2022年2月22日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
ハイレベルな作品を制作しながらも、レーベルの事情などによって発表されることなくお蔵入りとなってしまった作品が、70年代には山のように存在します。
そんな悲運を辿りながらも、数十年の歳月を経てリリースされたリスナーのもとに届けられた作品たちをご紹介してまいりましょう♪
まずは、2021年に初リリースされたイギリスとイタリアの2作品をピックアップいたしましょう~。
もしTHE ENIDはちょっと大仰過ぎるなぁと感じる方がいたら、この作品はちょうどいいかも知れません。
ポップでカラフルなシンセサイザーから次々とクラシックの有名フレーズが飛び出す演奏が痛快だなぁ~。
なにっ、ジェスロ・タルのメンバーが70年代末に制作していた未発表アルバムだって!?
76年に唯一作を残したCORTE DEI MIRACOLIのキーボーディストが、それ以前に在籍していたバンド。
・・・ってニッチすぎですが、この発掘音源、聞いてみるとイルバレやオザンナやアレアあたりを想起する尋常じゃないエネルギーがみなぎっていて驚愕!
これが当時世に出ていれば、上のようなバンドに比肩する評価を得ていただろうになぁ~。
2020年にも当時は未リリースに終わった良作がいくつか出ていました!
最初は「英国のジミー・ウェッブ」と云われたSSWによる当時公式リリースされなかった幻の70年1st!
ジョージィ・フェイムやオリヴィア・ニュートン・ジョンが曲を取り上げるなど「英国のジミー・ウェッブ」とも称された名SSWが彼。優雅なストリングスと相性抜群のメロウでふくよかに響く歌声が激ロマンティック~。ジョージィ・フェイムで有名な「Going Home」の作者バージョンも聴き物です。これはソフト・ロック好きならどストライク!
メロトロン溢れる76年の名作で知られ、19年にはまさかの2ndアルバムを発表したイタリアの名グループの、未発表音源を含む20曲アーカイヴ集。サンレモ音楽祭参加曲として制作されたバラード・ナンバーがとにかく出色!
録音から47年の時を経た2020年にようやく日の目を見たアルゼンチン・ロックの逸品。一聴して、まだこんな未発表アルバムがあったなんて…とため息をついてしまう見事な出来栄え。70年代初頭の英国ロックから影響を受けた、構築性あるドラマチックな楽曲展開が素晴らしい。南米のCRESSIDAと呼びたくなる哀愁のオルガン・ロックに胸が熱くなります。
ウィッシュボーン・アッシュばりの骨太かつスリリングなツインギターと憂いある哀愁のヴォーカル、いぶし銀の英ロック逸品だなぁ。カントリータッチの米憧憬も上手く織り込んでるし、これが20年ものあいだ未発表だったとは…。
初期オールマン・ブラザーズや『SUPER SESSION』あたりが好き? なら、このディープ盤は超オススメ!腰を揺らすビート、バキバキに歪んだリード・ギター、極めつけは、グルーヴィーに炸裂するオルガン!
スティーヴ・ハウがTOMORROWの解散後に結成したアート・ロック・バンドをご存じ?当時未発表に終わったこの69年作、聴いてみると、YESの3rdに繋がる縦横無尽なプレイを既に全編で披露していて圧巻!
VERTIGOからリリース予定がありながらお蔵入りになった幻の作品で、プロデュースはなんと トニー・アイオミ!!
なんと71年にキーボード・プログレの名作を残したバンドFIELDSが2nd用に録音しながらお蔵入りとなった幻の音源が発見!
スプーキー・トゥースのオリジナル・メンバーでKey奏者のゲイリー・ライトによるソロ作。3rdとして録音されつつもお蔵入りになった幻の一枚で、なんと友人のジョージ・ハリスンも参加っ!
73年に録音され、そのままお蔵入りになっていた幻の4th。熱気むんむんのマイク・パトゥーのヴォーカルとオリー・ハルソールによるこれぞ英国ロックなギターが相変わらずに素晴らしい好盤☆
イタリアにも当時未発表の憂き目にあった名盤が多数存在しますよね。本作はまだP.F.M.もBANCOもデビューしてない71年に録音されながら未発表となった悲運の一枚。クリムゾン1stに近いジャジーでフリーキーなサウンドを土台に、イタリアならではの劇的さを盛り込んだ破格のテンションを誇る演奏は、当時リリースされていればイタリアン・ロックの名作として語り継がれたはず!
名バンドCELESTEのキーボーディストが、78年に録音していた未発表作!8種類のシンセサイザーを贅沢に使って描き出されるスケール大きくもファンタジックで叙情性も帯びた、愛すべきシンセ・ミュージックの逸品です。
トリデント・レーベル閉鎖で未発表となった幻のイタリアン・ロックの逸品。2006年にようやく日の目を見たそのサウンドは、YESに通ずるような明るさとイタリアらしいたおやかさが心地よいシンフォニック・ロック!
初期マグマの重要人物ローラン・チボーの奥方にして、才能溢れる女性コンポーザー/マルチ奏者。幻の78年作!
ジャニスやグレイス・スリックを思わせる力強い姉御ヴォーカルにうっとり…。グルーヴィーなオルガン&キレのあるギターもGOODな隠れUSサイケ発掘盤!
制作から12年越しで発表された現代ロシアを代表するシンフォ・バンドによる実質的なデビュー作。キース・エマーソンゆずりのけたたましいムーグ・シンセを中心とする、クラシカルな気品とともに暗黒の攻撃性にも満ちたダイナミックなキーボード・プログレ!
レア・バードのリーダーGraham Fieldが、元キング・クリムゾンのドラマーAndy McCullough(dr)らと結成し、71年に唯一作『FIELDS』を残したキーボード・トリオ。なんと2nd用に録音されながら、お蔵入りとなっていた幻の音源が発見され、40年以上の時を超えてめでたくリイシュー!1stからベースが代わっており、新たに元スーパートランプのFrank Farrellが参加しています。クラシカルな格調高さの中に英国らしい幻想性や叙情性や牧歌性がにじむハモンド・オルガンをフィーチャーしたキーボード・プログレは変わらず魅力的で、優美なメロディと朗らかなヴォーカルもまた胸に響きます。Andy McCulloghによるタイトでいてふくよかなな歌心あるドラミングもまた聴きどころです。
71年に録音されながら、結局リリースされずお蔵入りになった作品。まだ、PFMもBANCOも居ない、イタリアン・ロック黎明期の録音ということを考えると、そのプログレッシヴな音楽性は驚くばかり。イタリアらしい叙情的なメロディー、クラシカルなオルガン、フルート、サックスの豊かな音色など、聴き所満載の名盤。
米ブルース・ロック/ハード・バンド、72年に録音されながらお蔵入りとなった幻の作品。腰を揺らすエネルギッシュなビート、バキバキに歪んだブルージーかつアグレッシヴなリード・ギター、そして極めつけは、グルーヴィーに炸裂するオルガン!まるでライヴのように、ギター、オルガン、ドラムが交互にソロを取りながら前のめりに畳みかける4曲目「Blister」は悶絶のカッコ良さ!初期オールマンや『SUPER SESSION』あたりが好みであれば、もうヤられるはずです。おすすめ!
メロトロン溢れる76年の名作で知られ、2019年にはまさかの2ndアルバムを発表したイタリアの名グループ。2020年編集の未発表音源を含む20曲収録アーカイヴ音源集。73年〜77年までの音源で構成されており、1st『Principe Di Un Giorno』収録曲の女性ヴォーカルによる英語バージョンや、73年録音の未発表音源、76/77年のデモ音源、そしてサンレモ音楽祭参加曲として録音されたイタリア然とした名バラード「Guardare In Fondo A Noi」などの貴重音源を収録。さらに嬉しいのが、19年作2ndの日本版ボーナストラックだった「Mare Di Giada」が最後に入っている事。一部音源は2010年のBOXセットに収録されていますが、通しで聴いても一つの作品として充実した内容を持つ素晴らしき音源集となっています!
紙ジャケット仕様、SHM-CD、トラックリストを日本向けに特別編集の上、未発表ボーナス・トラック1曲収録、定価3000+税
【購入特典:カケレコオリジナル特典ペーパーをプレゼント!】
ロシア南西でウクライナに近い町、クルスク出身。あのチャイコフスキーも輩出したサンクトペテルブルク音楽院で学んだ作曲家/Key奏者のGennady Ilyinにより94年に結成された90年代以降のロシア・プログレ・シーンを代表するキーボード・プログレ・バンド。97年にGennadyがパリを訪れた際にインスピレーションに打たれて作曲&録音したバンド初録音作品ながら、当時はリリースされなかった幻の作品。当時は、ギターレスのキーボードトリオ編成で、00年にギターが加わって以降のモダンなヘヴィネスを持った作品に比べ、ヴィンテージなサウンドが特徴です。キース・エマーソンゆずりのけたたましいムーグ・シンセを中心とする、クラシカルな気品とともに暗黒の攻撃性に満ちたダイナミックなキーボード・プログレが印象的。なぜこのクオリティで、どこからも当時リリースされなかったのか・・・。実質デビュー作といえる、若きGennadyの溢れんばかりの才気がつまった名作!
JASON CREST〜ORANG-UTANのヴォーカリストTerry Clarkが、JASON CREST〜SAMUEL PRODYのギタリストDerek SmallcombeやドラマーRoger Siggerらと結成した、ツインギター編成のブリティッシュ・ロック・バンド。72年作『Holy Mackerel』の翌年に録音されながらも未発表に終わり、20年後の93年に発掘リリースされた幻の2ndアルバム。ブルージーなコシの強さも備えたエッジーなギターワークと、これぞブリティッシュな憂いを含んだヴォーカルのコンビネーションがあまりに素晴らしい、72年作同様に極上のいぶし銀ブリティッシュ・ハードを聴かせてくれます。特に一曲目「GEMINI」は、ウィッシュボーン・アッシュばりの骨太かつスリリングなツインギターのプレイ、これでもかと哀愁をほとばしらせるヴォーカル、無駄なくスタイリッシュにまとめられた曲調と、まさに彼らの音楽性が凝縮されたキラーチューン。ブリティッシュ・ロック・ファンなら早くもガッツポーズでしょう。つづくカントリー・ロック調のナンバーでも、憂いあるヴォーカルが抜群に映えてるし、郷愁を誘うスライドギターの音色もただただ素晴らしい。派手さはないながらどっしりと安定感あるリズムワークでアンサンブルを支えるリズム隊も特筆です。ブルース・ロック色の強いコクのあるハード・ロックから、カントリー・フレイヴァー香るフォーク・ロックまで、他の曲も多彩に聴かせています。それにしてもこれほどの作品を20年もの間未発表にしておくとは…!ずばり英ハードファン必聴と言って差し支えない逸品!
76年に唯一のアルバムを残したイタリアン・シンフォ・グループCORTE DEI MIRACOLIの中核だったキーボーディストAlessio Feltri。彼が70年代初頭に在籍していたグループの、71〜73年の未発表音源をまとめた21年リリース作。当時アルバムを残すことなく活動を終えたグループですが、音源を聴けばそれが信じられないほどにクオリティの高いイタリアン・プログレが飛び出してきます。性急に畳みかけるオルガンのプレイを背にGianni Leoneを思わせるハイトーン・ヴォーカルがスリリングに歌うパートはまさしくIL BALLETTO DI BRONZOを思わせるし、ジャジーに叩きまくるドラムに乗って管楽器が猛烈な勢いで疾走するジャズ・ロック・アンサンブルの熱量はOSANNAないしAREAばりだし、とにかく演奏に内包されたエネルギーが半端ではありません。アルバムを残していれば上記のバンド達にも比肩する評価を得ていたのではないかと思わせるポテンシャルをひしひしと感じさせてくれる興奮の音源集!
メロトロン溢れるイタリアン・ロック名盤として愛される76年作で知られるグループCELESTEのキーボーディストが、78年に録音しながらも未発表となっていた作品がこちら。CELESTEの作風とは大きく変わって、タイトルが示すとおりのスペイシーなシンセサイザー・ミュージックが広がります。ミニモーグ/ソリーナ/ARPといった8種のシンセサイザーにメロトロンを加えたキーボード群のみで作り上げられていますが、電子音楽特有の無機質感はなく、種々のシンセが丹念に折り重なって築かれていくサウンドにはファンタジックで叙情的な人肌の温かみが宿っていて素晴らしいです。CELESTEの名盤から2年後にこのサウンドというのは驚きですが、TANGERINE DREAM好きの方にはぜひ聴いていただきたい秀作です。
73年に録音され、そのままお蔵入りになっていた幻の4thアルバム。熱気むんむんのマイク・パトゥーのヴォーカルとオリー・ハルソールによるこれぞ英国ロックなギターが相変わらずに素晴らしい好盤。
アルゼンチン出身、その後POLIFEMOの1stやESPIRITUの2nd『Libre y Natural』に参加するキーボーディストJuan Ciro Fogliattaが在籍するグループ。彼らの未発表となっていた73年録音の2ndアルバムが本作です。スペイン語の野性味あるヴォーカルこそ辺境らしさたっぷりですが、オルガンがこれでもかと唸るハード・ロックから軽快なパブ・ロック調まで、70年代初頭の英国ロックを下敷きにしたサウンドが特徴的。構築性あるドラマチックな楽曲展開が素晴らしく、辺境色と英国憧憬とのバランスの絶妙さは、ブラジルのO TERCOに近いサウンドと言えるかも。白眉は4曲目「Puerto De Lluvia」で、南米版CRESSIDAと呼びたくなる哀愁ほとばしるオルガン・ロックにはただただ胸が熱くなります。ラストで情熱的にひた走るギターソロもお見事。オルガン・ロック好きならこれは是非!
スティーヴ・ハウがTOMORROWの解散後に結成したアート・ロック・バンド、69年に制作されながらも当時未発表となってしまった作品。他のメンバーに、後にフォーク・ロック・デュオCURTISS MALDOONとして活動する2人Dave CurtissとClive Maldoonらが参加しています。1曲目のイントロから、YESの3rdに収録される「Starship Troopers」の「Wurm」で聴けるフレーズで幕を開けていて、思わずニヤリ。どっぷりとサイケデリックだったTOMORROW時代に比べると、ハウのギターはまだトーンこそサイケがかってはいるものの、多彩なテクニックや速足で駆け抜けるようなプレイスタイルは『The Yes Album』時に近くなっており、ハウの超個性派ギターの縦横無尽な活躍ぶりが楽しめる音源となっています。楽曲もビートリッシュなメロディを持つナンバーから、骨太なブルース・ロック、YESの1stに入っていそうな構築的なアート・ロックまで、69年という狭間の時期らしいバラエティに富んだ佳曲揃い。発掘音源とは言えアルバムとして制作されただけあってさすが完成度は高いです。ハウ・ファンなら間違いなく必聴モノの好盤!
言わずと知れたスプーキー・トゥースのオリジナル・メンバーでKey奏者/Vo。70年作の1stソロ『Extraction』、71年作の2ndソロ『Footprint』に続く3rdアルバムとして録音されながら、なぜかお蔵入りとなった幻のアルバム。特筆はジョージ・ハリスンが参加していること。ジョージの代表作『オール・シングス・マスト・パス』にゲイリーが参加して以来、つきあいがある2人で数曲でジョージのギターを聴くことが出来ます。ジャケットはラーガ調ですが、エキゾチズムはなく、エネルギッシュでいて陰影のあるソウルフルなヴォーカル、叙情的なメロディ、タメの効いたグルーヴィーなアンサンブルが魅力的なスワンプ・ロックが特長。英米スワンプのファンにはたまらない逸品です。
米国ワシントン州のサイケ・グループ、69〜70年に録音されつつ96年までお蔵入りとなっていた発掘音源集。薄暗いジャケに反して内容はソウルフルで艶のある紅一点ヴォーカルをフィーチャーしたウェストコースト風男女混声サイケで、グルーヴィーに転がる明るいオルガンやガレージ・テイストたっぷりの生々しいギターもイイ感じ。エネルギッシュでノリ良いナンバーから気だるくアシッド臭に包まれたナンバーまで、「姉御」な女性ヴォーカルを中心とした色気漂うサウンドはかなり聴き応えアリです。JEFFERSON AIRPLANEやBIG BROTHER & THE HOLDING COMPANYのファンは是非。
Georgie Fameで知られる「Going Home」やOlivia Newton-Johnが取り上げた「Don’t Throw It All Away」などを生んだ、「英国のJimmy Webb」と称されるSSW。公式リリースされなかった幻の70年制作1st。1曲目「Seasons」から優雅なストリングスと優しく語りかけるような歌声が絡み合いロマンティックに押し寄せる名曲で、英アーティストながら古き良き王道アメリカン・ポップスといった風情のあるサウンドは、Jimmy Webbとの比較にも納得です。そんな中で聴きものはやはり「Going Home」のオリジナルver。ボサノヴァっぽいリズムで進行する洒落たサウンドはGeorgie版に共通しますが、より躍動感ある管楽器アレンジとメロウかつ伸びやかな歌声が印象的で、思わずウキウキしてきます。Jimmy Webb好き、米ソフト・ロック好きにも是非おすすめしたい一枚!
JETHRO TULLのメンバーであったクラシック系アレンジャーDavid Palmer、キーボーディストJohn Evan、ドラマーBarriemore Barlowらが、JETHRO TULL在籍中に制作しながら未発表となっていた幻の作品。他にJETHRO TULLのJohn Glascock、GRYPHONで知られるBob Foster、セッション系ギタリストGordon Giltrapらも参加。キーボードによるオーケストラ・シミュレートを主体とするクラシカル・プログレは、同様のアプローチであるTHE ENIDを彷彿させます。こちらはベートーヴェン、モーツァルトなど古典クラシックの引用をたっぷりと聴かせるのが特徴で、ポップでカラフルなシンセサイザーから次々とクラシックの有名フレーズが飛び出す演奏が最高に心地いいです。クラシカル・プログレというと格調高く荘厳なイメージが浮かびますが、絶妙に肩の力が抜けたハートフルなクラシカル・サウンドが楽しめる秀作となっています!
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