2020年1月10日 | カテゴリー:世界のロック探求ナビ
スタッフ佐藤です。
今年2020年で、1970年代の始まりから半世紀を迎えました。
そんなわけで、ちょうど50年前の1970年に発表された作品をご紹介するのがこの「1970年名盤特集」。
前回の英国編に続いて、今回はユーロ編をお届けいたします。
ヨーロッパ各国のロック黎明期に残された名盤を、メジャー作品から隠れた逸品までピックアップいたしますよ~。
P.F.MもBANCOもまだ登場していなかった70年のイタリアで活躍したのがFORMULA 3。VDGGやPINK FLOYD的プログレッシヴ・アート・ロックを鳴らす彼らのデビュー作で、沈み込むようなオルガンと耳をつんざくヘヴィなギターが轟くエネルギーみなぎる一枚!
主にプログレ・ファンによって知られるグループですが、内容はゾンビーズ『オデッセイ&オラクル』に通じるドラマティックなポップ・ミュージック。全編マジカルなメロディに彩られた名品です。
伝説はここから始まった…!総帥クリスチャン・ヴァンデが私淑するジョン・コルトレーンの遺志を受け継ぐべく結成されたバンドの衝撃デビュー作。独自言語も織り交ぜたグラグラと煮えたぎるようにエネルギッシュで濃厚なブラス・ジャズ・ロックが炸裂!
そのマグマのバーナード・パガノッティが在籍していたプログレ黎明期のフレンチ・ロック・バンドと言えば?フロイド、コロシアム、トラフィックをゴッタ煮にしたようなアート・プログレで、ジャケの通り秘宝臭ぷんぷん。
え!? この音でゴングよりデビュー早いの? 怪しさムンムンのジャケも堪りません。このフランスのジャズ・ロック・グループ、恐るべしです。
ジャーマン・エレクトロを代表するビッグネームも70年にデビュー作を残しています。のちの作風からは予測できない、ギター、オルガン、チェロ、フルート、ドラムスらがテンション高くぶつかり合うアヴァンギャルドなフリーインプロヴィゼーション!本作のみ参加のクラウス・シュルツェは前衛的なドラミングも披露していて興味深いです。
同じジャーマンものでは、70年にして鬼才フローリアン・フロッケの才覚が爆発しているこのグループのデビュー作も取り上げなければなりません。TANGERINE DREAMに先んじたジャーマン・エレクトロの一品!
ギター、オルガン、唾飛ばしフルートが渾然一体となって狂おしく畳み掛けるアンサンブルの熱気の凄まじいこと。一歩も引かない女性ヴォーカルも圧巻だし、このドイツのバンド、アフィニティやベーブ・ルースのファンは必聴だなぁ。
プログレというよりは英国ビート・ポップ風だけど、珠玉のメロディー・センスは既に健在!後に『III』で完成するあの曲の原型も聴き所ですよね。オランダを代表するグループ、記念すべき70年デビュー作♪
まさかハットフィールド&ザ・ノースが誕生するよりずっと前に、オランダにこんなにカンタベリー・テイストを感じさせるジャズ・ロックが存在したとは…。昨年実質的な新作をリリースしたことでも話題となった名グループですね!
初期イエスやフォーカスに通じるスピーディーなアート・ロック感とともに、クレシダやグレイシャスに通じる感じもあって。70年代のオランダには素晴らしいグループがたくさん!
初期ニュークリアスに比肩するスペイン・ロック黎明期を代表するグループによる傑作デビュー作!ロワッサンに懐中時計がはまったジャケデザインは、当時のフランコ独裁体制への批判が込められています。
ヴァニラ・ファッジ、初期パープルに通ずるアートなオルガン・サイケにソウル、R&B的グルーヴ感をプラスしつつも、北欧らしい繊細な音作りが個性的。異国感漂うシタールやフルートも幻想的な、スウェーデン・サイケの名盤!
マイク・オールドフィールドにかなり近い世界観が広がっていると思いきや、チューブラー・ベルズに3年も先んじたスウェーデンのマルチ奏者による70年作。プログレ黎明期に、これほどの作品をほぼ独力で作り上げた先見性とクリエイティビティには驚かずにいられません。
アイスランド・ロック黎明期を担ったのが彼ら。同国の20世紀のアルバム選で第5位に選ばれた1stが70年リリースです。フォーク・ロック、ハード・ロック、ジャズ、クラシックが混然一体となったサウンドを聴かせる凄いコンセプト・アルバムですよ!
「ベルギーのELO」と呼ばれるこのグループをご存知?後に多国籍プログレ・バンドESPERANTOを結成するRaymond Vincentのヴァイオリンも炸裂する気品溢れまくりのクラシカル・バロック・ポップ!
ヴァン・ダー・グラーフにソウルフルな女性ヴォーカルが入ったら?そんなバンドをベルギーで発見!強烈な暗黒おとぼけジャケに負けず、サウンドもキてます!
1曲目は、初期マグマばりの攻撃的ブラス・ロックで突っ走るし、2曲目は「ELPばりにテクニカルなプロコル・ハルム」って感じだし、3曲目はハイドンを秀逸にアレンジしたナイスもびっくりなクラシカル・ロックだし、東欧プログレ黎明期の驚くべき傑作!
ハンガリー最古参のロック・グループが、初期のビート・ロックから英ハードに影響を受けたアートなロックへと進化した70年作3rd!
ユーロロック全盛にはまだ数年を要する時期ですが、すでに魅力あふれる作品がたくさんありましたね!
英国編はこちら!
アイスランドのグループ。70年作の2nd「Undir Ahrifum」と71年作の3rd「Lifun」とをカップリングした2in1CD。1stから女性Voが脱け、フラワー・ムーヴメント的な要素は無くなり、ハードさがグッと増しました。哀愁のメロディーと重厚なハモンドをフューチャーしたメロディアスな大曲「Feel Me」が聴き所。3rdアルバムは、曲間が無く流れるようなロック・オペラ。フォーク・ロック、ハード・ロック、ジャズ、クラシックが混然一体となったアンサンブルはかなりの完成度。彼らの最高傑作。
70年発表の記念すべきデビュー作!FOCUSは68年にキーボード&フルートのタイス・ヴァン・リアが結成。70年に元Brainbox(これも名バンド!)のギタリストであったJan Akkermanが加入して本作をレコーディングしました。内容的には全体的にまだ地味であり、一番最後に聞くべきアルバムかもしれません。全8曲のうち3曲がインスト、5曲がボーカル入りです。インストの3曲、Anonymus、House of The King、Focus の3曲は、ベスト盤にも収録されている文句なしの名曲、デビュー作ですでにベテランの風格さえ感じさせてくれます。Jan Akkermanのギターがジャズ、ブルース、クラシックのテイストを取り混ぜながら、強烈な存在感でせまってきます。 一方、なかなかに面白いのがボーカル曲の数々。おそらく、Jan Akkermanは、出来に相当不満は感じていたのでしょうが、これがなかなかの名曲揃いだと思います。サウンドは、60年代後半の英国ビートポップに近いとは思いますが、メロディーが実に美しい。FOCUSが世界的な人気を得たのは、テクニックだけではなく、後のJanisやSylvia などの珠玉のメロディーがあればこそだったわけで、この曲想は本作でもその片鱗が見えています。 確かに、ヴォーカルそのものには、やや弱い面があるとは言え、ギターソロ等では、しっかりFOCUSの音が出来上がっていますし、重厚なキーボード・ワークもビートポップバンドの比ではありません。 彼らとしては、異色な作品ですが、叙情派プログレの傑作として、MOODY BLUES、CARAVAN、CAMEL等が好きな私には、たまらない作品と言えるでしょう!
紙ジャケット仕様、デジタル・リマスター、内袋付仕様、定価2190+税
盤質:無傷/小傷
状態:並
帯有
小さいカビあり、紙ジャケ側面部に色褪せあり、帯に軽微な折れあり
女性ヴォーカル、フルート奏者を要するジャーマン・ロック・バンド。オリジナルは2枚組でリリースされた70年のデビュー作。オープニングの「Riddle In A Swamp」から痺れまくり!アグレッシヴに疾走するキレ味抜群のリズム隊、叩きつけるように鳴らされるリズムと「狂おしい」というキーワードぴったりに弾きまくられるリードともにまるでパンクのように初期衝動のエネルギーがつまったエレキ・ギター、宗教的な荘厳さとともにそそり立つオルガン、激しく吹かれるフルート。いやはや凄まじい熱気。アンサンブルに応える女性ヴォーカルも圧巻で、英国アフィニティのリンダ・ホイルを彷彿させます。ジャーマン・オルガン・ハード屈指の傑作です。アフィニティやベーブ・ルースのファンは必聴!
フランス出身、後にマグマで活躍するベーシスト、バーナード・パガノッティ在籍のアート・ロック/プログレ・グループ、70年の唯一作。霧のように低く立ちこめるドラム、くすんだトーンのオルガン、浮遊感のあるヴァイヴ、女性を含む荘厳なコーラス、アーティスティックなヴォーカルなど、ピンク・フロイドを彷彿させる幻想性に溢れたサウンドが聴き所。歪んだギターが炸裂するキメのパートでは、パガノッティのベースも高速にうねりを上げて痺れます。トラフィックとコロシアムの中間に位置するようなジャジーなロック・ナンバーも魅力的で、ジャジーで格調高いピアノを挿入したり、かなりのセンスを感じさせます。秘宝臭ぷんぷんのジャケに「おおっ」となったユーロ・ロック/プログレのファンは聴いて損はありません。
フランスのジャズ・ロック・グループ、70年作の1st。手数多く軽快なドラムと動き回るベースによる疾走感溢れるリズム隊を土台に、ギターがテンションいっぱいにカッティングを刻み、フルートやサックスがエネルギッシュに炸裂!シリアスなだけでなく、ユーモアも盛り込むなど、ソフト・マシーンやヘンリー・カウなどカンタベリー勢からの影響大。まだゴングが1stをリリースしていない70年ということを考えると、恐るべしな作品。北欧のサムラに通ずる痛快さもあり。カンタベリーのファンは必聴の名作です!
ベルギー出身、ギターレスでサックス奏者とオルガン奏者を含み、女性ヴォーカル在籍という編成のプログレ・グループ。70年のデビュー作。サックスが低く垂れ込めるVDGGばりに荘厳なパートとジャジーなオルガンをフィーチャーしたジャズ・ロックなパートを行き交うアンサンブル、そしてジュリー・ドリスコールやキャロル・ギライムスを彷彿させるソウルフルな女性ヴォーカル。ベルギーのプログレと言えば、WATERLOOやIRISH COFEEのようなオルガン・プログレやCOSやPAZOPなどカンタベリー・フィーリングなジャズ・ロック・グループを思い出しますが、その両方のエッセンスを併せ持つのがこのグループ。シャープな高速リズムに女性スキャットとサックスとオルガンがユニゾンで畳みかける4曲目は、まさにこのグループならではと言えます。強烈な印象を残すジャケに負けない、ハイ・レベルでオリジナリティ溢れる好グループ!
ドラマー&コンポーザーのクリスチャン・ヴァンデ率いるフランスを代表する、というよりユーロ・ロックを代表する巨星グループによる記念すべき1970年デビュー作。幼少時代にクラシックをはじめ、R&Bやソウルに親しんだ後、ジョン・コルトレーンのフリー・ジャズに心酔したヴァンデ。コルトレーンの死後、生きる活力を失い、2年をさまよい歩いた後、神の啓示を受け、精神世界を追求したコルトレーンの意志を受け継ぐことを決意し、マグマを結成します。非西洋的な土着性をクラシックに取り込んだストラヴィンスキーなど近現代クラシックの流れを汲みながら、米R&Bやソウルのダイナミズム、コルトレーンの精神性をグツグツと煮炊きながら生まれたのがマグマ独自のサウンド。彼らの代名詞と言える独自言語コバイア語も既にあり、英米が主導する資本主義や利己主義による均一化を憂う壮大な叙事詩=コバイア・ストーリーを核に、フランスならではのロックをめざしたのが本作です。いきなりの一曲目「Kobaia」から、彼らならではの音世界が爆発!圧倒的なスピード感で疾走するドラム、超低域でうねっては暗黒を表出させるベースによる屈強なリズム隊。デビュー作のみ居るギタリスト、クロード・アンゲルによるザラついた歪みの猥雑&ブルージーなギター。そして、ビッグバンド・ジャズ風から突如暴力的に牙をむくブラス隊!オープニングから圧倒的な音圧で聴き手に迫ります。対照的に煌びやかなトーンで格調高さを加えるピアノも絶品。なお、ピアノは後にザオを結成するフランソワ・カーン!呪術性、神秘性、クラシカルな静謐さ、エキゾチズムが代わる代わる押しては引く展開は、す、すさまじすぎるテンション・・・。後の暗黒オペラティック・サウンドが強烈なだけに、初期は地味な位置づけですが、ヴァンデの精神性と音楽的野心はすでに最高潮ですし、ユーロ・ロック史上に残る作品と言っても過言ではないでしょう。大傑作!
2枚組、プラケース仕様、定価2857+税
盤質:無傷/小傷
状態:良好
帯有
ビニールソフトケースの圧痕あり、小さいケースツメ跡あり
ハンガリーを代表するグループ。70年作3rd。初期OMEGAの音楽的イニシアティブを握っていたPresser Gaborが参加している最後の作品(脱退後、LOCOMOTIV GTを結成)。中域にコシのあるトーンのハードなギター、タイト&ヘヴィなリズムによるエネルギッシュなアンサンブルを軸に、オルガンとピアノが荘厳な色を加えます。ブリティッシュ・ロックに通ずる引きずるような重量感と東欧らしい哀愁が融合した、陰影に富んだハード・ロックの逸品!
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