2025年1月29日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
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スタッフ佐藤です。
今回は、2025年から新品取り扱いを開始しているNORTHERN SPYレーベルの作品をご紹介していきたいと思います。
まずはNORTHERN SPYレーベルの概要と取り扱いタイトルの特徴を見てまいりましょう。
ビートルズのデビューと同年の1963年に設立され、フリー・ジャズや前衛音楽といった当時としては非常に先鋭的なサウンドを専門に発信したNYの伝説的レーベル、ESP-DISK’。
そのESP-DISK’の元スタッフであるTom AbbsとAdam Downeyを代表として、NYはブルックリンを拠点に2010年より運営するのがこのNORTHERN SPYレーベルです。
アヴァン系ジャズ、アンビエント、そして即興音楽などが取り扱いジャンルの中心となっており、2人の古巣ESP-DISK’の精神性を確かに受け継いでいるのが特徴。
ただ、NORTHERN SPYレーベル独自の理念として「即興音楽とポピュラー・ミュージックを結びつける」というものがあり、事実レーベルのラインナップはアヴァンギャルドでありながらも聴き手を突き放すような孤高さはほとんどなく、この手の音楽の中ではかなり聴きやすいものばかり。
さらにはいろんなプログレやシド・バレット、ケヴィン・エアーズ、スティーリー・ダンらにも通じる音楽性を持つ作品もあったりと、通常なら水と油と考えられる両ジャンルの共存を試みている非常にチャレンジングなレーベルと言えるのです。
それでは、現在取り扱い中のタイトルをご紹介してまいりたいと思います。
87年結成のオーストラリア出身アヴァン・ジャズ/フリーインプロ・トリオ、24年作。
ピアノ、ギター、打楽器による即興で紡がれる、イマジネーションに溢れていながらも非現実的な聴き心地を持つサウンドは、どこか別の惑星の情景を描いているかのようです。
各楽器の重なり合いの妙、そして音の隙間すらも雄弁に聴かせる円熟のインプロヴィゼーションは、さすが即興一筋30年以上のベテラン・グループ。
NYのフリー・インプロ系女性トランぺッター。
若干の緊張感は漂わせながらも太く存在感あるトランペットのプレイが温かな音空間を創り上げていて、フリーインプロにイメージされる難解さや聴きづらさは感じません。
ピアノとトランペットが熱気を帯びたフレーズの応酬を繰り広げるかなりカッコいいナンバーもあって、NUCLEUSあたりが好きな方にも響きそう。
NYを拠点に活動するサックス奏者/コンポーザーによる23年作5th。
サックスとチェロやヴァイオリンら弦楽がスリリングなインプロを繰り広げる、「即興チェンバー・ジャズ」とでも呼ぶべきスタイルが強烈。
RIO勢にも相通じるアヴァンギャルドな創造性がみなぎっていて、初期UNIVERS ZEROにサックスをフィーチャーした感じとも言えそう!
グラミー受賞作のプロデュースも手掛けたサックス奏者/コンポーザーの24年作。
リズムやドローンや様々な断片的な音で構成したバックトラックに、即興でサックスのプレイを乗せていくスタイルを主体とする「アンビエント・ジャズ」の傑作。
ミステリアスな電子音だけが鳴り響く曲も挿入されたりと、アヴァンギャルドなセンスも随所で発揮されていて、鬼才ぶりがうかがえます。
「アンビエント・カントリー」を標榜するバンドの24年作。
浮遊感のあるドローンが折り重なるアンビエンスな音響空間の中、ピアノやマンドリンやフィドルやハーモニカやペダルスティールが美しくも前衛的なタッチで感応し合う、なるほど確かにアンビエント・カントリーとしか表現しえない世界観だなぁ。
エジプト出身のギタリスト/キーボーディスト/コンポーザーMaurice Loucaを中心とするプロジェクト。
エキゾチックな中近東テイストと地中海の潮風香る爽やかなテイストが心地よく調和するジャズ・ロック/フュージョン名品で、GONG『Shamal』だったりMauro Paganiの1stだったりがお好きならオススメ!
これはハイセンスな歌ものジャズ・ポップス。
しなやかなリズム・セクションにオシャレな音運びのエレピ、ゆったり流れゆく管弦などが織りなすサウンドは、Donald FagenのソロやSTEELY DAN『Gaucho』などに通じる上質な聴き心地を備えています。
ジャジーなAOR作品が好きな方であれば気にってもらえるはず。
ネオアコ/ギターポップ時代のシド・バレット!?
シドのソロのようなマッドさこそありませんが、ストレンジな捻くれフォーキー・ポップに、BELLE & SEBASTIANあたりを思わせるキラキラしたネオアコ・テイストを散りばめたサウンドが実に素晴らしい逸品!
いかがだったでしょうか。
フリーインプロやアヴァン・ジャズからセンス抜群のおしゃれポップ・ミュージックまで、冒頭で述べたレーベルの理念が反映されたユニークで遊び心に富んだ作品の数々が並んでいたかと思います。
カケレコにとっても従来になかった分野への進出となりますが、スタッフと一緒に未知の音を面白がっていただければ嬉しく思います♪
エジプト出身のギタリスト/キーボーディスト/コンポーザーMaurice Loucaを中心とするプロジェクト、23年1stアルバム。エジプト人らしいエキゾチックな中近東テイストと、地中海の潮風香る爽やかなテイスト、両者が心地よく調和する美しいジャズ・ロック/フュージョンを紡ぐ名品。ロックのダイナミズムを持つリズム・セクションにヴィブラフォンが涼やかに絡み、サックスやクラリネットがほんのりアラビックな旋律を奏で、チューバが豊かな響きの低音でアンサンブルにつややかさを加えます。一方本人のギターはさほど演奏には絡まず、ラップスティールでなぜかハワイアンな空気感を演出。そのミスマッチさが何とも面白いことになっています。全体としてはGONG『Shamal』だったりMauro Paganiの1stだったが好きならオススメしたい芳醇な中近東/地中海ジャズ・ロック作です。
グラミー賞のBest Alternative Jazz Albumを受賞した23年のアルバム『Meshell Ndegeocello / The Omnichord Real Book』のプロデュースでもその才能が高く評価される、NY出身サックス・プレイヤー/コンポーザーの24年作。「アンビエント・ジャズ」というジャンルに属するアーティストで、リズムやドローンや様々な断片的な音で構成したバックトラックに即興でサックスのプレイを乗せていくスタイルを主体としています。思いつくままにフレーズを紡いでいくいかにも即興的な緊張感あるプレイから美しくメロディアスなプレイまで、イマジネーションに富むサックスは見事。ミステリアスな電子音だけが鳴り響く曲も挿入されたりと、アヴァンギャルドなセンスも随所で発揮されています。注目の鬼才が創り上げる孤高の音世界に浸れる一枚。
ヴァージニア州ノーフォーク出身、NYを拠点に活動するサックス奏者/コンポーザーによる23年作5th。自身のサックスとチェロやヴァイオリンら弦楽がスリリングなインプロを繰り広げる、「即興チェンバー・ジャズ」とでも呼ぶべきスタイルが強烈。RIO勢にも相通じるアヴァンギャルドな創造性が感じられ、初期のUNIVERS ZEROにサックスをフィーチャーしたようなサウンドとも言えそうです。チェンバー・ロックが好きであればこれは一聴の価値ありですよ!
87年結成のオーストラリア出身アヴァン・ジャズ/フリーインプロ・トリオ、24年作。42分の表題曲「Bleed」の全1曲収録。ミステリアスなタッチのピアノを軸として、散りばめられる多彩な打楽器、ノイジーだけど美しくもあるギター(?)による、各楽器の重なり合いの妙、そして音の隙間すらも雄弁に聴かせるインプロヴィゼーションに引き込まれます。イマジネーションに溢れていながらも非現実的な聴き心地を持つサウンドは、どこか別の惑星の情景を描いているかのようです。アヴァンギャルドですが聴きづらさはなく、ピアノの筆頭に凛とした音使いが実に素晴らしい一枚です。
NYはブルックリン出身の4人組バンドによる22年作3rd。しなやかなリズム・セクションにオシャレな音運びのエレピ、ゆったり流れゆく管弦などが織りなす、洒脱なジャズのエッセンスをふんだんに取り込んだスタイリッシュかつ温かみにも溢れたサウンドが絶品。Donald Fagenのソロなどに通じる上質な聴き心地があります。STEELY DANでいえば『Gaucho』でしょうか。ヴォーカルのしっとりと落ち着いた歌声も実に良いです。ジャズ色強めなAORが好きな方にもオススメの一枚。
NY出身のフリーインプロ系女性トランぺッターによる24年作。1曲目からピアノとトランペットの即興をフィーチャーしたナンバーですが、若干の緊張感は漂わせながらも太く存在感あるトランペットのプレイが温かな音空間を創り上げていて、難解さや聴きづらさは感じません。リズム隊が躍動し始めて一気に演奏のテンションが高まる2曲目は、ピアノとトランペットが熱気を帯びたフレーズの応酬を繰り広げるかなりカッコいいナンバー。このあたりはNUCLEUSなどのファンにも響くのではないでしょうか。そんな調子で各プレイヤーの音の断片が散りばめられるような浮遊感ある展開と、スリリングなインプロ展開が自在に切り替わっていき有機的な音像を形成していくパフォーマンスが素晴らしいです。現代NYインプロ・シーンのクリエイティビティの一端に触れられる好盤です。
NYを拠点に活動、「アンビエント・カントリー」というジャンルを標榜するバンドの24年作4th。一体どんなものかと聴いてみると、浮遊感のあるドローンが折り重なるように鳴り響くアンビエンスな音響空間の中で、ピアノやマンドリンやフィドルやハーモニカやペダルスティールが美しくも前衛的なタッチでひそやか旋律を紡ぐ、なるほど確かにアンビエント・カントリーとしか表現しえない世界観です。神秘的でありながら同時に牧歌的な温かみも滲んでくるようなサウンドは、草花に朝露が輝くアメリカ片田舎の牧場の早朝という感じの情景が思い浮かびます。畏怖すべき自然の荘厳さとオーガニックな心地よさが丁度よいバランスで共存するような音像が素晴らしい一枚です。
ブルックリン出身の新鋭SSW/マルチ・プレイヤーAlex Tothによるプロジェクト、21年作2nd。これは「ネオアコ/ギターポップ時代のシド・バレット」と形容したい音世界。力の抜けた自然体の歌いぶりが心地よいヴォーカルと追従するソフトなコーラス、瑞々しいアコギを軸にピアノや管楽器も交えた繊細かつオシャレなバンド・アンサンブル。シドのソロのようなマッドさこそありませんが、ストレンジな捻くれフォーキー・ポップに、BELEE & SEBASTIANあたりを思わせるキラキラしたネオアコ・テイストを散りばめたようなサウンドが実に素晴らしいです。全編を覆う淡く幻想的な音響処理も独特の手触りをもたらしていてナイス。シド・バレットやケヴィン・エアーズが好きで、ネオアコやギターポップも好きなら、この作品は良いですよ〜。
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