2020年10月29日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
ZEUHL(ズール)系と称される、フレンチ・プログレの怪物バンドMAGMAのサウンドを受け継ぐフォロワー・バンド達を特集いたしましょう。
ZEUHLとは、MAGMAのChristian Vanderが編み出した架空の原語コバイア語で「天の」という意味。
MAGMA直系の凶暴にして荘厳、エキセントリックでアクの強い作品たちをどうぞお楽しみください。
まずは本家のデビュー作からまいりましょう。
1970年の記念すべきデビュー作。
3rd以降の壮大かつ強迫的なサウンドがあまりに強烈なため、初期は地味な扱いですが、単体で考えれば、間違いなくユーロ・ロック屈指の大傑作!
あらためて聴くと、本当凄まじすぎ・・・。
MAGMAの代表作であり、ユーロ・ロック屈指の傑作として人気な75年発表の究極のライヴ・アルバム。
肉感的に迫る名演はスタジオ盤の音圧をはるかに凌ぐ凄まじいもの!
ハマタイ!
MAGMAの傑作ライヴで最高にスリリングなプレイを聴かせていたVln奏者ディディエ・ロックウッド参加の4作目。
セファーのエネルギッシュなサックスに鋭く絡んでいくエレキ・ヴァイオリンがカッコいい!
この強度、BRAND XやAREAなどにも匹敵しますね。
MAGMAに影響を受けたZEUHL系作品の中でも屈指の傑作と名高い作品がこちら。
ストラヴィンスキーなど近現代クラシック的エッセンスも散りばめた、MAGMAにも負けない精神性と音楽的野心が見事だなあ。
MAGMA~ZAOで活躍した名ピアニストによる78年作ソロ。
コピーをつけるなら、「MAGMAとWEATHER REPORTを掛け合わせると?」
MAGMAのピアニストとウェザーのベース、ミロスラヴ・ヴィトウスとの競演盤がもう圧倒的な完成度なのです。
MAGMAのメンバーだったベルナルド・パガノッティとパトリック・ゴーティエが結成したグループ、78年唯一作。
内容は、MAGMAの熱気にSOFT MACHINEのミニマルなクールネスをブレンドした感じ!?
ZEUHL系の中でもストレートなジャズ・ロックがバランス良く融合しており、耳に馴染みやすい作品となっています。
そんなWEIDORJEで活動したフランスの鍵盤奏者による80年ソロ作。
MAGMA~WEIDORJEのベルナルド・パガノッティ、TRANSIT EXPRESSのデヴィッド・ローズ、HELDONのリシャール・ピナス等、フレンチ・ロックの雄たちが大挙して制作されたスリリングなジャズ・ロック名品。
ZEUHL周辺の膨大な作品群を代表すると言っても過言ではない一枚。
83年に結成されながら、アルバムをリリースせずに終わった幻のグループ。
結成前後にカセットのみでリリースされた音源なんですが、怪奇度/恐怖度に関しては、マグマもユニヴェル・ゼロも凌駕!!!
こ、これ、本当に自主制作!?
アンサンブルの強度は、ヘンリー・カウやマグマやユニヴェル・ゼロに比肩。
テンションみなぎるジャズ・ロックを軸に、フルートやマリンバが駆け巡るチェンバー・ロックなパートを配してとめどなく聴き手に襲いかかる傑作!
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自主制作ながらヘンリー・カウやマグマにも比肩するテンションみなぎる暗黒チェンバー・ロックを聴かせるDUNの81年唯一作『Eros』をピックアップ。
フランスのジャズ・ロック・バンドによる79年唯一作。
他のZEUHL系に見られる凶暴性はあまり感じさせず、ある種ドリーミーとすら言えそうな儚さのあるアンサンブルが特徴。
CARPE DIEMなどのフレンチ・プログレ・ファンにも是非聴いていただきたい一作です。
ここからはトンがった新鋭を連発!
90年代以降のMAGMAで活躍したベーシストPhilippe BussonnetがMAGMA加入前に組んでいたグループ。
MAGMAフォロワーのなかでも屈指の強度とヘヴィネスと言える、超攻撃型トリオ・ジャズ・ロックを展開!
仏新鋭グループの2013年作なんですが、マグマをはじめ、ソフト・マシーンやハットフィールドやナショナル・ヘルスなどカンタベリーのファン、『レッド』期キング・クリムゾンのファンは必聴と言えるグループ。
これは恐るべきデビュー作です。
MAGMA/ZEUHLサウンド影響下のフランスのマルチ・ミュージシャンFrancois Thollotによるグループ、12年作2nd。
初期ヘンリー・カウに『レッド』期クリムゾンの暗黒ヘヴィネスを注入したらって感じ!?こちらもマグマ、クリムゾン、カンタベリー・ファンは必聴の逸品です!
深遠な女性ヴォーカルとほの暗く静謐なアンサンブルが印象的なZEUHL系グループ、07年デビュー作。
緩やかに展開する物語に添うように、徐々にダイナミックに、徐々に肉感的に変容していくアンサンブルは圧巻!
そんなSETNAのKey奏者、ベース、ドラムの3人による別働ジャズ・ロック・バンドがこちら。
いかにもチェンバー・ロック的と言える強靭なリズム・セクションと、シンフォニックと言えるキーボードとの鮮烈なコラボが持ち味!
執拗な反復フレーズで聴く者を追い詰めるかのような展開、そしてチャントやシャウトが飛び交う狂乱のヴォーカル・パフォーマンス。
これぞマグマ直系と言える要素を備えた凄まじいサウンドです。なんとテキサスから登場したバンドによる16年作!
フランスの新鋭、27分/23分/8分という大作2曲を含む構成の18年作2nd。
シャープな中にスリルを孕んだリズム隊、反復フレーズで緊張を保つエレピ、生々しいトーンで唸るシンセ、随所で牙をむくギター&サックス、そして不穏な女性スキャット…。
「ZEUHL」の系譜を正統に受け継ぐ暗黒ジャズ・ロックは痺れるカッコ良さ!
強烈な変拍子の中をヘヴィ&テクニカルに突き進むアンサンブル、狂気的に絶叫し熱唱する男性ヴォーカル!
MAGMA別動隊ONE SHOTのドラマー率いるバンドの19年作2ndなのですが、MAGMA好きは満足間違いなし!
ロバート・ワイアットや英ポップに影響を受けているそうですが、流石はフランスのバンド。
この滲み出る「暗黒感」はまぎれもなくZEUHL系と言って良いでしょう…!
二人の女性スキャット歌手を擁する個性派新鋭、20年デビュー作!
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マグマに魅せられたZEUHL(ズール)系の新旧作品をリリースするフランスのSOLEIL ZEHULレーベルのカタログから注目の作品をピックアップ。
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目前に迫ったMAGMA来日を記念して、メンバー参加作品やMAGMA影響下のサウンドを鳴らすグループたちをご紹介します!
MAGMAのメンバーであったYochk’o SefferとFrancois Cahenが73年に結成したジャズ・ロックグループの76年4th。前作でバンドとしての個性を手に入れることに成功した彼らですが、本作では超絶ヴァイオリニストDedier Lockwoodが参加し、Yochk’o Sefferとの凄まじいインタープレイを聴かせています。楽曲自体も前作の構築性は影を潜めており、よりメンバーの力量に頼った即興色とソロパート押し出しており、彼らの超絶技巧を余すところなく収録したテクニカル・ジャズ・ロック最高峰の1枚と言えるでしょう。
80年代にはJaco Pastoriusとも活動した仏の名ドラマー&コンポーザー、80年の1stでZEUHL系の名作として人気が高い一枚。執拗に上下動の反復を繰り返すベース、ハードかつふくよかなトーンのジャジーなドラムによる鉄壁のリズム隊を土台に、ブラス・セクションが豪快に鳴り、女性コーラス隊が中世的/暗黒的な世界を描くサウンドは初期マグマ直系でいかにもZEUHL。ストリングスやフルートなど管楽器やヴィヴラフォンなどによるストラヴィンスキーをはじめとする近現代クラシック的なエッセンスも散りばめたアンサンブルは、「ジャズ・ロック」の枠にはおさまらないスケールの大きさが特筆です。マグマにも負けない精神性と音楽的野心を持った傑作。
ジャケットがケースに挟まった状態のため、値引きセール品になります。
WEIDORJEで活動したフランスの鍵盤奏者。本作は、MAGMA〜WEIDORJEのベルナルド・パガノッティ、TRANSIT EXPRESSのデヴィッド・ローズ、HELDONのリシャール・ピナス等、フレンチ・ロックの雄たちが大挙して制作された、80年ソロ作。パガノッティのベースを軸に展開するスリリングなジャズ・ロック、無機質なシークエンスとヴァイオリンが交錯する映像喚起的な現代音楽/ミニマル曲、インダストリアル〜ノイバウテンな香りすら漂うアヴァンギャルドなチェンバー・ロックまで、ゲスト陣の顔触れから否が応にも抱いてしまう大きな期待を裏切らない佳曲揃い。アヴァンギャルドでジャジーなフレンチ・ロック〜MAGMA〜ZEUHL周辺の多大な作品群を代表する一枚。名作です。
MAGMA〜ZAOで活躍した名ピアニストによる78年作ソロ。参加メンバーが豪華で、WEATHER REPORTのベーシストMiroslav Vitous、MILES DAVIS GROUPで活躍したドラマーJack Dejohnetteなどが参加。緻密かつスリリングな楽曲、弦楽器が彩るメランコリックな楽曲ともに圧倒的な完成度。仏ジャズ・ロックの名作。
MAGMAのメンバーであったBernard PaganottiとPatrick Gauthierが結成した、MAGMAの76年作である「UDU WUDU」収録曲をバンド名に冠したZeuhl系の個性派ジャズ・ロックグループ、78年唯一作。その内容はMAGMAのサウンドを独自に再構築した、まさに直系のサウンドとなっており、即興も巧みに取り入れながらBernard Paganottiの偏執的なベースとPatrick Gauthierのミニマルな反復が圧迫感を持って迫ってくる名盤です。もっともMAGMAほどエキセントリックな構成ではなく、MAGMAのサウンドとストレートなジャズ・ロックの融合を図っており、充分個性的ながらもMAGMA系の中では比較的耳に馴染みやすい作品となっています。
西フランスのナント出身、フルート奏者、パーカッション奏者を含む6人編成のチェンバー・ロック/ジャズ・ロック・グループ。81年に自主制作された唯一作。マハヴィシュヌ・オーケストラ、フランク・ザッパ、マグマ、ヘンリー・カウから影響を受けたようで、テンションみなぎる緻密かつ狂暴なサウンドが持ち味。一時、ETRON FOU LELOUBLANのメンバーと交流を持ち、彼らが所属するR.I.O.への参加も打診されたようです。アルバムの録音は、UNIVERS ZEROが傑作『HERESIE』と『CEUX DU DEHORS』を録音したスイスのスタジオ。これほどのテクニックを持つグループながらレーベルを探すことはせず、自費プレスでわずか1000枚のみ、ほぼライヴ後の手売りのみでさばかれたようです。サウンドは、自主制作の中でも屈指のクオリティ。変拍子というか、唐突にストップ&ゴーを繰り返しながらリズムを解体し、いびつな拍子で予測不能に畳みかけるドラム、低域で強靱にうねるベース、硬質なタッチのピアノ、エッジの立ったトーンでエキセントリックなフレーズをアグレッシヴに弾き倒すギターによるテンションみなぎるパートを軸に、フルートとマリンバが細かい拍子の中を鋭角に駆け巡る暗黒チェンバー・ロックなパートを配して、とめどなく聴き手に襲いかかるサウンドが持ち味です。そのアンサンブルの強度は、ヘンリー・カウやマグマに比肩。ヘンリー・カウやユニヴェル・ゼロやマグマのファンは間違いなく気に入るでしょう。傑作です。
現行MAGMA/ONE SHOTのベーシストがMAGMA参加前に組んでいたジャズ・ロック・トリオ。96年録音/08年発表作。空間を切り裂くエッジの立ったソリッドなリフ、MAGMAが放っておくはずもないZEUHL直系のメロディアスな重低ベース、タイトかつダイナミックなドラムが濃密に絡み合う超攻撃型ジャズ・ロック!SOLEIL ZEUHLレーベル内でも、屈指の強度とヘヴィネスを誇るグループ。
83年結成、フランスのチェンバー・ロック・グループ。本作は、結成前後にカセットのみでリリースされたデモ音源のCD化。重厚で暗黒なドラム&ベース、コバイア調の女性コーラス、悲痛に泣き叫ぶような室内楽器、実際の泣き叫び声、そして突如として牙を剥くメタリックでノイジーなフリップ系のギター、凶暴に豹変するアコースティック・ピアノ!重厚で暗澹たるリズム隊を土台に展開される、いわゆるZEUHL系のチェンバー・ロックのなかでも、サウンド全体が塊となって放つ「強度」という意味では、群を抜いている印象を受けます。怪奇度、恐怖度というベクトルでは、もはやMAGMAやUNIVERS ZEROを凌駕。
復活したOFFERINGのメンバーとしても名を連ねるドラマーPhilippe Gleizes率いる新鋭アヴァン/ジャズ・ロック・グループ。2013年デビュー作。幻想的に広がるフェンダー・ローズ、そして、手数多くフリー・フォームなリズムを刻むドラムによる静謐なオープニング。そこから、ロバート・フリップやフィル・ミラーを彷彿させる浮遊感とテンションいっぱいのギターが入り、ドラムが静かに暴走をはじめ、ギター、キーボードが左右にちりばめられながら、カンタベリーにも通じる流麗なサウンドを描く。ギアを一段あげ、ギターとベースがクリムゾン『レッド』ばりにヘヴィにうねると、クリムゾンやマグマのDNAを継ぐ暗黒プログレへと突入。ソフツのマイク・ラトリッジばりのクールなエレピも入ってきて、オープニングから凄まじい10分間を展開。ソフト・マシーンやハットフィールドやナショナル・ヘルスなどカンタベリーのファン、『レッド』期キング・クリムゾンやマグマのファンは必聴と言えるグループ。これは恐るべきデビュー作です。
フランスのZEUHL系ジャズロックバンド。79年唯一作「Stoyz Vi Dozeveloy」にボーナスを追加してのCD化。元々はKing Crimsonなどに影響されたプログレスタイルをとって活動しながらも徐々にMAGMAに代表されるZEUHL系ジャズロックサウンドを確立していったグループであり、特にリズム隊のプレイなどでMAGMAからの影響を伺わせますが、他のZEUHL系プログレバンドに見られる肉感的な音作りや凶暴性はあまり感じさせず、むしろ耽美な儚さを残した透き通ったジャズロック作品というイメージが強いユニークな音楽性。バンドの基本セクションは硬めな音作りをしているものの、ある種ドリーミーとすら言えるような夢想的な音色を聴かせるサックス/クラリネット奏者を擁していると言う共通点もあってか、同郷Carpe Diemあたりに似た雰囲気を持っています。テクニカルに攻めながらも、トータルでは非常にフランスらしい冷めた雰囲気があるのが個性的な作品であり、好みの分かれるZEUHL系バンドの中でも比較的聴きやすい音楽性の1枚です。
テキサス出身、現在はLAを拠点に活動する、女性ヴァイオリン奏者/Vo、サックス奏者を含む5人組。前12年作に続く16年作3rd。基本的なサウンドは前作を引き継ぐ、MAGMA及びその周辺人脈による所謂ZEUHL系バンドからの影響を受けたジャズ・ロック。猛烈な手数で荒れ狂うドラミングとベースによるバカテク変拍子リズムセクションの上を、鈍い光沢を放つ重厚な切れ味のサックスと不穏さを煽るような緊張感たっぷりのヴァイオリンがスリリングなフレーズの応酬を繰り広げるアンサンブル。執拗に反復フレーズを繰り返しジリジリと聴き手を追い詰めていくような展開。そして何語か不明な妖しすぎるチャントや強烈なシャウトを交えた狂乱のヴォーカル・パフォーマンス。まさにMAGMA直系と呼んで差し支えない要素が揃った凄まじいサウンドです。MAGMA好きであれば「これを待ってた!」と声をだすこと間違い無しの逸品!
フランスのジャズ・ロック新鋭、27分/23分/8分という大作2曲を含む構成の18年作2nd。シャープさの中にスリルを孕んだドラム、テクニカルに躍動するベース、反復フレーズで緊張を持続するエレピ、生々しいトーンで唸るシンセ、随所で暴れる歪んだギター&アヴァンギャルドなサックス、そして不穏な旋律を歌う女性スキャット…。MAGMAを受け継ぐ「ZEUHL」の系譜を色濃く反映した暗黒ジャズ・ロックは呆れるほどのカッコ良さ!と思っていると、不意に幻想的でどこか寂しげな「静」のパートへと切り替わり、滲むようなトーンのエレピと虚空に響く女性スキャットが印象的な美しい演奏が広がります。この振れ幅はただ事ではありません。MAGMAやZAOを筆頭とするフレンチ・ジャズ・ロックがお好きならこれは必聴の出来栄え。痺れる傑作です。
MAGMAの別働インスト・ジャズ・ロック・カルテットONE SHOTのドラマーDaniel Jeand’heurがONE SHOT脱退後に結成したグループの19年作2nd。各4つの小曲を含んだ3つの組曲からなり、複雑な変拍子の中をテクニカル&アグレッシヴに疾走する強靭なバンド・アンサンブルはMAGMAさながら。ハイテンションに畳みかけるドラム、捻じくれたフレーズをゴリゴリと強靭に刻んでいくベース&ギター。時に喉から絞り出すように絶叫し、時に切羽詰まったように早口でまくしたてる男性Vo.の狂気的な熱唱も強烈…!MAGMA好きは要チェックの逸品!
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