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青春の末法思想(6 拍手)
たすけさん レビューをすべて見る
「アドレセント・セックス」を新感覚ハードロックとして楽しんでいた鈍いわたしは、これを聴いてさすがに違うんではないかと思いました。ブラック・ミュージックのマニアックな聴き手である彼らが展開する、全く聴いたことがない音楽です。特に「ローデシア」「オブスキュア・オルタナティブズ」のダウンな世界は、よくもここまで悲観的になれるもんだと。ミック・カーンの変態ベースと、スティーブ・ジャンセンの変態ドラムズに合わせるロブ・ディーンのギターはさすがです。ディーンはこの時点で最も演奏技量のある弾き手。自分の個性を主張することがなく、黒子に徹していたんですが、彼のギターだけがこの世とあの世をつなぐ架け橋みたいなものです。
ジャパンには「うるし」と言う意味もあります。彼らの悪意が顕わになった作で、この世界に救いなんてものはないんだと言われているようです。最後の「ザ・テナント」などになると、生きている意味さえ希薄になってきます。この作に合わせてカーンはサックスを練習するわけです。ベースはフレットレスにするし、より不安な方向へ、不安定な方向へと彼らはユーザーを導くのでした。まごうことなき傑作。でもこの音に浸り過ぎると…いささか怖いです。よくこの暗い世界に、当時の自分は入り込んでいたな…。危険でした。2023.03.13