2018年6月27日 | カテゴリー:KAKERECO DISC GUIDE,世界のロック探求ナビ
スタッフ佐藤です。
KAKERECO DISC GUIDE、今回はご紹介するのは、2018年サッカー・ワールドカップ開催地、ロシア出身のプログレ・グループVESPEROの16年作『LIQUE MEKWAS』です!
荘厳でクラシカルな作風が想像されがちなロシア/旧ソ連のプログレの中で、このサウンドはかなり衝撃的ですよ~!
カスピ海沿岸に位置し、カザフスタン国境にも近いロシア南部の都市アストラハンで、2003年に結成されたのがVESPERO。
07年までに自主制作による4枚のアルバムをリリースし、同07年にオフィシャル・デビュー。以降年1枚を超えるペースで作品を発表しており、活動15年目にして18枚の作品を送り出している注目グループです。
現在のメンバーはこの4人。
複数のメンバーがシンセサイザーを操り、ヴァイオリン奏者やフルート奏者も在籍する編成を見ると、いかにもロシアらしいシンフォニック・ロックが流れてくるのかと思いきや、実際にそのサウンドを触れるときっとその強烈さに度肝を抜かれるはず。まずは一曲聴いていただきましょう!
いかがですか?
サイケ、スペース・ロック、フュージョン、即興音楽、ラテン音楽などを混合し、底なしのテクニックと熱量でジャズ・ロックに仕立て上げたかのような、
これがロシアのバンド?と思わずにはいられないハイテンションなパフォーマンスを繰り広げていますよね。
まるで『YOU』時代のGONGとAl Di Meolaがセッションをしているような、と言っても決して大げさではないサウンドであることは、音源を聴いた方には納得していただけるのではないでしょうか。
こちらのナンバーも強烈~!
パーカッションを多用したダイナミックにして緻密な技巧派ドラミングに運動性の高いベースプレイが追従するトライバルな超絶リズム・セクションを土台として、鈍い光沢を放つようなサックス、ワウを効かせサイケデリックにのたうつギター、気品ある佇まいでクールに鳴らされるヴァイオリンらが次々と飛び込んでくるサウンドには興奮必至。
ラテン・パーカッションの乱打が醸し出す濃厚なエキゾチズムもアンサンブルのエネルギーを増幅させているし、
また時おり垣間見せる、FAUSTOなどが想起されるクラウト・ロック的な実験音楽要素も、VESPEROの音世界をグッと深める役目を担っていて見事です。
LOST WORLDやLITTLE TRAGEDIESといった現ロシアを象徴するグループ達とは毛色のかなり異なるサウンドですが、その実力は全く引けを取らないまさにワールドクラス。
黄金期のGONGやその衣鉢を継ぐOZRIC TENTACLES、また音の質感は異なるものの暴力的なテンションで突き進むアンサンブルのエネルギーはエストニアのPHLOXにも通じていて、PHLOXファンにも触れてみてほしいサウンドとなっています!
凄まじい熱量を放つVESPEROのサウンドですが、ここからは、そんな彼らにも引けを取らないテンションと強靭さが特徴のジャズ・ロック作品を見てまいりましょう~。
引き合いにも出したAL DI MEOLAやSANTANAの作品にも参加した名パーカッション奏者の76年ソロ作。しっかりと構築された楽曲、硬質なタッチのテンション溢れるスリリングなギター、ゴリゴリと高速にランニングするベースなど、「RELAYER」あたりのYESも想わせます。ハイテンションでテクニカルだけど、本人が書くメロディの良さも同じくらい印象的。「RELAYER」のあの緊張感が堪らない!という方にはオススメの逸品!
ジャケットからはファンタジックなシンフォ作品をイメージしますが、中身はクリムゾンばりの強度とヘヴィネスでスリリングに突っ走るテクニカル・プログレ/ジャズ・ロック!フリオ・キリコばりの超絶ドラミングも聴きものです。しかもこのヘヴィな音像でエレクトリック楽器はほとんど使われていないというから驚きます。
音の方向性はかなり異なるのですが、VESPEROを聴いていて思い浮かんだのが彼ら。カンタベリー・ロックを受け継ぐしなやかなジャズ・ロックに東欧由来のダークな緊張感、そして北欧的な気品と透明感を融合させた唯一無二のサウンドを展開します。荒ぶるサックスを軸とするテンションみなぎるパートのカッコよさときたら!
「PHLOX / KERI」BANDCAMPページ
https://phloxmkdk.bandcamp.com/album/keri
2000年デビューのエストニア出身ジャズ・ロック・グループ、スタジオ・アルバムとしては2010年作『TALU』から7年ぶりとなった17年作。いやはや本作も凄いっ!圧巻の手数とともに疾走するテクニカルかつ硬質なリズム・セクションに乗り、サックスとヴァイオリンが繰り広げる、クリムゾンばりのダークなテンションとカンタベリー・ジャズ・ロックを受け継ぐ滑らかでメロディアスなフレーズが共存するサウンドの何と強烈なこと。1曲目から「これぞPHLOX!」と拳を握ること間違い無しです。それを支える、ジャズ・ロック然としたクールなエレピをメインとするキーボード、クリーントーン主体で情緒豊かに旋律を紡ぐギターも非常に美しいし、哀愁を誘うアコーディオンの調べも絶品。そして何より素晴らしいのが、カンタベリー・ロックを手本としつつも、メロディやアンサンブルの端々に垣間見れるヨーロピアンな深い陰影と透明感ある音色使い。北欧と東欧に接するバルト三国エストニアならではと言っていいサウンドが芳醇に広がります。アヴァンギャルドなパートも度々登場しますが、聴きづらさはなく持ち前の気品あるメロディアスなジャズ・ロックの中に違和感なく挿入されていて、そのセンスの良さにも唸らされます。今作も期待を裏切らない痺れる傑作!
試聴はこちら!
https://phloxmkdk.bandcamp.com/album/keri
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