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「音楽歳時記」 第七十八回 8月28日 バイオリンの日 文・深民淳

4度目の緊急事態宣言となってしまいました。なんだか息苦しいですね。そんな息苦しさの中、無観客とはいえオリンピック、パラリンピックは実施。オリ・パラはOKで、夏の高校野球はNGなどという話になったらまた世論が沸騰状態になるでしょうから今年は実施されると思いますが、開催中止になった去年と今年の日々の感染者数は比べ物にならないくらい増加しているのに実施に向かう、これは進歩なのか慣れなのか微妙なところ。

東京エリアでは子供達の夏休み終盤まで緊急事態宣言実施期間になっており、帰省バイアスもかかっており、子供たちにとっては今年もパッとしない夏休みになりそうで可哀想かな・・・。

飲食店に対する時短・休業要請、酒類供給停止、どうもそこくらいしか具体案見つけられないのかと思いますし、国民全体へのワクチン接種が進めば事態は沈静化していくといった楽観論で済めばいいんですけどね。実際は来年の今頃も日々、新規感染者が数百人確認される日常になっていくような気がします。ウイルスの脅威がもたらすリスクの中で生きていく決心が定まらないのがこの息苦しさの原因のように思いますが、スッキリしない日々が続きます。

8月28日はバイオリンの日だそうです。1880年(明治13年)、東京・深川の三味線職人・松永定次郎が、国産バイオリンの第一号を完成させたのがこの日でそれを記念して制定された日本固有の記念日です。西洋音楽を代表する弦楽器といったイメージが強いヴァイオリン(以降ヴァイオリンで統一)ですがそのオリジンを辿ると中東を中心とするイスラム圏で使われていた擦弦楽器ラハーブに行き着くようです。このラハーブがヨーロッパに伝わりレベックと呼ばれる楽器に変化、このレベックが立てて弾くものと抱えて弾くものに分かれ、立て弾きがチェロ、抱え弾きがヴァイオリンへと進化していったそうです。

世にヴァイオリンが登場したのは16世紀初頭で以降、西洋音楽には欠かせない楽器となり、ロック、特にプログレッシヴ・ロック、フォーク、ジャズ・フュージョンの分野では使用頻度の高い楽器です。

思いつくままにいくつかあげれば、マウロ・パガーニを擁した初期PFM、イタロだとArti+Mestieri、Quella Vecchia Locanda他多数、スペイン、バスク地方のItoiz、ヨーロッパ各国大御所から細かいところまでヴァイオリン入りバンドは多数存在します。

英国系に行くとCurved Air、UK期のエディ・ジョブソン、King Crimsonに在籍したデヴィッド・クロス、ヴィオラになっちゃうけどジェフリー・リチャードソン在籍時のCaravan、High Tide、Hawkwindのサイモン・ハウス(デヴィッド・ボウイのツアーにも参加していましたね)、デイヴ・アルバス率いるEast Of Eden、Gentle Giantも当てはまるし、Doctors Of Madnessもヴァイオリン鳴っていたよね。Familyの2代目ベーシスト、ジョン・ウェイダーも良い感じの演奏をいくつか残しています。Chilli Willi And The Red Hot Peppersの1stには「藁の中の七面鳥」がありますし英国スワンプ系は結構ヴァイオリン(フィドル)含有率高かったりします。

フランスではMagma、ZAOのディディエ・ロックウッド、Transit Expressに在籍していたデヴィッド・ローズ(アメリカ人ですがね)、ジャズ・フュージョン系ながらプログレ・ファンにもお馴染みのジャン・リュック・ポンティなど。

アメリカに行くとIt’s A Beautiful Day、Kansasは外せませんし、Flock、Mhavishnu Orchestra期のジェリー・グッドマン、フランク・ザッパのアルバムにも参加した黒人プレイヤー、ドン“シュガーケイン”ハリス、ハリス同様ジャズ・フュージョン系の黒人ヴァイオリン・プレイヤーだとノエル・ポインターもいましたね。39歳という若さで亡くなってしまいましたが・・・。黒人ヴァイオリン・プレイヤーなら絶対外せないのがパパ・ジョン・クリーチ。ルイ・アームストロングやキャブ・キャロウェイとも共演経験を持つパパ・ジョンは息子・娘ほど年の離れた白人の若者が結成したJefferson Airplane(Jefferson Starship)、そのスピンアウト・バンド、Hot Tunaのメンバーとして活躍しました。また共和党系愛国主義者ギタリスト、チャーリー・ダニエルズはフィドルの名手でもあります。

フォーク系に目を向ければFairport Convention他多くのバンド、セッションに参加したデイヴ・スワブリック、ジョン・ドランズフィールドを筆頭に多くのプレイヤーがいます。


さて、今回はその中からWolf期のダリル・ウェイを取り上げたいと思います。ダリル・ウェイといえばまずCurved Airってことになるわけですが、少し前にEsotericから発売されたリマスター拡張版シリーズに収録されていた当時のライヴ映像を観て思ったのですが、かなり演奏荒っぽい。Curved Airってプログレの括りでとらわれているバンドですが、ほとんどハード・ロックノリの荒いライヴ・パフォーマンスで全体の主導権もダリル・ウェイというよりフランシス・モンクマンに握られているような印象受けちゃうわけです。しかも観客のほとんどの目はソーニャ・クリスティーナに向けられちゃっており、当時、旬だった女性ヴォーカリストとそのバック・バンドみたいになってしまっています。

WolfはCurved Air結成時のアイデアには惹かれ、参加してみたものの、思惑が外れたことに気づいたウェイが当時ジャズの垣根を超えロック・ファンからも高い評価を受けていたジョン・マクラフリンのMhavishnu Orchestraのセールス・ポイントのひとつがジェリー・グッドマンのヴァイオリンだったこと、マイク・ヴァーノンがオランダで見つけてきてクラシックとジャズ・ロックを融合させたかのようなサウンドで注目を集めたいたこと着目して誕生したバンドだったと思います。

招集されたメンバーはまずギターにジャズ・メソッドにも精通しておりジャズ・ロック・バンド、Icarusのメンバーだったジョン・エサリッジ。ドラムにはゴードン・ギルトラップのバック・バンド等で活動し、インスト重視、プログレ系およびジャズ・ロック系のバックを務める上で必要とされるスキルを体得していたイアン・モズレー、ベースには展開の多い曲想にも対応できるテクニックと一般的な認知度を得る上で重要になってくるシングル向けヴォーカル曲に対応可能な歌えるベーシストデク・メセカーの3人。

おそらく72年の終わりにはバンド構想は固まり、Wolfは73年早々にイアン・マクドナルドをプロデューサーに迎えた『Canis Lupus』を発表。4月にはBBC in Concert出演を経て同年後半に2ndアルバム『Saturation Point』、シングル「Five in the Morning b/w Bunch of Fives 」、翌74年に専任ヴォーカリストとして元Ifのジョン・W・ハドキンソンを迎え3rdアルバム「Night music」を発表するも大きな成功を収めることができず解散。74年後半にはCurved Airの再結成に加わることになります。


Wolfが残した3枚のアルバムにはそれぞれ異なる特徴が見られますが、ダリル・ウェイがこのバンドで目指そうとしたサウンドが最も色濃く出た作品が2nd『Saturation Point』だったと思います。1st『Canis Lupus』は最後にふれるとしてまずはこの2ndから見ていきましょう。

プロデューサーはシーン・デイヴィーズ。50年代の終わりからIBCスタジオのハウス・エンジニアとして活躍し、英フォークの重要レーベルTopicの諸作品のエンジニアを手がけた人物で、馴染みのあるところではアン・ブリッグスのTopic盤を手がけています。

サウンドのディレクションというより技術補助寄りのプロデューサーで、実質的にはバンドのセルフ・プロデュースに近かったようです。『Canis Lupus』はLPのA面がヴォーカル曲中心、B面がインスト曲集という作りだったわけですが、本国イギリスのプレスはこぞってヴォーカルおよびヴォーカル曲のインパクトが弱いという論調になり、バンドもそれを気にして評価の高かったインスト面をエンハンスした作風に変化させています。ウェイがWolf結成に際して標榜したMhavishnu OrchestraやFocusに接近したサウンドといって良いかと思います。

オープニングの「The Ache」はヴァイオリン対ギターを強く打ち出したスピード感あふれるアグレッシヴなインスト・ナンバー。定位も工夫されておりイントロ部分はウェイのシンセとリズム・セクションがセンターに位置し、ウェイのヴァイオリン・ソロが左チャンネル、エサリッジのギターが左チャンネルで鳴っているのですが、メイン・パートに入るとウェイのヴァイオリンがセンターに移動し、左チャンネルにはエサリッジのリズム・ギター、右チャンネルにセンターのウェイの細かいパッセージに合わせたギターのメロディ弾きに切り替わります。1stアルバムのレビューでプレスに叩かれたヴォーカル・アルバムとしても、プログレ、ジャズ・ロック作としても弱いという論調を一撃粉砕する強烈なインパクトを秘めたインスト曲となっています。

ウェイのヴァイオリンばかりでなく中間のエサリッジのギター・ソロも強烈でハンマリング・オン、プリング・オフをほぼ排し、一音一音しっかりとピッキングするジャズ寄りの早弾きはアラン・ホールズワース脱退後のSoft Machineに後任として迎えられたのも当然の成り行きだったことが分かるスリリングな仕上がりを見せています。

The Ache

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続く「Two Sisters」はこの2ndでは唯一のヴォーカル曲。『Canis Lupus』収録のヴォーカル曲のどこか牧歌的な作風とは異なり前曲「The Ache」のアグレッシヴさを受け継いだ、タイトなリズム・セクションの土台の上をエッヂの立ったヴァイオリンの細かいリフとギター・リフが交錯するバックトラックに開放感あふれるメロディラインが躍動する入魂のナンバー。

Two Sisters

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展開の激しいオープニング2曲から一転、ジョン・エサリッジ作曲の「Slow Rag」はアコースティック・ギター・ソロをフィーチュアした叙情的なインスト曲で、その作風はMhavishnu Orchestraの1st『The Inner Mounting Flame』に収録された「A Lotus On Irish Streams」や「Dawn」を想起させるものに加え『Canis Lupus』の決定的人気曲「McDonalds Lament」の続編的テイストも備えており印象に残ります。このオープニング3曲の完成度はかなり高く、この時代のプログレ寄りジャズ・ロック・アルバムとしては前半部だけで高水準に達していると思います。

Slow Rag

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続く「Market Overture」はウェイのエレピとエサリッジのフラッシーなソロをフィーチュアしたフュージョン・タッチの前半部から短いドラム・ソロを挟みウェイのノスタルジックなヴァイオリン・ソロへと展開する2部構成のインスト曲。ここまでがオリジナルのアナログではA面に当たります。

Market Overture

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後半B面はエサリッジ作曲のハード・ドライヴィングなインスト曲「Game Of X」でスタート。スキャット・ヴォーカルも取り入れたナンバーとなった背景には曲のタイプこそ違えど、Focusの「Hocus Pocus」のイメージがエサリッジの頭の中にあったのではないかと思ってしまいます。

Game Of X

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続くアルバム・タイトル曲はウェイ作曲ながらフィーチュアされているのはエサリッジとベースのメセカー。これはウェイ側から見たFocusオマージュ楽曲といった印象です。前半と後半に登場するメインのメロディはエサリッジのギターで奏でられていますが明らかにFocus的。クラシカルなイメージの導入部とコーダに挟まれた中間部はファンクのりのリズムが取り入れられ、Wolfの残した全楽曲の中でも異彩を放つナンバーに仕上がっています。

Saturation Point

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ラストの「Toy Symphony」はCurved Air時代のダリル・ウェイのフィーチュア曲「Vivaldi」、「Ultra Vivaldi」の続編的な側面を持ったヴァイオリン主体のインスト曲。現行のリマスター版CDには『Saturation Point』と前後して発売されたシングル「Five in the Morning b/w Bunch of Fives 」と「Two Sister」のシングル・エディットがボーナストラックとして収録されています。アルバム未収録の2曲に関してはウェイ作曲のタイトル曲「Saturation Point」で見せたファンク的なアプローチが特に「Bunch of Fives」では生かされています。

Toy Symphony

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この原稿を書くにあたり聴き直してみてもこの『Saturation Point』かなり楽しめるプログレ/ジャズ・ロック作だったと思うのですが、『Canis Lupus』に続きまたしてもヒット作にはならず、インスト重視で行った方が身のためというプレスの論調に沿った作風に変化させたにも関わらず、今度はインストだらけではヒット作にはなり得ないみたいな論調が主流となりバンドは再びヴォーカル曲重視の方向へ転換を迫られます。デク・メセカーのヴォーカルでは弱いということになり元Ifのジョン・W・ハドキンソンを専任ヴォーカリストに迎え、全7曲中インスト曲はエサリッジ唯一の提供楽曲となった「Flat 2-55」のみ、ウェイ中心に書かれた楽曲はクラシック・テイストを盛り込んだジャズ・ロック的から当時のプログレ市場を強く意識した作風にシフトした3rdアルバム『Night Music』を74年前半に発表します。

プロデュースは前作同様シーン・デイヴィーズ。音作り面では信頼が置けるということでの再起用だったのでしょう。作曲面ではウェイ中心ですがオープニングの「The Envoy」ではメセカー、「Black September」、「Steal The World」ではハドキンソンが共作者として名を連ねています。悪い出来ではないのですが、全体的にどこか納まりが悪い印象を受けてしまう作品です。メセカーのゴリゴリのトーンを生かしたベース・リフからヘヴィに立ち上がる、中間部のギターとヴァイオリンの叙情パートへ展開する「The Envoy」、続くバラード「Black September」あたりの完成度はかなり高いと思うのですが、曲が進んでいくと次第に元々インスト曲だったものに無理やりヴォーカルを乗せたみたいな展開が多くなり、ウェイ、エサリッジともにソロの部分では『Saturation Point』に匹敵する冴えた演奏を聴かせるのですがそれが活かされていないのが難点と言った感じでしょうか。「The Envoy」はこの時代のプログレ楽曲としてもメロディライン、構成面でもかなりポイントの高い楽曲だっただけに残念です。

The Envoy

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結局WolfはこのアルバムでもBuzzを起こすことができずに解散。74年の後半になるとダリル・ウェイはCurved Airの再結成話に乗っかりバンドに復帰します。Wolfは結成から解散まで2年に満たない短命バンドで終わってしまうのですが、やはりこの活動期間の短さ故に最後までサウンドをまとめきれずに終わった印象があります。セールス的に苦戦したこともあり制作費も限られたものであったも要因のひとつにあげられるのでしょうが『Saturation Point』、『Night Music』に見られる練り込まれた前半とプレイヤーの力量で押し切った感が後半の落差は時間的な問題が大きく作用していたのではないでしょうか?


ここで1stアルバム『Canis Lupus』に戻ります。Wolfが成功を掴み損なった原因が時間の制約だとするならCurved Air脱退からメンバー選択を大急ぎで行ってリハーサルも満足に行われない状態でレコーディングに入った事実、完成したアルバムのアートワークだってよく見れば原っぱに寝そべった狼の写真にロゴ配置しただけ、全体的に全3作中最も突貫工事感が強い『Canis Lupus』に何故惹かれるのか。楽曲にしても前半のメセカーのヴォーカルをフィーチュアした4曲の出来は当時のプログレ系バンドの水準を考えても決して高いとは言えないし、評価されたインスト面にしても5曲めの「Cadenza」なんぞよく聴けばソロ回しがそのまま曲になっただけという印象。それでもやはりこの1stが一番輝いているのはやはり「McDonalds Lament」あってこそだったのではないかと。この曲が出来上がった時にメンバー全員がWolfを盲信的に信じたのではないかと思う次第。加えてこのアルバムをプロデュースしたのがイアン・マクドナルドだったことも大きかったのではないでしょうか。King Crimson脱退後にマイケル・ジャイルスと制作したMcDonald & Giles、Wolf同様プロデュースを担当したFruuppの『Modern Masquerades』に流れているどこか浮世離れした空気感がこの作品にも流れているように思うわけです。「McDonalds Lament」はマクドナルドが作り上げた空気の中でこそ決定的な名演になり得たし、『Saturation Point』、『Night Music』収録のヴォーカル曲と比べると素朴としか言えないような楽曲がこの空気の中では輝いて見えるのです。マクドナルドの起用は誰の意思だったのかは別にしても、この起用が「McDonalds Lament」をアルバム『Canis Lupus』を50年の時を経ても輝かせ続けいるように思うのです。

McDonalds Lament

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