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END OF INNOCENCE

TONY KAYE

SOUM010CD(SPIRIT OF UNICORN) 【2021年発売CD】

評価:50 1件のレビュー

言わずと知れたYESのオリジナル・キーボーディスト、21年リリースの初ソロ・アルバム!

言わずと知れたYESの初代キーボーディスト。発生から20年が経った「9.11」を題材にしたコンセプト・アルバムで、2021年にして初となるソロ・アルバムです。クラシカルなキーボード・オーケストレーションを自在に駆使して描くドラマティックなシンフォニック・ロックで想起されるのはTHE ENID。冒頭、あの日を想起させる不穏なSEをバックに女性ヴォーカルが厳かに歌う「きらきら星」から、ENIDの大作「FAND」ばりに雄大なクラシカル・シンフォ「911 Overture」へとなだれ込んでいく1〜2曲目の流れで早くも圧倒されます。keyオーケストレーションが雄大に流れる中をホンキートンク調のピアノが跳ねたり、ABWHに通じるような90年前後のシンセ・サウンドを散りばめエキゾチックに聴かせてみたりと、分厚い響きのキーボードを敷き詰めた上に奔放なサウンドメイクを施したスタイルが個性的であり、かつ彼がYESのキーボーディストであった事を再認識させるようでもあります。さすがの上質なキーボード・シンフォに仕上がった力作!

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レビュー一覧

評価:5 や、やりゃあがったな!! 20年越し、トニー畢生の大作。(4 拍手)

ほにょさん レビューをすべて見る

驚いた。まさか、2021年になってトニー・ケイのソロ・アルバムなんてものが聴けるなんて思わなかった。確かにユーロロック・プレス誌のインタビューで近況を聞かれると「9.11のメモリアル・プロジェクトに誘われて、関わっているんだよ」とは語っていた。でも、きっとそれはそのプロジェクトの名義でとっくの昔に発表されていて、こうして彼個人のアルバムとして出るとは思いもしなかった。

カケレコの常連さんなら、トニーにソロ・アルバムの計画があったことはご存知だろう。米キャピトル・レコードが立ち上げたニュー・エイジ系のレーベル、シネマ(!!)からトニーのソロ・アルバムが出る予告が、同レーベルから出たパトリック・モラーツ「ヒューマン・インターフェイス」の歌詞カードなどに載っていたことを覚えている人も多いのではないか。しかし、ことが具体化する前にシネマ自体があっけなく閉鎖されてしまい、トニーの初ソロ・アルバムは幻となった。しかしこの時、多くのマニアの脳裏にこのような勘繰りが浮かんだのではないだろうか。

「そもそもトニーに曲なんて書けるのか?バンドとしてのセッションの中でアイデアを出すことはあっても、自分の力だけで曲を作ることなんてできるのか?そんなトニーにソロ・アルバムを頼むこと自体がそもそも企画倒れだったんじゃないのか?」

結局、この幻のソロ・アルバム事件は、トニーの「イエスの傀儡キーボード・プレイヤー」というイメージを揺るぎない盤石なものにしてしまったと思う。でなければ、先日の市川哲史さんのコラムは成立しない。

あの市川さんのコラムは非常に面白く、トニー・ケイのいるバンドがイエスだと思っている僕のようなファンにとっても腑に落ちすぎて笑っちゃう内容だった。ロック界の高田純次という表現は非常に的確だと思う。そんなトニーは15歳からミュージシャンとして働いているのだそうで、初期イエスのメンバーでは最もキャリアの長い人だったという。つまり、初期イエスマンの中で最もプロで大人だったのがトニーなのだ。だからこそ、自分に与えられたことをきっちりこなし、終わったら大いにプライベートを楽しむ。仕事を続けるために必要以上に出しゃばらず、揉め事には関わらない。「5時から男」とはそういう事なのだ。

だからこそ、この人は一生バイプレイヤーに徹して、ソロ・アルバムなんて出さずに行くんだと思っていた。それが彼の哲学なのだろうと。

そんな僕(等)の思い込みをある面で完膚なきまでに吹き飛ばし、別の面ではきっちり証明してくれたのが本作である。前者はいかに僕(等)が彼をミュージシャンとして過小評価していたかということであり、後者はそういうプロに徹してきた人間が、人生の後半に差し掛かって本当に作りたいもの、やりたい事のために自らの力を解き放ったのがこの作品だと思う。

トニーは冒頭のインタビューで、「自分にとって最大の人生の選択は、バジャーのファーストとセカンドの間にイギリスに見切りをつけてアメリカに移住したことだ。当時はいろいろ言われたけど、それは間違っていなかった。移住したことで人生が開けたんだ」と語っていた。そんな彼にとって、アメリカという国がどのような存在なのかは想像するに余りある。つまり、このアルバムを作るために彼は一度身を引いた音楽の世界に戻ってきたのだし、9.11への想いがあるから、3.11の直後にビリー・シャーウッドと日本に来てくれたのだと思う。まさに渾身のソロ・アルバムだ。しかもそこには新しい奥様(!!)の力も加わっている。

内容についてはごちゃごちゃとは書かない。聴く人それぞれが、目を閉じて音楽が導く世界に身を沈めてもらえればいいと思う。「ロンリー・ハート」の時のツアーでのソロ・コーナーで披露されたジャズやブルース・ピアノ、もちろん伝家の宝刀ハモンド・オルガンもたっぷり聴ける。個人的には、フロイド以上にフロイドだった、奥様の闘病をテーマにしたリック・ライトのソロ作「ブロークン・チャイナ」や、キャメルの「ヌード」や「ダスト・アンド・ドリームズ」、「ハーバー・オブ・ティアーズ」などを思い出した。つまり、重厚な掛け値なしに第一級のコンセプト・アルバムである。

何より、ロジャー・ディーンにこのジャケットを描かせただけでも凄いと思う。イエスとその周辺のメンバーはしょっちゅうロジャーにジャケットを頼むけれど、決まって例の桃源郷で、ルーチンワーク以外の何物でもなかった。バスチーユ監獄の陥落を思わせるこのジャケット自体、ロジャーにとっても近年ない入魂の力作なのではないか。プログレバンドの大御所の新作が集中した90年代前半、ロッキング・オン誌だったか、イエスもフロイドも冷静でいられるのがおかしい世の中なのに、陶然と自分達の世界に遊んでいるという批判が載っていた。そういう意味では、これこそが求められていたプログレッシブ・ロックの形のひとつだと思う。20年越しだけどね。

できることなら、というか、このアルバムはブックレットはもちろん、作品中の無線や電話などの会話もすべてきっちり訳された国内盤を出すべきだと思う。ライナーノートはやはり市川さんに書いて欲しい。いや、近況を聞くに、今の市川さんにこそ書いて欲しいと思う。

恐らくトニーの年齢からして、これが最初で最後のソロ・アルバムでもおかしくない。幸いトニー自身は前述のように新たなパートナーを見つけて、例によって心配するのが損なほど元気なようだ。ありがとうトニー!


ナイスレビューですね!