クッキン

マイルス対コルトレーン、ばちばち（3 拍手）

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わたしがジャズを聴き始めたのが、去年の今頃。米国のロックと同じ理由で、なんか生半可な知識で聴いたような気になっているのが許せなくなってきたからです。例えば50年代のマイルスを聴いていないのに、「ビッチズ・ブリュー」以降の知識で彼を語る、とか。かなり恥ずかしいことをわたしはしていました。この「クッキン」は、ブルーノートに彼らクインテットが残した最後の遺産になります。クインテットも発展的に解消されました。そんな理由で、とても力が入った演奏です。「リラクシン」という盤もあるので、力が入った、というより油が乗ったが適切な表現でしょう。

レッド・ガーランドのピアノが導く「マイ・ファニー・バレンタイン」は、ジャズを聴かない人にも知られています。この人気曲があるのが強いです。変革者マイルス、というイメージに反して、ロマン主義な旋律が心のひだに分け入ってきます。名演の中で「チューンアップ／ウェン・ライツ・アー・ロウ」の高速アンサンブルは聴きものです。ザ・リズム・セクションであるガーランド、チェムバーズ、ジョーンズの緊迫感。マイルスからソロを受け継ぐコルトレーンの緊張が伝わってきます。ナイジェリアを逆綴りにした「アイアギン」の野蛮な演奏もなかなか。不穏なチェムバーズとジョーンズの刻みにコルトレーンの不安感が呼応します。2023.10.15