ケルン・コンサート

音楽を超える音楽（2 拍手）

たすけさん レビューをすべて見る

わたしが最も聴いているジャズのレコードです。アナログ盤を大量に処分したときでも、このレコードは手放せませんでした。この録音に出会ってしまったため、わたしはほかのジャズ・ミュージシャンに興味がいきませんでした。キース・ジャレットは、ソロでピアノに向かう時、一切のプランがないと言っています。ピアノに座るまで何も考えていない。その代わり、演奏会場に着くまでその都市を歩き回り、空気を共有しているようです。

このケルン会場は、ひとりのドイツ人若者が企画したそうです。キース・ジャレットが出した条件は、スタンウェイのピアノを用意すること。ところがキースのリクエストした型番のピアノが見つからない。やっとスタンウェイの別の型番を借りることができたので会場に運んでみたら調律されていない。キースは帰りかけたようです。ツアーで疲れてもいたし。企画者が必死に調律師を呼び、その場でチューニングを施して、なんとかキースに座ってもらうことに成功した、と。うろ覚えの逸話ですので、興味のある方は正確な記事を探してみてください。

そんな状態でジャズ史上に残る録音が完成するのだから、音楽のマジックです。わたしはこの演奏に強い物語性を感じるんです。LPでは各面に1曲の四部構成で特にそれを感じました。ピアノが歌っているのが素晴らしいです。2023.06.24