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えぐい、とはどんな味覚を言うのか。わたしは畑をやるので、シュンギクが採れたばかりの味を知っています。スーパーで売っているシュンギクとはかなり風味が違い、しゃきしゃきとした食感と合わせて生でいくらでも食べられる野菜なのです。ところが一日寝かせるとスーパーで売っている「シュンギク」になってしまい、火を通すべき野菜になってしまいます。つまり、えぐい、というのは、時間の経過で成分が別のものに変化した状態の味覚であろうと理解しています。
シカゴ・ブルーズを朝採りとするならば、エドガー・ブロートンはえぐみが増したスーパーの野菜。しかしえぐ味を味わうという別の魅力もロックにはあって、難しいところです。エドガー・ブロートンの世の中を見る感覚は、普通の人と相当違うらしく、地べたを這いずるような独特のリズムと斜め上のメロディが特徴です。
エドガーのギターって相当かっこいいんです。テクニックではなくて、音圧と歪みで押し切るギター。クリムゾンの「アースバウンド」の感覚に似ていると思ったりもします。ちなみにどの曲も展開皆無で同じリフを繰り返すので、酩酊感と中毒の音楽と呼びましょう。彼らで最も有名な曲が「アウト・デモンズ・アウト」。盆踊りビートに合わせて、悪魔は出ていけとえんえん歌われます。
レビュー使いまわしですみません。前回「ナイスですね」がひとつもいただけなかったものですから…。2024.07.26
わが国での売り上げでは、「サージェント・ペパー」でも「アビーロード」でもなく、この盤だったと思います。なぜか。66年から69年までの彼らの黄金期にわが国ユーザーは反応できず、「レット・イット・ビー」というバラードにより、ほとんど初めてビートルズの魅力に目覚めたから。…とわたしは考えています。わたしは御多分にもれず、この盤をビートルズ駆け出しの時期に購入して聴きました。何の違和感もなく「ディグ・ア・ポニー」や「ワン・アフター・909」を聴き、気に入っていました。今では「ザ・ビートルズ」や「アビーロード」の構成力に比べて、惨憺たる集中力のなさにあきれ半分です。
彼らの魅力に様々な側面があります。メロディやバラードの美しさは、ごく一部の話です。何といってもロックンロール・バンドとしてのビートルズが王道だとわたしは考えています。そう考えるととても「レット・イット・ビー」をほかの人に薦める気にはなれません。せいぜい「アイブ・ガッタ・フィーリング」でしょうか。映画でのビートルズは完全にやる気をなくしていて、ポール・マッカートニーが久々の生演奏で興奮しているのが共感できました。
この腑抜けた演奏から心を入れ替えて「アビーロード」をつくるわけです。ジョン・レノンは、それさえも気に入っていなかったようですけど。2024.07.25
わたしは暖かいベッドが苦手です。冷たいベッドや布団が好きで、冬に高級な旅館に泊まると寝るのに苦労することがあります。エアコンのない独身社宅時代の夏は、逆に一晩中寝ずにバイクで走り回っていたこともあります。勝手な想像で、ジャック・ホワイトはそんな人なんじゃないでしょうか。ホワイト・ストライプスとラカンターズという順調に行っていたプロジェクトを両方停止して、取り組んだソロがこれです。ソロと言いつつも強力なバンド・サウンドで、相変わらず爆音ギターと60年代のポップ魂を聴かせます。
バックを務めるメンバーの名前は曲ごとに変わっています。ドラムズだけ固定でしょうか。ツアーでは、女性だけのバックバンドと、男性だけのバックバンドを双方帯同して、日によって使い分けていたなんて話を聞きました。新譜だと思い込んでいましたら、もう出てから10年以上たちますか。最近ホワイトは何やってるんでしょ。
ブランダーバスを調べたら、オランダ式の古式散弾銃でそういうものがあるんだそうです。銃身が広がっていて金属球がばらばらと発射されるんだとか。骨董店で手に入れたとか、表紙になっているカラスをそれで打つんだ、とか、そんな意味かと。弾はたくさん発射されるけど、命中率は低い。そんな銃だったそうです。わたしは命中されたんですけど…。特にアコギとピアノに。2024.07.24
デビューして20年もたっているのに評価の定まらないバンド、それがブラック・ストーン・チェリーです。オールド・ロック愛好家にこそ知られています。でも一般的な洋楽ユーザーには無名に近いですし、メタルのユーザーにも遠い存在。オルタナ、ミクスチャーとはもっと遠い。洋楽が今より幅をきかせていた70年代、80年代には洋楽ジャーナリズムがわが国にそれなりにあり、支持を集めるアーティストも幅があったと思います。BSCを評価しないのはメディアの責任です。メディアが評価しないなら、ユーザーがレビューして知らしめていくしかないではないですか。
ケンタッキーを知らしめた意味ではカーネル・サンダースと共に功労者です。わたしは、彼らがオールド・ロック一辺倒になった理由を、下手な外界との交流がなかったからだと考えています。この盤が録音されたのはカリフォルニア。海なし州出身である彼らが「海」をタイトルにしています。うがった見方かも知れませんが、これから外界に打って出る、がテーマだったのではないか、と。先行した「ホワイト・トラッシュ・ミリオネア」がヘビーロックで、まあ前作の延長と見なされました。けれどアクースティックのメジャーな曲が多いのが特長です。「ステイ」や「イン・マイ・ブラッド」は、BSCならではのカントリーで、ちょっと泣きそうになりますぜ。
最終曲「オール・マイ・ドリーミンノブ」のベタな人類愛のメッセージもそうです。心配がなくて、涙がなくて、青い空がある世の中を夢見る、と。2024.07.23
もう、カバーアートを見ただけで、げんなりしてきませんか。ご丁寧にデイヴ・タイスはSMスーツに身を包んでムチを持ってステージに立っています。また、その姿が下品なこと。冒頭の曲は「俺はスカートめくり野郎だ、シャツたくし上げ野郎じゃねぇぜ」というもの。脳がバグってきます。ブルーズの疲労感とか哀愁とか無縁で、ひたすら歪んだギターとかんかん叩くドラムズと、汚い喚き声に付き合うことになります。史上最もダーティなハードロックと、わたしは思います。それにしてもこんだけ猥褻なテーマを曲に入れられるものでしょうか。ライブ会場でブラとパンティを脱いで提供しろ、と迫ったフランク・ザッパに近い連中です。
リズムは単調、全く起承転結ありません。タイスのダミ声が終わるとえんえん、歪んだギターを聞かせ続けられます。ベースも好き勝手に弾くところはブラック・サバスに似ています。彼ら、バーティゴ・レーベルからデビューしたよしみで、ブラック・サバスのサポートをした、という話もあるんです。ひたすら騒音に耐えるのみ。これはもう、修行に近いんじゃないでしょうか。ディープなヘビーロック・ユーザーにしかおすすめできない代物です。
ラスト「ユナイテッド・ネーションズ」の終わりでは彼らの意外な「紳士さ」が出てきますのでお楽しみに。2024.07.22
カーブド・エアのバンド名は、ここからとられています。B面曲からとった「ファントムバンド」というバンド名もありました。カンのヤキ・リーベツァイトがつくったバンドでした。それどころがフーの「ババ・オ’ライリー」というのはテリー・ライリーのことでロックと大変親和性のある現代音楽と思います。68年前作の「インC」は、アクースティック楽器を中心としたループ音楽でした。この盤では、電子オルガンを録音したテープループに、即興のこれまたオルガンが乗る、という未来的な音楽になっています。映画版の「ナウシカ」を最初に観た時、音楽を、まんまテリー・ライリーだと思いました。
さて、この偉大なる現代音楽を、どう聴くか、です。瞑想とかサイケとか直截的にイメージするのは、わが国ジャーナリズムの悪い癖です。スティーブ・ライヒの音楽と同様、ライリーの音楽は繰り返しながらフェイズしていきます。フェイズ、というのはゆっくり変化している、の意味です。クラシック音楽にある物語性を排除して、人の感覚を次のステージに持っていこうとしていた。…のではないか、と。現代音楽が無調不協和を追究するなら、ライリーは別の、言わば快楽原則で音楽を演奏したらどうなるか実験していた気がします。
ただ、資料として持っていればよいかな、とも思います。わたしも長らく聴いてはいません。2024.07.21
スティクスはラブ・ソングを書きません。女性を主人公にした曲は、女王を称えるとか、悪女が人生を滅茶苦茶にするとか、全然「わたし」が主人公にならないのです。この楽集は、ことにその傾向が強く、冒頭に人生は大きな幻想みたいなものだと提示されて、スティクスのステージによってフィナーレに持っていかれる、というあらすじになっています。…あ、スティクスは三途の川なのか…。いつもは、ジェイムズ・ヤングの暴れるロックンロールがあるのに、それも封印されています。トミー・ショウが「使える」ことが明らかになって、彼らにしたらマーケットに勝負をかけたんでしょう。わたしはその「あざとさ」がどうにも気になります。
一歩間違えると「おバカ」ロックになってしまうところを、彼らはごく真面目に人生と向き合っているフリをします。わが国の「生きざまロック」に近いです。ここは…彼らに騙されたフリをするのが正解なんでしょう。あまり突っ込まないほうがいいのか…。
いちおう70年代のはじめの頃からELPやイエスを聴いてる人たちなんですよ。このジャンルでは米国で先駆者。騙し方がカンザスやボストンに比べ、拙いぐらいで…。全身羽織袴でびしっとキメているのに、スニーカー履いているようなところか、と。2024.07.20
ユートピア(トッド・ラングレン)の「ディフェイス・ザ・ミュージック」という楽集があります。ビートルズをおちょくる意図だったのでしょう。けれどもトッドがどれだけビートルズを好きだったか逆に判ってしまう。ロビン・トロワーのこの盤を聴くと、それと似た味わいを感じてしまうのです。
ヘンドリックスには様々な側面がありまして、トロワーのギターには特に初期エクスペリエンスの風味を感じます。彼のギターを物真似と言うなかれ。ロバート・フリップのギターの先生で、ライナーにフリップが賛辞まで書いているギタリストなのですから。トロワーの活動歴は長く、フュージョンやブルーズに傾倒する時期もあります。わたしはヘンドリックス・フォロワーと呼ばれていたヘビーロック期に最も親しみがあります。プロコル・ハルムを脱退した直後になります。
「ロック・ミー・ベイビー」を演奏してくれています。ヘンドリックスと直接交差するのはこの曲ぐらいです。あと、ボーカルのジェイムズ・デュウォーがとてもよろしい。このギターには彼のボーカルです。トロワーの演奏を聴いていると、ブリティッシュ・ロックとヘンドリックスを趣味にしていて人生得しているなあと思うのでした。2024.07.19
タイトルの意味は「食うか食われるか」です。ジョニ・ミッチェルは、本来ビートを必要としない人だったはずです。アクースティック・ギター一本あれば世界を構築できてしまう、歌謡詩人ですから。この楽集のテーマは、フェアライトとデジタル・ビート。ご丁寧にトマス・ドルビーを動員し、ビートを叩くのはビニー・カリウタです。きちんと時代の流れに身を任せ、80年代のジョニ・ミッチェルはこうなのよ、と主張する音であります。彼女が「食うか食われるか」していたのは、時代そのものだったんでしょう。
おや、レビューが終わってしまいました。ごきげんよう。…。
気を取り直して書き続けます。あれほどジャズに傾倒していたはずなのに、ジャズのひとかけらも出てきません。ロック、フォークを下、ジャズを上と見ている士農工商ミュージシャンにはこの芸当はできますまい。つまりAORに浮かれていた西海岸の人たちのことを言っているのです。ジョニにとって、ジャズは表現の一側面に過ぎなかったわけです。なにもスティーブ・ルカサー(これは前作のゲスト)やトマス・ドルビーと今更やらなくたって、とどなたかが言っていました。彼女の立場からすれば、こうした観測も余計なお世話だったのです。弘法は筆を選ばず。ジョニ・ミッチェルはジャンルを選ばず、です。2024.07.18
名盤の定義とは…。捨て曲がないことなんですか。違うと思いますよ。名曲が入っていることが名盤の定義でしょう。「ラブ・ウィル・キープアス・トゥゲザー」と「ザ・ウェイ・アイ・ワォントトゥ・タッチユー」が入っているだけで名盤に決まっています。75年の年間シングル一等賞に輝くキャプテン・アンド・テニールは、わたしの最初に好きになった洋楽の人たちです。ところがその後ロック・ユーザーになってしまったわたしは、二人に洋楽を教えてもらった恩義を忘れてしまいました。ポップスなんか聞いてられねぇぜ、と…。数十年ぶりに「ラブ・ウィル」を聴いたわたしはあまりの幸福感に男泣きしてしまったのであります。
A&Mがカーペンターズの二匹目ドジョウを狙ったデビューでした。そんなことはどうでもいいんです。キャプテンを名乗るダリル・ドラゴンがビーチボーイズのステージ・サポートをしていたこと。そんなこともどうでもよろしい。ブライアン・ウィルスンやブルース・ジョンストンが曲や演奏で協力していること。それは少し覚えておいたほうがいいかな…。夫婦デュオの純粋なポップ魂と芸の巧みさ。それが時代とシンクロして記念碑的シングルとなった。ここが大事です。要するにわたしはこの音に客観的になることができません。トニ・テニールの声に涙する老人でいいのです。2024.07.17
ジョン・アンダースンが抜けてアラン・ホワイトが歌うよ、と言ったら驚愕です。スティーブ・ハウが抜けてクリス・スクワイアがギター弾くと言ったら、もはやギャグです。イエスは、ゾンビーズと名前を変えなくてはいけません。この盤、すでにハケットがいません。いないような気がするほどギターの登場回数が減っているのです。なぜなら、アクースティックのほとんどをマイク・ルザーフォードが弾いていることを、わたしたちはすでに知っているからです。「まどろみ…そして静寂」で、伸びのあるギターが聴けて、そこが唯一なんじゃないでしょうか。
ハケット脱退が当時大ニュースだったかと言えば、そうでもなかったです。ジェネシスはこの盤あたりまでマイナーな存在でしたから。わたしも「フォクストロット」あたりは聴いていましたが、全部のジェネシスを知りませんでした。すでにハケットは最初のソロを成功させていまして、脱退したからソロになったのだと認識していた人も多かったはずです。まさか彼らがワールドワイドなビッグバンドに成長するとは想像もできなかったです。この盤を聴けばフィル・コリンズとトニー・バンクスの蛸のような演奏に驚きます。その意味ではジェネシスが世界バンドになるための踏み台のような試練だったと思います。2024.07.16
ジェフ・ベックのことを、2枚ロングプレイ盤を出すとバンドを解散させてしまう、とかつて業界で言われておりました。スティブン・スティルズもそうです。彼がバンドを長続きさせた例はありません。バッファロー・スプリングフィールドも例外でなく、この盤は、アウトテイク集と言っていい、解散後のサードになります。スティルズは一方で、糊のように異質な個性をつなぐ名人でもあります。CSNYやマナサスは、スティルズのリーダーシップや世話焼きがなかったら存在していないユニットです。ニール・ヤングをバッファローに誘ったのもスティルズ。ヤングは興味をなくしていたらしく、この盤で「アイ・アムア・チャイルド」しか歌っていません。
スティルズの曲が一番多いようですが、制作はジム・メッシーナです。この盤の成果はCSNYのほうでなく、ポコのほうに受け継がれたのではないでしょうか。スティルズに曲づくりのイニシアチブを握られてしまった他のメンバーこそがポコ結成に動いたわけですから。そして…ポコというグループに、わたしは興味をあまり持てません。
西海岸のフォークが苦手なせいか、スティルズの声と歪んだギターばかり追いかけてしまう盤です。彼らにしてはダイナミズムに欠けるでしょうか。フォークが好きな方はいけると思います。2024.07.15
この映画の物語って必要ですか。その当時ティーンエイジャーのわたしが、いいジジイになって、それでも各シーンを鮮烈に覚えている。何度も観たせいでもありますが、一種の集団記憶みたいなものです。淀川長治氏がTV上映の紹介で言われていましたが、何度も何度もやってほしいと嘆願書が来た、と。学校中の署名を集めて手紙が来た、と。そしてオスカー・ワイルドもトレーシー・ハイドもかき消えるようにして芸能界からいなくなってしまいます。あとに残るのは鮮烈なイメージと、夢かうつつか、というような現実感のなさです。
監督のワリス・フセイン、わずか33歳です。ビージーズの音楽が映画に先立ってリリースされていることを考えると、曲があってストーリーを組み立てたと推測できます。それにしてもこんなに綺麗にまとまるものでしょうか。「ティーチ・ユア・チルドレン」は、この映画のために書かれたような気さえしてきます。
この映画には寂しさを際立たせるシーンが二つあります。ひとつはオーンショーが二人に置き去りにされるシーン。ラテン語教師にぶたれた後です。もうひとつは言わずと知れたラストシーン。二人の乗るトロッコは、港まで行ってその後どうなるんだろう。ひとり残ったオーンショーは、教師とどう対決して勝利するんだろう。これがあるだけで単なるファンタジーに終わっていないような気がします。音楽は、そりゃもう…。2024.07.14
ブルーズという音楽は、何より疲労感と単調さに尽きると思うのです。パット・トラバーズが世界中をツアーして家に戻ってきたら、疲れのあまりシカゴ・ブルーズしか受けつけない体になっていた、という逸話を残しています。7月に畑で草むしりしていると、暑さと湿気と酸素不足で頭がぼうっとなり、家に帰ってくると、もう…ブルーズしか受けつけません。きょうはビッグ・ママ・ソーントンのCDが来たので、まどろみながら気持ちのよい午後を過ごしました。単調さに何よりの良さがあるのが、クリーデンスの2枚目です。「グレイブヤード・トレイン」という長尺の曲はワンリフ。サボイ・ブラウンの「ヘルバウンド・トレイン」を連想してしまう、不吉なブルーズ曲です。これが気持ちよいのです。
「プラウド・メアリー」があるので誤解されているんじゃないでしょうか。この楽集は、ブルーズの大行進です。ジョン・フォガティのジェイムズ・ブラウン並の大声つきでの、です。
ハードロック・ユーザーに聴いていただきたいのが「キープ・オン・チューグリン」の爆音ギターです。ざくざくした肌触りのフォガティのギター。英国のブルーズ・ロック攻勢に対するフォガティの回答の気がします。2024.07.13
大宮駅の近くでかみさんと回転寿司チェーンに入ったのです。見渡したらわたしらのテーブルの周りは全てセイラー服のJKではないですか。驚きました。寿司は、学校帰りのJKがきゃぴきゃぴ食べる外食になったのか。コーヒー片手にハンバーグの握りを…。というわけで、セイラーをレビューする日にします。強引な導入、失礼いたします。
わたしはこの不思議な音を聴くにつけ、家に帰ってきたような懐かしさと人懐こさに包まれます。最初は違和感ありありの音でした。やけにすかすかした音に見事なコーラス。全部がアクースティック楽器であるのに、ベースだけが電子であるだけで「ロック」を感じさせる仕掛です。見事なものです。「ガールズ・ガールズ・ガールズ」にはアッパーを食らったような衝撃を感じました。一言で言えば、人を食った音です。「ストップ・ザット・マン」は、逃げ続ける男をひたすら追いかける曲です。男の逃げる様子を楽器で再現するわけで、クラフトベルクのような写実音楽と言えるでしょう。ちゃんとドップラー効果も使っていますし。
そしてニッケルオデオンなる珍妙な思いつき楽器を、「懐かしき」と表現するふてぶてしさ…。あんたらが適当に造ったオルガン張り合わせでしょうに。突っ込みどころ満載の冗談音楽。でも人の騙し方が一流なんですよねぇ。回転寿司チェーンみたいに…。2024.07.12
毎年梅雨の時期になると音楽で涼をとろうとする習性がわたしにはあります。乾燥しているのか湿り気があるのか、判然としないのがアウトロウズ。西海岸の乾いた風を連想させるのがボーカルとコーラスで、米国とは思えない湿度のあるメロディが彼らの信条だからです。ここらへんの微妙なバランスが米国南部の音にはございまして、オールマンやブラックフットを愛してしまう所以でもあります。何と申しましてもアウトロウズの流れるギター弾きまくりは痛快です。伸びるロングトーン万歳なのです。
デビュー以来の三作から曲がとられています。彼らにはスランプがなく、どの楽集もよいですけど、最初の三盤こそが最強。しかもライブとなれば、ギターが余計にドライブしてしまうでしょう。そして決めの1曲「グリーン・グラス&ハイ・タイズ」を持っている強みです。この曲を演奏しない限りオーディエンスは帰らないと思います。クラプトンの「レイラ」とかレーナードの「フリー・バード」に当たるギター名曲です。
トシをとってめっきりライブに出かける機会が減ってしまいました。立っているのがもうダメです。座って聴けるジャズやクラシックならいいのです。でも「グリーン・グラス」では立ってしまうでしょうねぇ。2024.07.11
オランダは、大地に恵まれない比較的貧しい国力の国ではないかと思っています。そうでなければ低地を干拓して農地を増やす、とか、江戸時代に東洋の島国までやってくる海運力、とか他の欧州諸国でもやらないような工夫をうまく説明できません。言わば商売とマーケティングの国なのです。「悪魔の呪文」というプログレ者ばかりか、ハードロック・ユーザーでも知っている曲は、わずかワンリフの繰り返しです。それをメンバーの奔放なソロや笑ってしまうしかないようなスキャットでつないでいきます。ソロと言いましても、ほぼぶっつけ仕事。これがライブで最も受ける曲になっていくのですから、彼らのマーケティングには舌を巻いてしまいます。
タイス・ファン・レールは英語を喋れないわけではないのですよ。「ムービング・ウェイブズ」は英詞を歌っていますし、ファースト作でも同様です。大人しくしていれば鍵盤、フルートの名手として記憶されたはずなのに、なぜ素っ頓狂なスキャットを始めたのか。その謎に向き合う盤であります。「イラプション」を聴けば、構成力も一流の人たちです。ステージ受けする曲を探していてたどりついた結論が、下手な英語で歌うのではなく、歌詞なんてなくていいから聴衆を笑わせること。違いますかね。彼らのマーケティングについて、他のタイトルで今後書いていきたいと思っています。2024.07.10
タイトルになっている High And Mightyは、「キャント・キープア・グッド・バンド・ダウン」の中に出てきます。ヒープのよさは、あくまでマイナーで性急な曲であると思うんです。この楽集では3曲めまでがそうです。ところが、この時期のヒープは妙にメジャーな(もしくはコミカルな)曲を演奏したがっているようです。ケン・ヘンズレーのソロ作をお聴きになった方はわかるように、ヒープの曲づくりはヘンズレーのデモに大部分依っています。彼が鍵盤以外のボーカルとギター、ベースができてしまうせいで、他のメンバーの意見が入らずに曲調が偏ってしまうことがあると思うんです。ジョン・ウェットンが加入していたこの時期、前作に比べれば整理できているものの、やはり期待する悲壮なハードネスは十分に聴けません。ヘンズレーのスランプと言える時期と思います。
とは言え、「ウィープ・イン・サイレンス」でのミック・ボックスのリードギターは聴きどころです。それにウェットンのベースは、くさびを打つように的確で別格だと思わせます。2024.07.09
I-10は、北米大陸を東西に駆け抜ける高速道で、全長4,000キロ。フロリダからサンタモニカまで。バトンルージュやニューオーリンズも通ります。そのさらに南あたりで、あとはカリブ海と国境になってしまいます。サニー・ランドレスは、ミシシッピ生まれの、ケイジャン出発のギタリストです。スライドの名手、というより、この盤を聴けば、まったく新しいギター音楽のクリエイターと言えると思います。いまだ活動意欲衰えず、毎年新盤を届けてくれるのも嬉しい人です。このレコードは、「コンゴ・スクエア」や「オーファンズ・オブザ・マザーランド」が受け入れられたおかげで、彼の代表作にあげられるものです。
ケイジャンとか米国南部と聞くと、なにか人肌の懐かしい音を想像しませんか。それは間違っていません。しかしランドレスの音楽にあるのは、さらにギターに対する探求心と遊び心です。スライドが速すぎてアバンギャルドになるんです。フィドルで弾くべき旋律をギターでやる、という遊びには、イングベイ・マルムスティーンやスティーブ・バイのようなスリルを感じるところです。
そして歌心が素晴らしい。彼の声は、けして太くも大きくもありません。でも上手い。というか説得されてしまう。だいぶランドレスの音を聴きましたけど、外れだと思ったことがありません。2024.07.08
先日知り合いと、ストラトキャスターの音が好きか、レス・ポールかという話になりました。わたしはギターのメーカーにあまりこだわって聴いたことがありません。イメージでは、音を伸ばす人がストラト、ジャカジャカッとリフを弾く人がレス・ポールというイメージがあります。ただポール・コゾフみたいな人もいるので、あくまでイメージです。アウトロウズは、ストラトの弾き手とレス・ポールの弾き手が両方いるのです。南部の音と言えば、アクースティックか、スライドなんだと思うです。エレキ2本、あるいは3本の掛け合いにこだわるのはレーナードゆずりです。リード・ギタリストが二人いるのに、さらにギタリストを加えたんです。それほどギターを中心に据えている人たちです。
わたしの(いらない)アドバイスでは、まず「グリーン・グラス&ハイ・タイズ」という曲を聴いて昇天してください。ブリティッシュ好きの人は特に。そうでないと、西海岸風のコーラスが最初に耳に入ってしまい、米国苦手の人は彼らを軽んじてしまいそうだからです。この曲の重厚さがあって、楽集全体を引き締めていますし、彼らのステージの締めはこの曲です。レーナードの「フリー・バード」みたいなもんですかね。
これもいらない話ですが、「レディ・イン・ウェイティング」は単体CDでは品薄です。2024.07.07
ミュージカル「マイ・フェア・レディ」のサウンドトラック。なので表紙になっているのは、オードリー・ヘップバーンではなく、ジュリー・アンドリュースです。56年にわたしがブロードウェイにいることはタイムスリップしない限り不可能なので、映画版しか知りません。シェリー・マンのリーダー作になっていますが、実際はピアノのアンドレ・プレビンの楽集です。このピアノは楽しい。だってこの曲たちお馴染みじゃないですか。映画のシーンまで浮かび上がってきます。ジャズの入り口として最適なんじゃないかと思うんです。お互いの自我をぶつけ合うだけがジャズではありません。様式美と遊び心のジャズ。緊張しないでリラックスできます。
アンドリュースについて書いていいですか。「サウンド・オブ・ミュージック」は、わたしの生涯ペストテンに入る映画で、アンドリュースには胸キュンになりました。恥ずかしいです。本当に歌うことが好きなんでしょうし、彼女の溌溂さが大好き。けれど64年の映画では、無名であるという理由で、ヘップバーンに役を割り振られてしまったそうです。(ヘップバーンは、アンドリュースに気を遣って辞退しかけたという話があります。)
プレビンは、後年クラシックの指揮者、ピアニストとして活躍します。56年LA録音。ベースはリロイ・ビネガーです。2024.07.06
わがまちには「閻魔堂」という由緒正しきお堂があります。お堂の中には閻魔像のほか、血の池地獄、火炎地獄などの絵が飾ってあり、子どもながらに怖くて入りたくありませんでした。なら行かなけりゃいいじゃない。ところがです。わがまちの住人である限り、一年に一度はこのお堂をお参りしなければならないのです。老人となった今では全然怖くありません。しかしお堂参りは欠かしたことがありません。なぜなら地獄に堕ちたくないからです。「地獄に堕ちろ」という呪い言葉が西洋でもわが国でも共通なのは、考えると奇妙な話であります。
地獄と銘打つわりに全然怖くなく、可愛さいっぱいなのがこの楽集。「デストロイヤー」の成功のあとの盤なので、自信たっぷり、余裕さえ感じさせる充実度です。制作エディ・クレーマー、録音ビル・レベンスンは、キッスを支えるブレーンです。彼らはお子様ロックとしての側面を持っていました。けれどお子様ロックを支えたのは、業界きっての玄人スタッフでした。だってクレーマーは、いまだ続くヘンドリックス・掘り起こしの中心人物ですよ。ボストンの制作者を断ってキッスに関わった人です。
ピーター・クリスの「ハードラック・ウーマン」は、ビートルズやビージーズのような郷愁さえ漂わせます。こんな人たちが地獄で待っているなら堕ちたっていいや。2024.07.05
このカバーアートが堂々と売られていたのですから、今となってはの話です。英米で差し替えられた、という逸話はその時から聞いていました。逆にロキシー・ミュージックの「カントリー・ライフ」やバン・ヘイレンの「バランス」は、わが国だけ別のデザインになっています。要するに国ごとにコードが違うだけの理由です。スコーピオンズにとってカバーアートがコードに引っかかる、というのは言わば戦略。わが国でデザインされた「蠍団爆発」が英米で通らなかった、というのは、いかにわが国のデザインがスコーピオンズを理解していたか示すものです。
さてさて内容です。わたしは「テイクン・バイ・フォース」か「イン・トランス」のほうをよく聴きます。ウルリッヒ・ロトに歌わせるのは酷というものです。必殺の一曲に欠ける印象です。「イエロー・レイブン」なんて、ちあきなおみが歌って違和感ありません。「バージン・キラー」にしてもウリのリードより、ルドルフのギターのほうが印象に残りますし。
なので現在のこの盤に対する人気はカバーアート目当てだと断じてしまいましょう。2024.07.04
ニルバーナもクイーン・オブ・ザ・ストーン・エイジも、フー・ファイターズも知りません。目当ては当然ジョン・ポール・ジョーンズで、彼が90年代、00年世代と伍して普通にやっているのが不思議なパワー・トリオです。聴いてびっくりするのがドラムズです。バスドラ一個だと言うのに異常なキック足数です。ツェッペリン・ユーザーのかたでしたら文句なくおすすめできる内容です。時代は一回りした、ということでしょうか。楽器もギター、ベース。ドラムズでいたってシンプル。しかしシンプルに聴かせているだけで、ほんと気を遣った音処理がされています。ドラムズとベースが安心できると、上に何が乗っていたって「決まる」んだなと思います。
ここからは悪口です。ブルーズ調、あるいは演歌調で歌えとは言いません。わたしも過剰な情感を苦手とするところがあります。でもメロディなしで「語り」みたいな言いっぱなしでボーカルとするのはいただけません。わたしはこれでメタルやヒップホップやミクスチャーがだめなんです。しっかり歌えよ、と。メロディ歌わないなら、楽器だけにしてだまってろよ。と。音はしっかりしているのに、曲づくりが未完成な印象なのです。現在この路線が主流なのは…そうなんですか。年寄りのつぶやきだと聞き流してくださって結構です。
これで継続するんかと思いましたら、結局一枚きり。何だったんでしょう。2024.07.04
イズラエル最初の自作曲を書き、演奏するバンドなのだそうです。65年から仲間が集まり活動を始めましたら、ドアーズとジミ・ヘンドリクスが世界を席巻し、その影響下の音楽を演奏しています。デロデロとしたギターにドヨンとしたベースが支配する音楽は、好きな人にはこたえられません。ちょっとブリティッシュ・ビートのような雰囲気があります。演奏力はそれなり。ボーカルにいたっては、夢見るソフト調と声を枯らして叫ぶ調が交錯します。率直に申し上げてシロートくさいです。サイケデリックの影響力おそるべしです。
イズラエル特有の事情と言えるのは、5人のメンバーのうち二人が兵役にとられてしまったんです。PLOの結成が67年で、イズラエルは第三次中東戦争を戦っている最中でした。バンドは二人の穴を埋めるため、英国人とカナダ人のメンバーを入れて活動を継続させました。それがロンドンへバンドが移住するきっかけになります。これがジェリコになるのは、多くのかたがご承知のとおり。
ところどころ中東らしいギターの高音アルペジオが混じります。あたかもチターの音色のような…。ただのサイケ・ポップに終わっていない理由です。音は古いけれども、故郷への郷愁を掻き立てられる音であります。あ、そうです。「リビング・ラビング・メイド」をやっています。2024.07.03
アイランドと契約したとき、わずか16歳。彼女のあまりの若さゆえ、芸能界にスカウトするのをクリス・ブラックウェルが逡巡した、とクレア・ハミル自身が回顧しています。楽集は、「ベースボール・ブルーズ」から始まります。彼が野球のシューズを持っていないから、わたしが野球のブルーズを歌って稼ぐの。他愛ないと言えば他愛ない曲で、後半ラグタイムみたいに曲調が変わってしまいます。この盤でのクレア・ハミルは、芸能人みたいなこぶし、テクニックを持っていません。天然に曲をつくり、それを好きなように歌ってみせるだけの飾らない音楽。これがクリス・ブラックウェルはじめ、アイランドのスタッフを魅了したのでした。
自作曲の中で、ジョニ・ミッチェルの「アージ・フォア・ゴーイング」をカバーしています。サイモン・カーク、テリー・リード、山内テツ、ラビットがバックです。地声で出ないところはファルセットで。何も技巧をこらさず、自分のありのままで歌うさまは、新鮮そのものです。それでいてジョニ・ミッチェルと違う個性を確立しているのでした。
わたしはクレア・ハミルを聴くと、石鹸で洗われている気持ちがするのです。聴いている自分も天然に戻ってしまう。ダイナミズムではセカンド作ですが、デビュー盤も捨てがたいです。2024.07.02
「クロスロード・ブルーズ」より「ブーム・ブーム」より「ボーン・アンダー・ザ・バッド・サイン」より、わたしは「イット・ハート・ミー・トゥー」と言う曲が好きです。この気だるさ、疲労感、失望とやるせなさ。どのミュージシャンがカバーしても、この曲でしたらOK。この曲で30分やられても許してしまいそうです。言わずと知れたスライドの名手で、だみ声のエルモア・ジェイムズは、ブルーズ聴くときの入り口にぴったりです。フリードウッド・マックのブルーズ時期、ジェレミー・スペンサーが、どの曲を演奏するにも「ダスト・マイ・ブルーム」のギターから入っていました。そのぐらい影響力ある人です。
ブルーズ聴くとき、あまり名盤から聴こうと思わないのがよろしいかと思います。正直、どのブルーズ人が自分に合うのかは聴いてみないとわかりません。ツッェペリンでもわかるとおり、曲目が違っても同じ曲、というのが当たり前の世界です。わたしはまずアンソロジーのたぐいから入るのがいいと思っています。だいたいシングル主体のムーブメントでしたので、楽集単位で評価するのも違うかと…。この盤に入っているのは、ほぼブルーズのスタンダードと言ってよろしいです。中で強烈な印象を残すのがエルモアです。2024.07.01
バンドがデビューしてから10年以上。バンドが変わらなくてもマーケットが無慈悲に変わってしまうので、「ウォリアー」や「ピルグリムズ」のファンにとってがっかりになってしまう盤です。でも、どうしてどうして。ブルーズからファンクに舵を切り替えた音は、わたし好みでよく聴く盤であります。もともとは「アンダーグラウンド」目当てて購入しました。A面の流れは、フリートウッド・マックの「ルーモアズ」に匹敵する冴えを聴かせると思っています。
そのこころは、クレア・ハミル嬢の存在です。彼女のバック・コーラスがあるだけで、全く違う、ハイセンスなバンドに聴こえてしまいます。「アンダーグラウンド」や「キックス・オンザ・ストリート」を、あなたの耳の中で転がしてみてください。アッシュが苦手な人にもアピールすると勝手に思います。何度を書いていますとおり、アッシュの弱点はボーカルの華のなさ、にあります。ギターが上手けりゃいいわけではありません。それではベンチャーズです。
ジョン・ウェットンの存在感はかなりあります。ぶりぶりしたベースは、ファンク調の基本を決定する役割です。ボーカル弱い、と書きましたけど、ウェットンに歌わせなくてよかった…。とわたしは思います。2024.06.30
由々しき話だと思って書きます。わたしこの盤を、ライナーつき日本盤、リマスター、2016年リマスターの三種類保持しています。まあ音にうるさいわけでなく、大して変わり映えしない三種類であります。カケレコさんの在庫にこの盤が増えている現状を嘆いています。ぜひ買ってくだされ。ツェッペリンで一番「偉い」音楽ですから。日本盤のライナーは、たいがい一方的な思い込みや分析不足の中書いたものがほとんどで、正直信用していません。渋谷陽一氏の書いたこの盤のライナーは違います。彼らの確信、または迷信を音として存在させるため、この盤を録音した、と。氏の見立てを乱暴に要約するならこうです。わたしはこのライナーを信じますし、よくここまで分析したものです。さすがツェッペリン評論家と呼ばれた人です。
全てが硬質でブルーズ系。あるいはブルーズとロックの再構成を試みた作かもしれません。わたしの言っているブルーズとはスケールや奏法のことで、いわゆるシカゴ・ブルーズを指しているわけではないです。情念に揺れない、トゥ・ビー・ア・ロックを体現している音楽です。「アキレス」だけでなく、全ての楽曲が、流れないリフ、ぶった切りのビートで統一されています。ウイスキーでなくてドライジンです。
聴くべきは特にジョン・ポール・ジョーンズです。一世一代の演奏です。「ノウバディズ・フォールト」は、シカゴ・ブルーズの改作。「ティー・フォア・ワン」もおそらく元ネタがあると思います。でも全然既存の音と違う。空前絶後です。2024.06.29
映画は、ベトナム戦争期の戦場カメラマンを主人公としたものだそう。映画タイトルを検索窓に入れても、出てくるのはこのCDの情報だけなので、それなりの映画だったんでしょう。音楽は、鍵盤担当のジェド・ライバーと打ち込みリズムでつくりあげたものです。ジェフ・ベックはボーカルを必要としないギタリストであるので、こうした映像音楽に最も強い人だったのではないかと思います。90年代のジェフの音は、どうやってギターでこの音出しているんだと思わせる意外性に満ちています。さしずめ、晩年のジミ・ヘンドリクスのように。「ロック・ミー・ベイビー」のカバー以外は、ジェフとジェド・ライバーが自由に一筆書きを走らせている音楽です。
ジェフ・ベックのユーザー以外の人が楽しめるかと言いますと、なかなか難しいです。と言うより、ジェフのユーザー以外は存在を知らないと思います。戦場が舞台のせいで、刺激的な音もありますが、ハードロックでかっこいいパートもあるので、あまり期待しないで聴いてみてください。2024.06.28
わたし、PFMではこの楽集がいちばん好きかも知れません。少なくとも最も聴いていると思います。彼らはマンティコアから世界デビューを果たしたあと、欧州より米国で圧倒的に迎えられたと聞きます。ここからはわたしの推測で、米国のイタリア系移民の多さと無関係ではないと思うのです。ハリウッド映画でイタリア系と言えば、ギャグのネタにされるか、マフィアの暗部ばかり。特にアイルランド系の人と仲が悪く、映画「アンタッチャブル」で、アル・カポネとアイルランド系警察官(ショーン・コネリー)が死闘を繰り広げます。コネリーは実際にスコティッシュだったんです。あるいは、フォリナーのルー・グラムのデビュー時の芸名は、ルイス・グラマティコ。イタリア系であることを悟られないためでしょうか。
そんな屈折したイタリア系の人にとって、パワーと芸術でねじ伏せるようなPFMは、プライドを掻き立てられたんじゃないか、とわたし勘繰っているんです。この盤のテーマは、まさに力業です。プレモリの硬い鍵盤や、パガーニのバイオリンは、従来のイメージを覆そうとしているかのように高速で攻撃的。バカテク・オリンピックをやったら、スティーブ・バイ期のフランク・ザッパと金銀争うと思います。ハードロック患者にもすすめたい盤でございます。2024.06.27
アケルマン/おめさん、バンドてや歌わんけば、ダメらろ。
ファン・レール/そうでもねぇこて。歌わんバンドもあるでや。
ルイテル/でもさ。歌わんバンドてや、ヒットしねぇで。ELPとか見て見れや。
ファン・デル・リンデン/そんげんことより、歌える人間がおらちにいるんだけ。いねぇろば。
アケルマン/おれが歌うてば。
ファン・デル・リンデン/おめさんなんか、オランダから出たことねぇねっけ。英語で歌われんだけぇ。「ア〜、ラッキー・マ〜ンン」歌ってみれや、ほれほれ。
ファン・レール/まあまあ、虐めんないや。練習せばいいこて。
アケルマン/おら、歌いてぇんだてぇ。
ルイテル/そいがあ。そらろも、英語どうやって覚えんだいや。
ファン・デル・リンデン/そうだいや。おらち誰も、オランダから出たことねぇで。センセェもいねえでぇ。
ファン・レール/そうせば、オランダ語で歌えばいいんでねぇの。早口で歌えばわからんてば。おらが鍵盤で覆いかぶして弾くからさ。
ルイテル/おめさん、自分が目立ちたいだけじゃねぇのけ。
ファン・レール/喧嘩しんないや。アケルマンが言ってるんだすけ、歌う練習しよぅて。歌ってみれいや、アケルマン。
アケルマン/ううんと、ううんと…。らりらりらりらり、らっぱっぱあ。
ルイテル、ファン・デル・リンデン/やっぱダメだいやぁ。
え〜、一般にうちの県は、方言があまりない。標準語しゃべっているねぇ、とよく言われます。実態はこんなもんです。2024.06.26
タイトル原題は「ボブ・ウェルチ」です。原点に戻ったと見るべきか、煮詰まっていると見るべきかの5作めです。彼の良さは、深刻な曲の中でも重くならないところにあると思っています。でもここまで来ると、さすがに軽すぎるんじゃないかと。自分自身で書いている曲も半分程度で、曲づくりに自信がなくなっていることが見て取れます。
「ベンド・ミー・シェイプ・ミー」は、エーメン・コーナーの往年のヒット。同じ81年のロキシーでのライブ(かつてのマックのメンバー、カーマイン・アピス、ハワード・リースなどがサポート)でもこの曲は演奏しています。楽しいけれど、新たな地平を切り開いてきたウェルチにしては寂しくなる選曲です。感動するのが「トゥ・マイ・ハート・アゲイン」ですが、これまた他者の曲です。彼の声はいいし、ギターも相変わらずソリッド。過剰に80年代風にしたアレンジがウェルチに全然フィットしていない気がします。ドシドシとしたビートは、逆に曲を薄っぺらくする方に作用しています。
総評:ウェルチをコンプリートしたい人にしかおすすめできません。彼のソロなら、わたしは「ジ・アザー・ワン」をとります。2024.06.25
BJHのライブ定番となる「シー・セッド」「モッキンバード」を含むセカンド楽集です。「モッキンバード」は、ロックバンドと交響楽の融合で、指揮しているのがロバート・ゴドフリー。この交響楽の圧力がすさまじいです。プログレッシブ・ロックの古典的と言える手法ながら、ここまで圧倒するか、という。彼らは実際にロンドン・フィルハーモニックを帯同してツアーをこなしたようです。同様に「シー・セッド」の圧力も書いておきたいです。こちらは、暴れるドラムズと変調したギターによるもの。これは、ハ…ハ…ハードロックと呼ばせてください。メロトロンは、おっかない楽器です。梅雨時のそぼふる雨のようです。
「ギャラドリエル」で使用されているギターが、アビーロード・スタジオに置き去りになっていたレノンのギターだそうです。あの「レット・イット・ビー」の屋上で使われていたもの。
「ボール・アンド・チェイン」が、正真正銘のヘビーロック。少しピンク・フロイドのテイストを感じさせます。相変わらずドラムズがぶっ壊れています。2024.06.24
不思議な話です。わたしは、グランド・ファンクの楽集にはっきり好き嫌いがあります。この盤は、地味と言いますか、過渡期と言いますか、なんとも的確なイメージを持っていなくて、聴くことの少ないものでした。端的には「嫌い」でした。GFRのレビューを書きつくしてしまい、今日取り出した盤なのであります。インストルメンタルの「フライト・オブ・フェニックス」から始まります。彼らにとっては異質な幕開けです。デビューからの制作者テリー・ナイトに限界を感じて彼の首を切った作ですし、クレイグ・フロストが正式加入した作でもあります。インストルメンタルの「フライト・オブ・フェニックス」から始まります。性急なビートに乾いたオルガン。聴かせるではないですか。いったいわたしは今までどこを聴いていたのか…。
ナッシュビルで録音した、という事実より、彼らがもともと好きだったR&B、ソウル、ゴスペルにかじ取りした楽集なのでしょう。マーク・ファーナーは、はじめからオルガンの必要を感じていて、よくギターをぶら下げたまま鍵盤に向かっていました。専任の鍵盤奏者が来てくれたことで、心置きなくゴスペル・フィーリングの曲を書いています。つまり、わたしはGFRの変化を聴き取れなかったということなんでしょうね。2024.06.23
「ラブ・イズ・ライカ・オキシジェン」は、スイートのチャートインした曲で最後のはずです。前作でディスコ・ファンクに行くんだろうなと予想してはいました。…でも、これほど魂を売ってしまったかと思います。彼らはポップ・グループであり、芸風は衣装のように変えていくもの、という事実は理解します。スイートは米国での成功を目指し、この盤あたりから拠点を西海岸に移しました。70年代終期に英国は、パンク、スカ、レゲエと対決せざるをえず、オールドウェイブ側の変化もその状況で起こっていたんです。ところがスイートはそうした波しぶきもかぶりませんでした。…まあ、仕方ないところです。わたしの好きだった彼らのハードな側面は、「衣装」だったのかと自分を納得させるしかありません。
アンディ・スコットやスティーブ・プリーストは、ハードでポップなスイートを存続させたかったようです。現実を見ろ派のブライアン・コノリーと深刻な対立をしていくようになります。
ギターやシンセサイザーが唸らないスイートは、スイートではありません。ところどころで出てくる、かつてのどんどこビートや高音のコーラスにスイートらしさを感じてしまって、その瞬間だけはっとします。どれだけこのバンドのことを好きなんだか…。2024.06.22
60年代のバンドは、ロングプレイ盤を聴いただけでは足りず、シングルを聴いて初めてコンプリートになります。ベスト盤では足りません。B面曲が落ちてますから。ストーンズでしたら「シングルズ・コレクション」、スモール・フェイセズならこのセットです。彼らはわずか数枚(ロングプレイ盤換算)でブロークアップしてしまいます。短期間でシーン頂上に昇り詰めた印象です。一方で、シングル集のこのセットを順番に聴くと、それなりに積み上げ、進化し、成熟していったんだと判ります。そしてスティーブ・マリオットのカリスマぶりに改めて驚く。そんなセットです。
曲についてはここで詳述する必要もないでしょう。B面曲が半分なので、初めて聴くものも多くて、適当につくっている曲も少なくないです。それを含めて、マリオットの突進力とロニー・レーンのセンスがバンドの要だったと思うんです。かのフェイセズだって、ロッド・ステュアートひとりでは持たなかったでしょ。ケニー・ジョーンズだって好き勝手に叩いていますし、どれだけ自由なバンドだったかと思います。
このセットの良さは、「つくり」の素晴らしさにもあります。レパトワ・レーベル渾身の美術デザインと言ってよろしいか、と。画像では伝わりにくい。実物を見ると所持しておきたくなる、凝ったデザインです。クリス・ウェルチの渾身の文章つき。2024.06.21
75年に発表されたときから、わたしはショパンに注目していたのだよ、と偉そうに言えればいいんですけど…。後年の評価高さにうろたえて、オークションで争奪した盤にございます。70年代には全然知らなんだ。鍵盤奏者、アレンジャーであるアン・オデルのソロ・プロジェクトなのかと思いきや、男性が歌う楽曲もありますし、メンバーがかなり本気です。何が起こってブロークアップしたのか判りません。おそらく活動を継続する意図で結成したバンドです。特徴は曲の良さ、演奏の確かさにあります。この段階で世界のトップクラスだったのじゃないでしょうか。キレキレの演奏を聴いているだけで、満腹になれる楽集でございます。
ビートで最も多いのがファンクです。それもアフリカ系のファンクと全く遜色ない切れなのです。若干10代で参加しているサイモン・フィリップスの才能によるところです。それどころかギターもかなりテクニカル。クラシックを背景にしたアン・オデルの鍵盤もあって演奏にケチをつけるところはありません。音が若干こもっている、または反響していて、これは意図してやっているんでしょうか。「スペース・ネイティビティ」みたいなプログレ派を満足させる楽曲もあります。
才能にあふれている優れた楽集なんです。名の売れた演奏家がいないせいで、デビュー時に騒がれなかったことが残念です。ちなみにカケレコさんがつけているお値段より、わたしは高い値で買いました。2024.06.20
スティーブ・マリオットの声は相変わらずでとても安心感あります。…けど、それだけですかねぇ。「オール・オア・ナッシング」や「ティン・ソルジャー」に、いまだ震えるような感動をおぼえる自分ですが、かつてのスモール・フェイセズとは比べものにならないと断じます。ハムブル・パイ解散以降のマリオットは、曲づくりのセンスをどこにやったんだ、と。ソロ(オールスターズ)にしてもぱっとしませんし、ハムブル・パイの再結成も、かつてのユーザー以外聴かないだろうという代物です。この盤の気の抜けた表紙を見るにつけ、残念さでいっぱいになります。
メンバーは、ロニー・レーンがいなくて、リック・ウィルズ(フラムプトンズ・キャメルの人)が加わっています。バンド再結成に際して、またもやロニー・レーンとマリオットが仲たがいしたらしいです。ベース演奏者ではウィルズ及第点でも、ロニー・レーンにはバンドのスキッパーの才能があったと思います。イアン・マクレガンが自作曲を歌っております。でもマクレガンでは、マリオットの右腕になれません。
内容は、可もなく不可もなく…。どこかで聴いたような曲ばかりです。「ファインド・イット」が不愛想なビートに乗るファンク曲でいいと思います。この1曲のためにロングプレイを買えますか。2024.06.19
日本盤ライナーによれば、エタ・ジェイムズが白人ポップに挑戦したロングプレイ盤です。ランディ・ニューマンの出たばかりの新譜から3曲。その対象に選ばれた盤が、「セイル・アウェイ」です。これは、アフリカ系の人々が、ニシキヘビがいないなど、半ばだまされて米大陸に連れてこられた曲でございます。ただし、エッタ姐さんが歌うと、悲哀感あふれたブルーズにはなりません。ジャニス・ジョプリンがそうだったように、自分の人生を選ぶのは自分自身、という強烈な自負が感じられます。
女性ボーカリスト、という範疇からもエタ・ジェイムズははみ出しているようです。弾むビートに強力なダミ声で歌う彼女。アレサにあるフェミニンな印象をエタ・ジェイムズから感じることは少ないです。耳を張り飛ばされる激しさです。
エタ・ジェイムズは貧しい階層の出自だったと言われています。芸名の由来は、本名を逆から綴ったものだそうです。両親がだれで、正確な生年月日がいつかもわからないのかも知れません。彼女のプロフィールに幼少期に何をしていたかは書かれていないんです。純粋に歌唱力だけで成り上がった人です。2024.06.18
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