2020年1月14日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
タグ: プログレ
スタッフ増田です。
来月2月8日(土)&9日(日)にCLUB CITTA川崎にて行われる、英国女性ヴォーカル・プログレの重鎮バンドCURVED AIRの来日公演。
2009年以来11年ぶりの来日であり、結成50周年という節目でもある期待の公演に備え、彼女たちの経歴&名作を振り返ってまいりましょう!
女性ヴォーカリストをフィーチャーしたプログレ・バンドの筆頭格として、RENAISSANCEと双璧を成すCURVED AIR。
その特徴と言えば、ソーニャ・クリスティーナの気品と透明感に満ちつつどこか演劇的な独特の歌声、そして同じく気品に溢れた優雅なヴァイオリンの音色。
ロックにヴァイオリンを本格導入した最初のバンドと言われるCURVED AIRは、王立音楽院の学生であったキーボディストのフランシス・モンクマンと王立音楽大学でヴァイオリンを学んでいたダリル・ウェイ、ベーシストのロブ・マーティン、ドラマーのフロリアン・ピルキントン・ミクサによって1969年に結成されました。
翌年に女性ヴォーカリストのソーニャ・クリスティーナが加入すると、SISYPHUSと名乗っていたバンド名をCURVED AIRと改め本格的に活動を開始。ちなみにバンド名はモンクマンが大ファンだったテリー・ライリーの69年作『A RAINBOW IN CURVED AIR』にちなんで名付けられたそうです。
ヴァイオリン入りというユニークなバンド編成もあり、結成してまもなく業界で注目を集め始めたCURVED AIR。彼らは英国のバンドとしては初めて米大手ワーナー・ブラザーズと契約し、1970年にデビュー作『AIR CONDITIONING』をリリースします。
本格的なクラシックの素養を持ったモンクマンのピアノやウェイのヴァイオリン、ノイジーに歪んだギターに妖しくも艶やかな女性ヴォーカル。強烈な個性が交わらず実験的にぶつかり合うサウンドは後の作品と比べると粗削りで破天荒ながら、デビュー作としてのインパクトは大。超絶ヴァイオリン炸裂する「Vivaldi」をはじめ、バンドの初期衝動溢れる演奏が楽しめる内容となっています。
ちなみにオリジナルのUK盤はレコード全面に模様が描かれた、世界初の「ピクチャーディスク」仕様。ジャケはなく透明な袋に収められており、ターンテーブル上でレコードを回転させるとサイケデリックな視覚画像が浮かび上がるという、この時代らしい工夫を凝らしたビジュアルも興味深いです。
エキセントリックな実験性が抑えられ、バンドとしての一体感が増したのが翌年リリースの『SECOND ALBUM』。A面はウェイが、B面はモンクマンが作曲を担当しており、ウェイ作曲の「Back Street Luv」は全英4位のシングル・ヒットも飛ばしました。
淡くソフトなサイケデリアに包まれたアンサンブルに透明感あるソーニャのヴォーカルが溶け合うサウンドは、荒々しかった前作に比べると格段に繊細で幻想的。ロック界でいち早くVCS3シンセサイザーを導入したモンクマンの実験性も程よいアクセントになっており、他にはないCURVED AIRとしての作風が確立した作品と言えるでしょう。
それにしても、美しい幻想性と壮大なダイナミズムが融合した「Piece Of Mind」はシンフォニック・ロック最初期の名曲ですね!
翌年の3rd『PHANTASMAGORIA』は前作のファンタジック路線をさらに推し進めた、最高傑作との誉れ高い名品。
持ち前の繊細でデリケートな質感は継承しつつ、フルートやトランペットなどの管楽器奏者を多数ゲストに迎え、より多彩かつ気品に満ち溢れた珠玉のシンフォ・サウンドを展開しています。
しかしながら当時のバンド内では、ウェイとモンクマンの志す音楽性の違いが徐々に顕著に。本作リリースの後モンクマン、ウェイといった主要メンバーが次々と脱退し、バンドは分解状態となってしまいます。
危機的状況のCURVED AIRを救ったのが、ヴァイオリニストにしてキーボードも弾きこなす当時18歳の奇才ミュージシャン、エディ・ジョブソン。
ソーニャ、3rdから加入したベーシストのマイク・ウェッジウッドにジョブソンら新メンバーを加えた新生CURVED AIRは、73年に4thアルバム『AIR CUT』を発表します。
ウェイとモンクマンという二人の要を失ったことでサウンドが一変してしまうのではという世間の懸念に反し、本作で提示されたのは過去作にも劣らぬ「CURVED AIRらしさ満点」のサウンド。
クラシカルな格調高さとロックのドライヴ感が融合したダイナミックな演奏に、生き生きとしたソーニャの歌声。名曲「Metamorphosis」を筆頭に、ジョブソンの作曲者としての才気も発揮された充実の一作となっています。
今回の来日公演では、本作『AIR CUT』の完全再現が披露されるそう。本作で活躍したウェッジウッドやギタリストのカービー・グレゴリーもゲストで登場するということで、47年の時を経て本作がどのように蘇るのか実に楽しみです。
本作リリースの後バンドは一時解散状態になり、ジョブソンはブライアン・イーノの後任としてROXY MUSICに加入。翌74年にオリジナル・メンバーのモンクマン、ウェイらが復帰して再結成し、同ラインナップでのツアーの模様を収めた『LIVE』を発表。
その後はPOLICEで名を馳せるドラマー、スチュワート・コープランドが加わり75年作5th『MIDNIGHT WIRE』、76年作6th『AIRBORNE』を発表しますが、76年末にはまたしても解散を迎えます。
数多くのメンバー変遷を経つつも、一貫してバンドを支え続けたのがソーニャ・クリスティーナ。1990年の一時的な再結成、そして08年に再始動してから現在に至るまで、中心的存在としてCURVED AIRを率い続けているから見事です。鮮やかなヴォーカルやヴァイオリンが彩る、気品と躍動感たっぷりの英国クラシカル・ロック・サウンドを是非体感してみて下さい。
日程:2020年2月8日(土),9日(日)
会場:CLUB CITTA’/川崎
https://clubcitta.co.jp/001/curvedair-2020/
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英国ロックの歴史に燦然と輝くグループ。22年ぶりとなる08年ニュー・アルバム奇跡のリリース。妖艶なる歌姫ソーニャ・クリスティーナと天才ヴァイオリニスト「ダリル・ウェイ」を中心とした3人のオリジナル・メンバーによってあの名曲が今ここに甦る、究極のリ・レコーディング・アルバム。
RENAISSANCEと共に、女性ボーカルがフロントを務めるプログレッシブ・ロックバンドの代表格であり、紅一点Sonja Kristinaのパワフルな歌声とDarryl Wayのヴァイオリンをクラシカル且つソフトなサイケデリアで包んだイギリスのグループによる72年3rd。グループの名曲「マリー・アントワネット」や「オーバー・アンド・アバーブ」を収録した最高傑作と名高い本作は、これまでのCURVED AIRの集大成といえるバラエティーに富んだ作風となっており、Sonja Kristinaの魅力が詰まったメロディアスな楽曲からFrancis Monkmanの趣向を感じる実験色、Darryl Wayのクラシカルな彩りが渾然一体となって迫る名盤です。本作を最後にグループは事実上解散し、Darryl Way、Francis Monkman不在のまま後に再編されます。
デジパック仕様、CD+DVDの2枚組、ボーナス・トラック3曲、DVDはNTSC方式、リージョンフリー、定価3600+税
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
女性ボーカリストSonja Kristina、名ヴァイオリン奏者Darryl Wayを擁したイギリスのプログレ・バンド、74年のイギリス公演を収録した75年ライブ作。その内容は彼らの代表曲が贅沢に並べられた、プログレ史に残る名ライブ盤となっています。スタジオ作では非常に繊細で丁寧に音を紡いでいくグループであり、スタジオバンドのような印象のある彼らですが、本ライブ盤で聴けるのはSonja Kristinaのヒステリックなほどにパワフルな歌声、Darryl Wayの鋭い切れ味とドライブ感のあるヴァイオリン、そしてバンド陣全体の一糸乱れぬテクニカルなプレイの応酬です。やはりスタジオ作とのギャップに驚いてしまいますが、ワイルドで骨のあるバンドの本来の姿が記録された名盤と言えます。
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