2012年10月19日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
タグ: ヨーロピアン・ロック・フェス
こんにちは、カケレコ・スタッフ佐藤です。
現在、来年1月開催の「ヨーロピアン・ロック・フェス」に向けて、参加バンドの特集をお送りしております。
今回はスウェーデン出身、北欧シーンきってのヘヴィ・プログレ・バンドであるTRETTIOARIGA KRIGET(トレッティオアリガ・クリゲット)にフォーカスしてまいります!
「三十年戦争」という意味を持つバンド名を冠した彼らは、70年にスウェーデンはストックホルムに程近いザルツヨバーデンにて結成されたプログレ・バンド。
結成当初のメンバーは、ベース/ヴォーカルのSTEFAN FREDIN、ドラムスのDAG LUNDQUIST、ギター/ヴォーカルのPOCKE OHRSTROM、キーボードのDAG KRONLUND、ハーモニカ/ギターのOLLE THORNVALL、そしてもう一人のドラムスJOHAN GULLBERGの6人編成でした。結成時、彼らはまだハイ・スクールに在学中で平均年齢は17歳だったと言います。
このラインナップで70年~71年の間に録音を実施。こちらの音源は30年以上を経た04年に発掘音源として発表され、幻の発掘音源としてユーロ・プログレ・ファンの注目を集めることとなりました。
バンドは74年のデビュー作発表までに、POCKE、JOHAN、DAG KRONLUND、そしてOLLEが脱退し、ヴォーカル/ギターのROBERTが加入するという激しいメンバーチェンジを経て、最終的にオーディションによって選ばれたギタリストのCHRISTER AKERBERGの加入によって4人編成に落ち着きます。
そして74年、満を持してデビュー作となる『TRETTIOARIGA KRIGET』を発表。その内容は怒涛のテンションで繰り広げられるアンサンブルが強烈な印象を残すプログレッシヴ・ロックで、荒々しくも巧みな変拍子を織り交ぜながら進行していくテクニカル・ハード・ロックがあまりに痛快な一枚となっています。
主軸となるのが切れ味抜群、まさに縦横無尽に引きまくるハイテクギターと、そこにゴリゴリとうなりを上げながら絡みつくベースで、その両者が競い合うように上昇と下降を繰り返す中を、ハード・ロック・ヴォーカルそのものと言うべき強烈なシャウトを聴かせるヴォーカルが、演奏に更なる存在感を上乗せします。
随所に挟み込まれる哀切極まるピアノによる叙情パートはハードな演奏の中でより際立って胸を打ちます。今になって振り返って聴くとオーソドックスなハード・ロック型プログレと言うこともできるのですが、74年という時期を考えるとこれは何とも驚異的です。
キング・クリムゾン的なバイオレンスと英ハードのギター主体の切れ味鋭い演奏を融合させたような作風は、英国からの影響を感じさせながらも同時に猛烈なオリジナリティーを放っています。デビュー作にして見事北欧プログレ史上の名作を作り上げました。
続く2作目『KRIGSSANG』は76年の発表。前作でのギター、ベースがゴリゴリと突き進むひたすら硬質だったアンサンブルに、今作では豊かな表情が生まれており、クリムゾンというよりは前作でも若干ながら感じられたYES色が前に出た印象を受けます。
75年には透明感あふれるファンタジックなシンフォニック・ロックを聴かせるKAIPAがデビューしたということもあり、彼らの作風にもファンタジックな要素が取り入れられています。美しく広がっていくメロトロン、シンセサイザーの音色が印象的な一枚。
これら初期の2作品は、のちの北欧プログレを代表するバンドとなるANEKDOTEN、ANGLAGARDなどに多大な影響を与えたと言われますが、なるほど改めて聴くと、彼らのサウンドにメタリックな重厚感を加えればANEKDOTENの音にぐっと近づくであろうことがわかってきます。
現代プログレを牽引することとなるバンドたちが彼らのサウンドにヒントを得ていたことを考えると、その存在意義は極めて大きなものと言えますよね。
78年には3rdアルバム『HAJ PA ER』を発表し、持ち前のテクニックを活かしつつもより軽快でキャッチーなサウンドを展開。今作より加入したキーボード/サックス担当のMATS LINDBERGによるサックスも交え滑らかに進行していくアンサンブルの中でも、時おり爆発する初期を思い出したかのようなテクニカルかつアグレッシヴな演奏が何ともたまりません。
ヴォーカルは初期のハード・ロック調の歌唱から、シアトリカルささえ感じられるプログレ然とした歌いっぷりを聴かせるようになり、ジャジーな陰影を持つ演奏から
R&B風味の弾むような演奏まで表現力が格段に広がったアンサンブルの中で見事なヴォーカル・パフォーマンスを披露します。本作も前2作に負けない名作と呼ぶべき完成度を持った一枚でしょう。
その後、バンドは79年に4th『MOT ALLA ODDS』、81年に5th『KRIGET』を発表し、スウェーデン国内でますますその評価を高めます。しかしそんな中にあって、バンドは7年間にわたったアルバム制作とそれに伴うツアーの日々に終わりを告げることを決め、81年に解散を発表します。
そんな彼らが実に20年以上の時を経た04年、結成時のメンバーであり3dr以降作詞を担当していたOLLE THORNVALLを含んだ6人で再度活動を開始。復活作となる『ELDEN AV AR』を発表します。これが力強くも円熟味を増した深みのある演奏と北欧らしい透明感溢れるサウンド、そしてアンサンブルをメロトロン、シンセが壮大に彩る快新作で、TRETTIOARIGA KRIGETというバンドが現在進行形のプログレ・バンドとして再び多くのプログレ・ファンに認知されるようになります。
さらに11年には『EFTER EFTER』を発表。前作の要素はそのままに、よりドラマティックな起伏に満ちた曲展開が素晴らしい最高傑作との呼び声も高い作品で、初期を彷彿とさせるパワフルなギター・サウンドも随所に登場するのがうれしいところ。
これら再結成後の作品を聴くたびに、その70年代の作品を凌ぐほどの輝きを放つ衰えなきクリエイティビティに驚かずにはいられません。さすが北欧プログレ屈指の名バンドと言われるだけの実力を存分に示した2作品です。
そんな彼らも「ヨーロピアン・ロック・フェス」に登場。08年の初来日より5年ぶりとなりますが、きっと他のビッグ・ネームに負けないそれはそれは熱い名演を聴かせてくれることでしょう。期待大ですね!
その他の「ヨーロピアン・ロック・フェス」参加バンド特集はこちら!
ANEKDOTEN
http://kakereco.com/blog/?p=5041
MOON SAFARI
http://kakereco.com/blog/?p=5050
FLOWER KINGS
http://kakereco.com/blog/?p=5119
スウェーデン出身、76年作の2nd。ゴリゴリとアグレッシヴだった1stに比べ、アコースティカルなパートが増え、哀愁がぐんと増した印象。アルバム最後を飾る17分を越える大曲が聴き所で、メロトロンをフィーチャーした壮大かつメロディアスなパートと、YESばりのテクニカルでアグレッシヴなパートとが次々と押し寄せるダイナミックな展開は見事。
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!