プログレッシヴ・ロックの中古CD豊富!プログレ、世界のニッチ&ディープな60s/70sロック専門ネットCDショップ!

プログレ、60s/70sロックCDのネット通販/買取

24時間以内発送(土・日・祝は翌営業日)、6,000円以上送料無料

「どうしてプログレを好きになってしまったんだろう@カケハシ」 第二十六回: 我が心のキース・エマーソン & THE BEST ~1990年の追憶~  文・市川哲史

第二十六回: 我が心のキース・エマーソン & THE BEST ~1990年の追憶~


油断してたら賞味期限切れしちゃった、かもしれないネタで始める。

先日、クイーン表紙の英《MOJO》誌最新7月号を買ったら、もれなく付録CDが付いてきた。見覚えがある紅色のジャケの中央に、見覚えがある銀色の結び目文様。ん? ディシプリンじゃーん。そう、ロバート・フリップ卿完全監修のキング・クリムゾン公式非売品サンプラーなのだ。タイトルは『A MOJO Anthology―Rare, classic, unusual and live 1969-2019』で、要は記念すべき令和元年、もといキング・クリムゾン50周年記念の2019年下半期リリース商品の〈耳で聴くカタログ〉である。聡いなあ。

その全12曲はこんな感じ。

➀21馬鹿 (radio edit)
➁Cadence And Cascade (feat. Greg Lake, Gordon Haskell, Adrian Belew and Jakko
Jakszyk)
➂Starless (edit)
➃Red
➄Requiem (extended edit)
➅Eyes Wide Open (acoustic version)
➆Frakctured (from THE RECONSTRUKCTION OF LIGHT)
➇Easy Money (from LIVE IN CHICAGO)
➈Epitaph (from LIVE IN VIENNA)
➉Meltdown (from RADICAL ACTION TO UNSEAT THE HOLD OF MONKEY MIND)
⑪Radical ActionⅡ (from MELTDOWN: LIVE IN MEXICO CITY)
⑫Level Five (from MELTDOWN: LIVE IN MEXICO CITY)


毎年作品化されてきた現行クリムゾン楽団のライヴ・アルバム盤4Wで既発表の➇➈➉⑪⑫はともかく、➀➁➂➃➄⑥➆の前半7曲の布陣が嫌らしいというか、微妙なのだ。

今年2019年はキング・クリムゾン50周年ということで、1月13日から50週間連続で、レア音源や別テイクが公式サイト《KING CRIMSON 50》で毎週1曲ずつ、景気よく無料ストリーミング・サービスしている。ちなみにこれを書いている7月26日時点での最新第28弾は
“Matte Kudasai (Alternative Introduction)”だったりする。

で実は今回の➀➁➂➃➄➅➆のすべてが、その《KC50》シリーズ音源まんまなのだ。たしかに初フィジカル化ではあるが、なんか損した気分になる。しかも。

➀KC50❶(1月13日DL)だがその正体は、7曲入りサンプラーCD『The Abbreviated King Crimson : Heartbeat』収録の短縮ヴァージョン、および、全曲21馬鹿EP『Schizoid Man』収録の編集ヴァージョンと同一音源。要は、最初の4CDアンソロジー箱『紅伝説 1969-1984』のラジオ・プロモーション用に編集された〈幻のラジオ・エディット・ヴァージョン〉だけど、なんとあのフリップのギター・ソロが削られている、歴代最高に物足りない21馬鹿なのだ。

➁KC50❸(1月28日DL)だがその正体は、グレッグ・レイクとゴードン・ハスケルとエイドリアン・ブリューとジャコ・ジャクスジクが四人メドレーで唄う、“ケイデンスとカスケイド”ときた。21CD+2DVD+4BD『セイラーズ・テールズ 1970-1972』箱で各ヴォーカル・ヴァージョンが披露されていただけに、時間の問題だとは思っていた。言うまでもなくDGMが誇る、自称「リリースの主役にはなれない発掘物担当」の〈陽気な発掘&編集おたく〉アレックス・ムンディによる、バチ当たりな一品である。

でもなんだろうこの馬鹿馬鹿しさと清々しさは。

➂➃は“Starless/Red (edit)”として、KC50⓬(4月1日DL)で配信済み。『紅伝説』でも三代目ベスト盤『スリープレス~ザ・コンサイス・キング・クリムゾン』でも四代目ベスト盤『濃縮キング・クリムゾン』でもそうであったように、各種編集盤にこの2曲を収録する際は必ずこの【短縮スターレス~完全レッド】形でなければならないようだ。謎の不文律。

➄KC50⓫(3月25日DL)だがその正体は、11CD+5DVD+3BD『オン(アンド・オフ)ザ・ロード』箱収録の、今度はエクステンデッド・ヴァージョン。

➅KC50❾(3月11日DL)だがその正体は、ミニ・アルバム『しょうがない~ハッピー・ウィズ・ホワット・ユー・ハフ・トゥ・ビー・ハッピー・ウィズ』に収録されていたアコースティック・ヴァージョン。

➆KC50⓮(4月15日DL)だがその正体は、今回7月に日本でもリリースされるKC巨大箱シリーズ最新作『ヘヴン&アース 1997-2008』17CD+2DVD+4BD箱で聴ける、21世紀初KCアルバム『ザ・コンストラクション・オブ・ライト』をパット・マステロットが生ドラムで叩き直した、『ザ・リコンストラクション・オブ・ライト』収録のニュー・ヴァージョン。

残念ながらこの編集盤でしか聴けない音源はない。当たり前だ付録だもの贅沢言うな。とはいえ50周年ツアーの集客プロモーション・アイテムとしては、充分なのではないか。なんたっておやじロックの英国総本山《MOJO》誌だし。

で直後にリリースされたのが、例の〈耳で聴くツアー・パンフ〉シリーズ『ジ・エレメンツ』の最新2019年版ときた。クリムゾン楽団がスタートした2014年以来ずっと、毎年毎年制作されているレア音源満載の〈ツアー&新作アーカイヴ箱有料予告編アイテム〉である。よって今回の内容も抜かりない。

さっきの《mojo》付録盤唯一の〈新鮮テイク〉だった➁“四人羽織版ケイデンスとカスケイド”が、既に何のためらいもなく収録されている。他にも、新作箱『ヘヴン&アース』から5曲+どうも年内にリリースされるらしい新作ライヴ盤『ライヴ・イン・ローマ』から3曲の、あからさまな販促曲群が並ぶ。

それどころか、〈Previously released on 2017 Royal Package CD set Only〉と情け容赦なくクレジットされたライヴ録音が4曲も……。全110公演中46公演から各1曲収録したまさにクリムゾン楽団のライヴ日誌で、昨年の日本ツアーでもロイヤル・パッケージ限定会場販売された超コレクターズ・アイテムーー超稀少4CDライヴ・コンピ盤『AUDIO DIARY 2014-2017』を無我夢中で購入してしまった、ATMプログレッシャーズの嗚咽が聴こえるよ?

ただしよーく観察すると、2015年11月26日バンクーバーの“ザ・コンストラクション・オブ・ライト”と2017年7月7日ケベックの“ザ・レターズ”の2曲は、その4CDには未収録の正真正銘初出曲だったりするから、よくわからない。

トータル的には、《Lizard Suite》に《Radical Action Suite》に《ProjeKcts Suite》に《Sus-Tayn-Z Suite》という、【KC納涼組曲祭り】がお題目のようだが。

相も変わらず見事な、オフィシャル・ツアー・マーチャンダイズ攻撃だと思う。

この完璧なツアー&フィジカル・プロモーション作戦を支えているのは、言うまでもなく圧倒的な音源だ。90年代半ばに《ディシプリン・グローバル・モービル(DGM)》を設立以来、会員制オフィシャル・ブートレッグCD頒布ビジネスの《キング・クリムゾン・コレクターズ・クラブ(KCCC)》と、究極のクリムゾン関連音源配信サイト《DGM Live》を通じて、20年以上にわたり発掘修復再構成してきたアーカイヴ音源たちの膨大な数のストックがあってこそ案み出された、画期的な広報戦略である。

『ジ・エレメンツ』2015年版には《The Seven Principles Of King Crimson >2014》、つまり【キング・クリムゾン七つの掟】なる物騒なものが掲載されていた。

⓵キング・クリムゾンが人びとにも己れにも悦びをもたらさんことを。
⓶もしも演奏したくないパートがあったら、誰かに任せろ。それだけの人材はいる。
⓷いつ作った曲であれ、どの曲も新曲である。
⓸どの音を出せばいいかわからなければ、とりあえずC#だ。
⓹何拍子で演奏すればいいかわからなければ、とりあえず5拍子もしくは7拍子だ。
⓺どの楽器を使えばいいかわからなければ、とりあえず機材を増やせ。
⓻それでも何を演奏すればいいかわからなければ、何もするな。



ああ、どうしてロバート・フリップは幾つになってもこうなのか。

気合いが入るとこのひとは、こんな箇条書きスタイルの強弁スローガンをまず立てる性癖がある。【キング・クリムゾン7年周期説】とか【Drive To 1981】とか【MOR三部作】とか【エネルギーと情熱と折衷主義が揃ったとき、紅の王は現れる】とか、卿のご託宣をいちいちありがたがって無理矢理納得するのが、生真面目な日本のメディアと評論家とプログレッシャーズに課された修行だったのだ。

「よけいな來雑物を省いて純粋に論理のみの思考形態になった状態を、〈狂気〉と呼ぶ」というチェスタトン理論まんまの、私とフリップ卿の永年に及んだ屁理屈問答もまた、その産物だったに違いない。たぶん。

しかし50年間分の音源が自ら、よってたかって〈キング・クリムゾンというもの〉を雄弁に語りまくるようになった現在となっては、あの屁理屈無限地獄が懐かしい。だってロバート・フリップ本人が50年間積み重ねてきた雄弁すぎる理屈ですら、音源の前ではもはや無用の長物と化したからだ。売文屋歴40年の私としてはやはり、言葉の圧倒的な敗北は虚しい。

などとつい、あのフリップ卿に感傷的になっちゃった自分に驚くが、そこで武器を〈言葉〉から〈音源〉に持ち替えられたからこそ、フリップ&クリムゾンはこの半世紀一の隆盛をこうして迎えられたはずだ。我々の血税とともに。

ふ。そしてこんなときにつくづく思う。

フリップ卿の〈世界一アナーキーな完全主義with商魂〉が、小指の先ほどELPにあったらばと。いや、あの三人にそりゃ無理だ。もう遅いかもしれないが、DGMが、ELPのアーカイヴ音源も全部面倒見てくれないだろうか。というかこの際、会社定款にプログレ代理店業務を堂々書き加えて、ピンク・フロイドもイエスもジェネシスもビジネスとして管理しちゃったらどうだーー《PFCC》とか《YCC》とか《GCC》とか名乗って配信したり。偶然にもスティーヴン・ウィルソンは既にELPとイエスのニュー・ミックスを手掛けてるし、デヴィッド・シングルトンやアレックス・ムンディにいまの四倍働いてもらえば、いよいよ天下布武だぜロバート・フリップ。

ATMプログレッシャーズは一人残らず、確実に死に絶えるけれど。



おもえばキース・エマーソンというひとは、とことん無頓着で無防備だった。

プログレ界最強の〈太く短く〉ELPであれだけ一世風靡しながら、その後の印象がやたら薄い。イタリアン・ホラーや日本のSFアニメ映画のサントラ→エマーソン・レイク&パウエル→3(スリー)→ELP再結成……21世紀に至ってはせいぜい『ゴジラ・ファイナル・ウォーズ』で打ち止めなのではないか。あんまりだ。

とはいえ『ラスゴジ』は誰もまともに聴いてないと想像に難くないが、意外にもまるでプロディジーみたいな(失笑)〈輩なデジ・ロック〉曲をかましてたエマーソンが、実は素敵だったのだが。

『ホンキー』『CHANGING STATES』とわずか2枚だけど、ソロ・アルバムだってちゃんと出した。キース・エマーソン・バンドは3枚も出した。クリスマス・アルバムもピアノ・アルバムも出した。サントラ盤は沢山出した。各種コンピ盤は好き勝手に出された。しかもどのアルバムもリイシューの度に、収録曲や曲順が変更される目にも遭った。そして、メジャー契約にもなかなか恵まれず発売レーベルが固定化しなかったことも、〈昔の名前で出ています〉感を助長してしまった気がする。

まあそれ以前にエマーソンらしい、ノー・プランでノー・ガードな姿勢が悪いのだ。

クラシックやらジャズやらロックやらスキッフルやら教会音楽やらでてんこ盛りなのは、そういう人だから別にいい。しかし、たとえばカヴァーの選曲の基準はどこなのか。

スペンサー・デイヴィス・グループ“アイム・ザ・マン”、エルヴィス・プレスリー“ドント・ビー・クルーエル”、フランク・ザッパ“ランピー・グレイヴィー”ときて、イアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズ“セックス&ドラッグス&ロックンロール”ってちょっと、あなた。

結果的にこういうところが、ELP後の彼の居場所を狭小にしてしまった。しかしこれはこれで私は愉しませてもらったし、1981年発表の1stソロ・アルバム『ホンキー』なんか、35年以上経ったいまでも毎年最低3回は聴いてるが、未だに飽きないもの。

黒人ミュージシャンらが大挙したファンキーでカリプソな〈新機軸〉には驚かされたものの、超バッハあり躍るホンキートンク・ピアノありと、やたら愉しい〈夏のプログレ〉アルバムだ。ポリフォニック・シンセも意外に気にならないし。しかも因縁のバハマ・ナッソー録音――そう、『ラヴ・ビーチ』じゃなくてこの『ホンキー』がELPのラスト・アルバムだったら、我々も気持ちよく成仏できたのに。

しかしこのアルバム、誰が聴いても世界唯一の〈鍵盤の上の鍵盤弾き〉の面目躍如というか、とにかく本人がいちばん愉しんでいるのが伝わるはずだ。こっちだって嬉しくなる。と同時に、第二第三の『ホンキー』を作る機会と環境と状況に恵まれなかったのが、エマーソンの不幸だったと思うのだ。

私が初めてキース・エマーソンのライヴを目撃したのは、1972年7月の台風直下ELP初来日公演ではない。岡山の片田舎に住む小学5年生が観に行けるはずもなく。といって1992年9月の、再結成ELP来日公演でもない。実は《THE BEST》なる身も蓋もない名前の臨時バンドの、1990年9月26日横浜アリーナ公演だったりする。しかも、日本衛星放送株式会社――要はWOWOW開局記念番組の一つとして後日録画放送されたのだけれど、スタンド席はガラガラだった憶えがある。

とことんせつないな。

なんたってエマーソン以外のメンツが、ジョー・ウォルシュ+ジェフ・バクスター+ジョン・エントウィッスル+サイモン・フィリップス+チリチリロングの金髪も声も衣裳もいかにもの名も知らない若手ヴォーカルという、見事に統一感が欠落したバンドだ。

LAのチャイナ・シアターで音合わせしたら盛り上がったバクスター&「“リキの電話番号”のベースラインを弾きたかったエントウィッスルに、ウォルシュも合流。すると「これまでの人生で演奏する機会がなかったタイプの“アメリカ”を弾きたい」バクスター&エントウィッスルの熱望が、エマーソンまで招聘してしまった。

そして手応えを感じた彼らは六人バンドとなり、ハワイ公演をゲネプロ代わりに代々木オリンピック・ホール&横アリの2公演を披露するために来日。帰国後には映画のサウンドトラックで肩慣らしして、デビュー・アルバムを制作する――なんて与太話を誰が信じる。現在も当時も。

言うまでもなくハワイ公演の事実もなければ、当然レコーディングなど一切行われなかったわけで、バブル景気に浮かれた日本人が金に物をぶいぶい言わせた〈二夜限りの超豪華ロック・アーティスト夢のスーパー・バンド祭り〉なのであった。ただ私には初エマーソン&初バクスターで充分豪華だが、一般の人々にはかなり地味な顔触れだったのではないか。もしかしたら。いや、もしかしなくても。

そしてなんといっても29年前(!)の出来事だ。翌日行なったインタヴューはしっかり記憶してるが、ライヴは巨大仏壇モーグ基地で暴れるエマーソン師匠の姿以外、ほとんど憶えていない。なんだろうこの罪悪感。なのでオンエア映像を入手して、しみじみすることにした。

発売したばかりのクリムゾン24枚組『ヘヴン&アース 1997-2008』箱に、全34公演が完全収録されちゃったプロジェクト2の膨大なライヴ音源の5本目で、聴くのに飽きた我が身が欲したともいえる。するとーー。

➀Seven Bridges Road セヴン・ブリッジズ・ロード
➁Life In The Fast Lane 駆け足の人生
➂My Wife マイ・ワイフ
➃Bodisativa 菩薩
➄Fanfare For The Common Man 庶民のファンファーレ
➅Rikki Don’t Lose That Number リキの電話番号
➆SIMON PHILLIPS’s Drum Solo
➇Rocky Mountain Way ロッキー・マウンテン・ハイ
➈Too Late The Hero トゥー・レイト・ザ・ヒーロー
➉KEITH EMERSON’s Piano Solo
⑪America~Rondo~Look At Us Know~Rondo(Reprise) アメリカ~ロンド
⑫Boris The Spider ボリスのくも野郎
⑬Reelin’ In The Years リーリング・イン・ジ・イヤーズ
⑭Takin’ It To The Streets ドゥービー・ストリート


①➁がイーグルスで➃➅⑬がスティーリー・ダンで⑭がドゥービーズで➇がウォルシュのソロ曲――当時は気づかなかったが、ソロを除いた全12曲中7曲が米国産とは、なんとアメリカンな一夜だったことか。すると英国産は、ザ・フー➂⑫、エントウィッスルのソロ曲➈、ELP➄にザ・ナイス⑪だけかぁぁぁ。

ただし、なぜか『ジョーズ』のテーマ→『はげ山の一夜』→『春の祭典』と移行したあげく、サイフィリの三連ティンパニーでシメられる⑫“くも野郎”の底抜けのおめでたさも、立派なアメリカン・オプティミズムだと思う。

さて当時のエマーソンは45歳で、のちに我々を襲った悲劇の銃爪(ひきがね)となる右手の手術をまだ受けてはいない。あれは1993年10月5日に執刀された〈ロスの悪夢〉である。右手小指を骨折したのも、このTHE BEST日本公演から帰国後だ。多少の神経変性疾患には悩まされながらも、自分の指を制御できないフォーカル・ジストニアはまだ発症していなかっただろう。そういう意味では、【オリジナル・キース・エマーソン】の最近似値を目撃できた貴重な機会だったのだ。いま思えば。

洋楽懐メロ・バブリー・セッションの夕べにはさすがに似合わないであろう、〈ナイフを刺す〉および〈オルガンの下敷きになりながら弾く〉の二大人気ギミック以外の得意技は、フルコースで披露。ジェフバクのギターとユニゾったり、ギターよりも雄弁でメロディアスなエントウィッスルのベースと複雑に絡み合う、お馴染みのハモンドやモーグがとことん堪能できた。まあ、元々ライヴ好きの〈アームチェア・ギタリスト〉バクスターや、1972年にはもうシンセ・ベースを弾いてた〈新しもの好き〉エントウィッスルとの相性がいいのは、開演前から想像がついたはずだ。

に較べ、吸ってんだか呑んでんだかとにかくご機嫌さんなのに、徹頭徹尾エマーソンに近づかなかったウォルシュの防衛本能は可笑しすぎた。さすが最もプログレが似合わない男、ジョー・ウォルシュ。するとアメリカン・バンドだった頃のスティーリー・ダンやドゥービーズの楽曲でも、まったく違和感なくピアノで駆け回るエマーソンはやはりとても偉いと思う私なのである。

おや、完全に想い出したぞ。全然落ち着きなく弾きまくっていた、あの姿がなつかしいんだよ。

いかん、哀しくなってきた。

〈ロスの悪夢〉以降日に日に失われていった右手が、第二第三の『ホンキー』を彼に作らせなかったのは周知の事実だろう。私もそう思う。人生の結末に拳銃自殺を選んでも仕方がない。だけどその以前からエマーソンは、自由にならない我が身とずっと付き合ってきたのだ。

ELP黄金時代はソロ活動しようとすると、L&Pが「ELPの枠組みから外れることはするな」と散々反対したあげく、「ELPとして演るなら許す」と便乗された。ELP解散後は解散後で、ソロ名義で何を作ろうとレーベルというレーベルが口を揃えて「GLとCPを呼んでELPにすればもっと売れる」と圧力かけてきた。実際に彼がソロ用に書いた楽曲群が、結局ELP(ピー)やELP(パー)や3に転用されたケースは少なくない。
 これだけ創作活動を不当に制限され続けてきたのだから、まさに「第二第三の『ホンキー』よいずこへ」ではないか。

しかしエマーソンは、そんな不当介入を甘んじて受けてきた。というか、いつも苦笑まじりで「しょうがないなぁ」と周りの縛りを定番ギャグ化して話す姿は、私にはとても逞しく映っていた。

だからこそ、それでも撃たざるをえなかった2016年3月11日の彼の心中を、私にはとても慮ることなんてできないのである。














第一回「ジョン・ウェットンはなぜ<いいひと>だったのか?」はコチラ!

第ニ回 「尼崎に<あしたのイエス>を見た、か? ~2017・4・21イエス・フィーチュアリング・ジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマン(苦笑)@あましんアルカイックホールのライヴ評みたいなもの」はコチラ!

第三回「ロバート・フリップ卿の“英雄夢語り”」はコチラ!

第四回「第四回 これは我々が本当に望んだロジャー・ウォーターズなのか? -二つのピンク・フロイド、その後【前篇】-」はコチラ!

第五回「ギルモアくんとマンザネラちゃん -二つのピンク・フロイド、その後【後篇】ー」はコチラ!

第六回「お箸で食べるイタリアン・プログレ ―24年前に邂逅していた(らしい)バンコにごめんなさい」はコチラ!

第七回「誰も知らない〈1987年のロジャー・ウォーターズ〉 ーーこのときライヴ・アルバムをリリースしていればなぁぁぁ」はコチラ!

第八回「瓢箪からジャッコ -『ライヴ・イン・ウィーン』と『LIVE IN CHICAGO』から見えた〈キング・クリムゾンの新風景〉」はコチラ!

第九回「坂上忍になれなかったフィル・コリンズ。」はコチラ!

第十回「禊(みそぎ)のロバート・フリップ ーー噂の27枚組BOX『セイラーズ・テール 1970-1972』の正しい聴き方」はコチラ!

第十一回「ああロキシー・ミュージック(VIVA! ROXY MUSIC)前篇 --BOXを聴く前にブライアン・フェリーをおさらいしよう」 はコチラ!

第十二回 「ああロキシー・ミュージック(VIVA! ROXY MUSIC)後篇 --BOXを聴いて再認識する〈ポップ・アートとしてのロキシー・ミュージック〉」はコチラ!

第十三回 「今日もどこかでヒプノシス」はコチラ!

第十四回 「ピーター・バンクスはなぜ、再評価されないのか --〈星を旅する予言者〉の六回忌にあたって」はコチラ!

第十五回 「悪いひとじゃないんだけどねぇ……(遠い目)  ―― ビル・ブルフォードへのラブレターを『シームズ・ライク・ア・ライフタイム・アゴー 1977-1980』BOXに添えて」はコチラ!

第十六回 「グレッグ・レイク哀歌(エレジー)」はコチラ!

第十七回 「クリス・スクワイアとトレヴァー・ホーン -イエスの〈新作〉『FLY FROM HERE -RETURN TRIP』に想うこと- 前篇:スクワイアの巻」はコチラ!

第十八回 「クリス・スクワイアとトレヴァー・ホーン -イエスの〈新作〉『FLY FROM HERE-RETURN TRIP』に想うこと- 後篇:空を飛べたのはホーンの巻」はコチラ!

第十九回「どうしてジョン・ウェットンを好きになってしまったんだろう(三回忌カケレコスペシャルversion)」はコチラ!

第二十回「どうしてゴードン・ハスケルは不当評価されたのだろう ー前篇:幻の1995年インタヴュー発掘、ついでに8人クリムゾン来日公演評も。」はコチラ!

第二十一回「どうしてゴードン・ハスケルは不当評価されたのだろう -後篇:幻の1995年インタヴューを発掘したら、めぐる因果は糸車の〈酒の肴ロック〉」はコチラ!

第二十二回「鍵盤は気楽な稼業ときたもんだ--あるTKの一生、に50周年イエス来日公演評を添えて」はコチラ!

第二十三回「どうしてプログレを好きになってしまったんだろう(by ビリー・シャーウッド)」はコチラ!

第二十四回「荒野の三詩人-誰かリチャード・パーマー=ジェイムズを知らないか-」はコチラ!

第二十五回「会議は踊る、プログレも踊る-リチャード・パーマー=ジェイムズを探して-」はコチラ!

KEITH EMERSONの在庫

  • KEITH EMERSON / EMERSON PLAYS EMERSON

    02年発表のソロ・ピアノ・アルバム

  • KEITH EMERSON / HONKY

    EL&Pの『ラヴ・ビーチ』録音後に同じくバハマで制作したソロ、81年作

    イギリスを代表するキーボード・プログレバンドEmerson Lake & Palmerのキーボーディストによるソロ作。当時のEmerson Lake & Palmerの最終作となった「Love Beach」をバハマで製作、発表した後、1人バハマに残り製作されたアルバムとなっており、格調高いクラシカルな音楽性は鳴りを潜め、のんびりとした明るいキーボード・ロック作品となっています。また、ハモンドオルガンやピアノのほかに、時代を反映したポリフォニック・シンセも多用されており、より華やかな音像を構築。ジャズ・フレーバーを感じる楽曲からゴスペル・ミュージック、彼らしいブギウギなサウンドやホンキートンクまで非常にバラエティに富んだ作品となっています。

  • KEITH EMERSON / MURDEROCK

    キースが音楽を手がけた同名イタリアンホラー映画のサントラアルバム、83年リリース

  • KEITH EMERSON / CHANGING STATES

    95年作ソロ

  • KEITH EMERSON / LA CHIESA

    97年作

  • KEITH EMERSON / OFF THE SHELF

    キャリアを通じた未発表曲をエマーソン自身が編集した未発表音源集、全15曲

    英国プログレを代表するキーボーディストである彼の、長いキャリアより未発表に終わった音源の数々から自身がセレクトした未発表音源集。ロンドンフィルをフィーチャーしたEL&P「奈落のボレロ」に始まり、「展覧会の絵」の単独リ・レコーディング、NICE時代の68年にレコーディングしたフランク・ザッパ「ランピー・グレイヴィ」のカバーなどの貴重音源を収録!全15曲。

「KEITH EMERSONの在庫」をもっと見る

EL&P(EMERSON LAKE & PALMER)の在庫

  • EL&P(EMERSON LAKE & PALMER) / HIGH VOLTAGE FESTIVAL: RECORDED LIVE 25TH JULY 2010

    2010年ロンドンでのライヴ、全12曲

  • EL&P(EMERSON LAKE & PALMER) / TARKUS

    ELPを象徴する大作「Tarkus」収録、71年発表の大名盤2nd!

    NICEのKeith Emerson、KING CRIMSONのGreg Lake、ATOMIC ROOSTERのCarl Palmerによって結成され、ギターレスのトリオという変則的な編成ながらそのハンディを全く感じさせない音楽性でプログレッシブ・ロックの1つのスタイルを築いたイギリスのグループの71年2nd。アルマジロと戦車が合体したような架空のキャラクターである「タルカス」をコンセプトにした大曲を含むその内容は、怒涛の変拍子とテクニカルなバンド・サウンドで迫る彼らの初期の代表作の1つであり、前作同様、非常に屈折したクラシカル・ロックの名盤となっています。また、オルガンやピアノに加えて飛躍的にモーグ・シンセサイザーが存在感を示すようになっており、大きく楽曲に取り入れられているのが特徴と言えるでしょう。

    • VICP62115

      紙ジャケット仕様、デジタル・リマスター、情報シール有、定価2205

      盤質:無傷/小傷

      状態:良好

      帯有

      情報記載シールなし、紙ジャケに若干圧痕あり

    • VICP62115

      紙ジャケット仕様、デジタル・リマスター、情報シール有、定価2205

      盤質:無傷/小傷

      状態:良好

      帯有

      情報記載シールなし

      1090円

      872円
      (税込959円)

      240円お得!


      CD詳細ページへ

    • VICP75058

      廃盤、紙ジャケット仕様、HQCD、デジタル・リマスター、ボーナス・トラック1曲、定価2800

      盤質:無傷/小傷

      状態:良好

      帯有

      1990円

      1592円
      (税込1751円)

      438円お得!


      CD詳細ページへ

  • EL&P(EMERSON LAKE & PALMER) / PICTURES AT AN EXHIBITION

    ムソルグスキー「展覧会の絵」をモチーフとした完全未発表楽曲によるライヴ録音、痛快極まる72年作!

    NICEのKeith Emerson、KING CRIMSONのGreg Lake、ATOMIC ROOSTERのCarl Palmerによって結成され、ギターレスのトリオという変則的な編成ながらそのハンディを全く感じさせない音楽性でプログレッシブ・ロックの1つのスタイルを築いたイギリスのグループの71年3rd。その内容はEL&Pの人気を不動のものにしたライブ作であり、タイトル通りムソルグスキー作曲、ラヴェルのオーケストレーションによる組曲「展覧会の絵」を強引にキーボード・ロックでねじ伏せた名盤となっています。アンコールにはチャイコフスキーの「くるみ割り人形」をクラヴィネットで弾き倒す「Nutrocker」を収録。クラシックとロックを融合させたその特異な音楽性は現在のプログレシーンまで脈々と受け継がれ多くのフォロワーが登場していますが、その元祖にして完璧な完成度を誇る傑作です。

  • EL&P(EMERSON LAKE & PALMER) / BRAIN SALAD SURGERY

    73年5th、70年代英国ロック屈指の名盤であり、それまでの彼らの集大成を最高の形で結実させた一枚!

    NICEのKeith Emerson、KING CRIMSONのGreg Lake、ATOMIC ROOSTERのCarl Palmerによって結成され、ギターレスのトリオという変則的な編成ながらそのハンディを全く感じさせない音楽性でプログレッシブ・ロックの1つのスタイルを築いたイギリスのグループの73年5th。自身のレーベル「マンティコア」よりリリースされた、70年代英国ロック屈指の名盤であり、それまでの彼らの集大成を最高の形で結実させた傑作です。ヒューバート・パリー作曲の「聖地エルサレム」で荘厳に幕を開け、ヒナステラ作曲の超絶曲「トッカータ」などこれまでの彼らの音楽性に沿った個性的な楽曲が並ぶものの、本作から全編に本格的にシンセサイザーが導入されており、より彩り豊かな英国叙情を伝えています。極めつけは30分にも及ぶ3楽章から成る「悪の経典#9」の完璧なロックシンフォニー。全ロックファン必聴の名作です。

  • EL&P(EMERSON LAKE & PALMER) / LADIES AND GENTLEMEN

    74年ライヴ作

    NICEのKeith Emerson、KING CRIMSONのGreg Lake、ATOMIC ROOSTERのCarl Palmerによって結成され、ギターレスのトリオという変則的な編成ながらそのハンディを全く感じさせない音楽性でプログレッシブ・ロックの1つのスタイルを築いたイギリスのグループの74年ライブ作。彼らの絶頂期を収めたライブ盤となっており、名盤「タルカス」の表題曲、「恐怖の頭脳改革」収録の大曲「悪の経典」などをスリーピースとは思えない重厚なサウンドで演奏しており、Keith Emersonの超絶なオルガンさばきとGreg Lakeの伸びやかな歌声、そしてCarl Palmerの手数の多いドラムを堪能することが出来ます。

  • EL&P(EMERSON LAKE & PALMER) / WELCOME BACK MY FRIENDS TO THE SHOW THAT NEVER ENDS

    74年ライヴ作

  • EL&P(EMERSON LAKE & PALMER) / IN CONCERT

    1977年8月22日、モントリオール・オリンピック・スタジアムにて総勢70人のオーケストラを率いて行われたコンサートの音源を収録

    1977年8月22日、モントリオール・オリンピック・スタジアムにて70人のオーケストラを率いて行われたコンサート。

  • EL&P(EMERSON LAKE & PALMER) / WORKS VOLUME 1

    メンバーのソロワークをフィーチャーした77年リリース作

  • EL&P(EMERSON LAKE & PALMER) / WORKS VOLUME 2

    3人のソロワークをフィーチャーした77年作

  • EL&P(EMERSON LAKE & PALMER) / BLACK MOON

    92年発表の再結成第一作

  • EL&P(EMERSON LAKE & PALMER) / LIVE AT THE ROYAL ALBERT HALL

    92年のライヴ音源、全11曲

  • EL&P(EMERSON LAKE & PALMER) / KING BISCUIT FLOWER HOUR PRESENTS

    74年と77年のライヴ音源、全14曲

    • SRCS8449/50

      2枚組、定価2913

      盤質:無傷/小傷

      状態:良好

      帯有

      ケース不良、1枚は盤に傷あり、ケースに割れあり(欠損あり・開くと外れます)若干帯中央部分に色褪せあり

  • EL&P(EMERSON LAKE & PALMER) / LIVE IN POLAND

    97年のポーランドでのライヴを収録

「EL&P(EMERSON LAKE & PALMER)の在庫」をもっと見る

EMERSON LAKE & POWELLの在庫

  • EMERSON LAKE & POWELL / EMERSON LAKE AND POWELL

    ドラマーにコージー・パウエルを迎えた「ELP」、85年の唯一作

    NICEのKeith Emerson、KING CRIMSONのGreg Lake、ATOMIC ROOSTERのCarl Palmerによって結成され、ギターレスのトリオという変則的な編成ながらそのハンディを全く感じさせない音楽性でプログレッシブ・ロックの1つのスタイルを築いたイギリスのグループ。Emerson Lake & Palmer解散後、ASIAへ参加したCarl Palmerに代わりドラムにCozy Powellを迎えて製作された作品であり、Carl Palmerは認めていないものの事実上EL&Pの再結成作と言える作品。その内容は80年代らしく、最先端ポリフォニック・シンセサイザーを駆使した音の厚みで聴かせる明瞭なシンフォニック・ロックであり、Carl Palmerとは全くタイプの違うCozy Powellのパワフルなドラミングが素晴らしい1枚。ホルストの「火星」のプログレアレンジ含め、クラシカルなアプローチも彼らならではの風格漂うものです。

「EMERSON LAKE & POWELLの在庫」をもっと見る

コメントをシェアしよう!

あわせて読みたい記事