【ヨーロピアン・ロック・フェス関連特集】現代のプログレ・シーンに多大なる影響を及ぼす北欧きっての大御所プログレ・バンド、FLOWER KINGS(フラワー・キングス)を特集!
こんにちは、カケレコ・スタッフ佐藤です。
来年1月に開催する「ヨーロピアン・ロック・フェス」に向けて、ただいま参加バンド4組の特集をお送りしております。
ANEKDOTEN、MOON SAFARI、TRERTTIARIGA KRIGETと来て第4回となる今回は、ついにあの北欧プログレ・シーン一の大物バンドが登場いたします。
そう、始動より18年を経た現在においても世界中のプログレ・シーンに多大な影響を及ぼし続けるモンスターバンド、スウェーデンのFLOWER KINGSです。
FLOWER KINGSについて語る際に触れないわけにはいかないのが、バンドの中心的人物であるロイネ・ストルトについてでしょう。ロイネは十代より音楽活動を開始し、以後現在にいたるまで北欧プログレ・シーンの第一線で活躍を続けているプログレ界の重鎮と言ってよい存在。
今回はそんなロイネ・ストルトの経歴を辿っていく中で、キャリア後半における活動の中心となるFLOWER KINGSというバンドについてご紹介してまいりたいと思います。
ロイネ・ストルトは、1956年にストックホルムの北部に位置するウプサラで生まれ、60年代末にはベーシストとしてバンド活動を行なっていたと言います。
日本で言うと小学生か中学生かという時期ですよね。やはり時代背景的に考えるならビートルズという存在からの影響があったのではないかとも推察できます。
70年代に入ってからギタリストへと転向した彼は、74年、若干17歳にしてプログレ・バンドKAIPAに加わることとなります。それではまずは75年のデビュー作からの一曲をどうぞ。
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透明感に満ちた音色によって紡がれるCAMELを彷彿とさせるファンタジックな叙情性と、ヒューマンな温かみが滲むKAIPAのサウンドは、北欧最初期のシンフォニック・ロックとして今現在でもプログレ・ファンに高い人気を誇ります。
ロイネは、デビュー作の作風をさらに発展させた76年発表の第2作『INGET NYTT UNDER SOLEN』と78年作『SOLO』の初期3作品までに参加し、KAIPA独自の優美で透き通るようなシンフォニックサウンドの形成に大きな貢献を果たしました。
79年にロイネはKAIPAを脱退し、ソロ活動を開始。同年にソロデビュー作となる『FANTASIA』を発表します。
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各楽器の北欧らしい透き通るような音使いとアコギの煌びやかな音色がひたすらに美しい一曲です。自らのギタープレイを随所で聴かせながらも作品全体としてはキーボードによる音作りがメインに感じられ、KAIPAより受け継いだ優美なシンフォサウンドの中で、KAIPAのヴォーカリストを含む3人の歌い手による美しい歌唱をフィーチャーした、充実のソロ作となっています。
その後、80年代には85年作『BEHIND THE WALLS』、89年作『LONELY HEARTBEAT』のソロ2作品を発表しています。音源を聴く限りではプログレッシヴな要素はほぼ皆無で、よりポップに、そしていかにもな80年代らしいサウンドへと変遷を辿っているのが興味深いところです。
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そして、94年にはいよいよFLOWER KINGS結成の契機となる、その名もズバリ『THE FLOWER KINGS』が発表されます。ロイネのソロ作という位置づけではあるものの、後にFLOWER KINGSとして活動するメンバーはほぼ出揃っており、実質的なFLOWER KINGSのデビュー作と捉えることも可能な作品です。
ちなみにドラムス/パーカッションで参加しているのは、北欧プログレ黎明期より活動するスウェーデンのアヴァン・プログレ・バンドSAMLA MAMMAS MANNAに在籍したHASSE BRUNIUSSONです。
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冒頭のあまりの優美さに思わず息をのんでしまうほどのギタープレイは、ロイネのKAIPA~ソロ時代のキャリアを凝縮したかのような音色と言っても過言ではないでしょう。
KAIPAを彷彿とさせる優しく温かみに満ちたシンフォニック・サウンドと豊饒なポップ性を備えた普遍的なメロディライン、そして新世代のプログレであることを示すギターを中心とした重厚感たっぷりのハード・ドライヴィングなアンサンブルもそこに加わった、完全無欠の北欧シンフォニック・サウンドを繰り広げます。
壮大で美しく、胸の躍るようなファンタジーを紡ぎだすこのバンドの登場に、多くのプログレ・ファンは彼らに注目しないわけにはいかなかったでしょう。
なおこれに先立つ92年、93年には、同じくスウェーデン出身のプログレッシヴ・ロック・バンドであるANGLAGARD、ANEKDOTENがそれぞれ衝撃的なデビュー作によって下火だったプログレ・シーンを再興へと導いたという経緯がありましたが、当時のプログレ・ファンは、その両バンドと同等かそれ以上の感動をこのFLOWER KINGSのデビュー作から受けたのではないかと思います。
というのも先の2つのバンドがキング・クリムゾンなどの遺伝子を受け継ぐ北欧プログレの陰の部分を担うバンドだとすれば、FLOWER KINGSは紛れもなく陽を担うバンドであり、YESやGENESIS、CAMELなどのバンドをフェイヴァリットとするファンには、確実にこちらに惹かれるものが多くあったはずだからです。
95年、第2作となる『BACK IN THE WORLD OF ADVENTURE』にて、ベースにロイネの弟であるMICHAELが、そしてキーボードには以後FLOWER KINGSのサウンド面で大きな貢献を果たしていくこととなるTOMAS BODINが加わります。
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その95年作は、前作でのファンタジックな作風を維持しながらも圧倒的な表現力を有したキーボードと、流麗にもハード・エッジにも変幻自在なギタープレイをフィーチャーしたサウンドが抜群に気持ちいい、更なる傑作に仕上がっています。
この時点で、デビュー作より彼らに注目していたプログレ・ファンは、FLOWER KINGSが北欧プログレのみならず現代プログレ随一の音楽センスと卓越した演奏力を備えたグループであるということを認識したのではないでしょうか。
96年の第3作は、シンフォニック・ロックというよりはプログレッシヴ・ロック的な骨太さがより強調された演奏と豊かなドラマ性を湛えたストーリーテリングが手を取り合った名コンセプト作となっています。あらゆるプログレ・ファンに聴いていただきたい初期の代表作と言ってよい完成度を持つ一枚です。
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その後、ロイネやBODINのソロ作を挟みつつも、97年作『STARDUST WE ARE』、98年作『FLOWERPOWER』など、FLOWER KINGSとしては2枚組の大ヴォリュームの作品を立て続けに発表し、ファンの度肝を抜きました。
またロイネはFLOWER KINGSの活動と並行して、数多くのプロジェクト・バンドに参加している事でも知られます。代表的なものとしてはTANGENT、TRANSATLANTIC、AGENTS OF MERCYなどで、そのいずれでもハイクオリティな傑作を発表し続けており、そちらのほうでも大いにプログレ・ファンを楽しませてくれているのはよくご存知かと思います。
一方FLOWER KINGSとしては、07年作以降スタジオ作が長らく発表されていませんでしたが、12年についに新作『BANKS OF EDEN』が発表されました。
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これまででは異例と言える5年の歳月を経て出てきた音は、やはり威風堂々、向かうところ敵無しといった風情のどこまでも壮大でファンタスティックな音世界。美しく情感豊かなアンサンブルの積み重ねによって幻想的に織り上げられていく楽曲展開が素晴らしい、貫禄たっぷりの作品となりました。これぞ北欧プログレの真髄と言いたくなる作品に仕上がっております。
発足より18年が過ぎメンバーも決して若くはなくなったものの、こと作品の内容に関してはその瑞々しいまでの感性は衰えるどころかますます冴えわたってきているようにさえ感じられます。まさに現代のモンスターバンドと言って問題ないバンドですよね。
そんなFLOWER KINGSがこの度「ヨーロピアン・ロック・フェス」で久々の来日を果たします。その他の3バンドももちろん充分すぎるほどに魅力的なのですが、やはりこのFLOWER KINGSが奏でる貫録たっぷりの壮大なる音世界に最も注目が集まっているのではないでしょうか。
今回記事を書くにあたって改めて彼らを聴き直してみた結果、ますます彼らのステージが楽しみになってしまいました!当日は彼らと一緒にプログレ・ファン夢の祭典を最大限に楽しみたいところですよね~。
その他の「ヨーロピアン・ロック・フェス」参加バンド特集はこちら!
ANEKDOTEN
http://kakereco.com/blog/?p=5041
MOON SAFARI
http://kakereco.com/blog/?p=5050
TRETTIOARIGA KRIGET
http://kakereco.com/blog/?p=5078
現代プログレ・シーンの最重要人物ロイネ・ストルトにフォーカス!
現代プログレ・シーンの最重要人物ロイネ・ストルトにフォーカス!
KAIPA
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76年発表の2作目からの一曲。熱のこもったヴォーカルと、それとは対照的にひんやりとした北欧的叙情を湛えた演奏とによって綴られる、夢見るように美しくファンタスティックなロック・シンフォニー。緩急を自在に操る洗練のアンサンブルが前作より大幅に進化
FLOWER KINGS
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言わずと知れた現代北欧プログレを代表する存在。現代プログレらしい重厚な演奏に耳が行きがちですが、同時にKAIPAや70年代英プログレなど往年のプログレに対するリスペクトを忘れないところもポイント。というわけでライヴ盤にも収録のGENESISカヴァーをどうぞ
ROINE STOLT
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数々のバンドに参加するロイネですが、個人名義の作品はそれほど多くありません。そんな彼の05年発表のソロは、全編ブルージーなサウンドを聴かせる異色作。ロイネによる渋みたっぷりのブルーズギターをフィーチャーした、彼のルーツが色濃く現れた一枚です
TRANSATLANTIC
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ニール・モーズにマイク・ポートノイ、MARILLIONのピート・トレワヴァス、そしてロイネと英米北欧名うてのミュージシャンが集まった。メンバーの豪華さに加え、あまりに壮大なスケールで展開していくシンフォニック・ロックに、多くのプログレ・ファンが驚愕したのではないでしょうか
TANGENT
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英国のミュージシャン、アンディ・ティリソンを中心とするプロジェクト・バンド、03年デビュー作。ロイネを始めとしてFKからのメンバーが集結、ロックの躍動感がたっぷりと詰まったシンフォ絵巻を繰り広げます。VDGGのデヴィッド・ジャクソンによる鋭いサックスもさすがのカッコよさ!
3RD WORLD ELECTRIC
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ロイネとFKのベーシストJONAS REINGOLDを中心としたプロジェクト・バンド09年作。その内容はオールインストの本格派フュージョン・サウンドで、FKその他におけるシリアスな表情とはまた一味違った演奏が楽しめます。まさに彼らの音楽性を幅広さを示す一枚です
AGENTS OF MERCY
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現在、FKと並行してロイネが主導するプログレ・バンドがこちら。北欧本来の透明感溢れるサウンドをヴィンテージな温かみで包み込んだような珠玉の一枚。FKと比較しても、より北欧プログレとしてのアイデンティティを強く感じさせる力作です
ANDERSON/STOLT
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なんとYESのジョン・アンダーソンをヴォーカルに迎えた夢のプロジェクト・バンド、16年リリース。美麗なメロディ際立つFK人脈のファンタスティックなアンサンブルに、ジョン・アンダーソンのヴォーカルが融け合う、瑞々しさいっぱいのサウンドが絶品。
SEA WITHIN
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FK人脈にYESやCAMELのサポートとしても活躍したTom Brislin、現代プログレ界を代表する名ドラマーMarco Minnemannらを迎え結成されたスーパー・グループ、18年のデビュー作。深遠なメロディ、強靭なリズム隊がリードする重厚なアンサンブルの中にもオルガン等暖かみある音色を取り入れ、硬質すぎないサウンドを創り上げているのがグッド。
ROINE STOLT’S THE FLOWER KING
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8年ぶりのソロ作となった18年作。ドラマチックに盛り上がる展開などFKに通ずる要素もありつつ、どちらかと言えばKAIPAを思わせる柔らかな叙情美に包まれたサウンドを展開。圧倒的な表現力のギタープレイは言わずもがな、芳醇なハモンドの腕前にも注目!
WAITING FOR MIRACLES
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現プログレ・シーンの王者と呼ぶべき人気グループ、6年ぶり19年作!特筆はヴィンテージで柔らかなタッチが印象的な新キーボーディストのプレイ。溢れ出すオルガン&メロトロンとロイネによる入魂のギターがドラマチックに躍動する新たな傑作!