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【ユーロ・レーベル探求 第九回】EGGレーベル~片面たまご??

【第九回】「片面たまご??」

寄稿:ike333さん

 かつてフランスのバークレ傘下にEGGレーベルがありました。1969年に設立されたものです。しかしすぐにこのレーベルは活動を停止してしまいます。その後、どういう訳か分かりませんが、1977年頃、主にエレクトロニクス系のプログレ・アルバムをリリースするレーベルとして活動を再開しました。日本ではキングレコードが国内盤でEGGレーベルをシリーズ化してくれたので結構出回ったのではないでしょうか。

レーベルロゴのデザインは、卵をボールに、スプーンをゴルフクラブに見立ててショットしようとしている場面を線画で表したもの。A面のラベル面にタイトル、アーティスト名、全ての曲名を列挙し、B面のラベル面にはロゴだけが記されており、慣れないとVERTIGOの様にどちらがA面か分からず面食らうものでした(NEON、伊TRIDENTも同類)。と、もっともらしいことを書いていますが、実は、カケレコさんでCRUCIFERIUSのCDをGETするまでは、70年前後にもEGGレーベルが存在していたことは気づきませんでした。ということで、俄にEGGを総括してみようと思い立ちました。

CRUCIFERIUS

Francois Breant (Key)、MAGMA参加前のBernard Paganotti (b)等が在籍した唯一作『A NICE WAY OF LIFE』(1970)は、ぶんぶん唸るベースが後のMAGMAでの活躍を連想させられるものですが、音楽自体はMAGMAとは全く違うものです。

Christian Vander

1974年にBARCLAYからリリースしていたアルバム『TRISTAN ET ISEULT』を78年にEGGからジャケ変更で再発しています。1974年当時のMAGMAの音楽と同傾向ですが、美しい音楽となっています。

オリジナルはコチラ

Michel Magne

映画音楽の巨匠M.Magneがシンセサイザーを駆使して、Didier Lockwoodらを迎えて、天地火水の4部作を目指した作品をEGGからリリースしました。第一弾の『LA TERRE(「地」)』(1978)は、地面からわき出てくる様なシンセサイザーの地響き、ロック調の曲、地球と森を表現する美しいピアノの調べなどが展開していきます。

第二弾の『L’EAU』(1980)は、シンセサイザーが仄かに鳴り響くなか、リストの愛の夢の様なピアノが奏でられ、またD.Loockwoodの流麗なバイオリンや原始の鼓動の様なパーカッションなど様々音が登場してくるものですが、全体として「水」だけにクリアな雰囲気があります。どちらも素晴らしい作品で、結果的には2作で打ち止めとなった様ですが、もったいないと思います。

OSE

ギタリストHerve PicartがBARCLAYにデモテープを持ち込んだところ認められ、HELDONのR.Pinhas、Francois Augerの協力を得られることとなり、めでたく『ADONIA』(1978)という傑作アルバムを完成させることができたそうです。PULSAR、WAPASSOUなどと同傾向のスペイシーで陰影のある美しさと、HELDONのミニマルミュージック的なエッセンスが組み合わさった好作品です。

Tim Blake

GONGのメンバーだった彼はEGGに2作品残しています。『CRYSTAL MACHINE』(1977)はGONGの『YOU』のスペイシー路線を正統に引き継いだのは俺だと言わんばかりの音楽世界をシンセサイザーやシーケンサによりダイナミックに繰り広げています。『NEW JERUSALEM』(1978)は、エピタフ風アコギを伴奏に、もの悲しげな歌で始まるのが意外なのですが、その後は、聴いてて安心、相変わらずの『YOU』のスペイシー世界が繰り広げられます。


Francois Breant

CRUCIFERIUSのメンバーであったF.BreantはEGGから素晴らしい傑作を2作品リリースしています。どちらにもD.Lockwoodらが参加しており、第一弾の『SONS OPTIQUES』(1978)は、ヒンヤリとした質感の音ながら、視覚的なイメージがフラッシュバックするようなロックアルバムとなっています。

『VOYEUR EXTRA-LUCIDE』(1979)は、前作を一層ダイナミックにした作品で、彼のこれら2作品はEGGのアルバム群の中でもプログレッシブ・ロックのアルバムとして抜きん出ているものだと思います。

Alain Markusfeld

マルチプレイヤーMarkusfeldが、アコギ、ピアノ、オルガンなどで作り上げた組曲のアルバム『PLATOC』(1978)はEGGレーベル移籍後2作目です。アコギの早引き、流麗なピアノと、EGGレーベルにしては珍しくアコースティック主体、時々エレキギターが挿入され立体感が増している素晴らしいアルバムです。

Patrick Vian

EGGから、エレピ、シンセサイザーなどを駆使して、ポップでアバンギャルドなエレクトロニクス・ミュージックを展開する『BRUITS ET TEMPS ANALOGUES』(1976)をリリースしています。この手の音楽としてはめずらしく軽快でご機嫌なアルバムです。

余談ですが、彼は、MEMORIANCEの2作目『L’ECUME DES JOURS』(1979)で素材としてとりあげた小説の作家BORIS VIANの子息だそうで、以前RED NOISEというバンドに参加していました。同バンドの”Sarcelles-Locheres”(1970)は、アバンギャルドなロックです。

さらに、このRED NOISEが母体となり、チャンバー系ロックバンドKOMINTERN(P.Vianは不参加)に発展し、ノスタルジックで少しユーモラスな音の傑作アルバム『LE BAL DU RAT MORT』(1971)を発表しています。このKOMINTERNのバイオリニストはあのATOLLの2作目『夢魔』に参加したRICHARD AUBERTです。未CD化かもしれませんが『LE BAL…』もお勧めです。

HELDON

当時も今もそう思っていますが、EGGレーベルの目玉は、HELDONの最高傑作『STAND BY』(1979)でしょう。このアルバムにはF.Auger、Didier Batard (b)、Patrick Gauthier、R.Pinhasが参加しており、A面の「BOLERO」はAugerのパーカッションとGauthierのMINI-MOOGのセンスが際だって光っているシンセの名曲、B面の「STAND BY」は太陽と戦慄の完璧なる発展系の凶暴ギターがうなりまくる大傑作曲です。

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このほか、EGGは、瑞々しくも厳かなVANGELISのアルバム『IGNACIO』(1977)や、独のPOPOL VUH、C.Schnitzlerの仏国内リリースなどをしていた様です。以上、片面ラベルに卵があるだけの面食らいレコードのお話でした。

【ユーロ・レーベル探求 第一回】「懐かしのGONG」はこちら!
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EGGレーベル

フランスの個性派プログレ大集合!EGGレーベル!

CRUCIFERIUS

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後のMAGMAのベーシスト、PAGANOTTIが在籍したプログレ・バンド70年唯一作。JOHN HISEMANを思わせる畳みかけるようなドラミングと味わい深いトーンのオルガンが印象的な、ブリティッシュナイズなプログレを展開。ブンブンと唸りを上げるベースの存在感もやはりさすが。

Christian Vander

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ご存知MAGMAのリーダーCHRISTIOAN VANDERによる74年ソロ作。その内容はMAGMAの作風をほぼ踏襲したもので、VANDER=MAGMAであるということがよくわかる作品となっています。MAGMAでのアクが抑えられ美しいサウンドが前面に出る場面もあり、聴き所は豊富。

Michel Magne

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映画音楽の巨匠による「地」をテーマとした78年作。この曲では、淡々と繰り返されるスペイシーなシンセパターンと、激しくも美しい本格派クラシック・ピアノソロとがあまりにも劇的な対比を聴かせる名曲。

OSE

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78年作より。HELDONのメンバーの協力により完成した本作は、PINK FLOYDのような深い内省を感じさせる音空間とそこにHELDON由来のミニマルなシンセが絡み合うことで生まれる個性的な世界観を堪能できる一枚です。

Tim Blake

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黄金期GONGのKey奏者78年作。ALLEN脱退後はオリエンタルなサウンドを取り入れたジャズ・ロック/フュージョン路線ヘ向かったGONGですが、この作品を聴けば当時のメンバーであった彼により『YOU』の音楽性が引き継がれていることがわかります。

Francois Breant

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先のCRUCIFERIUSのメンバーでもあったFrancois Breantの79年作。これはいかにもフランスらしいエレガンスを感じさせる楽曲で、MAGMAの重戦車のようなアンサンブルををクラシカルに聴きやすく、耳触り良くしたらこのような感じになるのかもしれません。

Alain Markusfel

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マルチ奏者ALAIN MARKUSFELDによる78年作。アコースティカルな演奏を主体とした作品ですが、こちらもフランスらしい耽美で幻想的なサウンドが楽しめます。アーティスティックで深みのある音世界を持つ名作。

Patrick Vian

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同じくフランスのマルチ奏者PATRICK VIANの76年作。ミニマルな反復パターンや飛び交う各種SEなど、シンセサイザーをフル活用して繰り広げられるアーティスティックな感性にあふれるシンセ・ミュージック作品。とは言えクラウト系のような難解さは感じられず、ポップな聴きやすさがあるのが特徴です。

HELDON

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フレンチ・プログレを代表するバンドの一つ、HELDONの79年作より。CRIMSONを宿すヴァイオレンスなギター・アンサンブルと、ミニマルなリズムパターンとの組み合わせが見事な一曲。プログレッシヴな実験精神もさることながら、フレンチ・プログレ屈指のカッコよさを誇る演奏が素晴らしいの一言です。

関連カテゴリー

EGGレーベル 在庫一覧

  • HELDON / STAND BY

    フレンチ・プログレ代表格、79年発表の最高傑作

    Richard Pinhasを中心に結成し、KING CRIMSONから強い影響を受けた破壊的且つ実験的要素の強い音楽性を持ちながら、エレクトロニクスを使用したコズミックな個性、MAGMA人脈を擁した肉感的な凶暴さをも併せ持つフランスのグループの78年作。前作「Interface」では、シンセサイザーによるシーケンス・サウンドを大きく取り入れたアプローチを聴かせていましたが、本作では肉感的なバンドアンサンブル、そしてRichard Pinhasのギターに重きを置かれた作風となっており、Francois Augerのメタリックなドラムと相まってHELDONの凶暴性をストレートに収録した傑作となっています。

  • OSE / ADONIA

    EGGレーベル屈指の傑作と言われる78年唯一作、HELDONのRichard Pinhas&Francois Augerが参加したエレクトロ系フレンチ・プログレの逸品

    69年に設立されエレクトロ系プログレ作品を中心にリリースしたフランスのEGGレーベルより、78年に発表された唯一作。ギタリストのHerve Picartが、HELDONのRichard PinhasとFrancois Augerの協力のもと制作したのが本作で、HELDONを彷彿させるエレクトロニクスによるミニマル調の無機的なサウンドをベースに、陰鬱さの中にほのかにファンタジックな色合いを持ったスペイシーなシンセ、哀愁の旋律を奏でるギターなどが織りなす、フランス産らしい儚さと美しさが滲むエレクトロ・プログレ。EGGレーベル屈指の傑作と言われるだけあって、エレクトロ要素とユーロ・シンフォ然とした翳りある音作りが違和感なく調和を果たした名作となっています。HELDONファンのほか、PULSARあたりのスペイシーなサウンドがお好きな方にもお聴きいただきたい逸品!

  • CRUCIFERIUS / A NICE WAY OF LIFE

    プログレ黎明期のフレンチ・ロックの秘宝、MAGMAのバーナード・パガノッティ在籍、70年作!

    フランス出身、後にマグマで活躍するベーシスト、バーナード・パガノッティ在籍のアート・ロック/プログレ・グループ、70年の唯一作。霧のように低く立ちこめるドラム、くすんだトーンのオルガン、浮遊感のあるヴァイヴ、女性を含む荘厳なコーラス、アーティスティックなヴォーカルなど、ピンク・フロイドを彷彿させる幻想性に溢れたサウンドが聴き所。歪んだギターが炸裂するキメのパートでは、パガノッティのベースも高速にうねりを上げて痺れます。トラフィックとコロシアムの中間に位置するようなジャジーなロック・ナンバーも魅力的で、ジャジーで格調高いピアノを挿入したり、かなりのセンスを感じさせます。秘宝臭ぷんぷんのジャケに「おおっ」となったユーロ・ロック/プログレのファンは聴いて損はありません。

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