを特集いたしましょう。
経歴を追いながら、彼が残した作品を聴いてまいりましょう。
イアン・マシューズは、イングランド東部はリンカンシャー生まれで、ビートルズ後のビート・バンド・ブームから熱を受け、地元でいくつかのバンドを経験した後、66年にロンドンへと向かいます。そこで、PYRAMIDというサーフ・ロック系バンドを結成。デラムからシングル1曲「Summer Of Last Year」をリリースします。
これが、ハーモニー豊かなソフト・サイケの佳曲でびっくり。
67年にアシュリー・ハッチングスに誘われ、FAIRPORT CONVENTIONに加入。
ジュディ・ダイブルとの男女リード・ヴォーカルにより「ウェストコースト・ロックへのイギリスからの回答」と言えるサウンドを鳴らした1st、サンディ・デニーとのデュエットでより英国然とした叙情性と気品を聴かせる2ndと、英ロック史の残る名作に貢献します。
名曲「Meet on the Ledge」。イアン・マシューズとサンディ・デニーのデュエットのあまりの素晴らしさ。
バンドがよりトラッド色を強めたことにより、ウェストコースト・ロック的なポップなサウンドを指向したイアン・マシューズは脱退。
69年ハーヴェスト・レーベルより『Matthews Southern Comfort』でソロデビューします。
ヴォーカリストとしての魅力はいわずもがな、メロディメイカーとしても才能を発揮し、ブリティッシュSSWとして覚醒。
牧歌的で叙情的なメロディと歌声とハーモニーは、木漏れ日フォーク・ロックの代名詞のヘロンと並んで、愛すべき英国臭いっぱい。
この作品でバックをつとめたメンバーとともに、パーマネントなバンドとして、MATTHEWS SOUTHERN COMFORTを結成。
ハーヴェスト・レーベルから、69年に2nd『Second Spring』、70年に3rd『Later That Same Year』を残します。
どちらの作品もCSN&Yやニール・ヤングへの憧憬とともに、英国の干し草が香るハートウォームな佳曲ぞろいの逸品。
3rdから、大好きな名曲「And When She Smiles」をピックアップいたします。
ジョニ・ミッチェルの曲で、CSN&Yもカヴァーした名曲「Woodstock」のカヴァーも3rdに収録。英国シングル・チャートで1位を記録し、カナダでも5位、米ビルボードでも23位とヒットします。
当時のTV放送映像を発見。それにしても、良い声だなぁ。聴き入ってしまいますね。
3rdアルバムリリース後、バンドは解散。ヴァーティゴ・レーベルより2枚のソロをリリースします。
どちらも、ソングライターとしての誠実さがにじむ、柔らかで心温まる歌声とメロディが変わらず素晴らしい名作。
リチャード・トンプソンやサンディ・デニーの客演も特筆です。
MATTHEWS SOUTHERN COMFORT解散の後、イアン・マシューズ以外のメンバーは、SOUTHERN COMFORTを結成。3枚のアルバムをハーヴェスト・レーベルに残しますが、どれも米ロック憧憬と英国叙情が混じり合った変わらぬサウンドを聴かせる名作。
ヴァーティゴからのソロ2作をリリース後、イアン・マシューズは、元リヴァプール・シーン~グリムスのアンディ・ロバーツらとともに、PLAINSONGを結成。エレクトラと契約し、72年に唯一作『In Search of Amelia Earhart』をリリースします。
それにしても、イアン・マシューズはウェストコースト・ロックが本当に好きなんだなぁ。
カントリー・ロック/フォーク・ロックへの変わらぬ愛情。そこからこぼれおちる英国的叙情。本当に誠実な良いメロディ&歌声に溢れています。
PLAINSONGも2nd制作へと向かいますが、残念ながら解散。イアンは、その後、ソロとして変わらぬリリカルな作品をコンスタントにリリースしながら、現在まで息の長い活動を続けています。
最後に、73年のソロ『Valley Hi』から、僕がイアンの曲の中で一番好きな「Keep on Sailing」をピックアップ。
何百回聴いても心に染みます。
2006年の9月にはアンディ・ロバーツとともに来日。新宿の小さなライヴ・ハウスに見に行きましたが、曲についてのエピソードを挟みながら、飾らず真摯に曲を演奏していく姿にじーんときたのを覚えています。
人生に迷った時に、いつでも寄り添ってくれる。同じ方向を向いて、ただただじっと側に居てくれる。そんな優しさ溢れる名SSWです。
2023年、今回のライヴではオランダ出身のSSW/ギタリスト/プロデューサーBJ.バートマンとステージに。イアンの張りのあるヴォーカルも素晴らしかったし、テクニカルで繊細なギターを聴かせるBJ.バートマンも凄かった!スライドギターの素晴らしいこと。またの二人の来日も期待したいです。
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柔らかな歌声と英国らしいジェントルかつ干し草の香り漂うメロディがグッとくる愛すべきSSW、イアン・マシューズを出発点に、「哀愁いっぱい英国SSW」を紹介してまいりましょう。
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フェアポート・コンヴェンションの1stに参加したメンバーのその後の作品を、カケレコ棚から探してまいります。
CDLEMBOX246(5013929784604)(LEMON)
6枚組ボックス、各CDはペーパーケース仕様、ボーナストラック33曲
女性ボーカリストSandy DennyとギタリストRichard Thompsonを擁し、トラッド・フォークの最高峰の1つに上げられるイギリスのグループによる69年3rd。69年に彼らは3枚ものアルバムをリリースしており、本作は連続リリースの2作目となります。前作からIAN MATTHEWSが脱退しリリースされた本作は、BOB DYLANの楽曲が3曲、トラッド1曲、グループの楽曲4曲から成る彼らの代表作の1つ。前2作以上に統一感を感じさせるエレクトリック・トラッド・フォークを奏でており、Sandy Dennyの歌声の素晴らしさは説明するまでもなく、ゲストのフィドル奏者DEVE SWARBRICKによるヴァイオリンなどが自然にバンドに溶け込んだ名盤です。
廃盤、紙ジャケット仕様、SHM-CD、デジタル・リマスター、HRカッティング、ターコイズブルー・レーベル、巻帯付き仕様、定価2667+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
サンディー・デニーを迎え制作された2ndアルバム。68年作。彼女の儚くも凛としたヴォーカルは別格の美しさで、「FOTHERINGAY」などコンポーザーとしても一流。そんな彼女の加入が化学反応を引き起こしたのか、リチャード・トンプソンもギタリスト/コンポーザーとして見事にその才能を開花させています。楽曲、演奏とも新人離れした風格すら感じさせる出来栄えで、英国フォークロックを代表するグループとしての地位を早くも確立した名作。
女性ボーカリストSandy DennyとギタリストRichard Thompsonを擁し、トラッド・フォークの最高峰の1つに上げられるイギリスのグループによる70年5th。名盤となった前作「Liege & Lief」をリリースした後、Sandy DennyとAshley Hutchingsが脱退、Dave Peggが加入して男性グループへとシフトした作品ですが、その内容はグループのフロントであったSandy Dennyの脱退を全く感じさせないブリティッシュ・トラッド・フォークの名盤となっており、特にRichard Thompsonのギターをはじめとしたバンドの緊張感溢れるパフォーマンスは、さすが全盛期の彼らならではのものです。
紙ジャケット仕様、01年リマスター、ボーナス・トラック5曲、定価2039+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
特典帯付(紙ジャケに巻いてあります、若干汚れあり)、解説に小さい折れ・帯中央部分に色褪せあり
サンディ・デニー復帰後の74年のライヴ盤。「Matty Groves」「Sloth」など代表曲はもちろん、サンディーのソロ「North Star〜」収録の楽曲も演奏しています。
紙ジャケット仕様、05年デジタル・リマスター、ボーナス・トラック5曲、内袋付仕様、定価2039+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
若干帯中央部分に色褪せあり
サンディー・デニーがカム・バックした75年作。サンディー・デニーを中心に作曲された楽曲が多く、彼女のソロ作に通ずる穏やかで美しいメロディーが印象的。75年は、彼女のソロで言えば73年作「Like An Old〜」と77年作「Rendezvous」の間。ソングライターとして脂が乗り切っていて、次々とメロディーが溢れ出てくる状態だったんでしょう。美しいメロディーが詰まった佳曲揃いの好盤。
紙ジャケット仕様、05年リマスター、ボーナス・トラック4曲、内袋付仕様、定価2039+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
内袋に若干汚れあり
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