COMPLETE THEM 1964-1967

珠玉のブルーズ魂（4 拍手）

たすけさん レビューをすべて見る

そりゃ「グローリア」や「ヒア・カムズ・ザ・ナイト」は知っております。でも彼らの盤を知っていたわけでもなく、盤がまた売っていなかった。フーもキンクスもあとから勉強したわたしなわけで、このトシになってやっとゼムにたどり着きました。音に接して驚くばかりです。何よりブルーズを理解し、それを血肉にする才能は、バン・モリスンが一等賞だと思いました。倍速にして再現されたブルーズは、フーよりパンキッシュです。そしてディスク1で顕著なのが圧倒的演奏力です。こんなに上手いバンドだったとは。ドラムズ、ベースの切れの良さは同時代バンドの中で別格です。

例えば「グローリア」終盤のドラムズ叩きまくりがあります。すごいです。ファースト作で、バン・モリスン以外はスタジオ・ミュージシャンだったと思います。「オール・フォー・マイセルフ」は、マディ・ウォーターズ・タイプのシカゴ・ブルーズです。完璧です。モリスンはブルーズの歌い手として一級品なのでした。しかしモリスンは、このキャリアを投げうってしまいます。「グローリア」だけで20年は公演できたと思いますけれど。

ストーンズもフリートウッド・マックも米国に渡ってブルーズ巨人たちと共演した録音を残しています。バン・モリスンが同じことをやっていたらどうなったでしょうか。ブルーズ巨人たちを圧倒したのはバン・モリスンになったのではないでしょうか。ここからは邪推ですけれど、ジム・モリスンはバンドづくりにゼムを参考にしていると思います。2022.08.26