2022年5月26日、イギリスを代表するプログレ・バンド、イエスのドラマーだったアラン・ホワイト氏が亡くなられました。72歳でした。
セッション・ミュージシャンとして数々の英ロック作品でプレイ、イエス加入後はほぼ半世紀にわたり不動のドラマーであり続けたのは多くの方が知るところだと思います。
9月に予定されているイエス来日公演は体調不良による不参加が発表されていましたが、そのまま訃報が届くことになってしまったのがただただ残念です。
英国ロック/プログレ・シーンを牽引してきた偉大なドラマーへ哀悼の意を表して、代表的な参加作品を見てまいりたいと思います。
後にマーク=アーモンドを結成するサックス奏者による初リーダー作で、プロデュースは敏腕マイク・ヴァーノン。
くすんだ色合いのフルート、ブイブイと逞しく鳴り響くホーンがカッコいいのですが、そんな管楽器群をふくよかかつグルーヴィなプレイで支えるのが、いぶし銀ロジャー・サットンのベースと弱冠19歳のアラン・ホワイトが叩くドラムス。
ジャズやソウル/R&Bに通じているのがよく分かるプレイとなっており、後年の彼の1stソロアルバムで聴けるイエス・ファンを驚かせたソウルフルなサウンドも、こうしたかつてのセッションワークを知れば至極納得が行きます。
彼の演奏で間違いなく最も多く聴かれてきたのが「イマジン」でしょう。
シンプルさ故に実直な人柄までも伝わってくるようなドラミングが、ジョンの優しく語り掛ける歌声とピアノを温かくも力強く支えています。
グルーヴ感重視のFREEと比べ、これでもかと溢れ出るアイデアにまかせて自由奔放に弾きまくるギターが痛快無比なポール・コゾフの1stソロに参加。
アナログA面を使い切った17分を超える渾身のインスト「Tuesday Morning」が特に圧巻で、ほぼ全編でテンション高く叩き続けるドラミングとコゾフのインスピレーションに任せて繰り出す芳醇なギターが曲のカラーを決定づけています。
彼が参加した初のYES作品がこのライヴ大作でした。
あの複雑な全盛期YESの楽曲群をわずか3日間で叩けるようになり本番に臨んだというエピソードが、その実力を雄弁に物語っていますよね。
パワフルでダイナミックなドラミングが全編炸裂!
YES史上最も激しいサウンドを持つ作品ですが、特に鬼気迫るまでのドラミングの迫力には圧倒されます。
そんな強烈なドラミングが聴ける冒頭2曲を過ぎると、ラスト「To Be Over」では一転大らかにアンサンブルを支えていて、同一人物の演奏とは思えないほどの振れ幅が凄いですよね…。
『RELAYER』リリース後に各自ソロ活動に入ったイエスメンバー。
それぞれが持ち味を発揮したさすがの力作をリリースしましたが、イエスのサウンドからは最も離れたソウルフルなロック・アルバムを作ったのが彼でした。
R&Bグルーヴ満点のドラミングがひたすらカッコいい秀作となっており、そんな彼のバックボーンもまたイエス・サウンドに深みを与える重要な要素であったのは間違いありません。
他にもジョージやジョー・コッカー、ジェシ・エド・デイヴィスなどロック・シーンの中心に位置するミュージシャンの作品で名演を残していますし、勿論『YESSONGS』以降の全イエス作品でドラムスを務めたことそれ自体が計り知れない功績と言えます。
英国ロック界屈指の名ドラマーのご冥福をお祈りいたします。
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