2019年12月17日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
タグ: プログレ
新作『WAITING FOR THE MIRACLES』リリースと2020年1月の来日決定を記念して、スウェーデンの大御所バンドTHE FLOWER KINGSを率いる才人ロイネ・ストルトに注目してまいりたいと思います。
始動より四半世紀を経た現在においても世界中のプログレ・シーンに多大な影響を及ぼし続けるモンスターバンド、THE FLOWER KINGS。
2020年1月25日・26日には、クラブチッタ川崎にて25周年記念と銘打っての来日公演が敢行されます。
詳細は下記リンク先の特設ページをご覧ください!
https://clubcitta.co.jp/001/tfk-2020/
そんな彼らの足跡をたどる前に、来日公演でもたっぷり演奏されるであろう、6年ぶりのスタジオ・アルバムとなった19年作『WAITING FOR MIRACLES』をご紹介しておきましょう♪
現プログレ・シーンの王者と呼ぶべき人気グループ、6年ぶり19年作!
2015年にキーボードのTomas BodinとドラムのFelix Lehrmannが脱退して以来初のスタジオ作となっており、新メンバーにはZach Kamins(key/g)とMirkko DeMaio(dr)を迎えています。
特筆はキーボードの活躍。冒頭からピアノとメロトロンがリリカルに舞うインスト小曲で幕を開けると、力強く溢れ出すヴィンテージ・トーンのオルガンでTFKサウンドに厚みをもたらします。前任者T.BodinよりはKAIPAのkey奏者Hans Lundinに近い柔らかくも芯のあるタッチのプレイが印象的です。
もちろんRoine Stoltによるエモーションをたっぷり湛えた入魂のギター、Hasse Frobergの熱く歌い上げるハスキー・ヴォーカル、ズシリとパワフルに迫るリズム・セクションと、TFK印の風格に満ちた演奏は健在。
キーボードのカラーの変化を原動力にして軽やかなファンタジーが全編を覆うさすがの力作となっていますよ~!
Tomas Bodinという長年の中核メンバーが抜けてから初のアルバムでしたが、揺るぎなきTFKサウンドを堪能させてくれて嬉しい限りです。
そんなTFKのリーダーであるロイネは、十代より音楽活動を開始し、以後現在にいたるまで北欧プログレ・シーンの第一線で活躍を続けているプログレ界の重鎮と言ってよい存在。
1956年にストックホルムの北部に位置するウプサラで生まれ、60年代末にはすでにベーシストとしてバンド活動を行なっていたと言います。年齢にして12~3歳、日本で言うと小学生か中学生かという時期からミュージシャンを志していたことになりますよね。
70年代に入ってからギタリストへと転向した彼は、74年、若干17歳にしてプログレ・バンドKAIPAに加わることとなります。それではまずは75年のデビュー作からの一曲をどうぞ。
透明感に満ちた音色によって紡がれるCAMELを彷彿とさせるファンタジックな叙情性と、ヒューマンな温かみが滲むKAIPAのサウンドは、北欧最初期のシンフォニック・ロックとして今現在でもプログレ・ファンに高い人気を誇ります。
ロイネは、デビュー作の作風をさらに発展させた76年発表の第2作『INGET NYTT UNDER SOLEN』と78年作『SOLO』の初期3作品までに参加し、KAIPA独自の優美で透き通るようなシンフォニックサウンドの形成に大きな貢献を果たしました。
79年にロイネはKAIPAを脱退し、ソロ活動を開始。同年にソロデビュー作となる『FANTASIA』を発表します。
各楽器の北欧らしい透き通るような音使いとアコギのきらびやかな音色がただただ美しい名品。北欧プログレらしいファンタジックに広がるキーボードサウンドと自らのギタープレイで聴かせるKAIPAより受け継いだ優美なシンフォサウンドの中で、KAIPAのヴォーカリストを含む3人の歌い手による美しい歌唱をフィーチャーした、充実のソロ作となっています。
その後、80年代には85年作『BEHIND THE WALLS』、89年作『LONELY HEARTBEAT』のソロ2作品を発表しています。プログレッシヴな要素はほぼ皆無で、時代を反映したエレポップ・サウンドを聴かせています。KAIPAとFLOWER KINGSという生粋のプログレバンドの間の時期に、こういう音を演奏していたというのはなかなか興味深い事実です。
そして、94年にはいよいよFLOWER KINGS結成の契機となる、その名もズバリ『THE FLOWER KING』が発表されます。ロイネのソロ作という位置づけではあるものの、後にFLOWER KINGSとして活動するメンバーはほぼ出揃っており、実質的なFLOWER KINGSのデビュー作と捉えることが可能な作品です。
ちなみにドラムス/パーカッションで参加しているのは、北欧プログレ黎明期より活動するスウェーデンのアヴァン・プログレ・バンドSAMLA MAMMAS MANNAを率いたHASSE BRUNIUSSONその人。
冒頭のあまりの優美さに思わず息をのんでしまうほどのギタープレイは、ロイネのKAIPA~ソロ時代のキャリアを凝縮したかのような音色と言っても過言ではないでしょう。
KAIPAを彷彿とさせる優しく温かみに満ちたシンフォニック・サウンドと豊潤なポップ性を備えた普遍的なメロディライン、そして新世代のプログレであることを示すギターを中心とした重厚感たっぷりのハード・ドライヴィングなアンサンブルも加わった、極上の北欧シンフォニック・サウンドを繰り広げます。
壮大で美しく、胸の躍るようなファンタジーを紡ぎだすこのバンドの登場に、多くのプログレ・ファンは彼らに注目しないわけにはいかなかったはず。
なお、これに先立つ92年と93年には、同じくスウェーデン出身のプログレッシヴ・ロック・バンドであるANGLAGARD、ANEKDOTENがそれぞれ衝撃的なデビュー作によって下火だったプログレ・シーンを再興へと導いたという経緯がありましたが、当時のプログレ・ファンはその両バンドと同等かそれ以上の感動をこの作品から受けたのではないかと思います。
先の2つのバンドが主にKING CRIMSONの遺伝子を受け継ぐ北欧プログレの陰の部分を担うバンドだとすれば、THE FLOWER KINGSは紛れもなく陽を担うバンドであり、YESやGENESIS、CAMELなどのバンドをフェイヴァリットとするファンには、こちらに惹かれるものが多くあったことは想像に難くありません。
95年、第2作となる『BACK IN THE WORLD OF ADVENTURE』にて、ベースにロイネの弟であるMICHAELが、そしてキーボードには以後THE FLOWER KINGSのサウンド面で大きな貢献を果たしていくこととなるTOMAS BODINが加入。
その95年作は、前作でのファンタジックな作風を維持しながらも圧倒的な表現力を有したキーボードと、流麗にもハード・エッジにも変幻自在なギタープレイをフィーチャーしたサウンドが抜群に気持ちいい、更なる傑作に仕上がっています。
この時点で、デビュー作より彼らに注目していたプログレ・ファンは、FLOWER KINGSが北欧プログレのみならず現代プログレ随一の音楽センスと卓越した演奏力を備えたグループであるということを認識したのではないでしょうか。
続く96年の第3作は、シンフォニック・ロックというよりはプログレッシヴ・ロックとしての骨太さがより強調された演奏と豊かなドラマ性を湛えたストーリーテリングが手を取り合った名コンセプト作となっています。あらゆるプログレ・ファンに聴いていただきたい初期の代表作と言ってよい完成度を持つ一枚です。
その後、ロイネやBODINのソロ作を挟みつつも、97年作『STARDUST WE ARE』、98年作『FLOWERPOWER』など、THE FLOWER KINGSとしては2枚組の大ヴォリュームの作品を立て続けに発表し、ファンの度肝を抜きました。
00年代以降の活動も好調そのもので、『ADAM & EVE』(04)『SUM OF NO EVIL』(07)など、もはやTHE FLOWER KINGS節とも呼べる独自のサウンドがますます磨かれた力作をリリースしていきます。
そして2012年には、07年以来発表されていなかったスタジオ作品がリリース。その12年作『BANKS OF EDEN』は、北欧プログレ本来の透明度の高いファンタスティックさが前面に出た珠玉の一枚となりました。
そして13年には、『BANKS OF EDEN』を引っさげての来日を果たしました!その時の感動のステージはレポートにまとめてありますので、どうぞご覧ください。
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1月11日(金)、12日(土)にクラブチッタ川崎にて開催された『ヨーロピアン・ロック・フェス 2013』に行ってまいりました。本日はその1日目の様子をレポートいたします!
シンフォニックな作風だった前作から、ロック寄りのソリッドなサウンドを聴かせた13年作『DESOLATION ROSE』も特筆すべき作品。ロイネのギターを筆頭にエッジの立ったキレのある演奏が全編を覆う、ロック・バンドとしての圧倒的なカッコよさが際立つ一枚です!
そして、2018年にはプロジェクト名義のソロ・アルバムもリリース。TFKのスケール感とKAIPAの叙情美を合わせたようなサウンドに、ソロらしい多彩な味付けを施した充実の一枚となっていて、45年のキャリアを経ても衰えぬクリエイティヴィティを凝縮した快作に仕上がっています。
またロイネはTHE FLOWER KINGSの活動と並行して、数多くのプロジェクト・バンドに参加している事でも知られます。代表的なものとしてはTANGENT、TRANSATLANTIC、AGENTS OF MERCYなどで、そのいずれでもハイクオリティな傑作を発表し続けており、そちらのほうでも大いにプログレ・ファンを楽しませてくれているのはよくご存知かと思います。2016年にはKAIPAの派生プロジェクトKAIPA DA CAPOとしてのアルバムリリースやYESのJon Andersonと立ち上げたプロジェクトでも作品を残すなど、プログレ・シーンの中心で旺盛な活動を続けています。
今後もどのバンドから新たな傑作が登場するのか、その動向からは目が離せませんね!
現代北欧プログレを代表するバンドによる96年発表の3rd。ファンタジックで雄大な音の広がりとダイナミズムたっぷりのアンサンブルはデビュー作から変わらず健在ですが、本作ではシンフォニック・ロックというよりはプログレッシヴ・ロック的な骨太さがより強調された演奏が特徴的。シンフォニックで荘厳なシーンとハードタッチなサウンドで突き進むシーンとを巧みに配して劇的に進行していくアンサンブルが見事に決まっています。コンセプト作ならではと言うべき、起伏豊かなドラマ性を湛えたストーリーテリングもまた素晴らしいもので、これこそあらゆるプログレ・ファンに聴いていただきたいと思えるシンフォニック・ロックの傑作です。
2枚組、定価3048+税
盤質:傷あり
状態:良好
帯有
1枚は無傷〜傷少なめ、1枚は傷あり、ケースツメ跡あり、若干スレ・若干折れあり
北欧ロックを語る上では欠かせないアーティストROINE STOLTが在籍したていたことで知られるスウェーデンのグループ。75年作の1st。CAMELを彷彿させる優美で温かみあるアンサンブルに、北欧らしい透明度の高い音色が加わった、ユーロ・シンフォニック・ロックの名作です。
FLOWER KINGSのRoine Stolt率いるプロジェクト・バンド。09年作。UNIFAUNのNad Sylvan(Vo)、KING CRIMSONのPat Mastelotto(Dr)の他、FLOWER KINGSのメンバーなどが参加。アコギ、弦楽器、ピアノ、メロトロンなどをフィーチャーしたアコースティックで幻想性溢れるアンサンブルはさすがの出来映え。サウンドはクリアで鮮やかですが、無機的とはほど遠く、手工芸のような温かみに溢れています。北欧の澄んだ空気と北欧家具の芳醇な風合いが目に浮かぶようです。モダン過ぎず、懐古的過ぎず、絶妙なサウンド・プロダクションと言えます。これは素晴らしい作品です。
元カイパのロイネ・ストルト率いる北欧はスウェーデンを代表するプログレッシヴ・ロック・グループ、07年の10thアルバム。ロイネのまるで絵画のようにアーティスティックに紡がれるギター、トマスのヴィンテージな厚みあるシンフォニックなキーボード・ワーク、ハッセのやらかくも伸びやかなヴォーカル。フラワー・キングスらしいファンタスティックな世界が広がる充実な名作。
スウェーデン出身、KAIPA、THE FLOWER KINGS(TFK)、AGENTS OF MERCY、TRANSATLANTICなどで活躍する才人ギタリストによる18年ソロ・アルバム。ご本人はギター/ヴォーカル/キーボードを演奏し、TFKのメンバーであるJonas Reingold(b)、Hasse Froberg(vo)、Michael Stolt(b/vo)の他、テクニカル・ドラマーMarco Minnemann(d)やハケット・バンドで著名なRob Townsend(sax)とNad Sylvan(vo)が参加しています。力強くも浮遊感あるメロディとエモーション溢れるギターをメインにスケール大きくドラマチックに盛り上がる作風はTFKに通じていますが、TFKほどのシリアスさや緊張感は感じさせないのが特徴。ギターを中心にファタジックで伸びやかなタッチが前に出ている印象があり、より北欧らしい柔らかな叙情美を持つKAIPAを彷彿させる部分が目立ちます。2曲目のようなリズミカルなポップ・ソングや、洒脱なサックスが光る本格派ジャズ・エッセンスを取り入れた7曲目など、合間に聴けるソロらしい奔放な曲想も魅力的です。プログレ界最高峰の圧倒的な表現力を見せつけるギタープレイは言わずもがなの素晴らしさですが、そこに芳醇な音色で絡んでくるハモンド・オルガンの腕前にも注目。TFKファンもKAIPAファンも楽しめる充実のソロ作です!
SHM-CD、紙ジャケット仕様、定価2800+税
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
帯に折れあり
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