2023年4月7日 | カテゴリー:やはりロックで泣け!,リスナー寄稿記事,世界のロック探求ナビ
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寄稿:ひろきさんさん
2017年まで連載されていた舩曳さんによるコラム、「そしてロックで泣け」は丁寧に詳しく調べられていて、個人的に大いに興味を喚起されました。今回、彼の精神を受け継いで「やはりロックで泣け!」というタイトルで、様々な「泣ける音楽」を紹介したいと思います。
今回は、John Verity率いるPHOENIXの first album『Phoenix』に含まれている「A Woman Like You」です。
まず簡単にこのバンドを紹介します。
John Verity(guitar/vocal)、Jim Rodford(bass/keyboard 後KINKS)、Bob Henrit (drums 後KINKS)というトリオ編成です。この3人はARGENTでともに活動していた仲間で、1975年にARGENTが解散したあとすぐにPHOENIXを結成しました。
ARGENTの最終作品である『Circus』はinstrument中心でjazz的なアプローチがなされていましたが、ここではメロディを全面に出した極上のBritish hard rockに仕上がっています。
1975年~1976年にかけては、いわゆるBritish hard rock bandの存在感が希薄になり、punk rockがブレイクする直前の時期であったので、このアルバムとの出会いはまさに「宝物を見つけた」感覚であったことを思い出します。もちろん当時、日本盤は発売されなかったのでUK盤はその当時、およそ2500円であったと記憶しています。レーベルもCBSだったので、メジャーなところから発売されているのだなあという思いも持ちました。
A1の「Easy」、 A2 「Drowning In Tears」の透明感あふれる楽曲に圧倒され、A3の「From The Ashes」でのアコギとメロトロンとのコンビネーションに涙を流し、まさに感動の嵐のなかにたたき込まれた頃にB1の「A Woman Like You」が流れてくる頃には完全KOされました。
John Verityはhigh tone voiceの持ち主なのでこの曲では3オクターブ上のラの音まで裏声を使わず出せています。ギターはGibson SG Custom (whiteトレモロアーム付き)を使用し、phase shifterをかけて音を作っています。phase shifterを使うと音的にheavinessがやや弱まる傾向にあるのですが彼はそれを物ともせずに弾きまくっています。
しかもEm~Cmaj7~D~Emの循環コードでのギターソロは感動を呼び起こすことは必至です。~What could I do, What I’d go through, I need a woman like you….. 切ない恋心を歌い上げた名曲であると断言できます。誰かが言っていましたが「これを聴かずして死ねるか」という気持ちになることを100%保証します。
このアルバムが気に入ると彼がARGENT以前に活動していたJOHN VERITY BANDも是非聴いてほしいところです。というのもPHOENIXはそのバンドの音を継承しているからです。楽曲の傾向、アレンジ等に多くの共通部分を見つけることができます。このアルバムも当時は極めて発売枚数が少なく、高価な値段で取引されていました。私もうっかり衝動的に買ってしまいましたが今でも家宝の一部になっています。
その後、John VerityはSAXONのデビューアルバムをプロデュースしたり、新バンドを作るなどしながら、今でも現役で活動しています。残念ながらJim Rodfordは亡くなってしまいました。Bob Henritは現在ロンドン市内でドラムストアを経営していて、顧客のひとりにRingo Starrがいるそうです。
最後になりますがともかくPHOENIXの創出したグルーヴはこの時代でしか誕生しえないものです。45年以上過ぎても全く色あせない良質の音楽はいつ聴いても新たな感動を呼び起こしてくれます。ぜひ未体験の方は一度だまされたと思ってチェックしてください。
舩曳氏のコラム「やはりロックで泣け!」も合わせてご覧ください。
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