カケレコ・レビュー

科学的には証明できない現象をテーマにしたコンセプト作、76年発表

YESで活躍したkey奏者リック・ウェイクマンによる「SF・神秘的現象」をコンセプトにした76年ソロ5th。『ヘンリー八世...』『地底探検』『アーサー王...』の初期3作、ザ・フーのロジャー・ダルトリー主演映画のサントラ『リストマニア』を経てリリース。初期作で特徴となっていたオーケストラ演奏を全編に用いた大仰なサウンドから脱却し、『地底』以降のアルバム参加メンバーを含むバンド「イングリッシュ・ロック・アンサンブル」と共に制作した、ここまでで最もロック色の強い作風です。初期に顕著だった「弾きまくり」のキーボードプレイは比較的コンパクトにまとめられ、タイトなバンド・アンサンブルの中に聴きやすく収まっています。多彩なキーボードを用いてエネルギッシュかつ起伏豊かに繰り広げられるアンサンブルはまったく過去作に劣らず、明るくコロコロと駆け抜けていく変幻自在のキーボード、トランペットや多声合唱などを効果的に用いた壮大な演出はワクワク感たっぷりのリック・ウェイクマン・ワールドを堪能させてくれます。そしてもう一つ本作を特徴づけているのが、『地底』『アーサー』にも参加した元ウォーホースのVoアシュレー・ホルトによるヴォーカル。シャウトにやや不安定さを感じますが、落ち着いたパートでの哀愁を帯びた歌声はクラシカル・ロックな作風にマッチしていて良い感じです。あくまでキーボードが主役だった従来からすると、バンド・アンサンブルが強調されかなり聴きやすいサウンドへと変化した好盤と言えるでしょう。プログレというよりはクラシカルな「キーボード・ロック」と位置付けたい逸品です。

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