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「音楽歳時記」 第七十一回 12月 ブラック・マジック・クリスマス 文・深民淳

コロナ禍のせいもあるのだろうけど、今年は季節の変わり目がよく分からなかったですね。つい先日まで犬のボンゾくんを散歩に連れて行ってその後風呂場で洗うとき冷水シャワーで洗ってあげると「フワ〜、生き返るよ」みたいな顔をしていたのが、10月も終わる頃には「とうちゃん、冷たいよ」みたいな顔をされて、あぁ、もう秋もすぎて冬になっちゃうんだ・・・風呂場で犬を洗うことで季節の移り変わりを知るとは何事なんだろうと思います。

このコラムももう12月なんですが、12月は2年続けたクリスマス・アルバム特集、昨年はネタが少なくやりませんでしたが、今年もパスします。未紹介のストックかなり溜まったのですが、如何せん、半分以上がSOUL系。ここでそれやっても仕方ないように思いますので。

それにしてもMOTOWNは60、70年代クリスマス・アルバム大量生産していたんですね。SOUL系のストックの大半がMOTOWN系だわ。レーベルにクリスマス担当者A&Rがいたんじゃないかと思えるほどです。


まぁ、ネタになるかと思い集めちゃったクリスマス・アルバムがどんな感じであったかと言うと、オリビア・ニュートン・ジョン数種類、バーバラ・ストレイザンド、グレン・キャンベル、マイケル・マクドナルド数種類、ジョニー・キャッシュ数種類、ディーン・マーティン、アニー・レノックス、リトル・スティーヴン、BONNY M、THE MONKEES、THE VENTURES、AIR SUPPLY、BAY CITY ROLLERS、ジョン・デンヴァー&マペッツ(セサミ・ストリートの人形たち)、タミー・ウィネット(C&W系ね)、モーリン・マクガバン(映画「タワーリング・インフェルノ」、70年代の「スーパーマン」の挿入歌歌った人)、B.J.トーマス、THE LETTERMEN、ドリー・パートン数種類、ジョン・プライン、FOURPLAY、マイケル・ボルトン・・・この他にも実は結構好きで集めているサラ・マクラクランも数種類のクリスマス・アルバムがありましたとさ。ということなんですが、これじゃ、最近妙に層が厚くて、案外オーダーのついでに買ってもいいかもなぁ、と思うカケレコの500円以下(ついポチッと押しちゃうのは100円台と300円台に多いのだけど)確定アイテムばかり。流石にこれじゃ無理ということで断念。実際はこれにTEMPTATIONS、FOUR TOPS、JACKSON 5他MOTOWN系、IMPRESSIONSやらジェームズ・ブラウンといったR&B系がさらに加わるのでこの1年で40枚以上増えた訳ですがそれだけのことでありました。

上に書いたクリスマス・アルバムをまとめて袋詰めにしてサンタさんが持ってきてくれてもあんまり嬉しい感じはありません。「チッ、なんだこりゃ」ってことでまとめて買取に出しても新品CD1枚ものがかろうじて買えるくらいの値段にしかならないような気がします。(気がするではなく実際そうだろうね。需要少ないし・・・)何考えているんだよ、サンタなぁ・・・

というわけでサンタ繋がりということで、SANTANA 50thアニヴァーサリー・シリーズです。何も思いつかなかったので強引に繋げてみました。すいません。


ソニー・ミュージックの偉大なるレガシーであります、SQ4ch音源のSACDハイブリッド移植シリーズは既にジェフ・ベック他で確固たる地位を確立していますが、ジェフ・ベックのシリーズ同様17cmシングル・サイズの紙ジャケット仕様で先行して発売された『Lotus』に続きSANTANA 50thアニヴァーサリー・シリーズということで現在、1stアルバム、『Abraxas』が発売されています。SACDハイブリッドなので通常CDプレイヤーでもステレオ再生可能。SACD対応プレイヤーと5.1chサラウンド・スピーカー・システムがあれば、元の4chマスターから移植されたサラウンド・サウンドが再生可能となります。

当時の4chミックスも当然、ステレオ・ミックス・ベースではなく元のマルチトラック・テープから新規で作り上げたものですから、ジェフ・ベック・シリーズ同様、通常のステレオ・ミックスとは異なる音源となっています。

現在発売されている1stアルバム、『Abraxas』の内、1stの4ch盤は当時、国内発売されていなかったそうです。

数年前に出た『Lotus』は旧マスターには未収録だった楽曲が追加されており、音質面でも素晴らしいものでしたが、ステージがあって客席がある環境でレコーディングされたライヴ・アルバムということもあり、バンドの演奏はフロント・スピーカー、センター・スピーカー+サブウーファーに集中しており、サラウンド・スピーカーの方は会場の空気感、観客の完成、演奏のはね返りが中心という感じでしたが、今回の既発2作品はスタジオ・アルバムということもあり、自由な音像設計がなされています。当時コロンビア・レーベルが社を挙げて取り組んだ一大プロジェクトSQ4chのポピュラー・カテゴリーに於けるメイン・コンテンツだったわけですから、4ch音像の優位性をアピールするためにかなりエグい音像になっています。73年のSANTANA日本公演を忠実に再現しようとした『Lotus』とリスニング・ルーム全体に各楽器を配置し直していくスタジオ作の4chミックスとでは制作意図が根本的に異なっていると言っていいでしょう。

ウッドストック・フェスでの衝撃的なライヴから2週間後に発売になった1st『Santana』。今回のSACDハイブリッド仕様盤では、CDプレイヤーで再生できる2ch部分もSACD2chミックスからPCMにダイレクト変換した2020年版リマスターとなっておりよりクリアーな音質になっていますが、4chミックスは更に凄いことになっています。人気といった点では続く『Abraxas』の影に隠れがちですが、エネルギーの放射という点では全SANTANA作品の頂点に立つ作品、原初のパワー炸裂、音楽のジャンルを超え「衝動」という点で捉えるなら、この1stアルバム、ほとんどパンク・ロックです。正直なところ音質面では2chミックスの方がクリアーな再生音で4chミックスの方は若干こもった音質なのですが、この音像体験はかなりの衝撃。

半世紀に渡り聴き込んできた『Santana』が違った表情を見せたという感じでしょうか。添付のライナーノーツにWillie Nagasakiさんが詳しく解説していますが、ミックスも聴き慣れた2chマスターとは明らかに違います。「Evil Ways」はフェイド・アウトせずに完奏するヴァージョンになっていますし、2chミックスではなかったオルガン、ギターのオーヴァーダブ・パートがあるなどチェックすべきポイントがそこかしこに登場し素直に驚き、興奮します。

SANTANAサウンドの特筆すべき点であるパーッカション群も再生空間に余裕があるため、くっきりシャープかつ生き生きとしており、ラテンで一括りにしていたそのサウンドが、そんな単純なものではなく、南米・アフリカ・キューバなど様々なトライバル・リズムの切り返し、またある時はコラージュとなり万華鏡のように変化する先鋭的リズム感覚をデビュー時には確立していたことを再認識させるのです。


10月末には第二弾として『Abraxas』が発売されました。こちらの4chミックスは『Santana』と比べるとかなりクリアーで、前作のヒットもあり明らかに制作費が多くかけられたことが分かります。あまりに有名なアートワークのイメージ影響もあるのでしょうが、シルヴァーの輝きと闇のコントラストいった感の『Santana』に於けるサウンドから大きく飛躍。艶やかなサウンド曼荼羅といった趣のミックスに仕上がっています。

SANTANAを代表する名曲「Black Magic Woman」は4ch空間の特性を十二分に活かした壮絶なサウンドスケープが展開されます。オープニングの「Singing Winds, Crying Beasts」余韻を残しフェイド・アウトしていくのと入れ替わりにグレッグ・ローリーの弾くオルガンの低音部D-E,D-Eの繰り返しがフロント左から鳴り始め、時計まわりに回転していきます。魔術の呪文が回っていくかのような呪詛的なイメージを醸し出し、やがてカルロス・サンタナの馴染み深い官能的なリードのメロディ・ラインが流れてきます。そしてヴォーカル・パートへと展開するわけですが、変貌を遂げるのはその後「Gypsy Queen」の入った瞬間。ギターがリスニング空間を駆け巡る様は2chでは決して体験できない瞬間と言っていいでしょう。

Black Magic Woman

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今回、『Santana』、『Abraxas』の2作品を聴き込んで、強く感じたのが初期SANTANAのダーク・ムードに大きく貢献していたのは、グレッグ・ローリーのオルガンだったんだなぁ、という点。2chミックス以上の存在感を持って演奏の色合いを決定づけていくローリーのオルガンがより堪能できる点もこの4chミックスの聴きどころでしょう。

個人的にその印象を新たにした曲が「Se A Cabo」でした。この曲に於けるホセ・チェピート・アリアスのパーカッションはこれまで以上に新鮮かつ強烈でした。1973年に『Lotus』のツアーを武道館で見たときは本編終わりあたりで演奏された記憶があるのですが、ちょっと気になり手持ちのSANTANAライヴ音源でこの曲が演奏された公演をチェックしてみたのですが、手持ちの音源で最古のものは1970年4月のフィルモア・イースト公演でこの時はオープニング・ナンバーでした。この曲の邦題は「すべては終わりぬ」であることを考えるとちょっと妙な感じですが、その後もオープニングで演奏されますが、70年後には本編最後の演奏曲となり、翌71年には一度セットから外れるのですが、1972年に『Caravanserai』のツアーが始まると再び本編後半に復活を遂げています。どれも強烈なパーカッション・プレイがフィーチュアされておりスタジオ盤同様強烈なエネルギーを放射するナンバーでした。

Se A Cabo

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このSANTANA 50thアニヴァーサリー・シリーズはこの先も続くようなので、期待したいと思います。『Santana III』、『Caravanserai』には既発作品以上の期待感があります。


 
さて、話変わりまして、先月のマーティン・バーチ・コラムでFLEETWOOD MAC作品を取り上げた際、ちらっと書いた『FLEETWOOD MAC 1969-1974』ボックスを購入しましたので、その感想を。おさらいしておきますと、このボックス、1969年作でピーター・グリーン在籍時最後のアルバム『Then Play On』から1974年バッキンガム&ニックスが参加する直前の『Heroes Are Hard To Find』までの7枚のオリジナル・アルバムに初のオフィシャル・リリースながらブートレグLP、CDで何度も発売された1974年12月15日ソーサリート、レコード・プラントに於けるスタジオ・ライヴを加えた8枚組。レコ・プラ・ライヴ以外は紙ジャケット、SHM-CD仕様で2013年で国内発売されており、輸入盤としてはアルバム5枚をペーパースリーヴに収め箱売りしているORIGINAL ALBUM SERIESが現在でも新品購入可能という状況ながら、73年の『Penguin』と『Heroes Are Hard To Find』は未収録でした。

国内盤紙ジャケットは現在では入手困難でamazonとかだと中古でかなり不愉快な値付けがなされている状況ですし、 ALBUM SERIESは値段手頃ながら、チープさが気になるところ。

というわけで今回のボックス、まぁ、いいタイミングでの再発だったかと思います。ただの再発ではなく、2003年ミックスを流用した『Then Play On』以外の6作品とレコ・プラ・ライヴは2020年リミックス・ヴァージョンとなり『Penguin』以外のオリジナル6作品にはボートラも追加という点も売りになっています。

まず、ボックス仕様ですが、ここ数年多く発売されている、作品全集ボックスに準じたもので、かぶせ蓋式のボックスにオリジナル・アナログ仕様に準じ、見開きジャケットのものは見開きで再現されています。各ジャケットは日本製の紙ジャケットには遠く及ばない簡易的なつくりですが、それほど悪くはないです。

日本盤紙ジャケット・シリーズとの大きな違いは日本盤がUSオリジナルをベースに紙ジャケット化したのに対し、このボックスは英盤仕様。『Kiln House』に付いていた見開きインサート、『Mystery To Me』付属の歌詞カードも再現されています。最大の違いは日本盤紙ジャケットの『Future Games』が米盤仕様だったため薄いグリーン・バックのジャケットだったのに対し今回のボックスは英盤初期プレスの黄みがかったクリーム色バックのジャケット仕様になっている点。後期プレスとの違いは面裏の写真に太めの白枠があるかないかという小さな違いです。バックの色も白っぽいため判りにくく実際手に取って見ないと判らないんですけどね。


 

さて、音質面ですが、2020リミックスは2013年版国内盤紙ジャケットに使用されたマスターと比べるとどの作品もくすみ•こもりは減少。ミッドレンジが締まった音に変化、分離も改善傾向。ジョン・マクビーのベース・ラインの輪郭がよりくっきり浮き立ち、ミック・フリートウッドのスネアや金物の音質にも変化が見られます。ただ、2020リマスター全体、際立って優れた結果だったのかと問われると微妙。(個人の感想としては)即、買い替え推奨ってところまでは行っていないように思います。

個人的な印象としては2020リマスターは全体的傾向として若干大人しめでサウンドは総じて2013国内盤の方が主張が強い印象をうけます。

比べてみると判るのですが2013国内盤ってどの作品もサウンド全体僅かに歪んでおり、ギターが強めの曲が多い『Bare Trees』、『Mystery To Me』あたりはその傾向が顕著でしたが、2020リマスター版ではどちらもすっきりとしたサウンドになっています。このすっきり傾向効果が最も発揮されたのが『Future Games』。アルバム全体ミスティな雰囲気の曲が多い作品で旧マスターのこもり具合がいい感じでマッチしていたように思うのですが、かなり霧が晴れた印象のサウンドに変化。受ける印象が異なります。ギターの鳴りは旧マスターの方が強い印象なんですが、2020リマスター版はその分芯が立ったサウンドになっており、旧マスターでは気が付かなかったダニー・カーワン&ボブ・ウェルチの掛け合いの妙とか、旧マスターでは後ろに引っ込んでいたものが、目立つようになっている点は新鮮でした。『Mystery To Me』や『Penguin』も同傾向にあります。


最後にボーナス・トラックに関してですが、これはいい感じですね。欲を言えばキリがありませんが、ツボは押さえていると思います。

まず、『Kiln House』は4曲。「Dragonfly」と「Purple Dancer」はアルバム未収録のシングルのA、B面。「Jewel Eyed Judy (Single Edit) 」と「Station Man」もシングルA、B面曲。「Station Man」はアルバム・ヴァージョンのゆっくりとフェイド・インする部分をカットしていきなり歌から入るエディット。(この曲4分に縮めたシングル・エディットも存在しますがそれは未収録)

Dragonfly

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『Future Games』には5曲追加。「Sands Of Time」のシングル・エディット、アルバム未収録のアコースティック・ナンバー「Stone」の他「Sometimes」、「Lay It All Down」、「Show Me A Smile」のオルタネート・ヴァージョン。「Lay It All Down」はギター・リフにエレピが絡みつくR&B度アップ・ヴァージョンになっているのが印象的でした。

Sometimes

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『Bare Trees』は3曲。3人ギタリスト時代のジャムを想起させる展開から如何にもダニー・カーワンといった感じのヴォーカル曲へ展開するアウトテイク「Trinity (Mono)」。「Sentimental Lady」は3分に縮めたシングル・エディット。そして残る1曲が「Homeward Bound」のライヴ・ヴァージョンなのですが、これが良い! ブートやラジオ音源で残された同曲のライヴはスタジオ・ヴァージョンに近いカウベル絡めたドラムから始まるものが多いのですが、これ、ギター・ジャムからそのまま「Homeward Bound」に突入して曲中にもかなり熱いギター・ソロを盛り込んだレア・タイプ。音質はイマイチですが演奏はかなり良いです!

『Mystery To Me』以降はボートラも減り、『Mystery To Me』にはYARDBIRDSの「For Your Love」のカヴァーのプロモ・エディットとアルバム未収録でボブ・ウェルチ版「The Green Manalishi」といったダークな雰囲気を持った「Good Things (Comes To Those Who Wait)」の2曲。『Penguin』は追加なし。『Heroes Are Hard To Find』にはシングル・カットされたタイトル曲の50秒短いシングル・エディットが追加されています。

そしてボーナス・ディスクの『Live From The Record Plant: December 15, 1974』。古くはアナログ・ブート『Will The Real Fleetwood Mac Please Stand Up』時代から何度もLP、CD化されてきた有名なラジオ・ショウ音源です。ほぼ全編収録。ブートCDでは「Sentimental Lady」でボブ・ウェルチが歌を外してやり直す部分が収録されているものあったのですが、ここではそこはカット。しかしながら音質面ではかなり聴きやすくなっています。

以上、先月からの続きでした。


次は先月の原稿書いている時点から気になっていたTRAPEZEのグレン・ヒューズ在籍時にスレッショルド・レーベルから発表した3作品のエクスパンデッド・エディション。海外では9月に発売されたばかりですので、カケレコでもマーキーさんが輸入盤に解説・帯をプラスした日本アセンブル盤、輸入盤の両方が新品CDのページにリストアップされています。

5人編成時代、フォークがかったプログレ・サウンドとヒューズのヴォーカルを活かしたR&Bテイストのロック・トラックが同居する1st(このパッケージのみ2枚組)も同時発売になっていますがここではトリオ編成になってからの2nd、3rdを取り上げます。どちらもラジオ用のモノ・ミックスを含むシングル・エディット、数種類のライヴをどっちゃり詰め込んだ3枚組パッケージ。スレッショルド時代のTRAPEZE作品はLEMONレーベル、ユニバーサル・ミュージックからの紙ジャケット仕様他数種ありますが、LEMONものは兎も角、紙ジャケット仕様はプレミア盤になってしまっていますので、今回のシリーズはちょっと重たい値段ではありますが、プレミアの付いた紙ジャケットを中古で買うことを考えたらOKかなと思います。

今回のエクスパンデッド・エディションのオリジナル・アルバム部分の音質ですが、LEMON盤は未聴なので分かりませんが、ユニバーサル紙ジャケット・シリーズとほぼ同等の音質。ユニバ盤はオリジナルのアナログと比べるとサウンド全体をタイトに締めちゃった印象がありましたが、今回のエクスパンド盤もほぼ同等の傾向にあります。

『Medusa』に関して言えば、ユニバ盤より気持ち音量低めなっていますが、締まり具合が若干ゆるく、ほんの少し圧倒的存在感を持つ、英スレッショルド・オリジナル・アナログ盤の質感に近づいたように思います。FREEの2ndと並び決して抜けが良いサウンドではないのですが、弦ドラムヘッドの振動がリアルに目が浮かぶ臨場感あふれるオリジナルのアナログ・サウンドを想起させるマスタリングという印象を受けました。ま、旧発売音源と比べ遜色ないサウンドを確保していますので、これを機会にTRAPEZE聴いてみようと思う方にも納得していただける仕上がりかと思います。


今回のエクスパンド盤を僕が高く評価する点は、新規で追加されたライヴ音源大量投入されたそれぞれのパッケージのCD2、3にあります。ラジオ・ショウ音源が次々とCD化され、こうしたエクスパンド盤シリーズもライヴ音源追加というのは定番の施作となっており、そろそろこういうスタイルも飽きられてきているようにも思いますが、グレン・ヒューズ在籍のオリジナル・トリオ編成時のライヴ音源というのは実はこれまであまり公開されておらず、貴重ですし、『Medusa』、『You Are The Music~』に収録されたライヴ音源を通して聴いていくと、ハード・ロック方面に振り切ったFREE 2ndアルバムといった印象の『Medusa』からよりスポンテニアスでラフな16ビートもこなす当時のイギリスとしては稀有なファンキー・ハード・ロック路線を確立した『You Are The Music~』へ発展していく過程がはっきりと分かる内容になっているのです。

ライヴの音質面ははっきり書いておきますが、決して褒められたものではありません。しかしながら『You Are The Music~』収録の1973年BBC In Concert – Off Air Recording(Off Air)ってどういう意味なのでしょうね?この音源のみゴミ・レベル)以外は恐らくサウンドボード直のカセット録音音源なのでしょう、耐えられないくらい酷いものはなく、最低限、鑑賞に耐えうる音質は確保されています。

少し具体的に書いておくと、『Medusa』のCD2に収録された1971年3月ニューヨーク、コルデン・ホールのライヴの時点では、アルバム収録曲をそつなく演奏するのが精一杯。余裕が感じられず、自分たちで作った曲に縛られている印象が強いライヴだったのが、CD3収録の1971(日時と会場表記なし)になるとグルーヴを自在にコントロールできるようになり、『You Are The Music~』のCD2、3に収録されたダラス、ヒューストンのライヴになると『Medusa』収録曲も見違えるほど生き生きとしたアレンジ、演奏に進化していくのです。1972年ライヴの方では『You Are The Music~』収録曲も演奏されていますがMCを聞く限り、『You Are The Music~』は年明けに発売になると言っているので、このライヴ1972年の終わり頃のもののようです。単に発掘されたライヴを収録したのではなく、バンドの進化が手に取るように分かる作りになっている点は大変好感が持てます。

僕は輸入盤で購入しましたが、メンバー、関係者の証言をふんだんに盛り込んだマルコム・ドームのオリジナル英文ライナーも読み応えがあり、日本アセンブル盤のほうにはこの英文ライナー訳もついているようなので、値段は多少張りますが日本アセンブル盤を推奨したいと思います。TRAPEZEというバンドを知る上では音源の内容、ライナーともに第1級の資料となるパッケージ。このバンドに興味がある方には強くお薦めしたいと思います。僕はこのパッケージに収録されたライヴ音源に現在かなりハマっております。

Way Back To The Bone (Live in Houston 1972)

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  • TRAPEZE / TRAPEZE

    若きグレン・ヒューズが在籍したグループ、豊かな幻想性に彩られたブリティッシュ・ロックの名盤、70年作

    後にDEEP PURPLEで活躍するGlenn Hughesの在籍で知られるグループ。MOODY BLUESのJohn Lodgeのプロデュースで70年にTHRESHOLDレーベルからリリースされたデビュー作。MOODY BLUES、KALEIDOSCOPEなどに共通するサイケデリックでプログレッシヴなパートを軸に、LED ZEPPELINなどハード・ロックのエッセンスをブレンドしたダイナミックな展開が聴き所。幅広い楽曲を自在に歌い上げるGlenn Hughesのハイ・トーン・ヴォーカルは見事。2nd以降はハード・ロック色を強めますが、本作では、陰影に富んだ雰囲気と叙情性が滲むいかにも英国的なアンサンブルが堪能できます。ブリティッシュ・ロックの名盤。

  • TRAPEZE / YOU ARE THE MUSIC…WE’RE JUST THE BAND

    若きグレン・ヒューズ在籍グループ、トリオらしいスピード感と切れ味+トリオとは思えない音圧と強靭なグルーヴ=最強!72年作!

    後にDEEP PURPLEで活躍するGlenn Hughesの在籍で知られるハード・ロック・トリオ。72年作の3rd。このトリオのグルーヴと音圧はちょっと他では味わえません。タイト&グルーヴィーな強靭なリズム隊、後にWHITESNAKEでも活躍するMel Galleyの切れ味鋭く図太いギター、そして圧巻はGlenn Hughesのソウルフルなシャウト・ヴォーカル。特筆すべきはトリオとしてのまとまりで、雪崩のようにソリッドに襲いかかる部分と、ピタッと止まる「間」の部分との緩急が激しく、レッド・ゾーンと無音との間を猛烈な勢いで行き交います。圧倒的なダイナミズム。脳天を音がブチ破るような快感。ストレート&ソリッドなハード・ロックのファンは必聴の名作!

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