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怒りと教育と冷たさ(2 拍手)
たすけさん レビューをすべて見る
かつてブリティッシュ・レゲエというムーブメントがありました。何しろボブ・マーリーが世界規模でブレイクした発端はロンドンでしたから。それもUB40の「愛さずにはいられない」のヒットで消えてしまった印象の現在です。もしくはレゲエが一般的なスタイルになったんでしょうか。…そんなわけはないです。わたしはUB40と同じ時期に英国レゲエの屋台骨を背負っていたスティール・パルスが大好きです。このレコードは、彼らがセールスで成功した80年代に出されました。フェアライトが大胆に導入され、プログレッシブ・ロックと区別つかないぐらいの音処理がされています。これが…こけました。あまりに冷たすぎたんでしょう。しかしわたしは、このレコードこそが彼らの到達点であり、傑作とはこういう音だと思っています。
担任の先生と廊下でごっつんして恋におちた曲と、けっして麻薬に手を染めるなという曲が混在しているのが彼らです。ティーンに向けたメッセージに徹しているんです。その「キック・ザット・ハビット」の重苦しく冷たく陰鬱な雰囲気には圧倒されます。レゲエってこんなだったんだ、とわたしは目が覚める気持ちでした。
タイトルのバビロンとは、権力や警察のこと。それを強盗だという意味です。どれだけジャマイカ系英国人が迫害されているかの怒りです。それがこんなに美しい音楽に昇華してしまうってマジックです。2024.08.21