2019年8月8日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
スタッフ増田です。いやはや、暑いですね…。今までは夏は嫌いではありませんでしたが、年々暑さに弱くなっているのを感じています。(それとも年々暑くなっているのか…)
さてそんな夏に聴きたくなるのが、インドや中近東、東南アジアを彷彿とさせるエキゾチックな音楽ですね。
今回はそんな東洋の民族音楽を取り入れた、サイケデリックなプログレ作品をピックアップいたしました!
まずはご存知フランスのGONG。本75年作は『YOU』発表後にデヴィッド・アレンやジリ・スマイスらが脱退し、ピエール・ムーランを中心によりジャズ・ロック/フュージョン色の強いサウンドへと変化していく過渡期にリリースされた作品。
とはいえエキゾチックな要素をふんだんに盛り込んだ柔らかく美麗なジャズ・ロックは見事な出来。ピエール・ムーランの涼しげなヴィブラフォンも夏に合いますね。
GONGを紹介したなら彼も挙げない訳にはいきませんね!GONG全盛期を支えたギタリストによる75年2ndソロ。
タイトルからしてオリエンタリズム全開なこの曲。しかしながらトッド・ラングレンがプロデュースしているだけあって瑞々しいポップさもたっぷりで、言うなれば「インド音楽 meets 英国パワー・ポップ」!?
次はイタリアから。中近東や北アフリカ、アジアなどの民族音楽にフリージャズやサイケのエッセンスを加えたプログレ・グループの73年1st。
アラビック・オーボエ、竹笛、モロッカン・ボンゴ、タブラ・・・民族楽器をふんだんに取り入れたサウンドはかなりの本格派。かつサイケな浮遊感もあって大変心地良いです。
オリエンタルでサイケなプログレと言えばジャーマンの本領!
まずはその筆頭格と言えるAMON DUUL IIの5th『WOLF CITY』をピックアップ。
それまでの大作主義からコンパクトな楽曲作りへとシフトした作品ですが、重厚なハードさ、混沌とした怪しさ、そして幻想的な民族音楽要素がバランス良く混ざり合った中期の名盤です。
オリエンタルなジャーマン・プログレといえばPOPOL VUHも避けては通れませんね。
ピアノ、オーボエ、ギター、静謐な女性ヴォーカルがひっそりと幻想的に音を紡ぎ出していく、比類ないほどの神聖な美しさに満ちた彼らの最高傑作。
夏の暑さも届かない桃源郷へと誘ってくれそうな作品です。
こちらはケルン出身のトルコ民俗楽器奏者ALEXによる作品で、なんとCANのホルガー・シューカイ&ヤキ・リーベツァイトも参加。
アーシーなバンドサウンドにトルコの弦楽器バーラマの音色が響き渡る、叙情豊かなオリエンタル・ソングが実に素晴らしい!
ドイツ/イタリア/スイス人で構成されるジャーマン・サイケ/プログレ・グループ。
狂気としか言いようがないファンキー・クラウトロックの迷盤1stで有名な彼らですが、こちらの72年2ndでは若干混沌としつつも民族色&アコースティック色を強めたオリエンタルなサイケ・プログレに変化しています。
幻惑的にゆらめくオルガンやフルート、鳴り響くパーカッション・・・異世界への没入感いっぱいの好盤です。
奇才ヴァイオリニストのデイヴ・アーバス率いる英国ロック・グループ、69年デビュー作。
この時代の英国アンダーグラウンドらしい怪しさや翳りに包まれつつ、そこはかとなくオリエンタルな香りが漂うサウンドは個性満点です。
ドアーズやグレイトフル・デッドが好き?そんでもってゴングも好きって?ならこのオランダのバンドは必聴。
アムステルダムのヒッピー文化の震源地と言えるライヴハウスFANTASIOを拠点に活動したグループ、酩酊感たっぷりのサイケ・ジャズ・ロックを聴かせる70年唯一作!
80年代末のウズベキスタンにこんな凄いジャズ・ロック盤があったとは!?
RTFにエキゾチズムとファンキーなノリの良さを加えたような、躍動感あふれるフュージョン/ジャズ・ロックが痛快!
最後はオリエンタルな要素を取り入れた期待の新鋭プログレ・グループをご紹介!
アネクドテンのギタリスト&メロトロン奏者などが在籍するサイケデリック・ジャム・バンド、2011年作。
ホークウィンドやサバスのDNAに中近東フレイヴァーや北欧トラッドのリリシズムなどをまぶしたサウンドは圧倒的なスケール!
90年代初頭より活動するイタリアン・プログレ・バンドの17年作。
MAGMA影響下の呪術的かつ妖艶なサウンドに、サイケデリックな音響感を持つスペース・ロック、そしてイタリアン・プログレらしい地中海音楽由来の芳醇さをミックスした音楽性はずばり孤高。
カオティックなのにどういうわけか美しい、極北的イタリアン・プログレ衝撃作!
シンフォニックなOZRIC TENTACLES!?コズミックな音響とうねるギターはスペースロックそのものだけど、フルートとシンセにはオリエンタルで柔らかなシンフォ・テイストがあって、なのに違和感はゼロ。
02年に結成されたベルギーの新鋭による17年作、ずばり快作です!
ラストは民族音楽×ジャズ・ロックの最重要シーンと言えるインドネシア・シーンから、技巧派ピアニストによる16年作をご紹介。
超絶テクニックでせめぎ合うジャズ・ロックに、ガムラン・パーカッションやアラビア発祥の弦楽器ラバーブがオリエンタルに絡むこのサウンド、ただ一言「鮮烈」…!
いかがでしたか?こちらもどうぞ!
ケルン出身のトルコ民俗楽器奏者、ALEXが残した2枚のアルバム(74年1st、76年2nd)を収めた2in1。1stはトルコの弦楽器baglama(バーラマ)の弾き語りを軸にした、叙情豊かなオリエンタル・ソングがメイン。打って変わって2ndは、エレキギター、ベース、ドラムが加わったレイドバック&アーシーな米ルーツ・ロック調のバンドサウンドを軸に、Holger CzukayとJaki Liebezeitによる音響ギミックが見え隠れするクラウト・ロックの秘宝盤。初期CANファンは勿論、Holger Czukay『MOVIES』のテイストや、オリエンタルなサイケが好きな方にも大推薦!
イタリアはローマで結成。中近東や北アフリカやアジアの民族音楽にフリージャズやサイケのエッセンスも加えたオリエンタルなプログレ・グループで、フランコ・バッティアートに見いだされて、BLA BLAレコードと契約、73年にリリースされたデビュー作。楽器クレジットにはアラビック・オーボエ、竹笛、フルート、ピッコロ、サックス、クラリネット、モロッカン・ボンゴ、アフリカン・ドラム、タブラなどが書かれています。 悠久の大地を感じさせるゆったりとたおやかで映像喚起的なアンサンブルを軸に、時にフリー・ジャズのテンションあるアンサンブルをはさむサウンドは難しさはまったくなく、たいへん聴きやすく心地よく、マウロ・パガーニあたりのファンは楽しめるでしょう。これは好作品です。
85年より活動するインドネシア産ガムラン・ジャズ・グループKRAKATAUのキーボーディストによる16年ソロ作。YARON STAVI(b)、ASAF SIRKIS(dr)、MARK WINGFIELD(g)という腕利きミュージシャンらとの4人編成を基本に制作。ガムラン・ミュージックをふんだんに取り入れたエキゾ・ジャズ・ロックと、洗練されたテクニカルなフュージョン・ナンバーからなりますが、特に素晴らしいのが前者。アヴァンギャルドに乱れ飛ぶピアノと猛烈な手数のドラムがぶつかり合う驚愕のジャズ・ロックを、ガムラン・パーカッションやアラビア発祥の擦弦楽器ラバーブによるオリエンタルな音色が彩るサウンドは、鮮烈の一言。技巧を全面に押し出したテクニカル・ジャズ・ロックと、宗教的な崇高さや神秘性が一体となったサウンドに息をのみます。前衛色も強いサウンドの中で、オーソドックスかつ理知的な音運びで秩序をもたらすギターもさすが。MAHAVISHNU ORCHESTRAファンにも響きそうな一枚です。
90年代初頭より活動するイタリアン・プログレ・バンドの17年作。彼らの特徴が、MAGMA影響下の呪術的かつ妖艶なサウンドと、サイケデリックな音響感を持つスペース・ロック、そして地中海エッセンスをたっぷりと吸い込んだイタリアン・プログレらしい芳醇さがミックスされた個性的すぎる音世界。通算12作目となる本作でもその摩訶不思議かつ孤高の音楽性は健在です。浮遊するスペイシーなシンセをバックに囁くような女性ヴォーカルとデメトリオ・ストラトスを強く意識した男性ヴォーカルが木霊し、煌くアコースティックギターやストリングス・シンセが紡ぐ地中海/中近東音楽風のエキゾチズムが揺らめき、そうかと思うと艶やかな管弦楽器群が織りなすUnivers Zeroばりのチェンバー・ロックが展開、一転して今度はヘヴィに唸りを上げるギターと硬質なリズムが強靭に刻むヘヴィ・プログレへなだれ込んだりと、とにかく何でもありのカオティックな音像はどこか底知れない深みを感じさせます。しかしそんな中にも一貫して詩的とも言える美しさを内包しているのがまた凄いところです。どういう発想からこんな音楽が生まれてくるのか、圧倒的に濃密なサウンドに飲み込まれる衝撃作!
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