IAN MATTHEWS (IAIN MATTHEWS)/IF YOU SAW THRO MY EYES
元FAIRPORT CONVENTION、いかにも英国的なリリシズムが魅力の名SSW、70年の傑作1stソロ
1,490円(税込1,639円)
「音楽歳時記」 第六十五回 6月 引き続き、ハード・ロックを聴こう。 文・深民淳
音楽ライター/ディレクター深民淳によるコラム「音楽歳時記」。季節の移り変わりに合わせて作品をセレクト。毎月更新です。
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このノリの良さは極上(3 拍手)
たすけさん レビューをすべて見る
西海岸では珍しく明快なハード・ブギ・スタイルをもつのがジョジョ・ガンです。結成にはスピリットでオルガン担当だったジェイ・ファーガスンが主要な役割を果たしていますけれど、キーボードより歯切れの良いギターに特徴があります。このファースト作からは「ラン・ラン・ラン」というメジャーなヒット作が生まれ、アサイラムから4枚のレコードを出していくことになります。
勝手に米国の音楽産地を分類すると、まずアフリカ系移民が中心となったメンフィス、マッスル・ショールズの南部、次に工業都市であるデトロイトやシカゴの北部。そして映画音楽産業から派生した西海岸という位置づけになるのかと思います。その土地柄からか有能なエンジニア、プロデューサーは、カリフォルニアを主戦場にしのぎを削っていた印象があるんです。
ファーガスンは、演奏者というより、曲を書き、バンドのプロデュースをするタイプで、バンド・リーダーとしてはスティーブン・スティルスに似ています。もちろんリード・ボーカリストとしての魅力はあります。でもフロントとしての押しの強さはなくて、良質な音楽であるのにジョジョ・ガンはブレイクしませんでした。
ブレイクしなかったからと言って、彼らの高純度のポップ・センスは無視できるものではありません。むしろ類似したバンドを思いつけないほど独自性があります。ハードロック・ユーザーと西海岸ユーザーの隙間に落ちてしまっているのが彼らです。試しにジョジョ・ガンを聴いた人は、かなりの確度でファンになるのではないでしょうか。わたしが米国シーンで一番押したいのが彼らです。