20グラニット・クリーク

西海岸で最も謎に満ちた巨大バンド（4 拍手）

たすけさん レビューをすべて見る

調べれば調べるほど謎が深まるのがモビー・グレープ。彼らについて回る噂として、いまだにデビュー時のマネージャーがバンド名や発売に関する権利を握っていて、過去カタログのまともなリリースができないというものがあります。おそらくは本当なのでしょう。名作と称えられるファースト・レコードにしても、強烈な自己主張の塊の印象が強くて、まっとうな西海岸ファンが聴く音楽とは思えません。また、ボブ・モズレーがドラッグ漬けだったとか、スキップ・スペンスが事件おこしたとか、いい話が出てこないバンドではあります。

この第5作は、結成当初のメンバーが再び揃って出したものになります。この作以前にバンドは一度ブレイクアップしているようです。スキップ・スペンスの曲は「チャイニーズ・ソング」だけ。美しくはありますが狂気に満ちたインストであり、ほかの曲はメンバーそれぞれが、自分の好みを好き放題にやるつくりになっています。

それらがサイケも西海岸もなく、ガレージ・パンクを拡大再生産するようなもので、とてもカッコいいのです。ガレージと言っても鉄壁の演奏力を誇る彼らなので、少しのミスもありません。モビー・グレープの音楽を一言で表すことはできません。混沌と投げやりが特徴と思っておりますが、なかなか聴いてすぐ好きになる音楽ではないようです。2021.10.19