後にDoll By Dollを結成するシンガー・ソングライター、JACKIE LEVENが71年にJohn St.Field名義で発表したブリティッシュ・アシッド・フォークの激レア・アルバム。
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唯一無二の味(1 拍手)
Humanflyさん レビューをすべて見る
『英国ロックの深い森』によると、”本作は'71年に録音されながら発表は'75年になってから、しかもスペインのレーベルから”という何らかの事情があったらしいことをうかがわせつつ、”その頃レヴンはロンドンのローカルシーンでR&Bテイストのバンドを率いていたらしい”とも付け加えています。
'70年代後半のレヴンは、ややニューウェイヴ寄りのパブロックであるドール・バイ・ドールに歩を進めるので、以上の字面だけ見ると音楽性の変化が屈折しているように感じられるかもしれませんが、この'71年録音のデビュー作の時点でそれなりにR&Bっぽさが出ていたように思います。
タメを効かせてコーラスが入ってくる楽曲が多く、また、そういう手法としてはR&Bなことをしてもゴスペルやドゥーワップっぽくならない、つまり黒っぽくならないところは特異な個性といえると思います。
英国のアーティストで、フォークとR&B/ソウルに跨る個性というと、ミラー・アンダースンやゲイリー・ファー、アーニー・グレアム、より黒っぽいところでフランキー・ミラーのような人を思い浮かべますが、ジャッキー・レヴンはというと、あまりソウル的なエッジやざらつきは感じさせず、ひたすら滑らかなのが特徴。米国黒人っぽさと非常に微妙な距離があるのが面白いです。
一方で英国フォーキーとして見ると、そこまでアコースティックでなく、モーグシンセが出てきたりして(マンやピート・ブラウンとのコラボで知られるフィル・ライアンが弾いています)既にニューウェイヴに繋がるような色も見えますし、R&B的にシャウトするのでトラッドっぽさもあまりなく、アシッドフォーク扱いされることが多いものの、声の滑らかさ故にどろどろはしない、というこれまた所謂英国フォークとも距離がある、という非常に分類が難しい音楽です。
是非一度ご賞味ください。