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きのう、この盤を聴きながら何をレビューしようかと考えているうち、寝落ちしてしまいました。リック・デリンジャーというギタリストの本質が何なのか、なかなか分かりやすい表現が思い浮かばなかったのです。経歴をここで書いても、全然伝わらないだろうし…。業界の裏方を務めることの多かったギタリストです。でも彼の出発点は、「ハングオン・スルーピー」という全米大ヒットから。不思議なことにデリンジャーは、ソロ活動に移行するまで数年を要しているんです。
一部ではジョニー・ウインターがブルーズからハードロックになってしまった原因と言われています。ジョニーやエドガーを表役に仕立てたのは、デリンジャーの功績。しかしウインター関連の最大のヒットである「フランケンシュタイン」と「ロックンロール・フーチークー」は、デリンジャーがいなかったら存在していません。わたしは彼のやりたかったことは「バンド」であり、そのフィクサーとしての居場所を愛していたんだろうと推測するのみです。
1曲めこそ、お茶らけたポップ曲です。2曲めからジャック・ダグラス制作らしい、乾いたハード曲が目白押しです。デリンジャーの最高の成果であると、わたしは思います。ビニー・アピスやケニー・アアロンスンを発掘したのも彼であります。2024.03.18
「ビバリーヒルズ・コップ」のタイトル曲を歌ったのがグレン・フライ。「2」で歌ったのがボブ・シーガーです。たしかフライがシーガーを推薦したのではなかったですか。フライはデトロイト生まれで、シーガーの「ギャンブリン・ランブリン・マン」でも歌っているそうです。そんなフライを偲んでの17年シーガー新作です。そんなエポックでもなければシーガーの新録音を聴けない最近ですので、貴重な音であると申し上げます。
タイトルの「アイ・ニュー・ユー・ウェン」と「アイ・リメンバー・ユー」がフライへの追憶曲であり、敬虔な気持ちになりました。自分は長いこと売れなかったけど、そんな時君の栄光が力になった、と。そんな歌詞です。実際、先行したフライの成功はシーガーにとって眩しかったし、いつか俺も、という気持ちになっていたでしょう。ボブ・シーガーの成功は、スプリングスティーンに似ていて、スタイルを変えずにドさ回りし、現場で訴えることで勝ち得ていったものです。
フライのこともあったんでしょう。このレコードでは往年のパワーが戻ってきています。冒頭のブルーズ風ギターを聴いただけで、これはやるな、と思います。声もあまり出なくなった。ステージもこなせなくなった。でもシーガーは落ち着いたりしていません。ロケンローしようとしています。「アイ・ニュー・ユー・ウェン」には、ビル・ペイン、リッチー・ヘイワード、ショーン・マーフィーも参加しています。2024.03.16
ブリティッシュの中のブリティッシュ。わたしは彼らのことをそう思っていますし、バッド・カンパニーの魂を宿した音のクオリティは抜けています。ところが契約したクリサリスが彼らにつきつけた条件は、渡米すること。スワン・ソングの敏腕エンジニアだったロン・ネビスンを制作ブレインにつけて、です。この手の音のマーケットは北米にしかない。業界の冷徹で的確な判断の根拠は、どこから来ているんでしょう。たしかにその判断は正解だったと思うのです。
ベイビーズ中で鉄板のロングプレイ盤です。シングル向けの曲におんぶだっこしたような制作でなく、ロングプレイの流れがどうしても必要。…と、きょう4回め回していて、つくづく思います。弦楽も必然性を感じますし、メキシコやカリフォルニアをテーマにした曲もなかなかのもの。そして「アイ・ワズ・ワン」「ヘッド・ファースト」の生野菜ぱりぱり感です。ライナーを読むと、いったん完成した録音をゼロにして、やり直したのだとか。ここでもその判断はクリサリス。キーボードのマイケル・コービーが、耐えられなくてバンドを抜けてまで…。わたしはこの名録音を、血と汗の結晶として聴くべきなんだと思いました。
音楽を売るためのそうした努力に、わたしは感謝しなければなりません。というわけで、5回めに行きます。2024.03.15
ばったもんのような外装にだまされず聴いてください。67年のデビュー以来、スタジオ盤、ライブ合わせて30枚以上を積み重ねているサボイ・ブラウンの90年ニューヨーク録音です。「Kings of Boogie」の曲に70年代のレパートリー、ウィリー・ディクソンの曲、数曲の新曲という構成です。かつて特徴だった倦怠感は目立たず、どちらかというとロックンロール、もしくはヘビーロックに近い演奏です。キム・シモンズのギターはとても元気で、艶やかなソロを華麗に決めているので嬉しくなってしまいました。デイブ・ウォーカーの歌声が男くさく、シャウト気味の熱唱がバンドの印象をハードにしております。
20分以上をかけて「ブルー・マター」から「ヘルバウンド・トレイン」までの代表曲のメドレーを行っています。最後はシモンズのアドリブ2分以上。「オール・アイ・キャン・ドゥ」は、10分以上のメランコリックなブルーズで聴きもの。シモンズのソロは派手ではないものの聞かせどころのはっきりした演奏です。アンコールはハード・ブギ。タフなサボイ・ブラウンもなかなかいいものです。最近出た盤を聴いてないですが、2020年代になってもサボイは健在のようです。2024.03.14
エドウィンのTVCFに「シー・ラブズ・ユー」が使われたことがあります。わたしらが小学生の頃です。歌詞なんてわからず、♪タラッチュー、イエーイエーイエー、と学級中が歌っていました。ポップなんて、そんなものだと思うです。その中で原典に当たり、ビートルズ・ファンになる子どもが何人も出ました。わが国でリーバイズの知名度を大きく上回ったことと思います。そのうちエドウィンなんて忘れてビートルズだけが残っていく。消耗品なんだけど消耗されない音楽です。
わたしがエリック・カルメンを知ったのは「レッツ・プリテンド」です。ベイ・シティ・ローラーズが演奏していたことからでした。甘酸っぱいラブ・ソングで、刹那的。でもけして消耗品にならない。時代を越え、わたしを打ちのめすメロディとコーラスです。「ゴー・オール・ザ・ウェイ」「ドント・ウォント・セイ・グッバイ」「アイ・ウォナ・ビー・ウィズ・ユー」宝石箱です。わたしは「サイド・スリー」「オーバーナイト・セイセイション」を傑作と思っていますが、デビュー2作のほうにこそ、このグループの新鮮さが詰まっていて忘れることができません。
屈指のメロディ・メイカーが亡くなってしまいました。解散しては何度も再結成してステージに立ったカルメンの原点です。今夜はラブベリーズの曲を聴き続けることにします。2024.03.13
60年代から70年代初頭にかけ、ファミリー・バンドというスタイルが人気だったのを覚えていらっしゃいますか。オズモンズとかジャクスン・ファイブとか。わが国ではフィンガー・ファイブという存在もありました。わたしは彼らがTVに現れるにつけ、羨ましくて仕方ありませんでした。…と言うのも、自分の家と比較して絶望的な気持ちになったからです。親子、兄弟で一つのテーマにまい進するなんて、かっこいい家庭だなあ、と。演歌聞いている親父の影響で音楽好きになったことは確かです。でもまあ、親父に影響された趣味は皆無ですね。かっこ悪い奴でしたから。
スライ・ストーンの過激なメッセージとラリー・グレアムのとんでもないベースで、家族という側面を忘れてしまうのが、スライ・アンド・ファミリー・ストーンです。このレコード全編踊れることがテーマ。しかし「ダンス・トゥ・ザ・ミュージック」での♪ミュージック・ラバー、という繰り返されるテーマは、まるで宗教です。ジェイムズ・ブラウンの影響はあります。もっとファンクを家族向けにマイルドにして…それでも過激なアジテーションは消せません。聴きやすいけど、魂を売り渡しているわけではないのです。
「暴動」「フレッシュ」に行く前に、聴いておいたほうがいい盤です。わたしはこれと「スタンド」が、スライに入る近道だと思います。2024.03.12
73年5月のウインターランド…なので、「キング・ビスケット」と同じ音源なのでしょう。ドイツ盤です。ハムブル・パイのライブ・バンドとしての実力は、過小評価されています。例えばハードロックのライブで、ストーンズやフー、ディープ・パープルなど持ち上げられるわけです。でもパイのライブを最高と推すライターに出会ったことがありません。わたしの知る中古盤屋さん店主でそういう人います。…でも、世間の冷たさと言いましたら、シベリア寒気団のごとくです。これほど熱いバンドはいないと言いますのに。
♪俺はストーンズをトリビュートするぜ〜と、マリオットが歌いながらなだれ込むのが「ホンキー・トンク・ウィメン」です。12分の「ロードランナー」では、クリームが出てくる、ブラインド・フェイスが出てくる。マリオットの野太いギターに加えて、クレム・クレムスンのギターがクレイジーです。ジェリー・シャーリーの叩きっぷりもすごいすごい。グレッグ・ライドリーも歌いますし、クレムスンも歌っているでしょう。
なんでこのライブが世間に知られていないのか。ハードロック七大不可思議です。あとの6つは知りません。とにかく浴びるように聴くがよい。ぶっ飛ばされてしまうでしょう。2024.03.11
ピート・シアーズが西海岸に遊びに来ていた時に、ブルー・チアーを脱退したばかりのレイ・スティーブンズと会ったことがグループ結成につながったとか。メンバーのシアーズ、ミック・ウォーラー、ハリー・レイノルズとも、ロッド・ステュアートのソロに参加していた人脈です。録音はロンドンで行われています。リリースしたレーベルは米国なので、米国のバンドと考えたほうがよろしいようで…。ヘビーロックのファンには意外と知られている存在ながら、最近見かけることがありません。再発されていないからです。
基本は、ブルーチアーも逃げ出すぐらいのヘビーロックです。ところがエルトン・ジョン曲が3曲に、「スーパースター」(カーペンターズでないほうの…)まで演奏しています。これがあるばかりにレコードの印象がばらけてしまっています。シアーズは器用で、ジャズ調のピアノまで披露しています。
魅力はスティーブンズの重いギターと、ミック・ウォーラーのぶっ叩きドラムズということになるでしょう。ウォーラーは眼鏡をかけ、インテリ風の風貌ながら破壊的な演奏をする人です。これはジェフ・ベック・グループでもお馴染み。ヘビー路線も、ポップ路線も、「太い」演奏に徹していて、強烈な印象を残します。サイケから脱したばかりのヘビーロックをどうぞお聴きください。2024.03.10
マンドランについて調べましたら、17世紀に実在した盗賊密輸団長です。彼は農場主や政府からしか奪わず、高い税金を課せられていた生活必需品を外国から買い付けて安い値段で庶民に販売していたようです。大変人気のある人物で、演劇や漫画の主人公になったり、ビールのブランドになったりしているようです。わが国で言えば、鼠小僧治郎吉とか清水次郎長のような存在であるのかも知れません。「マンドランの息子」というのは、主人公と彼の子どもたちの軽業団のことをさしているようです。
主人公がかけられている裁判から物語が始まります。フランス語に堪能であれば物語がわかる、とよくほかで書かれています。歌詞を和訳してみましたけど、そんな簡単なことではないようです。韜晦と暗喩に満ちた歌詞は容易に物語を想像できるものではありませんでした。アンサンブルより、モノローグや歌ものが多くて、アンジュのダークな世界を好きな人にも難易度高いです。
最後の「人生への賛美歌」という10分に及ぶ明るい大団円が救いです。フランシス・デカン独唱から始まり、徐々に盛り上がっていきます。アンジュが難解と言うなら(実際そうなのですけれど)、「海洋地形学の物語」だって、カルロス・カスタネダの著作を知らなければ理解できません。要は聴き倒せばいいだけの話です。2024.03.09
芸術か商売か。言い古された対比であります。グラム・ロックとジャンル分けされる音楽には抜きがたい制約があります。売ることが自己目的化したフィールドであり、売るためには手段を選ばない。しかし売れなければ退場する、という制約です。芸術であるとエクスキューズすることは許されない。スイートは、バブルガム・ポップ、ヘビーロック、ファンク、ディスコとスタイルを変え、生き延びる道を必死に探したバンドでした。このレコード制作前にリード・ボーカルのブライアン・コノリー脱退。彼らの主軸支持者のティーンエイジャーも、ティーンでなくなっていくわけで、当然求められる音楽の質も変わってきます。時代と迎合して何が悪い。迎合こそ生きる道じゃ、という厳しい掟と向き合うレコードになってしまいました。
邦題「標的」です。邦題「甘い罠」の前作延長路線ながら、コノリーという飛車角を失った彼らは新しい道を模索しています。これがなかなかよろしい。「マザー・アース」は、劇的なプログレ・ハード曲でありますし、「ディスコフォニー」は、ハリウッドB級映画のサントラのようでもあります。英国ディストリビュートは、RCAからポリドールに変わりました。欧州ポリドール盤のカバーが、三人のイラスト。米国キャピトル盤がオープンリールのイラストです。2023.08.02
まず、スイートのファンのかたに申し上げたいこと。全盛期のスイート節が消えたわけでなく、ギターのトーンにしても、ずんどこドラムにしても、そのまんまです。なぜってブライアン・コノリーが抜けても、残ったメンバーが全員ボーカルできましたから。強迫的なコーラスはやっぱりスイートらしく、ここでしか味わえない代物です。惜しむらくは曲が…。ハードロックを志向していた頃は彼らに迷いがありませんでした。「オフ・ザ・レコード」以降チャートが低迷し、スローな「ラブズ・ライカ・オキシジェン」がたまたま売れたものだから、バラードやっていいのか、シンセ・オペラやっていのか判らなくなってしまったのです。
折しも英国シーンは、パンクとスカ・ビート一色の時期です。スイートは、この時期から米国をマーケットに考え、拠点も米国に移すようになります。でも米国で完全に無視された、という悲しい盤でございます。リード・ボーカルはスティーブ・プリースト中心で、曲を書くのはアンディ・スコット中心だったはずです。アンディ・スコットは悩んだことでしょう。ハード志向は彼のものでしたから。
わたしはパンクの源流を、ドクター・フィールグッドとブレンズレー・シュバルツである、と突き止めました。人気なくてパプでしかやれなかったバンドたちが、巨象ヒットメイカーだったスイートを追い詰めるさまが見えるようです。2024.03.08
スリー・ドッグ・ナイトは、よく知らないと言いますか、自分の聴く対象とは思っていませんでした。だって歌手でしょ、というのがひとつの理由。だってポップスでしょ、ロックじゃないでしょ、というのがひとつの理由です。密かな愉しみで「ランチの女王」を見返しているんです。例によって便利なサイトがありますから。竹内結子さん好きですし。…で、「ジョイ・トゥ・ザ・ワールド」ぐらい持ってなきゃならんわ、と思って、先日カケレコさんからこれが届いた次第です。
のけぞりました。ホワイト・ソウルっぽいグループということは知っていました。びっくりしたのが、フリーに、スペンサー・デイビズ・グループに、アージェントに、スプーキー・トゥースじゃないですか。誰ですか。歌手でしょ、とか言っていたのは。ポール・コゾフをほうふつとさせるギターや、マイク・ハリスンをほうふつとさせるピアノなんて、おいそれと弾けるものじゃありません。相当に英国好きな人たちだったようです。
オリジナルの「ファイア・スターター」がまた立派です。初期のジャーニーのような音の洪水状態で、とても興奮しました。そして70年代の、よい時期のソウル感覚があります。素晴らしいです。2024.03.07
珍しい盤が入ってきました。北米サイケとはどんな音楽なんだ、と聞かれたとき、ドアーズやビッグ・ブラザーといっしょに差し出したくなる音楽です。CDカバーを裏返すと、チョコレート・ムースのレシピが書いてあり、うっかり作ってみようかと思い立ちます。まず、死んだムースを用意し、いらないパーツを切り落とします、とあり、この食材がヘラジカであることがわかります。ほかの食材はクジラの骨髄やアルバニアの生きた蜘蛛。これをヘラジカの肉に混ぜて、土中に10日…。全編真面目とも不真面目ともつかないポップな青春歌謡であふれています。ボーカルが本気なのが妙に音に合っていません。このぶっとび具合を楽しみながら、ドラッグでパーティするのが、この音の正しい聴き方なのだと気づきます。
演奏ではザクザクしたリズムギターと酩酊感のあるリードギターが印象に残ります。展開のないどよ〜んとした音を聴かされるのではなく、2分程度のめりはりある曲たちなのであっと言う間に終わってしまうでしょう。10曲で24分しかありません。CDの曲順クレジットと実際の曲順が合っていません。どれが正しいんでしょう。驚くことにリード・ギターは、ハワード・リースなのですわ。ハートの。2024.03.06
南部にとってレイナード・スキナードは、伝説なのでありましょう。それにしても、亡くなった兄の遺志を受け継ぎ、弟がバンドを存続させるというストーリーは、少年ジャンプのようであります。しかも、ジョニー・バン・ザントの90年代は、70年代と比較しても音楽の出来がよかったのではないでしょうか。ひとつには音にブレがないところ。ひとつには、ハードロック路線を一貫したことが魅力の再発見につながったとわたしは見ています。ロニー・バン・ザントの頃と比べても、悲哀感に押し流されることがありません。
この盤は、レイナード90年代の復讐戦が始まった盤です。かつてよりブルーズも、カントリーも控えめにして、ロックンロールのど真ん中を追究する意図です。最終曲「エンド・オブ・ザ・ロード」の明るさには、どなたも勇気づけられると思います。俺は兄貴の遺志を継ぐ。そして「フリー・バード」のような泣き叫ぶトリプル・ギターには泣けてきてしまいます。いや、わたしだけか。
伝統的な秩序と家族を大事にするところが南部の魂です。兄弟で魂の受け渡しをしたオールマンやレイナード。親子で魂を受け渡したデレク・トラックス。さあ、あなたも南部の音を聴きたくなってきたのではないですか。2024.03.05
わたしの高校3年の夏は、スティクスのビニール盤とホラー映画のためにあったようなものです。本当は予備校夏期講習に参加するため、東京にひと月滞在していたのでした。何しろ輸入盤が約千円で買え、映画が300円で見れました。毎日予備校でなく、新宿と池袋に通っていました。都市部に生まれた人には想像つかない田舎者の時間の使い方でしょう。なぜスティクスが好きだったかと言えば、だれも聴いていなかったからです。ボストンやTOTOじゃ嫌だったのです。
彼らの本拠地はシカゴ。いかにも自動車を組み立てるように、効率的に分業して仕上げた音です。今度のテーマはバレリーナでいくから、それぞれ合わせた曲を書いてくるように。ジェイムズ・ヤングとトミー・ショウがそれを書き、持ち寄っては素晴らしいコーラスとギターでそれを組み立ててしまう。深みはないかもしれないですけど、口当たりの良さとギターのワイルドさ、リズムのソリッドさは、他の追従を許しません。ボストンのリズムと比べると判ります。ロケンローし続ける男たちなのです。なんとなく高級感ある庶民のハードロック。いいんだ、庶民にわかる程度の高級さで…。
これを意図してやっていたら、あざといと言われてしまいます。でもスティクスの面々は天然。IQはそこそこで、組み立て上手な工員というところでないのか、と…。ひどいこと書いてしまいました。2024.03.04
もう髪の毛を染めたり、ウェーブをかけたりしないのです。カバーになっているアレサは、西アフリカの伝統衣装を着て、自信ありげにしています。先立つフィルモア・ウエストのライブで、彼女は白人の聴衆を前に白人ポップを含めたレパートリーを歌い、成功を収めました。「ヤング、ギフテッド、ブラック」は、ニーナ・シモンのオリジナルで、アフリカ系米国人の自立を歌った曲です。アレサは、自分たちの立場をより広げる形で活動を開始したのでした。ピアノを弾いているダニー・ハサウェイは、自身のレコードでもこの曲を演奏しています。
「ヤング、ギフテッド〜」こそゴスペルですが、曲のジャンルは百花繚乱で、もうそんな区分けは超越しています。アレサのこのレコードは、その後のソウル・ミュージック隆盛の基調となったと思います。ブルーズみたいにアフリカ系の悲哀を曲にする様子は全くありません。彼女の誇りと自信がどれだけ人を勇気づけたか。それどころか、アトランティックの制作チームや、バックの優れた音楽家もアレサに引っ張られている気がしてくるほどです。バーナード・パーディとチャック・レイニーがリズムを担っています。この二人さえ、アレサの魅力にでれでれしている気配がありますもん。
それにしても名盤ばかり何枚も持っている人です。2024.03.03
3月と思えない寒の戻りです。こういう日は、ハードロックで暖まりましょう。すみません、一年中同じパターンで。彼らのことを、米国音楽に憧れ、米国を市場にして活動するスコティッシュ野郎だ、と何回も書いてきました。ライナーで読みましたら、まじにそう書いてありました。この盤、米国ロックのカバーがありません。曲が出来て出来て上昇期にあったことが伺えます。「シャンハイ・イン・シャンハイ」のブギ・ロックからアクースティック曲まである多彩ぶりです。間違いなくピークを迎えていた時期です。
ダン・マクフェルティのしゃがれ声がこのバンドの特長で、ゆえにリズムの重さを聞き逃していたのが自分です。ピート・アグニューのぶんぶんベースこそが推進力なのだ、と最近思っているところです。ベースが裏メロを担うことも多くて、アグニューは曲づくりでも中心だったのではないかと。録音はスイスのモービル・スタジオ。そう、「スモーク・オンザ・ウォーター」の録音で使われたユニットが、それ以来の登場のようです。バッド・カンパニーに似た深いブルーズ「ラブド・アンド・ロスト」が泣かせます。
満を持してやってくるのが「シェイプス・オブ・シングズ」、この曲のカバーで最も好きです。ダレル・スイートの盆踊りビートは拍手なのです。二度叩いて音を重ねているんじゃないでしょうか。体育館で足踏みしながら踊るのにぴったりです。2024.03.02
「サージェント・ペパー」「ドアーズ」「シュールレアリスティック・ピロウ」が出た67年夏です。ママズ&パパズの前座として上がったステージで、聴衆はまだエクスペリエンスを知りません。「ヘイ・ジョー」と「パープル・ヘイズ」はシングルとして出ていました。まだFM局は、その2曲をオンエアする耳を持っていません。
この爆音高速トリオを聴いて、聴衆がどう思ったか、です。歓声のたぐいは遠すぎて、受けているのか、だめだったのかも判りません。たぶん、あっけにとられているんだと思います。MCはミッチ・ミッチェルが引き受けています。ジミは緊張したのか、「ウインド・クライズ・マリー」の歌詞を忘れてしまう始末です。固くなっているエクスペリエンスという記録はなかなか貴重でありますが、ヘンドリックスをこれから聴こうと言う人にアピールするまでいかないと申し上げます。ボブ・ディランとトロッグズをやったのは、聴衆サービスで、このパートまで来てやっとヘンドリックスは余裕が出てきています。
聴きものは「キャットフィッシュ・ブルーズ」でしょう。ユーザーより先に、ポール・マッカートニーやミッキー・ドレンツがヘンドリックスの音に衝撃を受けていました。面白いのが、ママズ&パパズのメンバーさえ、フォークなんかやってちゃダメなんじゃないかと思い始めたと証言されていることです。2024.03.01
あえて辛口に書きます。この盤は、ウィルスン・フィリップスが自然にブロークアップした後、12年ぶりに3人が再会し、西海岸にちなむバンドの曲をカバーしたものです。もとの曲を超えるカバーはありません。残念なのが「ゴー・ユア・オウン・ウェイ」や「ターン・ターン・ターン」のアレンジまでまるで変えていることで、弦楽オリエンテッドなコーラスは、場末の落ち目芸能人にしか感じられません。なぜ、リンジー・バッキングハムのぐいぐい弾くギターや、ロジャー・マッギンの12弦をカットしたのか。これらのもと曲は、ロック黎明期の西海岸のティーンエイジ文化と不可分なものであり、単なる楽曲ではありません。弦楽で代用できるような「やわ」な曲たちでないのです。
「マンデー・マンデー」やビーチボーイズのカバーは、それなりにロック魂を感じます。親父のやっていた曲だから手を抜けなかったということでしょう。なら、もっとほかのアーティストにもリスペクトを払ってもよいのではないか、と。結局彼女たちはセミプロでしかなかったんだと思います。曲もろくに書けなかったし…。よいコーラスとチームワークを持っていただけに、この程度で落ち着いてしまったのが残念なのです。
彼女らのファースト作の輝きを知っているだけに、それ以後企画盤しか出せなくなったことを悲しく思います。2024.02.29
ツェッペリンを無理やり整理すると、すでにプロとしてやっていたペイジとジョーンズが、新人ボーカルとドラマーを鍛え上げていった道のりということになろうかと思います。対するにグレタ・ファン・フリートの4人のうち3人は兄弟です。ツェッペリン、フリー、クリームをずっと練習していたという彼らは、出発点から目線が揃っていたんです。曲を書くのも4人で合作。スタート段階でブルーズを新人に教えなければならなかったツェッペリンは、歌詞は正直どうでもよろしい。対するにグレタの歌詞は、最初から人類が力を合わせる、というような視点を持っています。あまりにツェッペリンのコピーと言われるので、最初に相違点を整理しました。
たしかにアレンジと演奏はツェッペリンに似ています。でもメロディや曲の完成度は初期のツェペリンと全く違います。勢いでつくったような曲がありません。具体的にどの曲のどの部分に似ているかと問われたら、アンチ・グレタの人は答えられないと思います。全体の雰囲気が似ているのは、彼らがそれで育ったんだから当然です。むしろこれだけ近づいた演奏ができるほうが脅威であります。
書いておかないといけないのは、彼らと感染禍との関係です。人類の連帯による新しいステージへの到達、という、漠然と持っていた目標が、この2年後にリアルな目標になったことです。第三作が出たのが2021年で3年もかかっています。その間、満足にツアーもできないような状態の中、彼らはさまざまな経験をし、異様な風景を目にし、人と出会った、と。これは3作目のインタビューで発言されていました。ハードロック史上、これほど重い使命感を持ったバンドはおりますまい。わたしは、彼らの真面目さに触れるにつけ、震えるように感動するとともに、若干不安になるんです。もっといい加減でいいのに、と。2024.02.28
わたしの周りでは「ゴジラ・マイナス・ワン」の評判が良くないのです。いわく昭和ゴジラが最高。セリフが冗長。子役の演技が云々。どうして優れたこの映画の物語と特撮、音楽をみんな感じないのだろう。反論するより、劇場ですすり泣きながら観ている人たちと時間を共有したいです。グレタ・ファン・フリートも、ハードロックのリスナーであるほど否定的なことをおっしゃいます。どうしてこんなに優れた音楽を感じようとしないのでしょう。わたしは涙まで出てくると言うのに。
彼らはこのCDをEPと認識しているらしく、実際「アンセム・オブ・ザ・ピースフル」に比べるとまだ大味です。しかしこの張りまくったスネアの音、ジャック・ブルースのようにうねるベースを聴いてください。余裕しゃくしゃくのふざけたギターを聴いてください。そして声の出なくなったロバート・プラントが跪きそうな魂の声を聴いてください。あなたは、ハードロックに浸かってしまった自分の人生に悔いが残らないはずです。もうツェッペリンの音が必要なくなると書いたら書きすぎでしょうか。
わたしが彼らの強みだと思うのは、ゼップ的でありながらエモーショナルなメロディーを持っているところ。よく聞けば全部グレタのオリジナルです。グレタ・ファン・フリートは、実際に会話で聞いたオランダ系米国人おばさんの名前だとか。こういういい加減な理由でバンド名をつけるセンスもいいです。
この先、グレタの新作待ち遠しいなあ、と思いながら死んでいく老後を想像してしまうんです。2024.02.27
ロック界広しと言えど、ウィルコ・ジョンスンほどの顔芸をもつ人はおりますまい。輪郭がリアルなフランケンシュタインの上に、ナチュラルに口が「へ」の字をしています。画像検索されてみたらきっと驚きます。そんなジョンスンが、自分はもうやり切った、とばかりに潔く脱退してしまった後の第四作です。一説には前作ライブが全英一位となったプレッシャーで、曲が書けなくなったとも憶測されています。彼のがりがりひっかくリフと、焦げ付くようなギターが聴けるのが「スニーキン・サスピション」冒頭曲です。
だいたい「アリバイ・クラブ」って何なんですかね。ロンドン警察組対課が絶対マークしているでしょう。ドレスの女性を尻まで出させて何やってるんですか。ここまでヤバいカバーアートを持ってきている割に、ジョンスンの曲が半分、ブルーズとR&Rのカバーが半分。ハワイアンまであるという内容で、一部には不評です。しかしですよ、ウィルコ・ジョンスンの危ないギターは全編にわたっています。最初三枚のスピード感がすごすぎたせいで、ヘンに大人しく感じるという不幸な盤です。
リー・ブリローがところどころでブルーズ・ハープを吹いていて、これがなかなかです。お茶らけた曲が挟まれているのが、若干残念。でも失望はないと思いますよ。2024.02.26
7T’s執念のボックスです。ミスター・ビッグは「恋するロミオ」「麗しのザンビア」で知られていた英国のハード・ポップ。ナザレスやクイーンのオープニング・アクトとして活動、メジャー・レーベルと契約。リーダー、ディッケンのエキセントリックな曲づくりとダブル・ドラムズ編成4人組で、いまだにカルト的なファンがいます。ところがLP発売が英国で2枚、米国1枚に留まり、業界からフェイドアウトしていき、何度か試みられた再結成も成功していません。高速でどかどか叩くドラムズや金切りギターは、このバンドならではです。
「スイート・サイレンス」(邦題「甘美のハードロッカー」)は、出世作であり、中華風ハードロックの「ザンビア」が入っています。米国カントリーへの憧憬こめた曲もあり、パンキッシュな高速ロケンローもある、といういまだ新鮮な盤です。LP発表前のCBS時代シングルが追加収録されています。これが何よりも宝物。制作はジョン・パンター。
「ミスター・ビッグ」は、英国セカンドでこのカバーアートでは世界初CDです。制作拠点を米国に移し、米国マーケットを見据えて制作。「ザンビア」のアフロ・アレンジ曲もあります。ドラムズのチューニングが違う曲があり、サイモン・フィリップスが代わりに叩いているようです。米国ではファーストからの数曲を含めたコンピレーションとして発表されました。
そして「セップク」は、2001年にAngelAirが出すまでお蔵入りだった第三作。つまり正式なカバーアートがありません。メンバーは6人体制です。シングルの「セニョーラ」発売後に、レーベル側がアピールできないと判断し未発に終わったのです。今では三枚ともプレ値を覚悟しないと入手できません。レーベルがまたがっていることを考えると最後の復刻の可能性が高いと思います。2024.02.25
とんでもないものがカケレコさんのカタログに入ってきました。ルース・コープランド、英国人シンガー兼作曲者でレーベル・オーナーの妻。モータウン傘下のインビクタスで、パーラメントのデビュー盤と同時並行されたいわくがあります。一種のキワモノと言ってもいいと思います。シングルになった「ミュージカル・ボックス」の終盤、ルースは泣きだすのです。ほかの女性と結婚すると手紙を貰った主人公が、飛行機に乗り、彼にオルゴールを渡しに行くという曲。主人公の泣きのバックが、子どもたちのコーラスです。これは変だ。演奏がパーラメントの面々というのもすさまじい。オペラからハードロックまでやる雑食さです。
セカンドも同様でさらに気合が入ります。上手な歌手とまでいきません。でも声の伸びでは世界一ではないかと思っているのです。「プレイ・ウィズ・ファイア」はスローで始まり、徐々にハードロックへ。脳天に響く声とはこういう人を言うのでしょう。瞬間風速でジャニス・ジョプリンを超えます。また、エディ・ヘイゼルのギターが重いんです。ヘンドリックスみたいで。そう言えばパーラメントにも泣き出す曲がありました。
ジョージ・クリントンにもモータウンにも興味がない人でも大丈夫です。ルースの声が別世界に連れて行ってくれます。しばらく帰ってこれないですけど。2024.02.24
この盤、とても良いです。グラム・ポップ好きと言いながら、聴いたことなくてレビューするため取り出してみました。なんで今まで聴かなかったかな…。音はデイビッド・ボウイのそのまんまコピー。ギターとピアノが退廃的な豪華さ。「ジギー・スターダスト」と比べてもさらにグラマラスでハードな音です。わたしの所持しているRHINO盤ではまともなクレジットがありません。西海岸のスタジオ音楽家(ピーター・フラムプトン参加とか、ほんとかいな…)がこれをやっているらしく、全く隙がありません。そして存在感あるのが主役ジョブライアスです。色々な歌い方しておりまして、バラードはボウイっぽく、ポップ曲はスレイドっぽく、それが天才的に上手いのです。
彼は、つくられたアイドルとして、売れもせずシーンから消えていったようです。80年代のポストパンクの人たち、特にモリッシーがジョブライアスのファンであることを公言し、編集盤までつくっています。本人はひっそりと孤独に亡くなっていた、という。カケレコさんでも「PIDGEON」という彼の在籍していたサイケ・バンドのCDが復刻されて売っています。知る人ぞ知るのアーティストです。わたしは心に響きました。孤独感と一時しのぎの喧噪が肺腑に沁みます。「宇宙のピエロ」なんて曲には泣きそうです。2024.02.23
この盤よいと思われますか。ザ・バンドの線を狙っていることは明らかです。でもそうじゃないんですよ。レボン・ヘルムはそうは叩かないんだ。もっとタメてモタって、ばらばらっとしてなけりゃ。そしてコーラス。リック・ダンコは、そうは歌わないんだ。もっとばらばらに、いい加減にコーラスつけてるんだよ。全体に、ジャスト・タイム過ぎるんだよな。3000メートル全員で走って、はあはあしながら演奏しているみたいなのが、ザ・バンドなんだよ。なんでワルツ曲を二つも入れるかな。飽きちゃうじゃない…。文句たらたらで本当にごめんなさい。ザ・バンドの音に入るのに20年ぐらいかかっているもんだから、逆にブレンズレーの音に入れないのです。
合宿で制作されています。経費を浮かせるために。しかしバンドの「ビッグ・ピンク」は、もっと安っぽいぺらぺらの家でした。ブレンズレーはもっと貧乏を突き詰めるべきだったんじゃないでしょうか。バンドは、食うものがなくてコストコで万引きしてツアーしてたって、ラスト・ワルツの中で語られてますぜ。
曲はそれぞれいいんですよ。要は演奏に疲れが足りない。致命的なのが下手なドラムズ。これは書いておかないといけません。叩けばいいってもんじゃない。ニック・ロウの歌うベースだけは素晴らしいです。2024.02.22
津軽じょんがら節をエレキでやってしまった寺内タケシを思い出してしまうんです。「荒野の用心棒」をやってしまったアラン・シャックロックのことです。黒澤明の乾いた脚本を、欧州で撮影したこの映画。ひょっとするとジャニタ・ハーンの魅力だけで一杯一杯になるところだったバンドの、精神的屋台骨がシャックロックです。自分の好きなものをノンジャンルに音にするんだ、という下世話なプレッシャーに勝利しています。音楽は芸術だ、と気負っていたら、この盤は成功していません。
そう。シャックロックたちは、「見世物」になることを望んでいるのです。素晴らしいのが冒頭。ゴジラがゆっくりと海中から姿を現すかのような、徐々に迫りくるリズムとギター弾き降ろし。続いて最強ボーカリスト、ジャニタ・ハーンの絶唱です。ああ、なんて美しくて重ったるいんだ。よいねぇ。よいねぇ。この脇肉をしっかりホールドしてくれるところが…。…すみません。補正ブラの広告と混線してしまいました。このテンションが6分続きます。もっと弾いてくれ〜いい。
ベイブ・ルースは、公式盤が5枚、うち3枚にシャックロックが参加しています。湿り気が過剰な第一作、第二作に比較して、もっとも乾いた見世物に徹している盤です。シャックロックのギターに五つ星をつけざるを得ません。2024.02.21
学校生活に戻りたいと思われますか。スタンリー・クラークにとってガキの頃はハードロック少年だったようで、1曲目ですさまじいギターが鳴っています。昼寝していたら、自分が少年だった時期のことを夢に見た。そんな感じの出だしです。こう見えて学園祭じゃ人気者だったんだぜ。今じゃ校舎のペンキを塗る立場だけどな。
この盤を聴くのに、ジャズとかフュージョンとか考える必要は全くありません。肩の力が抜けた都市音楽でありまして、出た当時は世界で最も進んだスタイルでした。例えば「ダンサー」は、サンバ・ホイッスルが鳴るラテン曲です。リズムが少々いじってあります。セカンドラインのビートにのるファンクなのです。曲はラテンで、リズムは後ノリ。頭は前のめり、腰は後ろにぐいっと引かれる。とても面白い曲です。
全体に、聴き手をくすっと笑わせるようなトーンで統一させています。ウエザー・リポートやリターン・トゥ・フォーエバーにない、新鮮さは、この余裕から来ています。速弾きだけでない彼の知的な側面が出ている盤だと思いました。2024.02.20
わたしの苦手な、しんがあそんぐらいたあ、という呼称をフラムプトンに対し使うメディアはありません。彼がハムブル・パイという歴としたバンド出身であるからだと思われます。なら、ジョン・デイビッド・サイザーはどうなんだ。彼もバンド出身ではないか。実に不可思議な呼称なのです。なのでわたしは、この呼称を使うに潔しとしません。曲「アイム・イン・ユー」にクレジットされているのは二人。バンド一辺倒ではなく、曲ごとに違うメンバーと他流試合しているのがこの盤です。
わたしは彼のことをロックンローラーと思っています。ところが、この盤が出た当時、フラムプトンは二匹目のドジョウ(つまり大ヒット)を狙う商売人であり、聴く必要はないという論調に支配されました。スティービー・ワンダー、ミック・ジャガーのワンポイント起用も評判を呼びませんでした。
リトル・フィートのファンであるフラムプトンが、その音を実験しようとした「ビー・マイ・フレンド」がこの盤のキモだと思います。8分もあります。セカンドラインのビートを監修、参加しているのがリッチー・ヘイワードという本格ぶりです。彼がローウェル・ジョージ流のスライドに挑戦しているのが実に楽しいです。こうした素直な実験をやってしまう人なんです。商売人なわけないじゃないですか。2024.02.19
天気に恵まれて畑を耕しに行きました。フキノトウを採りながら…。わたしは耕作機械を使わないのでシーズン始めが腰に来るんです。なので土臭い音を聴きましょう。
JJケイルは、ブルーグラス・ミュージシャンのジョシュ・グレイブズとバッサー・クレメンツを尊敬していたようで、二人のドブロとフィドルが聴けるのが「イフ・ユア・エバー・イン・オクラホマ」「ルイジアナ・ウーマン」。ここがピークとなっています。多彩なギター全部をJJが弾いているわけでもないようで、何人かのギタリストがクレジットされています。しかしJJの音楽をギター音楽と言えるかと言うと難しくて、ピアノが主体でギターがほんの少しとかの曲もあるんです。ラテン・パーカッションが多いのもこの盤の特徴かもしれません。
ゆるくて音数が少なく、あっという間に終わってしまうのがJJ。選び抜かれた音なのでカタルシスは十分。ただ、もっとやってくれと思っているとフェイドアウトしてしまうので、身もだえしてしまうのです。クラプトンが影響受けたんだろうな、と思えるのが「チェンジズ」。ここで聴けるJJのトーンは、後年のクラプトンにそっくりです。ほかに「ゴーイン・ダウン」のカバーもあります。鳴らしているととても豊かな気持ちになれます。2024.02.18
ジャズ盤の表紙でアイコンになるほど有名なのは、ソニー・クラークの「クール・ストラッティン」か、この盤ではないでしょうか。マイルスのコロンビア移籍盤であり、ジョン・コルトレーンのデビュー盤でもあります。ビッグ・バンドやコンボもよいですけれど、この盤は五重奏の魂を削り合うようなやり取りが聴ける盤です。「ラウンド・ミッドナイト」は、ミュートしたトランペットの気だるいメロディから始まります。次にサックスの演奏に引き継がれます。コルトレーンとしたらおっかなびっくりの参加だったと思うんです。でも度胸は十分。マイルスと同じ音量で堂々と渡り合っています。演奏が終わったときの彼のぜいぜいとした息吹まで感じ取れるような演奏です。
最初、ソニー・ロリンズかキャノンボール・アダレーに頼もうとしていたらしいです。ですが、二人は諸般の事情でだめで、ほかの人もフィーリングが合わない。コルトレーンを見つけてきたのはフィリー・ジョーで、抜擢したのはマイルスの慧眼。しかもやるのはセロニアス・モンクの曲。考えただけで震えるような緊張ですね。
この曲だけ別格の緊張感で、ほかの曲はわりと自由なセッションです。ピアノのレッド・ガーランド、ベースのポール・チャムバーズ含めアフリカ系人の躍動感が楽しいです。2024.02.17
英国の音と米国の音を初見で判別できるのがなぜなのか、ずっと考えています。思いついた仮説が、英国の音は「決める」。米国は「決め過ぎない」。例としてクイーンの「ファット・ボトムド・ガール」を重い浮かべてください。カントリーを中心にしていても、ボーカルやギターに遊びや隙がありません。ユーザーは解釈の必要なく曲に没入することができます。対するにザ・バンドです。彼らの音はユーザーがいろんなことに思いを巡らして、やっと腑に落ちる仕掛けになっています。
ブレンズレー・シュバルツの音は、米国志向の音であります。それもザ・バンドよりかは、ニール・ヤングです。ヤングの音が、聴きようによってカントリーにもグランジにも聴こえてしまうように、ブレンズレーの音はユーザーの解釈を許します。唯一、ザ・バンドやニール・ヤングと違うのが疲労感です。メンバーが若いせいもあるでしょう。英国の若者が米国カントリーをリスペクトして演じてみました、の世界であると感じます。
ハードロック患者には「オールド・ジャロウ」のギター弾きまくりをおすすめしましょう。ザ・バンドのユーザーには「ピース・オブ・ホーム」のゆったりしたベースと流れるピアノです。「スターシップ」の酔いどれカントリーワルツも素晴らしいです。2024.02.16
自己紹介から始まります。俺はグリ・グリ(ブードゥーの杖)を手にしたドクター・ジョンだ。俺には全ての手段があるし、俺に治せない病気はない。手段というのは、幻覚をもよおす葉っぱとか、人骨の粉末とか、アシが8本あるトカゲの燻製とかなんでしょう。危ない。危なすぎる。ドクター・ジョンというのはブードゥーの呪術師のことなんだとか。バックに従えるナイト・トリッパーズというのも、夜、徘徊する幽霊かゾンビのことなんでしょうよ。
ドクター・ジョンは、ニューオーリンズのアフリカ系コミュニティの中で育ったんだそうです。サッチャ・ナイト、と飲んだくれている、気のいいおじさんでは全然なかったのですね。リトル・フィートがニューオーリンズの表のところを吸い取って、ドクター・ジョンは、裏通りの危ないところを吸い取ったという。音楽は全然ノレるものではなく、両手を挙げてふらふらと腰を揺らすようなリズムに終始します。「ジャンプ・スタディ」は、「暗い日曜日」の歌詞なんだそうです。ヘタに近づかないほうが身のためです。この音楽のどこがいいんでしょう。
「アイ・ウォークオン・ギルデッド・スプリンターズ」のダウンなビートを聴いていると、ゆっくりと毒が回ってきます。グリグリでガンボ(ごった煮)な盤です。2024.02.15
性急なフルート(ときどきサックス)が印象的なマンチェスター、71年のアングラ・グループです。メンバーにジャズの素養があるのは明らか。それだけでなく、深いブルーズ・フィーリングのギターが良いです。4曲目に「ハンターズ・ソング」という少し長いインタープレイを聴かせる曲があります。いったんテンポを最低まで落として、再び立ち上がるさまは、かなりイケています。キャロル・グライムズをメインにしたジェスロ・タルと考えていただくと近いかも知れません。いや、全然違うかな…。
このグループの魅力の9割を支えるのが、リンダ・ロスウェルという21歳の歌い手です。舌足らずで、リズム感抜群で、こぶしが回る。若い頃の江利チエミさんのようです。彼女の声で3割は高級に感じられるわけです。気の毒なことに、リンダさんはデビュー盤制作後に発病した、とのことで、グループは一枚きりに終わっています。裏路地で犠牲者を待ち伏せするギャングと女ボス、という雰囲気の裏カバーが迫力です。
ゴリアテ、ゴライアスというバンドは、少なくともあとふたつあるようです。(米国のゴライアスは、けっこう好きです。)某シアトル本社の巨大通販サイトは、この三つのゴライアスの区別がついていません。嘆かわしいことです。2024.02.14
映画「マトリックス」で、機械社会に対抗する地下の国「ザイオン」。マトリックスから逃れた人間と、オリジナルな人間とが暮らす抵抗都市なのですが、何の比喩だと思われましたか。「ザイオン」とはアフリカ大陸の別名なのです。アフリカ大陸に全ての根源を求め、連帯と反戦をテーマにするのがこの盤です。「ジンバウェ」「アフリカ・ユナイト」「バビロン・システム」と、曲名を並べただけで、これがリゾート音楽とは違うことが明らかです。リスナーには誤解する自由がある、という人もいます。でもボブ・マーリーやレゲエだけは誤解してはいけないでしょう。あまりにも音楽が優しいですか。この優しさにたどり着くまでに、どれほど血が流されたか想像するのもリスナーの仕事と思います。
80年代以降、アフリカは辛酸を舐め尽くしたと思います。欧米に略奪された、というよりも、内戦とアフリカ同士の戦争に明け暮れ、難民がまた他国に逃れ、という歴史です。ボブ・マーリーの理想主義は敗北したんです。でも南アフリカは民主化し、ジンバウェやナミビアは独立国家になりました。この盤の音楽は、もはやプロテストだけでは語れません。音楽が現実社会に影響を及ぼした少ない実証例です。マーリーの伝記映画は、5月にわが国で公開されることが決まりました。その日を待ちたいと思います。2024.02.13
予備知識なしで聞かされたら、8割の人がビルボード20位と見積もると思います。ラス・バラードは、書いた曲が誰よりも有名なのに、書いた本人が無名という不遇な人です。ところがこの盤のバックを固めるのは、ルカサー抜きのTOTO人脈とデイビッド・フォスター。どれだけバラードが他の音楽家に敬愛されていたか、わかろうというものです。ところであなた、ルカサーを「アラサー」と同じイントネーションで言ってませんか。恥ずかしいと思います。ジェフ・ベックの「ベック」を、「月賦」と同じイントネーションで言うのと同じぐらい。制作はキース・オルセンで、バラードが米国に殴り込んだ作です。
アージェントの「ライアー」や、ハローの「ニューヨーク・グルーブ」で、わたしの中では作曲家バラードは既知でした。でもソロはどんな感じなのかな、と。…ギターも声も実に見事で、千両役者で言うことありません。彼がパフォーマーとして成功しなかったのが謎です。しかも彼の書くメロディが英国の湿り気があって実によいのです。米国ポップのメロディって、リスナーに解釈を投げる気がします。そこを踏みとどまって、リスナーが誤った解釈しないところまで作り込むのが英国流。「エクスプレスウェイ・トゥ・ユア・ハート」がよい例です。2024.02.12
奇妙なことに60年代の欧米では、ドラッグは「体に良い」と考えられたフシがあります。オルダス・ハックスレイの「知覚の扉」なんて著作もあります。わたしは読んでも何のことかさっぱり理解できませんでした。そればかりでなく、セックスやロックンロールも知覚を広げるため、新しい感覚を得るためと若者や左系の学識者が飛びつき、どんどん依存症患者を量産していったのでした。わたしも音楽依存症がこのトシまで治らず、「死に至る病」となっています。(ごめんなさい。わざと誤用して書いています。)トウィンクにとってサイケデリックは同様の病だったのでしょう。70歳を越えても続いているようですから。
野蛮なビート、ざくざくしたギター、歪んだギター、女性の喘ぎ声…まあ、なんでも叩き込んであります。トータルに音楽として楽しむことは難しく、この雰囲気を味わって解放感を得るか、危ないパーティの背景に流しておくことになるのではないでしょうか。サークルの内側に入らないと楽しめない音楽の典型です。これを絶賛する人がいる一方、ドラッグも知らず若者でもないわたしは、ひたすら疎外感を味わっています。何を楽しめと言うのだろう。
シド・バレットとかティラノザウルス・レックスとかピンク・フェアリーズとかのユーザーには必携盤かと。彼らの危なさが実感できます。2024.02.11
たったひとつの新曲で、話題を全部そっちに持っていかれてしまう。60年代の力関係が、いまだ生きているかのようなストーンズの2023年だったと思います。とは言いつつ、ストーンズの新譜と聞いてもなかなか手が伸びないわたしです。彼らのピークは60年代と思っているからです。60年代の中でももっとも地味なレコードを書きましょう。「ゼア・サタニック・マジェスティーズ」が黒歴史として有名なことに比べても、このレコードのスルーされ方は尋常ではありません。
地味といいつつ、渋いかと言えば全然違います。「イエスタデイズ・ペイパーズ」から聴いていきましょうか。ビブラフォンを叩いているのがブライアン、ハープシコードがジャック・ニッチェだったと思います。使用楽器だけで聴きたくなりませんか。ディキシーあり、ザディコあり、サイケデリックありの多彩な曲たちは、リスナーに焦点を絞らせません。シングルのB面曲だけで構成されているような多彩さです。チャーリー・ワッツの不愛想なドラミングから始まる曲が多いのも、ベースが立っている曲も多いのも、この盤の特長です。ストーンズ展覧会になっているのです。
ブルーズはもう終わった。ライバルのビートルズは、違う地平に行ってしまった。俺たちは次のベクトルをどこに向けていけばいいんだろう。指摘できるのはキンクスの影響です。「クール、コーム&コレクテッド」は、キンクス・レパートリーに入っていておかしくありません。このピアノはニッキー・ホプキンズでしょう。2024.02.10
シンセサイザーという新しい楽器を取り入れたのは、マイルス・デイビズ、クラシックではテリー・ライリーだったと思います。最初この楽器をどう弾いたら効果的なのか誰もわかっていず、オルガンの代わりとして使われました。その後ELPやタンジェリン・ドリームが使い方を開発し、次第に弦楽器、管楽器の代わりとして使われるようになっていきました。フランソワ・ブレアンも、その意味では管楽器としてシンセを使っています。しかし、このレコードの良さはバンド・サウンドにあります。クラシックとジャズ、ラテン、アフロを混合させ、まったく新しい電子音楽にしています。
特に良いのがリズムです。ブレアンはたった2枚しかロングプレイを残さず、その後アフリカ系音楽家のアレンジャーになっていったらしいのです。電子音楽と言えば単調なリズムという先入観を軽く破壊してくれました。フランス人は音楽を頭で考える傾向が強くて、難解で観念的なシンセ音楽が、この時期粗製乱造されました。ブレアンが考えていたのが、くすっと笑えるようなウイットとダイナミズムにあふれた音楽でした。
バンド・サウンドに貢献しているのがマグマの人脈です。ティデイエ・ロックウッドのバイオリンや、クラウス・ブラスクィーの声はとてもインパクトあります。ちょっとフランク・ザッパに似ているところも。2024.02.09
わたしの悪癖にラーメンをご飯と食べること、があります。きょうもやってしまいました。定期的に衝動が訪れて、むしゃくしゃすると食べに行ってしまうのです。お金をかけずに、ストレスを解放するのに、日帰り温泉とラーメンはもっともコスパのいい方法だと思っています。もっとコスパのいいのが畑仕事ですけど、現在わが地方は雪で耕作ができません。なので冬はラーメンの頻度が上がってしまうのです。ご飯を食べながら、スープを飲み干すと陶然とします。いけない、また食べたくなってきました。
さて、フォガットの中でも「ナイト・シフト」のカロリーの高さは別格です。なぜギター2本とベース、ドラムズだけのロケンローがわたしを感動させるのか。ベースを聴けば自由ですし、ギターを聴けば余裕しゃくしゃく。ドラムズは、リンゴ・スターみたいなぶっ叩きビート。ロッド・プライスのスライドには目が覚めます。この音、出したくてもなかなか出せないですよ。バッド・カンパニーの「キャント・ゲット・イナフ」だけでロングプレイが構成されていたら、そりゃ素晴らしいものになると思いますでしょ。
最後弦楽入りの劇的なバラード「アイル・ビー・スタンディン・バイ」がやってきます。あしたも元気に働こう、と前向きになれる曲です。制作はダン・ハートマン。ハートマンは、カロリーを注入する達人かも知れません。2024.02.08
小さな荷物をポストにお届けするヤマト運輸によるサービスです。全国翌日配達(一部地域をのぞく)、投函完了をメールにてお客様にお知らせします。
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