BIGPINK526(BIG PINK) 【2017年発売CD】
紙ジャケット仕様、英文ペーパー付仕様。
まるで初期クリムゾンとVDGGとジェントル・ジャイアントが融合したかのような驚愕のサウンドだって!?スイス最高峰プログレ・バンドによる76年作1st、名盤2ndに劣らずの大傑作ですっ。
スイス最高峰のプログレ・バンドである彼らが76年にリリースした1stアルバム!ユーロ・プログレ屈指の人気作である2nd『MOVIN' ON』がよく知られますが、このデビュー作も驚異の出来栄え。重くタイトに刻むジャジーなリズム・セクションに乗って、重厚に吹き荒れるサックスやフルート、ヒリヒリと緊張感のあるトーンのギターが初期キング・クリムゾンばりに強度の高いアンサンブルで突き進む「動」のパート。そしてVDGGやGNIDROLOGあたりを思わせる暗黒が立ち込める中を憂いの滲むヴォーカルが歌う「静」のパート。両者がダイナミックに対比され、アーティスティックで構築的なプログレッシヴ・ロックを作り上げています。ヴォーカルはピーター・ハミル影響下の独特の抑揚を付けたスタイルで、サウンドの緊張感を更に高めていて見事です。随所で挿入されるアコースティック・パートでは、アコギやフルートやヴィブラフォンらがGENTLE GIANTに迫る緻密なアンサンブルを編み上げていてここでも驚愕。いやはやとんでもないテクニックです。洗練されたテクニカル・プログレとしての完成度の高さこそ次作に譲りますが、溢れ出んばかりのアーティスティックな感性の放出は本作が圧倒的。5大バンドの名作クラスにも匹敵する、文句なしのユーロ・ロック傑作!
CIRCUSは72年に結成され、76年〜80年の間に4枚のアルバムを発表、80年に解散したプログレッシヴ・ロック・バンド。
出身はスイス第3の都市バーゼル。フランス・ドイツと国境を接する都市で、ヨーロッパ屈指の名門音楽大学とされるバーゼル音楽院の所在地としても知られています。プロ・テニスプレイヤーのロジャー・フェデラーの出身地としてご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
スイスと言えば、ISLANDやDRAGONFLYといったバンドがユーロ・ロック・ファンに親しまれてきましたが、CIRCUSも入手困難な状況が続いたにもかかわらず、そのサウンドの素晴らしさによって長年ファンから愛されてきた人気バンド。
1stアルバム製作時のメンバーはこの4人です。
CIRCUSの驚くべき特徴として挙げられるのが、エレキギターとキーボードを使用していないこと。
それを踏まえてまずは1曲目「STORMSPLINTER」を聴いてみましょう。
サウンド全体の印象としてはかなりヘヴィに聴こえると思いますが、アンサンブルをよく聴いてみると、リズム隊、アコースティック・ギター、フルート、サックスのみによって構築されているのがわかります。主にヘヴィな聴感を生んでいるのは、フリーキーな爆発力を持ったサックスと暴力的なまでのテクニックとうねりを有するリズム隊。その中で鳴らされるフルートやアコースティック・ギターもどこか緊張感を漂わせていて、初期クリムゾンを思わせる幽玄さを醸し出しています。
ベースのMarco Cerlettiにギターのクレジットがありますが、ごく一部の使用に留まっていて、ほぼ生楽器だけでこのダークで強靭なサウンドを作り上げてしまっているんです。驚きですよね!
続いては2曲目「NOWADAYS」です。
ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーターを彷彿させる暗黒感が全編を覆う、緊張感たっぷりのナンバー。ヴォーカルの抑揚の付け方もかなりピーター・ハミルの影響を受けていますね。でも単なるVDGGフォロワーに陥らず本家に負けないドラマ性ある名曲に仕上げてしまっていて、バンドの実力の高さを物語っています。
他にもヴィブラフォンを交えたジェントル・ジャイアントばりの緻密なアコースティック・アンサンブルに目が眩む「DOWNTALK」や、瑞々しいアコースティック・ギターが流麗に駆け抜けるフォーク・ロックとVDGG調ダーク・プログレが対比する15分の大作「ROOM FOR SALE」など、全編聴き所と言って問題ない孤高のプログレッシヴ・ロックが展開されています。
スイスということでユーロ・ロックに多いシンフォニックなサウンドかと思われそうですが、実際はユーロ色はほぼ皆無で、VDGGはじめ英国プログレからの影響を独自に昇華したサウンドと言うことができます。というわけでむしろ英国プログレ・ファンにこそ聴いてみていただきたい作品なんです。
80年に4thアルバムをリリースし、同年にCIRCUSは解散。フルート奏者Andres Griederは解散後目立った活動は行なっていないようですが、他のメンバーはそれぞれの活動を展開しました。
よく知られているのがドラマーFritz Hauser。後にCIRCUSへ加入したキーボーディストStephan Ammannとともに新バンドBLUE MOTIONを結成。ドラムとダブル・キーボードという変則トリオ編成で、技巧的かつユーロ然としたロマンチックさを感じさせるキーボード・シンフォの逸品を残しています。
ベーシストMarco Cerlettiは、90年にソロ・アルバム『Random And Providence』を発表。ソングライターとして裏方の活動も行なっています。ヴォーカル/サックス他を務めたマルチプレイヤーRoland Freiは、後年のメンバーTheodor Jostと共に75年結成のブルース・バンドLazy Poker Blues Bandに加入し活躍しました。
5年という短期間で活動を終えてしまったCIRCUS。スイス出身という関係上、ユーロ・ロック・ファンのみが知るバンドという位置づけですが、正直それはあまりに勿体ない!今回再発されたこの1stアルバムが、国の壁を越えて一人でも多くのプログレ・ファンの耳に届けられることを願わずにはいられません。
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緩急自在、先の読めない展開が最高!!!(3 拍手)
ike333さん レビューをすべて見る
ようやく出た感の強いCircusの1作目。2作目が特に有名ですが、本作も素晴らしいアルバムです。いきなり不協和音の中フルートが舞い、Fritz Hauser氏の手数多いドラミング、思わせぶりなボーカルと否応なくKing CrimsonのLizardとGnidrologのLady Lakeが混合したような彼らの世界に引きずり込まれてしまいます。緩急自在で先が読めない展開、この不安感を煽るような緊張感がたまらないです。音質も、OKですよ。