70年の唯一のアルバム、SANDY DENNYを想わせる凛としたMARIAN SEGALのヴォーカル、秋枯れのフィドル、英国叙情を醸し出す弦楽器&ハープシコードが絶妙に絡んだ美しすぎる英国フォーク
1,590円(税込1,749円)
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疾走する楽しさと急停止する気持ちよさ(2 拍手)
たすけさん レビューをすべて見る
手元に、80年に出た阿木譲の「ROCK END」という本があります。「アメリカニズムに冒された白痴さかげんをシニカルにストイックに歌う」のが、このアルバムだそうです。彼らが愚か者を装ってばか騒ぎをしていることは事実ながら、ここに引用された豊かな音のきらめきを阿木さんは読み取れなかった、ということなのでしょうね。セイラーや10CCに連なる系譜であることは確かなれど、ギター一フレーズ、タムのひと叩きでカタルシスを与えてくれることで、彼らの右に出る人たちはいないと思います。
海辺のバンジョーから始まる「ホワッタ・ウェイトゥ・エンドイトール」は、少しづつ音が積みあがっていき、メロディが佳境に達するところでメンバーが一斉に走り出します。走っていたのが、またタム一発で元に戻る。手品を見ているようです。フレンチ・ポップを基調にするところもセイラー、10CCとそっくり。英国人にとってフランスは、そんなイメージなんだと思います。ハイセンスでどこか腐りかけで。
今でこそ、うひゃーうひゃーと喜んで聴いています。でも、最初はこの良さがわからなかったんですよ。かなり聴き込みました。リトル・フィートの音が突然腑に落ちてきた体験に似ています。2022.09.22