C2K33682(COLUMBIA)
2枚組、ブックレット付仕様。
隠遁生活中の67年、ザ・バンドの面々と共に録音された濃密なセッション音源の数々。録音された地下室のある建物が、ザ・バンドの1stにも冠されたビッグピンクという名前だったことはよく知られていますよね。
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低身長症のお父さんは、「サンダードーム」に出ている(4 拍手)
たすけさん レビューをすべて見る
妖しく猥雑で、壊れたロックンロールの数々。ところがそれらには、あごにカウンターパンチを食らうような強力な何かがあります。ボブ・ディランが交通事故のあとどうしていたか、とか、ザ・バンドがデビュー前にどう演奏を鍛えていたのか、とか考察のねたには事欠かないのでしょうけれど、わたしはとにかくこの音を聴くのが好き。表紙に妖しいサーカス団とバンド、ディランの面々が写っています。的確に音楽の正体を表現していて、これも好き。たまらないです。
どなたかが申しておりました。これはリスナーに聴かせるための音楽ではなく、自分たちが楽しむための音楽である、と。マーケットを無視している分、正直で商業音楽の本質に迫っている気がするんです。実際、「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」がこれだけ当たるとの観測は、だれも持っていなかったと思うんです。誰かが支持してくれれば、それでいいや、と。しかし彼らの正直な音は全米を揺さぶりました。ケネディとルーサー・キングを失い、ベトナムに負けた全米が、彼らを支持しました。彼らの音は語りかけます。負けたっていいんだよ。自分に正直なら…と。わたしの見立ては違いますかね。
不思議なのは、ガース・ハドスンのオルガンが揺れていること。ギターのようにベンドする鍵盤で、こんなオルガンあったんでしょうか。2023.06.22