NYアンダーグラウンドシーンでバンド演奏をバックに自作の詩を朗読していたパティ・スミスが一気に「NYパンクの女王」へとのし上がった75年の記念すべきデビュー作。元ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのジョン・ケイルのプロデュースで、ジム・モリソンばりのパティ・スミスの文学性とヴェルベッツばりのアヴァンギャルドさとが融合した「パンクの女王」という呼称にふさわしい尖ったサウンドが特徴。ヴァン・モリスン(ゼム)のカヴァーとオリジナル曲を繋いだオープニングの「Gloria」から圧巻で、静かなピアノをバックに「キリストは誰かの罪で死んだけど、私の罪じゃないわ」という衝撃的な一節とともにはじまるピアノの静謐なオープニング。淡々と始まったヴォーカルが曲が進むにつれて感情を開放していき、加速していくドラムとベース、エッジの効いたギターとが一体となって高揚。コーラスの「Gloria!」でレッドゾーンを突き破ってもまだまだエネルギーは衰えず、ラストまで畳みかけます。ロック史上に残るオープニング・ナンバー。アルバム通してパティが生み出すエネルギーに翻弄されまくるエネルギッシュな傑作。
ピエール・モエルラン加入&スティーヴ・ヒレッジ本格参加で、一気に技巧派ジャズ・ロック・バンドへと変貌を遂げたRADIO GNOME第ニ章、73年作
710円(税込781円)
「音楽歳時記」第ニ回: 3月 イースターとリンジー・ディ・ポール? 文・深民淳
深民淳によるコラム「音楽歳時記」。季節の移り変わりに合わせて作品をセレクト。毎月更新です。
芸術家や作家が集まる最先端文化の発信地ニューヨークで誕生したNYパンクのルーツとその魅力に迫る「NYパンク・ロック特集」
芸術家や作家が集まる最先端文化の発信地ニューヨークで誕生したNYパンクのルーツとその魅力に迫る「NYパンク・ロック特集」
盤質: | 無傷〜傷少なめ | 傷あり | 傷多め
状態: | 良好 | 並 | 不良 |
※ 目立つスレ・圧痕あり、破れあり
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挫折感がこれほど美しいとは(3 拍手)
たすけさん レビューをすべて見る
それほど日常的に聴く盤でないのに、聴くたびに圧倒されてしまいます。パンクと言うほど性急なビートではありません。パティ・スミスのボーカルは、歌いながら時々独白になり、とても切実さを感じるものです。こうした女性によるロックは今までなかったものであり、76年という時間に突き刺さる作でありながら、いまだに新鮮さを失いません。
パティ・スミスをサポートしているのは、ギタリスト兼音楽マニアのレニー・ケイです。ジョン・ケイルもパティ・スミスに惜しみない愛情を注いでいます。まるでベルベットで出来なかったことを再挑戦するかのごとく。わたしがこの盤で最も引っかかっているのが3. Birdland と7. Land 。両方とも9分を超えます。
両方とも主人公は少年です。3. Birdland では、小鳥の遊ぶ農園で、いなくなってしまった父親に訴えかけるという内容が独白交じりに歌われます。陽光が降り注ぐ農場が地獄になり、それでも最後に「バードランドが好き」とつぶやく不思議。また、7. Land では馬について歌われているのですが、人間の髪の暗喩のようです。やっぱりこの曲もかなり不吉な歌詞です。彼女の書く詞は、上昇と挫折があり、ジェットコースターのように気分を揺さぶられます。
冗長な部分は少しもありません。魂を切り裂かれるようなヘビーな曲たちなのですが、それが喩えようがないぐらい美しい。1.Gloria 冒頭では、「ジーザスが死んだのは誰かのせい。私じゃない。」と呟かれます。これは神への冒涜と読むべきではなく、わたしは自立して生きていく、自分の手で。と読むべきなのでしょう。