2020年6月5日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
タグ: ハード・ロック
ギター・リフがとにかく好きなスタッフ増田が、皆様に是非聴いていただきたいリフをご紹介していく「このリフを聴け!」。拙いコラムではありますが、どうぞお付き合いいただければ幸いです!
ロックを愛する皆様であれば、必ず一人は敬愛するギタリストがいるはず。
「世界三大ギタリスト」と言われるジミー・ペイジ、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック。「ギターの神様」ジミ・ヘンドリックス。ハード・ロック・ファンならリッチー・ブラックモアやゲイリー・ムーアがギター・ヒーローだという方も多いでしょう。
(ちなみに存じ上げなかったのですが、「現代の世界三大ギタリスト」はジョン・メイヤー、デレク・トラックス、ジョン・フルシアンテの三人だとか)
人の心を掴むエモーショナルなプレイや、類稀なる速弾きテクニック。様々な名ギタリストがロック界に君臨するように、「ギタリストのどこに魅力を感じるか」も人それぞれ。
私はもちろん「格好良いリフを弾くギタリスト」が何より大好物。本日紹介するTHREE MAN ARMYのエイドリアン・ガーヴィッツもそんな大好きなギタリストの一人です。
エイドリアン・ガーヴィッツは1949年、ロンドン北東部のストーク・ニューイントン生まれ。父がクリフ・リチャードやシャドウズ、キンクスのツアー・マネージャーを務めるロック畑の人間だったことから、2歳上の兄ポールと共に幼い時からロックに親しみ育ちます。
8歳でギターを始めたエイドリアンは、15歳の時にはすでにプロとしての活動を開始。そんな彼が最初にその名を轟かせたのが、18歳の時に彼の兄と結成したトリオ・バンド、GUNでした。
彼のハード・ロック・ミュージシャンとしての類稀なる才覚は、このGUNの68年デビュー作『GUN(悪魔天国)』にして既に明確に表れています。
シングル・カットされ英国チャートTOP10にも入った彼のナンバー「Race With The Devil」は、LED ZEPPELINデビュー前夜にしてブリティッシュ・ハード・ロックの誕生を高らかに宣言した歴史に残る名曲。
ヘヴィで荘厳なサウンド・メイクもさることながら、パワフルかつスピード感たっぷりに切り込むギター・リフの存在感と言ったら…。もし『1968年のギター・リフTOP3』を決めるとするなら、CREAMの「Sunshine Of Your Love」やSTEPPENWOLFの「Born To Be Wild」と並べてこの曲を挙げたいくらいの完成度です(ジミヘンの「Voodoo Child」も捨てがたいですが…)。ちなみに本作はかのロジャー・ディーンが最初にジャケットを手がけた作品としても有名ですね。
GUNは翌年に2nd『GUNSIGHT』を発表。こちらも「元祖NWOBHM」なヘヴィ・チューン「Dreams And Screams」など名曲多数のハード・ロック・ファン必聴作ですが、1stほどのヒットは飛ばせず。メンバーの脱退もあり、本作の翌年にGUNは解散してしまいます。(ちなみに2ndはヒプノシスがジャケットを担当!)
GUNの後もエイドリアン(Gt/Vo)&ポール(Ba/Vo)のガーヴィッツ兄弟はタッグを組み、元SPOOKY TOOTHのマイク・ケリーやMAY BLITZのトニー・ニューマンをドラムに迎えたTHREE MAN ARMY、そしてかのジンジャー・ベイカー擁するBAKER GURVITZ ARMYなどのハード・ロック・トリオで活動。英ロック界に数々の名作を残したガーヴィッツ兄弟ですが、今回はTHREE MAN ARMYの71年作1st『A THIRD OF A LIFETIME』からのナンバーをピックアップいたしましょう。
格好良いリフを弾く上で重要なのは、『印象に残るフレーズ×それを出力するギター・サウンドの掛け算』である……というのが私の持論なのですが、エイドリアンはその二つのバランスがとても優れたギタリストだと思います。なんというかこう、真っ直ぐにガツンと来るんです。浮ついた音ではなく、エネルギッシュでソリッドで、特に飾り気はないけれど硬派で太くてヘヴィ。ソウルフルなハイ・トーン・ヴォーカルも含めて、「ブリティッシュ・ハード・ロックとはかくあるべき」という見本かつ理想形のようなサウンドを作るミュージシャンだと、少なくとも私はそう考えています。
彼らの存在がハード・ロック・ファン以外にあまり知られていないのは、もしかすると多少「優等生」すぎるのが原因かもしれません。少し斜に構えていたり挑発的なところがないと、曲者揃いのハード・ロック群雄割拠時代では埋もれてしまったのかも…。それでもこの「Butter Queen」のような、合理性を追求したトリオ編成によるリフ1本勝負の直球サウンドには、ハード・ロックの最もシンプルな旨味が凝縮されているようで、私のような者はたまらなく心惹かれてしまいます。
THREE MAN ARMYの作品ではこの後メンバーを入れ替えて発表される74年作3rd『2』(再結成後の2作目であるため)も人気の高い一枚ですが、こちらは時代も進みドラマチックな味付けが濃くなった印象。エイドリアンのギターの魅力を「素材のまま」楽しむならこの1stがオススメです。
後にエイドリアンはまさかのAORに転向し、82年のアルバム『Classic』からの同名シングルなどでヒットを獲得。さらに90年代にはケビン・コスナーとホイットニー・ヒューストン主演映画『ボディガード』の音楽を手掛け、そのサントラ盤が「世界で最も売れたサウンドトラック」になるなど、目覚ましい成功を収めています。
ハード・ロック・ギタリストではなくなった時代の方が評価を集めてしまったのは少し寂しいところではありますが、特別驚くことではありません。GUN~THREE MAN ARMY~BAKER GURVITZ ARMY時代の美しいストリングスを取り入れたバラードを聴けば、彼が若かりし時から叙情あふれる感動的なメロディを作る才能に長けていたことは明らかだからです。
とはいえハード・ロック・ファンとしては、やはりギタリストとしての彼をしっかりと評価したいところ。飾り気はないけれどとにかく剛速球、「真っ直ぐ」にハード・ロックの美味しさを伝えるエイドリアンのギター・サウンドの素晴らしさをぜひ多くの人に知って頂きたいです。
【関連記事】
スタッフ増田が心動かされたギター・リフをひたすら紹介していくコラム「このリフを聴け!」。第1回は英国のハード・ロック・バンド、ARMAGEDDONの「Buzzard」のリフです。
【関連記事】
世間ではあまり知られていないが、聴いたら思わず涙がホロリ、もしくは嗚咽をあげて泣きむせぶ、そんなロックの隠れた「泣ける名曲」を紹介。お相手は、叙情メロディとネコをこよなく愛する音楽ライターの舩曳将仁。
ガーヴィッツ兄弟がGUNの後に元スプーキー・トゥースのドラマーと結成したグループ。71年作の1st。スピーディーなギター・リフとスリリングなギター・ソロで仁王立ちするギターと疾走するリズム隊によるハード&アグレッシヴなアンサンブルが圧巻。トリオ編成による隙間のあるサウンドが、逆にバンドのスピード感を際立たせていてグッド!名作。
盤質:傷あり
状態:並
小さいケースツメ跡あり、小さいカビあり、その他は状態良好です
GUNやTHREE MAN ARMYで活躍したエイドリアン&ポール・ガーヴィッツ兄弟に元CREAMのドラマー、ジンジャー・ベイカーが加わり結成されたブリティッシュ・ハード・バンド。74年デビュー作『BAKER GURVITZ ARMY』、SHARKSのSnipをヴォーカルに迎えた75年作2nd『ELYSIAN ENCOUNTER』、76年の最終作『HEARTS ON FIRE』の全3作を収めたボックス。キレのあるギター・リフを活かしたハード・ロックからメロディアスでファンキーなナンバーまで、ヴァラエティーに富みつつも一貫してソリッド&ハードな演奏が非常に格好いい名バンドです。
3枚組ボックス、リマスター、各CDはペーパーケース仕様、計4曲のLIVE音源をボーナス・トラックとして収録、ポスター付き仕様
コメントをシェアしよう!
カケレコのWebマガジン
60/70年代ロックのニュース/探求情報発信中!