「音楽歳時記」第六回: 7月 七夕に夫婦ものと男女デュオを想う 文・深民淳
深民淳によるコラム「音楽歳時記」。季節の移り変わりに合わせて作品をセレクト。毎月更新です。
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80年代を象徴する魂のロッカー(3 拍手)
たすけさん レビューをすべて見る
パット・ベネターは本当に好きでした。ただこの廉価再発シリーズのたすき文句である「HR/HM」と思ったことはないです。インタビューでは、彼女はアイドルをロバート・プラントとルー・グラムと言っているので、そういう人だったんでしょう。クラシックの勉学による確かな音程を武器に、声をつぶして魂で歌う。この「ゲット・ナーバス」は、「プレシャス・タイム」の大爆発のあと、可愛い子から脱して本格的なロック・ボーカリストに成り上がろうとする作だったと思います。表紙からしてセックス・アピールを封印しています。
ベネターのさらなる武器は、ニール・ジェラルド(g)とビリー・スタインバーグの書くドラマチックな曲の数々です。スタインバーグは恐るべき数の作曲をこなしています。「シャドウ・オブ・ザ・ナイト」は、意外なことに彼の初期の曲で、ベネターを踏み台にして偉大な作曲家になったのでした。ただしこの曲と「アングザエティ」「リトル・トゥー・レイト」が抜けているぐらいで、あとは凡庸な曲の気もします。
「ゲット・ナーバス」は、CDを探してたんです。あっても高くて…。昨年一挙に彼女の再発があって救われたのでした。2023.07.06