「音楽歳時記」第六回: 7月 七夕に夫婦ものと男女デュオを想う 文・深民淳
深民淳によるコラム「音楽歳時記」。季節の移り変わりに合わせて作品をセレクト。毎月更新です。
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母は強し(1 拍手)
たすけさん レビューをすべて見る
「ゴジラ-1.0」で、ゴジラに匹敵するほど怖いのが、安藤サクラさん演じる「澄子さん」です。手ぬぐいで主人公を打ち据えながら吠えまくるシーンには、背筋が逆立ちました。その澄子さん、乳呑児が登場するやいなや「母親」に変わってしまうんです。「エクソシスト 信じる者」には、オリジナルのリーガンの母を演じるエレン・バースティンが、信じられないぐらい強くなって帰ってきます。両目を貫かれながら悪魔への打擲をやめない、強い母親です。母親は偉大だと怖れおののいた映画のはしごでした。
このレコードは、実に3年ぶり。80年代のロックシーンをリードしていたと言っていい、ベネターが母親になって帰ってきました。女性シンガーが母親になって武器にできないことがあります。セクシュアルなアピールです。いえ、出産と子育てという、責任があり、大きな仕事をしている人にはそんなものは必要ない。さらの自分を出すだけで、存在感をアピールできる。「フィメール」と銘打つ必要がない安定が、良い方向に作用しているようです。
ロケンロール「オール・ファイアード・アップ」、「ワイド・アウェイク・イン・アメリカ」がよいです。小細工なく、ぐいぐい攻めてきます。2023.12.02